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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1116869
審判番号 不服2004-6481  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2005-05-12 
事件の表示 平成 9年特許願第311261号「画像転送無線通信端末システムならびに該システムに用いる画像撮影アダプタおよび簡易形無線通信端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月21日出願公開、特開平11-136653〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年10月28日の出願であって、平成16年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]本件補正による請求項1についての補正
本件補正により、請求項1は、次のように補正された。(補正部分をアンダーラインで示す。)
「画像を取り込む撮像素子部,該撮像素子部により取り込まれた画像データを所定のデータ形式に変換処理する処理部ならびに前記処理部のデータを外部接続するためのインタフェース部を有する着脱式画像撮影アダプタと、
前記着脱式画像撮影アダプタのインタフェース部に接続されるインタフェース部,メモリ部,表示画面,データ通信機能および無線電話機能を有する簡易形無線通信端末装置とからなり、
該簡易形無線通信端末装置は、テンキー、ファンクションキー、機能選択キー等からなる操作部を備え、
前記簡易形無線通信端末装置のインタフェース部に前記着脱式画像撮影アダプタのインタフィース部を装着し、該装着後、前記簡易形無線通信端末装置の操作部により装着中の前記着脱式画像撮影アダプタに対応するモードを動作させるように構成したことを特徴とする画像転送無線通信端末システム。」

[2]補正の目的の適否
上記請求項1の補正は、補正前の請求項1に記載されている簡易形無線通信端末装置(以下「通信端末装置」と略称する)への着脱式画像撮影アダプタ(以下「撮影アダプタ」と略称する)の装着について、この装着が、上記通信端末装置の「インタフェース部」に、上記撮影アダプタの「インタフェース部」を装着するものであるとする第1の補正を行うと共に、補正前の請求項1における「前記着脱式画像撮影アダプタを用いて画像の取り込み、画像データの処理を行うための操作を、簡易形無線通信端末装置の操作部で行う」との記載(上記撮影アダプタの装着についての記載に続く記載)を、「該装着後、前記簡易形無線通信端末装置の操作部により装着中の前記着脱式画像撮影アダプタに対応するモードを動作させる」と補正する第2の補正を行うものであるところ、上記第1の補正は、補正前の請求項1に記載された通信端末装置への撮影アダプタの装着について、その装着手段に係る限定事項を付加するものといえ、また、上記第2の補正について、その補正後の記載は、それ自体からは意味が必ずしも明確ではないが、明細書の記載(請求理由で上記第2の補正の根拠として掲げる段落【0013】の記載)や、請求理由での上記第2の補正の趣旨に関する主張に照らすと、撮影アダプタの装着後、通信端末装置の操作部により、装着中の撮影アダプタを動作させる(つまり、補正前の上記記載でいう、撮像アダプタでの画像の取り込みや画像データの処理を行わせる)上で、撮影アダプタの所要動作に対応するモードを上記操作部により設定するようにしたことをいうものと解され、そうすると、上記第2の補正は、補正前の上記記載でいう通信端末装置の操作部による撮影アダプタの動作(画像の取り込みや画像データの処理)について、上記操作部によるモード設定がなされた動作であるという限定条件を付すものということができる。
したがって、上記第1,第2の補正は、いずれも特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[3]独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「補正発明」という)が独立特許要件(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項で規定する要件)を満たすものであるか否かについて以下に検討する。
[3.1]引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平3-109891号公報(以下引用例という)には、名称を「携帯用無線電話装置」とする発明について、次のことが記載されている。
(a)上記発明の携帯用無線電話装置は、音声以外に映像の伝送も可能なもので、映像の撮影・伝送、或いは映像の受信・表示を行うことができ、その構成として、映像表示手段と撮像手段とを備え、該撮像手段は、携帯用無線電話本体に対して着脱自在とされていること(第1頁右下欄12〜14行目、第2頁右上欄4〜7行目、及び特許請求の範囲の1項,5項)。
(b)上記携帯用無線電話装置の具体例(第4図)では、撮像部30(上記撮像手段)が携帯用無線電話本体1と着脱自在に構成されており、撮像部30を上記無線電話本体1に機械的に一体化した時には、両者はコネクタ42によって電気的に接続されるようになされ、また、撮像部30を上記無線電話本体1から取り外した時には、両者を専用ケーブル43で電気的に接続し、撮像部30を電話本体1とは独立した状態として撮影できるようにすることで、撮影の操作性がよく、広範囲の対象の撮影が可能となるようにできること(第3頁右上欄4〜16行目)。
(c)上記無線電話本体1は、本体機能部10と映像表示部20を有し、本体機能部10には、スピーカ3,マイク4,キーボタン(キー入力手段)6やこれらに接続された主制御回路12等が設けられており、また、上記撮像部30には、撮像素子32,信号処理回路33等が設けられ、撮像素子32によって取り込んだ映像情報は、信号処理回路33を介して本体機能部10に送出されるようになされていること(第2頁左下欄13行目〜同頁右下欄12行目)。
(d)上記撮像部30による撮影のための制御は、本体機能部10のキーボタン6の操作によって行うようにできること(第2頁右下欄12〜15行目)。
[3.2]対比
[3.2.1]前記補正発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という)とを対比すると次のことが認められる。
(イ)補正発明は、「着脱式画像撮影アダプタ」と「簡易形無線通信端末装置」とからなる「画像転送無線通信端末システム」であるところ、引用発明の携帯用無線電話装置も、携帯用無線電話本体と、これに着脱自在な撮像手段(撮像部30)とを有し、上記携帯用無線電話本体は、特に「簡易形」とはいえないが、この点を別にすれば、補正発明でいう「無線通信端末装置」に相当し、また上記無線電話本体に着脱自在な撮像手段は、補正発明でいう「着脱式画像撮影アダプタ」といえるもので、これら無線電話本体と撮像手段によって映像の伝送を可能とするものであるから、補正発明でいう上記「画像転送無線通信端末システム」といえるものである。
(ロ)補正発明の上記撮影アダプタは、「画像を取り込む撮像素子部」,「撮像素子部により取り込まれた画像データを」「処理する処理部」を有しているところ、引用発明の上記撮像手段も、上記撮像素子部、処理部にそれぞれ相当する「撮像素子32」,「信号処理回路33」を有している。もっとも、補正発明では、上記処理部が「画像データを所定のデータ形式に変換処理する」ものであるとしているのに対し、引用発明では上記信号処理回路33の信号処理内容は特定されていない。
(ハ)補正発明の上記通信端末装置は、「メモリ部」,「表示画面」,「データ通信機能」および「無線電話機能」を有しているところ、引用発明の無線電話本体1も、上記表示画面に相当する「映像表示手段(映像表示部20)」を有し、また当然に無線電話機能を有するものといえるが、上記メモリ部やデータ通信機能については引用発明では特に開示がない。
(ニ)補正発明では、上記撮影アダプタと通信端末装置のそれぞれに「インタフェース部」(明細書記載の実施例では両者を電気的に接続する接続手段)を設け、上記通信端末装置のインタフェース部に上記撮影アダプタのインタフェース部を装着するようにしているところ、引用発明でも、撮像部30(撮像手段)を上記無線電話本体1に装着した時には、両者がコネクタ42によって電気的に接続されるようにしている〔引用例の前掲記載(b)〕のであるから、上記撮像部30と無線電話本体1にはそれぞれ補正発明でいう「インタフェース部」が設けられているといえる。
(ホ)補正発明の上記通信端末装置と引用発明の上記無線電話本体1とは、いずれも操作部(引用発明でいう「キーボタン6」)を有しているが、前者の操作部は「テンキー、ファンクションキー、機能選択キー等からなる」ものであるのに対し、後者の操作部(キーボタン6)では、上記のようなキーについての特定はなされていない。
(ヘ)補正発明では、上記通信端末装置への撮影アダプタの装着がなされた後に、“上記通信端末装置の操作部により装着中の上記撮影アダプタに対応するモードを動作させる”ようにしているところ、引用発明では、上記電話本体1のキーボタン6(通信端末装置の操作部)により、撮像部30(撮影アダプタ)による撮影のための制御がなされてはいるが〔引用例の前掲記載(d)〕、この制御が補正発明でいうような“装着中の撮影アダプタに対応するモードを動作させる”ものであるとはいえない。しかしながら、両者は、いずれも上記通信端末装置の操作部により上記撮影アダプタを動作させる点では変わりがないものであることが明らかである。
[3.2.2]以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであると認めることができる。
【一致点】両者はいずれも、
「画像を取り込む撮像素子部,該撮像素子部により取り込まれた画像データを処理する処理部ならびに前記処理部のデータを外部接続するためのインタフェース部を有する着脱式画像撮影アダプタと、
前記着脱式画像撮影アダプタのインタフェース部に接続されるインタフェース部,表示画面,および無線電話機能を有する無線通信端末装置とからなり、
該無線通信端末装置は操作部を備え、
前記無線通信端末装置のインタフェース部に前記着脱式画像撮影アダプタのインタフィース部を装着し、該装着後、前記無線通信端末装置の操作部により装着中の前記着脱式画像撮影アダプタを動作させるように構成したことを特徴とする画像転送無線通信端末システム」
であるといえる点。
【相違点】
(i)上記処理部が、補正発明では「画像データを所定のデータ形式に変換処理する」ものであるのに対し、引用発明ではそのようなものには特定されていない点。
(ii)上記無線通信端末装置が、補正発明では「簡易形」のもので、また、「メモリ部」,「データ通信機能」をも有するものであるのに対し、引用発明では、特に簡易形のものではなく、また、メモリ部,データ通信機能を有するものとはされていない点。
(iii)上記無線通信端末装置の操作部が、補正発明では、「テンキー、ファンクションキー、機能選択キー等からなる」ものとしているのに対し、引用発明では特にそのようなものとはされていない点。
(iv)上記無線通信端末装置の操作部により装着中の着脱式画像撮影アダプタを動作させる上で、補正発明では、「撮影アダプタに対応するモードを動作させる」ようにしているのに対し、引用発明ではそのようにしているとはいえない点。
[3.3]判断
[3.3.1] そこで、以下上記相違点(i)〜(v)について判断する。
[3.3.1.1]相違点(i)について
撮像部内に設ける撮像信号の処理部として、補正発明でいうような、画像データを所定のデータ形式へ変換処理する(例えば所定の圧縮処理を行う)ものは、原査定で引用する特開平6-276420号公報にも示されるように(図24,図39参照)周知のものであり、引用発明においても、その処理部として適宜上記周知のものを採用し得ることは当業者に明らかなことというべきであるから、相違点(i)において補正発明が格別のものであるとすることはできない。
[3.3.1.2]相違点(ii)について
補正発明でいう「簡易形」の無線通信端末装置(明細書の説明ではPHS)は、携帯用無線電話として周知のものにすぎず、また、携帯用無線電話において、適宜メモリ部を設けること、データ通信機能をも付与することは、いずれも常套事項である(データ通信機能の付与については、引用例にも従来技術として示されているところである)から、相違点(ii)に係る補正発明の特定事項が格別のものであるとは認められない。
[3.3.1.3]相違点(iii)について
相違点(iii)に係る補正発明の特定事項は、携帯電話等の操作部における常套の操作キーを例示するものにすぎない〔そのような操作キーは、原査定で引用する特開平9-212281号公報(図1)や特開平9-18946号公報(図2)にも示されている〕から、そのような操作キーの例示において補正発明が格別のものであるとすることはできない。
[3.3.1.4]相違点(iv)について
相違点(iv)に係る補正発明の特定事項は、前記[2]で述べたように、前記通信端末装置への撮影アダプタの装着後、通信端末装置の操作部により、装着中の撮影アダプタを動作させる上で、撮影アダプタの所要動作に対応するモードを上記操作部により設定するようにしたことをいうものと解されるところ、一般にビデオカメラ等の撮像装置における種々の使用態様を考えると、撮像装置としての上記撮影アダプタにおいて、その所要動作に対応して適宜モード設定ができるようにすることは当業者には容易に予測されることというべきであり、また、引用発明のように、通信端末装置に装着した撮影アダプタを通信端末装置の操作部で動作させるようにする上で、上記撮影アダプタのモード設定をも上記操作部により行うようになすことは、一実施態様として適宜なし得たことというべきであるから、上記相違点(iv)に係る特定事項において補正発明が格別のものであるとすることはできない。
なお、本件審判の請求理由では、前記引用発明での撮像部と無線電話本体とは機械的に着脱可能なものではあるが、これらはケーブルによって常時接続されているものであるとし、この点を前提に、引用発明からは、補正発明のように、通信端末装置への撮影アダプタの装着後に、通信端末装置の操作部により撮影アダプタに対応するモードを動作させるようなことは示唆されない旨主張するが、引用発明が、基本的には無線電話本体への撮像部の装着に伴ってこれらをコネクタで電気的に接続するものであり、撮像部を取り外した場合でも、必要に応じてケーブルにより無線電話本体との電気的に接続できるようにしたものであることは、引用例の前記記載(b)から明らかであるから、上記請求理由での主張は、その前提において当を得ないものである。
[3.3.2]以上のように、相違点(i)〜(iv)に係る補正発明の特定事項は、いずれも当業者が容易に想到し得ない格別のものであるとはいえず、また、補正後の請求項1に記載される補正発明の特定事項を総合的に考慮しても格別のものがあるとは認められず、その作用効果も、前記引用例及び周知、常套技術から当業者に予測できる範囲のもので、格別顕著なものがあるとは認められない。
したがって、補正発明は、前記引用例に記載された発明及び周知、常套技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
[3.4]むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての検討
[1]本願発明
平成16年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下これを「本願発明」という)は、平成14年8月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「画像を取り込む撮像素子部,該撮像素子部により取り込まれた画像データを所定のデータ形式に変換処理する処理部ならびに前記処理部のデータを外部接続するためのインタフェース部を有する着脱式画像撮影アダプタと、
前記着脱式画像撮影アダプタのインタフェース部に接続されるインタフェース部,メモリ部,表示画面,データ通信機能および無線電話機能を有する簡易形無線通信端末装置とからなり、
該簡易形無線通信端末装置は、テンキー、ファンクションキー、機能選択キー等からなる操作部を備え、
前記簡易形無線通信端末装置に前記着脱式画像撮影アダプタを装着し、前記着脱式画像撮影アダプタを用いて画像の取り込み、画像データの処理を行うための操作を、前記簡易形無線通信端末装置の操作部で行うように構成したことを特徴とする画像転送無線通信端末システム。」
[2]引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例、およびその記載事項は、前記2.[3.1]に記載したとおりである。
[3]対比・判断
本願発明は、前記2.[1]に記載した補正発明から前記2.[2]で示した第1,第2の補正による限定事項を省いたものであり、前記引用例記載の発明に比し、前記2.[3.2.2]に記載した(i)〜(iii)の点で相違するのみで、他に格別の違いはないものと認められるところ、上記(i)〜(iii)の各点が、いずれも当業者に想到困難な格別のものではないことは、前記2.[3.3.1]で判断したとおりであり、したがって本願発明も、前記引用例および周知、常套技術から当業者が容易に想到し得たものである。
[4]むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明および周知、常套技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-30 
出願番号 特願平9-311261
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 素直  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 藤内 光武
橋本 恵一
発明の名称 画像転送無線通信端末システムならびに該システムに用いる画像撮影アダプタおよび簡易形無線通信端末装置  
代理人 井ノ口 壽  

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