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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1116873 |
審判番号 | 不服2003-20751 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-12-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-24 |
確定日 | 2005-05-12 |
事件の表示 | 平成11年特許願第162553号「TCP/IP通信ネットワークから移動通信ネットワークへの発信方法及び発着信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月15日出願公開、特開2000-349827〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年6月9日の出願であって、平成15年9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年10月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 (1)本願発明について 本願の請求項1に係る発明は、平成15年7月25日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】TCP/IP通信ネットワークから移動通信ネットワークへの発信方法であって、 TCP/IP通信ネットワークから、送信先となる移動通信端末のIPアドレスをヘッダに格納したIPパケットを送出する段階と、 TCP/IP通信ネットワークからのIPパケットを受け取る段階と、 この受け取ったIPパケットのヘッダからIPアドレスを抽出し、かつ、このIPアドレスに対応する加入者電話番号を検索し、この検索された加入者電話番号に基づいた発呼信号及び選択信号を前記移動通信端末側の移動通信ネットワークに送出する段階と、を有し、 前記移動通信端末側の移動通信ネットワークに送出する段階において、前記IPパケットのヘッダから同期信号パターンを検出し、この同期信号パターンにもとづき最初のIPパケットを検出することを特徴とするTCP/IP通信ネットワークからPDCへの発信処理方法。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用例に記載された発明 原審の拒絶の理由に引用された国際公開第97/23977号パンフレット(以下、「引用例」という。)には、次のような記載がある。 イ)「第1実施形態の構成を図1に示す。この図に示すように、企業内通信システムのうち、ワイヤレスPBXシステムは、PBX、CS(無線基地局)およびPS(移動機)により構成される。図1に示す構成においては、10aおよび10bがPBX、20aおよび20bがCS、30aおよび30bがPSである。」(第6頁第2行〜第5行) ロ)「<1-2-3:DTEからM-DTEへ発信する場合> 次に、図5に示す接続シーケンス図を参照し、DTEからM-DTEへ発信する場合の接続手順について説明する。 H-PBXにTAを介して接続されているルータが、DTEからM-DTEへの最初のIPパケットを受け取ると、パケットの転送先がH-PBXだと判断し、TAに対してH-PBXの特番への発信要求を送信する。このとき、通信先であるM-DTEに対応した着IPアドレスを同時に知らせる。TAは、ルータからの発信要求に応じてH-PBXのIP/内線番号変換接続用特番(特番)を指定して接続要求を送信する。このとき着IPアドレスを接続要求に含める。 H-PBXは、TAからの接続要求を特番で受け付け、データ通信用呼であると認識すると、変換テーブルを用いることにより、接続要求内の着IPアドレスをこれに対応した内線番号に変換する。次いで、H-PBXは、ホームメモリHMにアクセスすることにより当該内線番号に対応したPSがいずれのPBXの配下にあるかの所在を確認し、H-PBXの配下にあることを確認すると通信先のPSへ接続要求を送信する。通信先のPSは、H-PBXからの接続要求に対して接続応答を送信する。これにより、PBXを介してPSとTAとの間に通信チャネルが確立される。その後、DTEは、LANに接続されたルータを介してM-DTEと通信を行う。」(第10頁第1行〜第18行) ロ)図1によれば、ルータとDTEで、サブネットワークを構成していることが読み取れる。 以上の記載及び図面、技術常識を総合すれば、引用例には、「サブネットワークからワイヤレスPBXシステムへの発信方法であって、 サブネットワークから、通信先となる移動機の着IPアドレスをパケットに格納したIPパケットを送出する段階と、 サブネットワークからのIPパケットを受け取る段階と、 この受け取ったIPパケットから着IPアドレスを抽出し、かつ、この着IPアドレスに対応する内線番号を検索し、この検索された内線番号に基づいた接続要求を前記移動機側のワイヤレスPBXシステムに送出する段階と、を有するサブネットワークからワイヤレスPBXシステムへの発信処理方法。」の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。 例えば、特開平9-93304号公報(以下、「周知例1」という。)には、次のことが記載されている。 イ)「【0027】まず、図4を用いてコネクション確立方法の処理の概略を示す。図4において、3500、3501、3502、3503、3550、3551、3552は、TCPプロトコルの状態を示し、3570、3571、3572はクライアント3101とサーバ3000との間でコネクションを確立する3ウェイ・ハンドシェークを示す。オリジナルの3ウェイ・ハンドシェークに関しては、Douglas E. Comer他著の"Internetworking with TCP/IP, Volume I, II" (Prentice Hall)に詳しく記されている。 【0028】CLOSED状態(3500)のサーバ3000は、図16に示したプログラム中のlisten()コールが実行されると(9007)LISTEN状態になり、クライアントからのコネクション開設要求を待つ(3501)。CLOSED状態3550のクライアント3101は、図16に示したプログラム中のconnect()コールが実行されると(9058)、サーバ3000のネットワーク・インタフェースのひとつであるネットワーク・アドレスnet1.1とのデータ通信を制御するために必要な制御ブロックTCB(Transmission Control Block)を作成する(3560)。次に、net1.1に対してコネクション開設を要求するために(3561)、SYN(同期)フラグを立てたTCPパケットをサーバ3000へ送る。このとき、クライアント3101は、コネクションのQOS(サービス品質)をSYNフラグ付TCPパケットのパラメタとしてサーバ3000へ送付する(3570)。QOSは、図16の9052に示したように、サービスクラス、ピークバンド幅(Mbps)、平均バンド幅(Mbps)の3項目で構成される。クライアント3101は、SYNフラグ付TCPパケットを送ると、SYN SENT状態になる(3551)。 【0029】LISTEN状態のサーバ3000は、QOS(サービス品質)付きのTCPパケットを受け取ると、クライアント3101のQOSを満たすネットワーク・インタフェースを探す。ネットワーク・インタフェースを選択する手順の実施形態例は後述する。いま、図3におけるネットワーク・インタフェース3003、ネットワーク・アドレスnet1.3のインタフェースを選択した場合について述べる(3510)。サーバ3000は、ネットワーク・アドレスnet1.3に対応するTCB(Transmission Control Block)を作成する(3511)。TCBには、クライアント3101のネットワーク・アドレス、サーバ3000の選択されたネットワーク・インタフェースのネットワーク・アドレスnet1.3、通信プロトコル名TCPが保持されている。サーバ3000は、TCBを作成した後、クライアント3101に対して、クライアントからのSYNに対するACK(応答)フラグの付いたTCPパケットと、SYNフラグの付いたTCPパケットをクライアント3101に送り(3571)、このTCBをSYN RECVD状態にする(3502)。SYNフラグには、パラメタとしてネットワーク・アドレスnet1.3を添付する。クライアント3101は、パラメタとしてネットワーク・アドレスnet1.3付随したSYNフラグ付きTCPパケットを受け取ると、net1.1用に作成したTCBを削除し(3562)、net1.3に対応したTCBを作成する(3563)。次に、クライアント3101はnet11.3に対して、ACKフラグ付TCPパケットを送り(3572)、ESTABLISHED状態となる(3552)。サーバ3000もACKを受け取るとESTABLISHED状態となり(3503)、以降、クライアントとサーバ間でSEND/RECEIVEによる通信を行うことができる(3573)。」(第6頁第10欄第36行〜第7頁第11欄第49行) ロ)図4から、クライアントサーバ間でコネクションの開設を要求する時、SYNを最初に送信することが読み取れる。 上記周知例1のイ)の記載及び周知例1の図4についてのロ)の記載によれば、「クライアントからサーバへコネクションを開設するとき、SYN(同期)フラグを立てたTCPパケットを最初に送信し、サーバで、上記TCPパケットを受信して検出して行う」ことが、周知である。 (3)対比・判断 本願発明と引用例に記載された発明を対比する。 a.引用例に記載された「サブネットワーク」と本願発明の「TCP/IP通信ネットワーク」は、「通信ネットワーク」の点で、一致する。 b.引用例に記載された「ワイヤレスPBXシステム」は、本願発明の「移動通信ネットワーク」に相当する。 c.引用例に記載された発明の「通信先」、「移動機」、「着IPアドレス」は、本願発明の「送信先」、「移動通信端末」、「IPアドレス」に相当する。 d.引用例に記載された発明では、「着IPアドレスをパケットに格納」しているが、IPプロトコルによれば、着IPアドレスをヘッダにいれることは、自明であるから、引用例に記載された発明の該構成は、着IPアドレスをパケットのヘッダに格納することを意味しており、本願発明の「IPアドレスをヘッダに格納」に相当する。 e.引用例に記載された発明の「内線番号」と本願発明の「加入者電話番号」は、「電話番号」の点で、一致する。 f.引用例に記載された発明の「接続要求」は、相手と接続するために、発呼信号と相手を選択するための選択信号を有しているから、本願発明の「発呼信号及び選択信号」に相当する。 g.引用例に記載された発明の「ワイヤレスPBXシステム」と本願発明の「PDC」は、「移動通信ネットワーク」の点で、一致する。 してみれば、本願発明と引用例に記載された発明は、 「通信ネットワークから移動通信ネットワークへの発信方法であって、 通信ネットワークから、送信先となる移動通信端末のIPアドレスをヘッダに格納したIPパケットを送出する段階と、 通信ネットワークからのIPパケットを受け取る段階と、 この受け取ったIPパケットのヘッダからIPアドレスを抽出し、かつ、このIPアドレスに対応する電話番号を検索し、この検索された電話番号に基づいた発呼信号及び選択信号を前記移動通信端末側の移動通信ネットワークに送出する段階とを有する通信ネットワークから移動通信ネットワークへの発信処理方法。」の点で、一致し、以下の点で、相違する。 [相違点1] 通信ネットワークとして、本願発明は、TCP/IP通信ネットワークを使用しているのに対して、引用例に記載された発明では、サブネットワークである点。 [相違点2] 相手方の電話番号として、本願発明は、加入者電話番号であるのに対して、引用例に記載された発明では、内線番号である点。 [相違点3] 本願発明では、移動通信端末側の移動通信ネットワークに送出する段階において、前記IPパケットのヘッダから同期信号パターンを検出し、この同期信号パターンにもとづき最初のパケットを検出しているのに対して、引用例では、それについての記載がない点。 [相違点4] 本願発明では、発信先の移動通信ネットワークとして、PDCとしているのに対して、引用例に記載された発明では、ワイヤレスPBXシステムである点。 上記相違点について、検討する。 [相違点1について] 引用例では、IPアドレスを使用して通信しており、IPアドレスを用いたネットワークとして、TCP/IP通信ネットワークは、周知であるから、引用例に記載された発明において、サブネットワークを、TCP/IP通信ネットワークにすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。 [相違点2、4について] 引用例では、ワイヤレスPBXシステムについての発明であるが、第2世代の携帯通信で知られているようなPDC移動通信ネットワークに拡張して適用できるから、引用例に記載された発明において、移動通信ネットワークをPDCとすることに、格別な創意工夫は要しない。その際、内線番号を、加入者電話番号にすることは、自明なことである。 [相違点3について] 「クライアントからサーバへコネクションを開設するとき、SYN(同期)フラグを立てたTCPパケットを最初に送信し、サーバで、上記TCPパケットを受信して検出して行う」ことは、周知例1に示されるように周知であり、コネクションの開設の検出を、周知例1に示すように、サーバで行うか、ネットワークに送出する段階で行うかは、当業者が適宜選択すべきことに過ぎないから、引用例に記載された発明において、前記移動通信端末側の移動通信ネットワークに送出する段階において、前記IPパケットのヘッダから同期信号パターンを検出し、この同期信号パターンにもとづき最初のIPパケットを検出して行うようにすることに、格別な技術的困難性は認められない。 従って、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-08 |
結審通知日 | 2005-03-15 |
審決日 | 2005-03-28 |
出願番号 | 特願平11-162553 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 真之 |
特許庁審判長 |
武井 袈裟彦 |
特許庁審判官 |
望月 章俊 衣鳩 文彦 |
発明の名称 | TCP/IP通信ネットワークから移動通信ネットワークへの発信方法及び発着信システム |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 工藤 雅司 |