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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1117144
審判番号 不服2002-21252  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-31 
確定日 2005-05-18 
事件の表示 平成11年特許願第219858号「被ログイン装置、ログイン装置、及びそれらを備える装置間通信システム、ログイン制御方法、並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月16日出願公開、特開2001- 45031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年8月3日の出願であって、その請求項10に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項10に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「或る特定装置に所定の通信路を介してログインし得るログイン装置であって、
前記特定装置に対してログイン要求を出した後に、前記特定装置から、ログイン不成立の応答を受けると共に、再要求タイミングの指示を受けた場合に、指示された該再要求タイミングで前記特定装置に対して再度ログイン要求を出すログイン要求手段
を備えることを特徴とするログイン装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-198622号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平8-65320号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

[引用例1]
A.「【0002】
【従来の技術】従来の通信回線に接続された端末装置(端末)とサーバー装置では、一般的に物理的に設置された端末の数よりもサーバー装置と一度に通信接続される端末の数は少なく限られて設定されている。例えば、一つのサーバー装置に通信接続可能な端末が100台であったとしても、同時にそのサーバー装置とログインできるのは40台に限定されるようになっている。これは、一般的には端末の平均したサーバー装置とのログイン時間や1ヶ月の総ログイン時間等から同時に使用される端末の数量を仮定して、その数量に有る程度の余裕を持たせて通信回線の容量やサーバー装置側の計算容量あるいはログイン容量を決定しているためである。また、100台の端末に対してそれらの100台の端末がログイン可能にサーバー装置側を対応させようとすると、その為のサーバー装置側の設備投資金額や維持費用は40台端末をログイン可能にする場合に比べて遥かに高額になり、時間当たりの各端末の使用率は低下するのでコストパーフォーマンスの悪いシステムになってしまうので、一般的には実際に通信回線に接続されている端末数よりもサーバー装置に同時にログイン可能な端末数は低く設定される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のようにサーバー装置側の能力は平均値や集計したデータを基に決定されているが、実際に端末を使用してサーバー装置にログインする場合には、各端末の使用頻度は各ユーザーの都合により個別で独自に変わり、各端末の使用頻度は管理されているわけではないので、往々にして端末の使用が集中する時間帯が発生する。例えば、朝の出社直後の自分宛の電子メールの確認、決算日や締め日等の入力の集中、問題発生時のデータ出力等の場合には、端末側のサーバー装置とのログイン希望が、サーバー装置の能力を超えてログイン要求が集中することがあり得る。このような場合には、後からサーバー装置にログインしようと試みた端末の利用者は緊急にサーバー装置にログインしたい場合であってもサーバー装置からログインを拒否されてしまい、ログイン可能になるのを待つしか方法はなかった。」(第3頁左欄第8〜46行)

上記Aの記載において、端末側のサーバー装置とのログイン希望がサーバー装置の能力を超えてログイン要求が集中した場合には、「後からサーバー装置にログインしようと試みた端末の利用者は緊急にサーバー装置にログインしたい場合であってもサーバー装置からログインを拒否されてしまい、ログイン可能になるのを待つしか方法はなかった。」とあり、そのような場合には、当然、ログイン可能になるのを待って、再度ログイン要求を出すことになるものと解される。
よって、上記Aの記載を参照すると、引用例1には、従来技術として、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「サーバー装置に通信回線を介してログインし得る端末装置であって、
前記サーバー装置に対してログイン要求を出した後に、前記サーバー装置からログインを拒否された場合に、前記サーバー装置に対して再度ログイン要求を出すログイン要求手段
を備える端末装置。」

[引用例2]
B.「【産業上の利用分野】本発明は、データ伝送システムに関し、特に同一の通信回線を複数の通信装置で共有し、信号送信時に通信回線上で他装置の信号と衝突した場合、一定の時間をおいて信号の再送を行わせる再送制御方法に関する。」(第2頁左欄第23〜27行)
C.「【0008】図1は、本発明の一実施例におけるデータ伝送システムの通信装置のブロック図である。図1を参照すると、マスタ装置0は、データを送信する送信部T0と、データを受信する受信部R0と、送信部T0および受信部R0を制御する通信制御部CC0と、通信制御部CC0の上位レイヤ処理を行う制御部C0とから構成される。スレーブ装置1,2…nはすべて同様の構成であり、構成要素はマスタ装置0と同様である。マスタ装置0の送信部T0は、スレーブ装置1,2…nの受信部R1,2…nとまた、受信部R0は送信部T1,2…nと並列接続されている。
【0009】図2は、マスタ装置0の送信制御部CC0の動作を表すフローチャートである。図2において、xは再送の優先順位の最も高いスレーブ装置番号を格納する変数である。
【0010】図3は、スレーブ装置1,2…nの送信制御部CC1,2…nの動作を表すフローチャートである。図3において、aは自スレーブ装置の装置番号で、スレーブ装置1ならばa=1、スレーブ装置2ならばa=2である。Taは各スレーブ装置毎に固有な再送間隔タイマ値を格納する変数で、スレーブ装置1ならば、a=1なのでT1と呼ぶ。yは、再送の優先順位が1つ離れた場合の時間差を表す係数で、y=1秒ならば、再送の優先順位が1離れていると再送の間隔が1秒ずれることを意味する。
【0011】図4は、マスタ装置0とスレーブ装置1,2…nとの間のデータ伝送のシーケンスの一例を示すシーケス図である。
【0012】次に、図1,図2,図3および図4を参照して、再送制御について説明する。まず、マスタ装置0の通信制御部CC0は、再送の優先順位の最も高いスレーブ装置番号を格納する変数xを1に初期化する(図2、ステップS201)。次に再送優先順位通知(x)信号を全スレーブ装置1,2…nに同報送信する(図2、ステップS202および図4、ステップS401)。この再送優先順位通知(x)信号は、再送の優先順位が最も高いスレーブ装置の番号を通知するもので、この場合、x=1なので、スレーブ装置1が最も優先順位が高く、スレーブ装置2…nの順に優先順位が低くなることを意味する。また、x=2の場合は、優先順位が高い順に2,3…n,1、x=3の場合は、優先順位が高い順に3,4…n,1,2、と優先順位が循環する。再送優先順位通知(x)信号を受信したスレーブ装置1,2…nは、図3のステップS301がY(Yes)となり、次のステップS302,S303,S304で再送間隔を計算する。スレーブ装置1の場合、a=1,x=1であるので、ステップS302はN(No)となり、T1=1yとなる(ステップS304)。同様に、T2=2y…Tn=nyとなる。次に、通信制御部CC0は再送優先順位通知信号を再送するためのタイマT0を起動し(ステップS203)、タイマT0がタイムアウトすると(ステップS204のY)、ステップS202にもどり、再送優先順位通知信号を再送する(ステップS402)。
【0013】続いて、スレーブ装置1および2が同時にデータの送信を行った場合の通信制御部CC1およびCC2の処理について説明する。スレーブ装置1で、制御部C1が、データの送信を行う場合、通信制御部CC1にデータの送信を要求する。すると、通信制御部CC1では、ステップS301がN,ステップS305がとなり、データを送信する(ステップS306、ステップS403)。スレーブ装置2も同様にデータを送信する(ステップS404)。ここで、2台の装置が1つの共有された通信回線に同時にデータを送信したので、通信回線上で2つの信号が相互に干渉し、マスタ装置0では正常に受信することができない。従って、スレーブ装置1および2は、送信したデータに対するマスタ装置0からの期待した応答信号を受信しないので、送信データが他のスレーブ装置と衝突したと判断し(ステップS308のY)、スレーブ装置1はT1=1y秒待った後(ステップS309)、データを再送する(ステップS306、ステップS405)。スレーブ装置2はT2=2y秒待った後(ステップS309)、データを再送する(ステップS306、ステップS407)。再送時には、これら2つの信号の送信タイミングがずれているため、マスタ装置0ではその信号が正常に受信され(ステップS205のY)、その信号に応じた処理を行い、下り応答信号を送する(ステップS206、ステップS406、ステップS408)。従ってスレーブ装置1および2では衝突は検出されない(ステップS308のN)。また、スレーブ装置1,2…nの通信制御部CC1,2…nは、前述した再送優先順位通知信号受信および制御部1,2…nからの上りデータ送信要求以外の通信処理も行っているが、本発明とは無関係なため省略する(ステップS307)。
【0014】次に、マスタ装置0では、変数xを+1してx=2にし(ステップS207)、再送優先順位通知(x)信号を送信し(ステップS202、ステップS409)、全スレーブ装置に対し、再送優先順位が2,3…n,1の順になったことを通知する。再送優先順位通知(x)信号を受信したスレーブ装置1,2…nは、ステップS401の場合と同様に各装置の再送間隔を計算し、T1=ny,T2=1y,…Tn=(n-1)yを求める。
【0015】また、スレーブ装置1および2が同時にデータを送信し、衝突した場合は(ステップS410、ステップS411)、前述と同様の処理で、スレーブ装置2がT2=1y秒後に再送し(ステップS412→ステップS413)、スレーブ装置1がT1=ny秒後に再送する(ステップS414→ステップS415)。
【0016】以上説明したように、各スレーブ装置の再送間隔を周期的に変更することにより、再送までの時間が装置によって偏ることなく、平均化することができる。」(第2頁右欄第15行〜第3頁右欄第19行、及び図1〜4参照)
D.「【0017】なお、本実施例では、マスタ装置0の通信制御部CC0は、上りデータの受信を契機として再送優先順位を変更したが、一定時間間隔で再送優先順位を変更するなど、別の事象を契機としてもよい。」(第3頁右欄第20〜23行)

上記B〜Dの記載、及び図1〜4を参照すると、引用例2には、次の事項が記載されているものと認められる。
「スレーブ装置がマスタ装置に対してデータを送信しても、マスタ装置側で正常な受信ができず、マスタ装置側から期待した応答信号が返されて来ない場合に、スレーブ装置は、マスタ装置側から送られた再送優先順位通知信号に基づく送信タイミングでデータの再送信を行うこと。」

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、まず、引用例1記載の発明における「サーバー装置」、「通信回線」、「端末装置」は、それぞれ、本願発明における「或る特定装置」、「所定の通信路」、「ログイン装置」に対応する構成である。
そして、引用例1記載の発明において、「サーバー装置からログインを拒否され」ることは、本願発明において、「特定装置から、ログイン不成立の応答を受ける」ことに対応する事項である。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、
「或る特定装置に所定の通信路を介してログインし得るログイン装置であって、
前記特定装置に対してログイン要求を出した後に、前記特定装置から、ログイン不成立の応答を受けた場合に、前記特定装置に対して再度ログイン要求を出すログイン要求手段
を備えるログイン装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:「ログイン要求手段」が、本願発明においては、「特定装置から、ログイン不成立の応答を受けると共に、再要求タイミングの指示を受けた場合に、指示された該再要求タイミングで前記特定装置に対して再度ログイン要求を出す」のに対し、引用例1記載の発明においては、「サーバー装置からログイン拒否された場合に、前記サーバー装置に対して再度ログイン要求を出す」ものの、再度のログイン要求を「再要求タイミングの指示を受けた場合に、指示された該再要求タイミングで」行うとはされていない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、上記のように、「スレーブ装置がマスタ装置に対してデータを送信しても、マスタ装置側で正常な受信ができず、マスタ装置側から期待した応答信号が返されて来ない場合に、スレーブ装置は、マスタ装置側から送られた再送優先順位通知信号に基づく送信タイミングでデータの再送信を行うこと」が記載されている。
ここで、引用例2において、「マスタ装置側から期待した応答信号が返されて来ない」ことは、マスタ装置側から通信が不成立である旨の応答がなされることに実質的に相当する事項であり、引用例2において、「スレーブ装置がマスタ装置に対してデータを送信しても、マスタ装置側で正常な受信ができず、マスタ装置側から期待した応答信号が返されて来ない」ということと、引用例1記載の発明において、「端末装置がサーバー装置に対してログイン要求を出した後にサーバー装置からログインを拒否される」こととは、共に、通信装置において、送信側から受信側に対して信号を送信しても、受信側で正常な受信がなされずに、受信側から通信が不成立である旨の応答がなされるという点において共通する事項であるということができる。
そして、引用例2の上記Dには、一定時間間隔で再送優先順位を変更してもよい旨の記載がなされており、引用例2の図4のステップS403とステップS404でスレーブ装置1および2からの送信データが衝突して、スレーブ装置1および2が送信したデータに対するマスタ装置0からの期待した応答信号をスレーブ装置1および2が受信しない場合、その時点が、マスタ装置0からスレーブ装置側に再送優先順位を変更する通知が送られる時点と重なるような事態が生じることもあるわけであり、そのときのスレーブ装置1および2は、マスタ装置0から期待した応答信号が受けられない時点、すなわち、マスタ装置側から通信が不成立である旨の応答が実質的になされる時点と同じ時点で、再送優先順位を変更する通知がなされることになると解され、そのような通知がなされた場合には、当然、スレーブ装置1および2は、通知された再送優先順位に対応するタイミングでデータを再送することになるものと解される。
してみると、これらの引用例2の記載を参酌すれば、引用例1記載の発明において、端末装置を、「特定装置から、ログイン不成立の応答を受けると共に、再要求タイミングの指示を受けた場合に、指示された該再要求タイミングで前記特定装置に対して再度ログイン要求を出す」ような構成とすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-09 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-28 
出願番号 特願平11-219858
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 郁美  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 長島 孝志
野元 久道
発明の名称 被ログイン装置、ログイン装置、及びそれらを備える装置間通信システム、ログイン制御方法、並びに記録媒体  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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