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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1116868
審判番号 不服2004-5080  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-11 
確定日 2005-05-12 
事件の表示 平成10年特許願第259723号「画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月31日出願公開、特開2000- 92283〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年9月14日の出願であって、平成15年2月19日付けで手続補正がなされ、平成16年2月3日付でなされた拒絶査定に対し、平成16年3月11日に審判請求がなされるとともに、平成16年4月7日付で明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月7日付けの明細書についてした手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 読み取り動作を開始するための読み取りスタートキーと、
原稿読取台に載置された原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段と、
原稿照明用光源と、
前記原稿照明用光源の点灯を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記原稿サイズ検知手段からの原稿サイズ確定入力があると前記原稿照明用光源の点灯制御を行い、その後、前記スタートキー入力に基づき読み取り動作を開始することを特徴とする画像読取装置。」
と補正しようとするものである。

拒絶査定時の特許請求の範囲の記載(平成15年2月19日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載)は、
「【請求項1】 原稿読取台に原稿が載置されたかを検知する原稿検知手段と、
前記原稿読取台に載置された原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段と、
原稿照明用光源と、
前記原稿照明用光源の点灯を制御する制御手段と、
前記原稿検知手段の出力に応答して所定時間を設定するタイマ設定手段とを備え、
前記制御手段は、前記タイマ設定手段の所定時間の間、前記原稿照明用光源の点灯動作を禁止し、前記タイマ設定手段の所定時間後に前記原稿照明用光源の点灯動作を行い、前記タイマ設定手段の所定時間内に前記原稿サイズ検知手段からの原稿サイズ確定入力があると前記原稿照明用光源の点灯動作の禁止を解除して点灯を許容することを特徴とする画像読取装置。」
である。

この補正は、補正前の「原稿検知手段」、「タイマ設定手段」、「タイマ設定手段の所定時間の間、前記原稿照明用光源の点灯動作を禁止し」、「タイマ設定手段の所定時間後に前記原稿照明用光源の点灯動作を行い」、「タイマ設定手段の所定時間内に前記原稿サイズ検知手段からの原稿サイズ確定入力があると前記原稿照明用光源の点灯動作の禁止を解除して点灯を許容する」の記載を削除する補正をしているが、この補正を補正前の請求項1と対比した場合、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正とは認められず、また、不明りょうであるとの拒絶理由を通知していないので、明りょうでない記載の釈明とも認められない。
(なお、拒絶査定において、なお書きで記載の不備を指摘しているが、請求項1の「前記制御手段は、前記タイマ設定手段の所定時間の間、前記原稿照明用光源の点灯動作を禁止し、前記タイマ設定手段の所定時間後に前記原稿照明用光源の点灯動作を行い、前記タイマ設定手段の所定時間内に前記原稿サイズ検知手段からの原稿サイズ確定入力があると前記原稿照明用光源の点灯動作の禁止を解除して点灯を許容する」との記載に対しての指摘であり、その他の個所の指摘ではないので、上記補正はその記載不備を解消するための補正であるとも認められない。)

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1〜4号のいずれにも該当しないので、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年4月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年2月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項2】 読み取り動作を開始するための読み取りスタートキーと、
原稿読取台に原稿が載置されたかを検知する原稿検知手段と、
前記原稿読取台に載置された原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段と、
原稿照明用光源と、
前記原稿照明用光源の点灯を制御する制御手段と、
前記原稿検知手段の出力に応答して所定時間を設定するタイマ設定手段とを備え、
前記制御手段は、前記タイマ設定手段の所定時間の間、前記原稿照明用光源の点灯動作を禁止し、前記タイマ設定手段の所定時間後に前記原稿照明用光源の点灯動作を行い、前記タイマ設定手段の所定時間内に前記スタートキー入力があると前記原稿照明用光源の点灯動作の禁止を解除して点灯を許容することを特徴とする画像読取装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、平成3年12月27日に頒布された特開平3-297265号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「(1)画像を読み取る原稿を照明する光源を有し、原稿台に原稿を載置して各種設定操作の後起動操作して使用する画像読取装置において、上記原稿台への原稿の載置および除去を検知する検知手段と、原稿が載置されたまま一定時間経過したとき上記光源を点灯させる点灯手段と、原稿が除去されたまま一定時間経過したとき上記光源を消灯させる消灯手段とを備えていることを特徴とする画像読取装置。
(2)画像を読み取る原稿を照明する光源を有し、原稿台に原稿を載置して各種設定操作の後起動操作して使用する画像読取装置において、上記各種設定操作が開始されたとき上記光源を点灯させる点灯手段を備えていることを特徴とする画像読取装置。」(引用例1の1頁下左欄5〜19行)
(b)「また、他の方法として、ファクシミリ装置に原稿の載置を検知するセンサを備え、オペレータが送信原稿をセットしたとき、蛍光灯を点灯するものがある。
この方法は、原稿セットの後、オペレータが宛先の設定など発信操作を行ない、相手先が応答するまでの時間に光量を上昇させることができる。
ところで、オペレータが、送信原稿を装置にセットする際に、複数ページが正しく揃っていなかったり、縦横の送信方向を変えたり、あるいは送信をやめたりする場合、送信原稿を装置にセットしたり取り出したりする。この場合、上記方法のものは、原稿の出し入れの都度、蛍光灯の点灯と消灯とが繰り返されていた。
ところが、このように蛍光灯のオンオフが頻繁に行なわれると、蛍光灯の寿命が短くなるという不都合があった。」(引用例1の2頁上左欄15行〜同頁上右欄11行)
(c)「原稿挿入口201bには、原稿がセットされたことを検知するセンサ202が配設されている。このセンサ202は、通常直立状態に付勢されている回動可能なレバー202aを有し、そのレバー202aが原稿Pに押されて回動することにより原稿のセットを検知するようにしている。」(引用例1の3頁上右欄1〜6行)
(d)「第3図は、蛍光灯210をオンオフする制御回路のブロック構成を示したもので、センサ202の検知信号は、時限回路301に入力される一方、インバータ302を介して時限回路303に入力されている。時限回路301の出力は、フリップフロップ304のセット端子Sに入力され、時限回路303の出力はリセット端子Hに入力されている。
蛍光灯210への電源をオンオフするスイッチ回路305は、フリップフロップ304の出力Qにより制御されるようになっている。」(引用例1の3頁下左欄7〜16行)
(e)「以上の構成で、本実施例のファクシミリ装置で画像送信する場合、まず原稿Pを装置にセットする。
すなわち、オペレータは、第2図に示すように、原稿Pの端部を原稿挿入口201bから挿入して原稿台201a上に載置する。この場合、原稿Pの各ページが揃ってなかつたり縦横の送信方向を変たりする場合など、任意に取り出して再セットする。
このように原稿Pがセットされると、レバー202aが傾斜してセンサ202はハイレベル(以下、“H”と略す)の検知信号を出力する。時限回路301は、その検知信号を入力し、“H”の状態が1秒間継続するとフリップフロップ304をセットする。
また、原稿Pがセットされた後-旦取り出されたとすると、検知信号がローレベル(以下、“L”とり略す)になる。検知信号が“L”になると、時限回路303の入力が“H”になる。時限回路303は、その状態が2秒継続するとフリップフロップ304をリセットする。スイッチ回路305は、フリップフロップ304がセットされると蛍光灯210を点灯させる。
いま例えば、オペレータが原稿Pを出し入れして、第4図(a)に示すように、センサ202の検知信号が“H”と“L”に変化したとする。すると、同図(b)に示すように、検知信号が“H”になって1秒後に蛍光灯210が点灯し、“L”になって2秒後に消灯する。また、同図t1,t2に示すような検知信号の短時間の変化には応答しない。」(引用例1の3頁下左欄17行〜4頁上左欄3行)
(f)「なお、本実施例では、ファクシミリ装置の画像送信処理を例にとって説明したが、画像読取装置の場合においても、同様であることはいうまでもない。」(引用例1の4頁上右欄13〜16行)
が記載されている。

これらの記載によれば、引用例1には、
「画像を読み取る原稿を照明する光源を有し、原稿台に原稿を載置して各種設定操作の後起動操作して使用する画像読取装置において、
上記原稿台への原稿の載置および除去を検知する検知手段と、
一定時間で動作する時限回路と、
光源への電源をオンオフするスイッチ回路と、
スイッチ回路を制御するフリップフロップとを設け、
上記検知手段の検知信号は、第1の時限回路に入力される一方、インバータを介して第2の時限回路に入力され、第1の時限回路の出力は、フリップフロップのセット端子に入力され、第2の時限回路の出力はリセット端子に入力され、光源への電源をオンオフするスイッチ回路は、フリップフロップの出力により制御するようにすることにより、原稿が載置されたまま一定時間経過したとき上記光源を点灯させ、原稿が除去されたまま一定時間経過したとき上記光源を消灯させるように制御することを特徴とする画像読取装置。」
との発明が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、
引用例1の「検知手段」は、本願発明の「原稿検知手段」に、
引用例1の「原稿を照明する光源」は、本願発明の「原稿照明用光源」に、
引用例1の「フリップフロップ」、「スイッチ回路」は、本願発明の「制御手段」に、
引用例1の「時限回路」は、本願発明の「タイマ設定手段」に
それぞれ相当し、
また、引用例1は、実施例ではファクシミリ装置の画像送信処理を例にとって説明されているが、画像読取装置の場合においても同様であると記載されているから(上記(f)参照)、
両者は
「原稿読取台に原稿が載置されたかを検知する原稿検知手段と、
原稿照明用光源と、
前記原稿照明用光源の点灯を制御する制御手段と、
前記原稿検知手段の出力に応答して所定時間を設定するタイマ設定手段とを備え、
前記制御手段は、前記タイマ設定手段の所定時間の間、前記原稿照明用光源の点灯動作を行わず、前記タイマ設定手段の所定時間後に前記原稿照明用光源の点灯動作を行うことを特徴とする画像読取装置。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
(相違点1)
本願発明が、読み取り動作を開始するための読み取りスタートキーと、原稿読取台に載置された原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段とを備えているのに対して、引用例1のものは、読み取りスタートキーと、原稿サイズ検知手段について記載されていない点。
(相違点2)
本願発明では、制御手段が、前記タイマ設定手段の所定時間の間、前記原稿照明用光源の点灯動作を禁止し、前記タイマ設定手段の所定時間後に前記原稿照明用光源の点灯動作を行い、タイマ設定手段の所定時間内にスタートキー入力があると前記原稿照明用光源の点灯動作の禁止を解除して点灯を許容するのに対して、引用例1では、光源への電源をオンオフ制御することにより、原稿が載置されたまま一定時間経過したとき上記光源を点灯させるの制御を行い、点灯動作の禁止について、また、スタートキーと光源の点灯動作の関係については記載されていない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討すると、
(相違点1)について
画像読取装置において、読み取りスタートキーは設けられているのが普通であり、引用例1においても、読み取りスタートキーは設けられているものと認められる。
また、画像読取装置において、原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段を設けることは、周知慣用のことである。
(相違点2)について
引用例1のものは、蛍光灯のオンオフが頻繁におこなわれると、蛍光灯の寿命が短くなるので、蛍光灯をむやみにオンオフさせて寿命を低下させることを防止するために、オペレータが原稿のセットするときに原稿のセット後一定時間が経過した後に蛍光灯を点灯するものである。また、一般的に、ファクシミリ装置でも、複写機でも、スタートキーをオペレータが操作するということは、原稿のセット、各種設定が終わり読み込みを直ちに始めて良いということであるから、たとえ、光源を点灯しない時間内であっても、読み込みを始めるために直ちに蛍光灯の点灯をして良いことは明らかなことである。さらに、点灯をスイッチ回路のオンオフすること制御するか、動作を禁止するかしないかにより行うことも当業者が適宜行えることである。
したがって、引用例1においても、タイマ設定手段の所定時間の間、原稿照明用光源の点灯動作を禁止し、タイマ設定手段の所定時間後に原稿照明用光源の点灯動作を行い、タイマ設定手段の所定時間内にスタートキー入力があると原稿照明用光源の点灯動作の禁止を解除して点灯を許容するようにすることは、当業者が容易に考えられることである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-29 
出願番号 特願平10-259723
審決分類 P 1 8・ 574- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 努  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 深沢 正志
大野 弘
発明の名称 画像読取装置  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  

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