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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B24B
管理番号 1117188
審判番号 不服2002-14157  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-25 
確定日 2005-05-18 
事件の表示 平成9年特許願第8326号「両面研磨装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月4日出願公開、特開平10-202511〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成9年1月21日の特許出願であって、同14年2月15日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年4月25日に意見書と共に明細書について手続補正書が提出されたが、同年6月18日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年7月25日に本件審判の請求がされ、その後、同年8月26日に明細書について再度手続補正書が提出されたものである。

第2 平成14年8月26日付けの補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前の請求項1
「平板にワークが回転可能に保持される透孔が設けられて成るキャリアと、
該キャリアの上側に配された上定盤と、
該上定盤を回転させる動力手段と、
前記キャリアの下側に配され、前記キャリアの透孔内に配された前記ワークを前記上定盤とで挟む下定盤と、
該下定盤を回転させる動力装置と、
リング状に形成され、その内側に前記キャリアを保持するキャリアホルダーと、
該キャリアホルダーを介して前記キャリアを自転しない円運動をさせることで、前記透孔内に保持された前記ワークを前記キャリアに伴わせて運動させ、回転する前記上定盤および前記下定盤で前記ワークの両面を研磨するキャリア円運動機構とを具備し、
研磨時、前記動力手段と前記動力装置により前記上定盤と前記下定盤の回転速度の絶対値に差をつけ、前記ワークを自転させることを特徴とする両面研磨装置。」
(2)補正後の請求項1
「薄平板にウエーハが回転可能に保持される透孔が設けられて成るキャリアと、
該キャリアの上側に配され、研磨布が取り付けられた研磨面を有する上定盤と、
該上定盤を回転させる動力手段と、
前記キャリアの下側に配され、研磨布が取り付けられた研磨面を有し、前記キャリアの透孔内に配された前記ウエーハを前記上定盤とで挟む下定盤と、
該下定盤を回転させる動力装置と、
リング状に形成され、その内側に前記キャリアを保持するキャリアホルダーと、
該キャリアホルダーを介して前記キャリアを自転しない円運動をさせることで、前記透孔内に保持された前記ウエーハを前記キャリアに伴わせて運動させ、回転する前記上定盤および前記下定盤で前記ウエーハの両面を研磨するキャリア円運動機構とを具備し、
研磨時、前記動力手段と前記動力装置により前記上定盤と前記下定盤の回転速度の絶対値に差をつけ、前記ウエーハを自転させることを特徴とする両面研磨装置。」
2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についての補正は、キャリアの形状について「薄平板」であること、研磨されるワークについて「ウエーハ」であること、そして、上定盤及び下定盤についてそれぞれ「研磨布が取り付けられた研磨面を有」していることを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「両面研磨装置」であると認める。
(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭47-26356号(実開昭48-102679号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には以下の事項が記載されている。
ア 明細書第2頁第2〜19行
「図面に示す実施例について説明すると、工作物Wを挟んで対向する上下の砥石1、2の回転軸3、4は、図示しない装置本体により支持されてそれぞれモータ5、6によつて回転され、上方の砥石1はその回転軸と共に上下に移動可能とし、両砥石1、2間で加工する工作物Wはホルダー7に保持させている。ホルダー7は板状をなし、それに適宜数の穴を設けて工作物嵌込収容部8、8、・・・を形成したもので、モータ9により回転軸10、11を介して同期回転する円板12、13上の偏心ピン14、15をホルダー7の両端突出部分に設けた穴16、17に嵌入させ、これによつて、ホルダー7を砥石の回転軸と直交する平面内においてその向きを一定に保ちながら円運動するように構成している。
上記工作物の嵌込収容部8、8、・・・は、ホルダー7の運動によりそれに保持された工作物が砥石の半径方向の一定の範囲を往復移動するように、ホルダー上の所定の円周上に配列させている。」
イ 明細書第3頁第17行〜第4頁第5行
「上述した研削装置において、工作物Wの加工を行なうには、モータ5、6により上下の砥石1、2を回転させると共に、モータ9によりホルダー7を砥石の回転軸と直交する平面内においてその向きを一定に保ちながら円運動させる。それによつてホルダー7上のあらゆる点が同一円運動をすることになるので、ホルダー7の嵌込収容部8、8、・・・に保持させた各工作物Wはいずれも方向性をもたず均等に研削することができる。」
ウ 第1図及び第2図
ホルダー7は、平板であり、砥石1、2は、盤状体であること。
これらの記載事項を補正発明に照らして整理すると引用例には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「平板に工作物Wが保持される透孔である工作物嵌込収容部8、8、・・・が設けられて成るホルダー7と、
該ホルダー7の上側に配される上方の盤状体の砥石1と、
該上方の盤状体の砥石1を回転させるモータ5と、
前記ホルダー7の下側に配され、工作物嵌込収容部8、8、・・・内に配された前記工作物Wを前記上方の盤状体の砥石1とで挟む下方の盤状体の砥石2と、
該下方の盤状体の砥石2を回転させるモータ6と、
モータ9により回転軸10、11を介して同期回転する円板12、13上の偏心ピン14、15をホルダー7の両端突出部分に設けた穴16、17に嵌入させ、これによって、ホルダー7を砥石の回転軸と直交する平面内においてその向きを一定に保ちながら円運動をさせることで、前記工作物嵌込収容部8、8、・・・内に保持された前記工作物Wを前記ホルダー7に伴わせて運動させ、回転する前記上方の盤状体の砥石1および前記下方の盤状体の砥石2で前記工作物Wの両面を研削するホルダー円運動機構とを具備する工作物の両面研削装置。」
(3)対比
補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、補正発明における被加工物である「ウエーハ」は、ワークすなわち工作物であるという限りで、引用例記載の発明の「工作物W」と共通しており、そして、引用例記載の発明の「ホルダー7」は、平板に工作物が保持される透孔が設けられて成る部材であるという限りで、補正発明と同様「キャリア」ということができるものである。
ところで、本件出願の補正された明細書の段落【0003】、【0018】の記載及び本件出願時の技術常識によると、補正発明における定盤の研磨布が取り付けられた研磨面には、研磨時に砥粒が存在することが明らかであり、当該研磨面は、砥粒による加工面であるということができる。また、引用例記載の発明の砥石は、いうまでもなく砥粒による加工面をもつものである。
そうすると、引用例記載の発明の「上方の盤状体の砥石1」は、キャリアの上側に配され、砥粒による加工面を有する定盤状物体であるという限りで、同じく「下方の盤状体の砥石2」は、キャリアの下側に配され、砥粒による加工面を有し、前記キャリアの透孔内に配された前記工作物を前記上定盤状物体とで挟む下定盤状物体であるという限りで、それぞれ補正発明の「上定盤」及び「下定盤」と共通しており、引用例記載の発明の「工作物の両面研削装置」は、砥粒により工作物の両面を加工する装置であるという限りで、補正発明の「両面研磨装置」と共通している。
そして、引用例記載の発明の「モータ5」及び「モータ6」は、それぞれ補正発明の「動力手段」及び「動力装置」に対応している。
また、引用例記載の発明において「ホルダー7を砥石の回転軸と直交する平面内においてその向きを一定に保ちながら円運動をさせること」は、補正発明において「キャリアを自転しない円運動をさせること」に他ならない。
したがって、補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致しているということができる。
「平板に工作物が保持される透孔が設けられて成るキャリアと、
該キャリアの上側に配され、砥粒による加工面を有する上定盤状物体と、
該上定盤状物体を回転させる動力手段と、
前記キャリアの下側に配され、砥粒による加工面を有し、前記キャリアの透孔内に配された前記工作物を前記上定盤状物体とで挟む下定盤状物体と、
該下定盤状物体を回転させる動力装置と、
前記キャリアを自転しない円運動をさせることで、前記透孔内に保持された前記工作物を前記キャリアに伴わせて運動させ、回転する前記上定盤状物体および前記下定盤状物体で前記工作物の両面を加工するキャリア円運動機構とを具備する砥粒により工作物の両面を加工する装置」である点。
そして、補正発明と引用例記載の発明とは、次の2点で相違している。
ア 相違点1
補正発明では、砥粒により工作物の両面を加工する装置が両面研磨装置であって、キャリアが薄平板、工作物がウエーハ、そして、砥粒による加工面を有する定盤状物体が研磨布が取り付けられた研磨面を有する定盤であり、リング状に形成され、その内側に前記キャリアを保持するキャリアホルダーを具備し、該キャリアホルダーを介して前記キャリアを自転しない円運動をさせるのに対して、引用例記載の発明では、砥粒により工作物の両面を加工する装置が両面研削装置であって、キャリアが薄平板であるのか、また、工作物がどのようなものであるのかが明らかでなく、そして、砥粒による加工面を有する定盤状物体が砥石であり、キャリアを保持するキャリアホルダーを具備しておらず、キャリア円運動機構により直接キャリアを自転しない円運動をさせる点。
イ 相違点2
補正発明では、ウエーハがキャリアの透孔に回転可能に保持され、研磨時、上定盤の動力手段と下定盤の動力装置により前記上定盤と前記下定盤の回転速度の絶対値に差をつけ、前記ウエーハを自転させるのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。
(4)相違点の検討
ア 相違点1について
両面研磨装置において、薄平板にウエーハを保持するキャリアと、研磨布が取り付けられた研磨面を有する定盤と、リング状に形成され、その内側に前記キャリアを保持するキャリアホルダーを具備し、該キャリアホルダーを介して前記キャリアを作動させることは、例えば、特開昭53-49396号公報に示されているように従来周知である(ウエハ1,1’、キャリア2,2’、研磨布8,8’が装着された上下受皿6,7,6’,7’及びリング状ホルダー3,4,3’,4’を参照)。
そして、この従来周知の事項と引用例記載の発明との技術的親近性からみて、上記従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して補正発明のような両面研磨装置として構成することに格別の困難性はない。
イ 相違点2について
両頭平面研削装置において、工作物をキャリアの透孔に回転可能に保持し、研削時、上砥石の動力手段と下砥石の動力装置により前記上砥石と前記下砥石の回転速度の絶対値に差をつけ、前記工作物を自転させることは、原査定時に周知例として挙げられている実願昭59-37337号(実開昭60-149745号)のマイクロフィルムに示されているように従来周知である。
そして、この従来周知の事項と引用例記載の発明とは、同じ技術分野に属するものであることからみて、引用例記載の発明を両面研磨装置として構成する際に上記従来周知の事項を適用して補正発明のように構成することにも格別の困難性はない。
ウ 補正発明の効果について
補正発明によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記従来周知の各事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
エ したがって、補正発明は、引用例記載の発明及び従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年法律第47号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、その余の補正の要件について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
平成14年8月26日付けの補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成14年4月25日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「両面研磨装置」であると認める。
2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載内容は、前記第2の2(2)に示したとおりである。
3 対比・検討
本件発明は、前記第2の2で検討した補正発明から、キャリアの形状について「薄平板」であること、研磨されるワークについて「ウエーハ」であること、そして、上定盤及び下定盤についてそれぞれ「研磨布が取り付けられた研磨面を有」していることという事項を削除したものである。
そうすると、本件発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が前記第2の2(4)エで示したとおり、引用例記載の発明及び従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願の請求項2ないし請求項4に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-28 
出願番号 特願平9-8326
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B24B)
P 1 8・ 121- Z (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 康史佐伯 義文  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 林 茂樹
豊原 邦雄
発明の名称 両面研磨装置  
代理人 堀米 和春  
代理人 綿貫 隆夫  

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