• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1117176
審判番号 不服2003-13103  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-10 
確定日 2005-05-19 
事件の表示 平成8年特許願第123563号「オキサゾリドン化合物の製造法およびそれを用いるスレオ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル) セリンの製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年11月25日出願公開、特開平9-301961〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は平成8年5月17日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年5月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、下記のとおりのものと認める。

「一般式(1)

(式中、R1 、R2 は、それぞれ水酸基の保護基を示し、R3 は、カルボン酸の保護基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0〜3の整数を示し、*印は不斉炭素であることを示す。)で示されるラセミまたは光学活性アミノ酸類と、N-ブロモスクシンイミドまたは臭素単体とを反応させることを特徴とする、一般式(2)


(式中、R1 、R2 、R3 、X、nおよび*印は前記と同じ意味を有する。)で示されるラセミまたは光学活性オキサゾリドン類の製造法。」(以下、本願発明という。)

2.これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物には以下の事項が記載されている。
(1)特開平1-228946号公報(以下、引用例1という。)
1.1「下記の一般式(II):


(式中、R1は低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、アシルオキシメチル基または水素原子であり;R2は水素原子または低級アルキル基であり;R3は低級アルキル基であり;Xは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはハロゲン原子であり;nは1または2である。)で表されるフェネチルアミン誘導体に硫酸銅、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)もしくは酢酸銅及び過硫酸カリウムもしくは四酢酸鉛を作用させて一般式(III):

(式中、R1、R2 、R3、X及びnは前記の定義と同じである)で表される環状カーバメートとし、続いて、この式(III)の化合物をアルカリ加水分解することにより一般式(I):(式省略)
(式中、R1、R2、R3、X及びnは前記の定義と同じである)で表されるβ位にヒドロキシ基を有するフェネチルアミン誘導体を合成する方法」(請求項1)
1.2


で示される反応例(実施例1の(1))
1.3


で示される反応例(実施例3の(1))
1.4


で示される反応例(実施例4の(1))

(2)特開平5-239271号公報(以下、引用例2という。)
「かかるラジカル発生剤の例としてはN-ブロモコハク酸イミド等のハロゲン化イミド類;過酸化ベンゾイル、ジクミールパーオキサイド、ジーt-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーアセテート等の有機過酸化物類;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のジアゾ化合物類等が挙げられる。」(段落【0042】)

(3)特開平6-207054号公報(以下、引用例3という。)
「フリーラジカルを生じることができる化合物も、一般に、本発明の方法で用いられる。
かかる化合物の例は、ハロゲン化イミド、例えば、N-ブロモスクシンイミド、有機ペルオキシド、例えば、ベンゾイル及びジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、過硫酸塩、例えば、過硫酸カリウム又はアンモニウム及びジアゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等である。」
(段落【0017】)

3.対比判断
本願発明の式(1)及び式(2)の化合物において、水酸基の保護基であるR1、R2 及びカルボン酸の保護基であるR3としてはメチル基等のアルキル基などを用いるものである(段落【0007】)から、本願発明における式(1)及び(2)でn=0の化合物は、引用例1の式(II)及び式(III)において、R3がメチル等のアルキル基、Xがメトキシ基等のアルコキシ基でベンゼン環の3位にありn=1、R2が水素を表し、R1がカルボキシアルキル基であるものに相当する。
また、式(II)及び(III)の式において、式(1)及び(2)で*印のある炭素原子に対応する炭素原子が不斉炭素であるから、式(II)及び(III)の化合物がラセミ又は光学活性であることは明らかである。
そして、引用例1の実施例3には、式(II)においてR3がメチル、Xがアルコキシ(メトキシ)基でベンゼン環の3位にありn=1、R2 が水素、R1がアシルオキシメチル(アセチルオキシメチル)である化合物を硫酸銅及び過硫酸カリウムと反応させて対応する式(III)の環状カーバメート(オキサゾリドン)化合物を製造する方法が記載されている。
一方、ベンゼン環のメトキシ基が1個であるが(式(II)においてn=0に相当する)R1がアルコキシカルボニル(COOR)である化合物(実施例4)はR1がアシルオキシメチル(CH2-O-Ac)のもの(実施例1)と同様な条件で対応する式(III)の化合物が得られていることからみて、当業者は、式(II)の化合物においてR3がメチル、Xがアルコキシ(メトキシ)基でベンゼン環の3位にありn=1、R2 が水素、R1がアルコキシカルボニルである化合物も同様に反応すること、すなわち本願の式(1)の化合物を硫酸銅及び過硫酸カリウムと反応させることにより(2)の化合物が製造できることが、引用例1に記載されていることを理解することができる。

そこで、本願発明と引用例1記載の発明とを比較すると、両者は式(1)で表される置換フェネチルアミン誘導体から式(2)の化合物を製造する点において一致し、前者が「N-ブロモスクシンイミドまたは臭素単体とを反応させる」のに対し、後者は「硫酸銅及び過硫酸カリウム」と反応させる点で相違すると認めることができる。

この相違点について、以下検討する。
引用例2、3をみるまでもなく過硫酸カリウムはラジカル発生剤として周知の物質であり、硫酸銅はその触媒であると認められるから、引用例1の反応はラジカル発生により反応が進むものと当業者は推認することができる。
(必要あれば、高分子学会編集「新高分子実験学 第2巻 高分子の合成・反応(1)」1995年6月15日、共立出版株式会社発行の「第1章ラジカル反応」の「b.汎用の過酸化物」の「(3)過硫酸カリウム」の項(32頁)参照。)
そして、ラジカル発生剤としてN-ブロモスクシンイミド、臭素も過硫酸カリウムと同様に周知のものであって、選択性が高く、特にN-ブロモスクシンイミドの作用はきわめて選択的で、弱いC-H結合、すなわちアリル位、ベンジル位などしか攻撃しないことがよく知られているから(必要あれば久保田尚志 訳「有機反応機構」第5版、東京化学同人1989年7月1日第4冊発行の「11.5 ラジカルの反応」の340頁〜342頁を参照されたい。)、引用例1における「硫酸銅及び過硫酸カリウム」に代えて「N-ブロモスクシンイミドまたは臭素単体」を用いることは当業者にとって容易である。

なお、選択性の高い試薬を用いれば収率が向上することは当業者が普通に予測しうることであり、重金属を使用しないことは化学工業における当然要求される課題であるから、本件発明がこれらの点で工業的製法として有利であることを格別顕著な効果であるとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明についてみるまでもなく、原査定を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-16 
結審通知日 2005-03-22 
審決日 2005-04-04 
出願番号 特願平8-123563
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋山口 昭則  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
横尾 俊一
発明の名称 オキサゾリドン化合物の製造法およびそれを用いるスレオ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル) セリンの製造法  
代理人 久保山 隆  
代理人 中山 亨  
代理人 榎本 雅之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ