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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07F
管理番号 1116979
審判番号 不服2003-11378  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2005-05-12 
事件の表示 平成 8年特許願第210362号「プログラム変更機能付自動販売機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月24日出願公開、特開平10- 55474〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年8月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年10月4日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「制御プログラムを記憶する記憶手段と、変更プログラムと、変更プログラムを記憶手段に複写する複写プログラムとを記憶する外部記憶媒体と、通常運転時には、記憶手段に記憶された制御プログラムを実行するとともに、外部記憶媒体が接続されたときは、外部記憶媒体に記憶された複写プログラムを実行し変更プログラムを外部記憶媒体から記憶手段に複写する制御部とを備えたことを特徴とするプログラム変更機能付自動販売機。」

2引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-89325号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
イ.「【請求項1】電気的に書換え可能なROMに書込まれたプログラムを実行するCPUによって制御される自動販売機であって、前記ROM内のプログラムをこの自動販売機の外部へ出力する手段と、この自動販売機の外部から入力したプログラムへ前記ROMの内容を書換える手段とを備えたことを特徴とするプログラム変更機能付自動販売機。【請求項2】請求項1に記載の自動販売機において、前記ROM内のプログラムの入出力はこのROMが接続されるバスを介して直接行われるものであることを特徴とするプログラム変更機能付自動販売機。【請求項3】請求項1に記載の自動販売機において、前記ROM内のプログラムの入出力は前記CPUに接続されたデータ伝送路を介して行われるものであることを特徴とするプログラム変更機能付自動販売機。【請求項4】請求項1に記載の自動販売機において、この自動販売機の外部との間で入出力されるプログラムは、この自動販売機にその外部から接続される移動可能なプログラム送受手段に格納されるものであることを特徴とするプログラム変更機能付自動販売機。」(特許請求の範囲)
ロ.「以下図1ないし図5を用いて本発明の実施例を説明する。図1は本発明の原理的な構成を示すブロック図である。同図において1は自販機制御部、11はこの自販機制御部1を構成するCPU、12は同じくプログラム記憶部、13は同じくデータ記憶部、14は同じく入出力インタフェース(i/oと略記する)、15はこの制御部1の内部バス、16はCPU11がデータ伝送を行う伝送路で、この例ではシリアル伝送路である。ここでプログラム記憶部は電気的に書換えが可能なROMからなる。即ち従来、ROMは回路への組込状態では書換えられないものとして考えられていたが、現在電気的書込消去可能なROM(例えばE2 ROM、フラッシュメモリ等)があり、これをプログラム記憶部12に用いることによりプログラムの書換えが可能となる。次に2はこの自販機制御部のi/o14を介してこの制御部1と交信し、投入金額の判別,釣銭の返却等を行う金銭判別機、3は同じくi/o14を介して制御部1に商品選択釦やキーボード等の押釦入力を伝える押釦入力判別手段、4は同じくi/o14を介するCPU11の指令により商品を搬出する商品搬出手段である。次に5は自販機制御部1とその内部バス15またはシリアル伝送路16を介してプログラムを送受するプログラム送受制御部、6はプログラム送受制御部5が送受するプログラムを記憶するプログラム記憶部である。そしてプログラム送受制御部5とプログラム記憶部6とでプログラム送受部01を構成している。また7はプログラム変更装置、8はプログラム表示装置である。自販機制御部1ではCPU11がプログラム記憶部12からプログラムを読出しi/o14を介して自販機を制御する。またCPU11は必要に応じてデータ記憶部13にデータを読み書きしてプログラムを実行する。プログラム送受制御部5は直接、内部バス15を介して自販機制御部1のプログラム記憶12のプログラムを読み書きしたり、あるいはCPU11とシリアル伝送路16を介して、この読み書きの動作を行う。プログラム送受制御部5によって読み出されたプログラムはもう1つのプログラム記憶部6に移されてプログラム表示装置8に表示され、さらにプログラム変更装置7でプログラムが変更され、再度プログラム記憶部6に入れられ、プログラム送受制御部5から自販機制御部1のプログラム記憶部12に格納される。」(段落【0009】〜【0011】)
ハ.「図2は図1の具体的な構成の第1の実施例を示すブロック図である。図2において、12Aは自販機制御部1内のプログラム記憶部12としての電気的な書換が可能なROM、13Aは同じくデータ記憶部13としてのRAMである。なお自販機制御部1内のCPU11はここではCPU#1ともいう。また01Aはプログラム送受部としてのiCカード、そして5AはこのiCカード01Aを構成するプログラム送受制御部5としてのCPU#2、6Aは同じくプログラム記憶部6としてのメモリカードである。また7Aはプログラム変更装置7およびプログラム表示装置8を兼ねるパソコンである。またCN1は自販機制御部1の内部バスとiCカード01AのCPU#2(5A)とを接続するコネクタ、CN2はiCカード01Aのメモリカード6Aとパソコン7Aを接続するコネクタである。ここでCPU#1(11)は主に自販機を制御する。この自販機のプログラムを変更したい場合、iCカード01Aを客先の自販機のコネクタCN1に接続すると、CPU#2(5A)は内部バス15を介しCPU#1にリクエストを出してDMA(Direct Memory Access)方式で直接、自販機制御部1の電気的書込消去可能なROM12Aにメモリカード6Aにあるプログラムを入れたり、ROM12Aのプログラムを読出してメモリカード6Aに入れたりする。メモリカード6AのプログラムはこのiCカード01Aを事務所等に持帰って、コネクタCN2を介しパソコン7Aと結合することにより、このパソコン7Aで変更,追加,削除され、再度メモリカード6Aに入れられる。」(段落【0012】〜【0013】)
ニ.「図3は図1の具体的構成の第2の実施例を示す。図3においては図2のCPU#1(11)とCPU#2(5A)との接続を変えたもので、CN1AはCPU#1(11)のシリアル伝送路16とCPU#2(5A)を結合するコネクタである。この場合CPU#2はCPU#1,シリアル伝送路16を経由してプログラムをやりとりする。」(段落【0014】)
ホ.「【発明の効果】本発明によれば、電気的に書換え可能なROM12Aに書込まれたプログラムを実行するCPU11によって制御される自動販売機が、前記ROM12A内のプログラムを内部バス15またはシリアル伝送路16を介しこの自動販売機の外部へ出力する手段と、この自動販売機の外部から前記内部バス15またはシリアル伝送路16を介し入力したプログラムへ前記ROM12Aの内容を書換える手段とを備えるようにしたので、自販機を管理する側で自販機のプログラムを容易に変更できるため、仕様変更やバージョンアップがすぐにできる。また自販機を作る側も顧客が容易に仕様変更できるので、予め不必要なプログラムを自販機に入れずに済み、プログラムの保守,管理が楽になる。
」(段落【0017】)
以上の記載によれば、引用例1には、
プログラム記憶部12と、メモリカード6Aにあるプログラムをプログラム記憶部12に書き換えるICカード01Aと、主に自販機を制御する自販機内部のCPU11を備えるとともに、ICカード01Aを自販機制御部1に接続すると、ICカード01Aのプログラム送受制御部5Aが、メモリカード6Aにあるプログラムを、プログラム記憶部12に書き込むプログラム変更機能付自動販売機(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。
同じく原査定の理由に引用された特開平1-93886号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
・「1)自動販売機と、この自動販売機に設けられたコネクタであって、該自動販売機内の少なくともアドレスバスおよびデータバスへの接続を行うコネクタに差込まれるカード状のメモリ(以下メモリカードという)と、からなるデータ設定装置であって、前記自動販売機は自身を制御するCPUと、データを一時記憶するRAMとを備え、前記メモリカードは前記の制御に必要な設定データを記憶し、かつこの設定データが前記コネクタへのアドレスバスおよびデータバスを介し前記CPUから読込まれるようにしてなることを特徴とする自動販売機のデータ設定装置。2)特許請求の範囲第1項に記憶(「記載」の誤記。)の装置において、前記CPUは前記制御において必要となるつど前記メモリカードをアクセスするものであることを特徴とするデータ設定装置。3)特許請求の範囲第1項に記載の装置において、前記CPUは予め前記メモリカードから読込んだ前記設定データを前記RAMに転送したうえ、このRAMをアクセスして前記の制御を行うものであり、前記メモリカードは前記の転送ののち前記コネクタから抜取られるものであることを特徴とする自動販売機のデータ設定装置。」(特許請求の範囲)
・「本発明の目的は設定データを記憶させたROMまたはRAMを含むメモリカードのアドレス端子とデータ端子をコネクタを介して自販機のそれぞれアドレスバスとデータバスに接続し、自販機内のCPUがこのメモリカードをアクセスしつつ、または該CPUがこのメモリカードからその設定データを自販機内のRAMに一旦転送したうえ、このRAMをアクセスしつつ制御動作を行うようにすることにより上述の問題点を解決し、安価で、しかも操作性が良く管理もしやすいデータ設定装置を提供することにある。」(第2頁左下欄第5〜15行)
・「次に第1図の動作を述べる。この動作の第1の実施例は、CPU11がメモリカード4を使用しながら制御動作を行う例である。即ちCPU11はメモリカード4がコネクタ14に差込まれたことを確認した後、商品販売時にメモリカード4内の設定データ(商品価格、原料量、メカコード等)をアクセスして当該の搬出機構を動作させる。」(第3頁右上欄第14〜20行)
・「また第1図の動作の第2の実施例は、CPU11の制御動作の開始前にのみメモリカード4を用い、制御動作中はメモリカード4を用いない例である。即ち予めCPU11はこのメモリカード4がコネクタ14に差込まれたことを確認した后、メモリカード4内の設定データをRAM13へ転送する。この時点でメモリカード4は不要となるため、コネクタ14よりカード4を抜取る。この後CPU11はROM12,RAM13のデータを用いて販売制御を行う。」(第3頁左下欄第11〜20行)
以上の記載からみて、引用例2には、メモリカードが自販機制御部のコネクタに差込まれたとき、メモリカードの設定データを自販機制御部のRAMに転送し、自販機制御部のCPUは、ROM、RAMのデータを用いて販売制御を行う自動販売機のデータ設定装置(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「プログラム記憶部12」は本願発明の「制御プログラムを記憶する記憶手段」に、以下同様に、「メモリカード6Aにあるプログラム」は「変更プログラム」に、「書き換える」は「複写する」に、「ICカード01A」は「外部記憶媒体」に、「主に自販機を制御する」は「通常運転時には記憶手段に記憶された制御プログラムを実行する」に、「自販機制御部内のCPU11」は「制御部」に、それぞれ相当している。
したがって、両者は、
制御プログラムを記憶する記憶手段と、変更プログラムを記憶する外部記憶媒体と、通常運転時には、記憶手段に記憶された制御プログラムを実行する制御部を備えるとともに、外部記憶媒体が接続されたときは、外部記憶媒体に記憶された変更プログラムを外部記憶媒体から記憶手段に複写することを特徴とするプログラム変更機能付自動販売機
の点で一致し、次の点で相違している。
[相違点1]
本願発明は、外部記憶媒体に複写プログラムを記憶するとともに、外部記憶媒体を制御部に接続されたときは、制御部が該複写プログラムを実行するようにしているのに対し、引用例1発明では、複写プログラムがどこに設けられているか明瞭でない点。
[相違点2]
本願発明は、外部記憶媒体が接続されたときは、制御部が、変更プログラムを外部記憶媒体から記憶手段に複写するのに対し、引用例1発明は、外部記憶媒体のプログラム送受制御部が、変更プログラムを外部記憶媒体から記憶手段に複写する点。
そこで、上記相違点について検討する。
まず、[相違点1]について検討する。
複写プログラムは、「プログラムの複写手順」(明細書段落【0003】)と解されるところ、引用例1発明のものも、外部記憶媒体から制御プログラムを記憶手段に複写するに際し、自販機内部のCPUを関与させている(上記「2.ハ、ニ」参照。)。
このように、プログラムの複写手順をどの部位で格納するか、すなわち複写プログラムを本体側に格納するか外部記憶媒体に格納するかは、当業者が適宜設定し得た設計的事項である。
次に[相違点2]について検討する。
引用例2には、外部記憶媒体(「メモリカード」として記載されている。)が接続された(「差込まれた」)とき、設定データを外部記憶媒体から制御部(「自販機制御部」)に複写(「転送」)する技術が記載されている。 また、外部記憶媒体に記憶されたプログラムを記憶手段に複写するようにした点は、本願出願前、周知の技術である(特開平3-282603号公報、特開平6-96513号公報参照。)
そうすると、引用例1発明において、外部記憶媒体のプログラム送受制御部が、変更プログラムを外部記憶媒体から記憶手段に複写するものに代えて、外部記憶媒体が接続されたときは、制御部が、変更プログラムを外部記憶媒体から記憶手段に複写するようにした点は、引用例2及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到しえたことである。
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する作用効果は、引用例1、引用例2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-28 
出願番号 特願平8-210362
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 氏原 康宏山崎 勝司  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 岡本 昌直
今井 義男
発明の名称 プログラム変更機能付自動販売機  
代理人 篠部 正治  

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