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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
管理番号 1117337
審判番号 不服2001-11633  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-05 
確定日 2005-05-25 
事件の表示 平成10年特許願第144654号「弾性表面波フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月10日出願公開、特開平11-340774〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】 手続きの経緯
本願は、平成10年5月26日に特許出願されたものであって、平成13年2月22日付で拒絶の理由が通知され、平成13年4月23日付で手続補正書が提出され、平成13年5月25日付で拒絶査定され、その後平成13年7月5日に審判請求がなされ、同じく平成13年7月26日付で手続補正書が提出され、さらに当審で平成16年10月12日付で拒絶の理由が通知(最後の拒絶理由通知)され、それに対して平成16年12月28日付で手続補正書が提出されたものである。
【2】 補正却下の決定
平成16年12月28日付の手続補正について、以下のとおり決定する。
[結論]
平成16年12月28日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)手続補正の内容
平成16年12月28日付手続補正書(以下「本件補正」という。)は少なくとも特許請求の範囲の請求項1について、これを以下のとおり補正するものである。
「【請求項1】入出力間に構成された直列腕に直列共振子を有し、該直列腕と基準電位との間に構成された並列腕に並列共振子を有する梯子型回路構成の弾性表面波フィルタであって、
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に形成された複数の一端子対弾性表面波共振子とを備え、複数の一端子対弾性表面波共振子が、前記直列共振子及び並列共振子を構成するように配置されており、
並列共振子を構成している一端子対弾性表面波共振子のうち、すべての弾性表面波共振子のインターデジタルトランスデューサにおける、一方のバスバーと、該バスバーとは反対側のバスバーに接続されている電極指先端との間のギャップ長が、弾性表面波の波長をλとしたときに、1.0λ以下となるようにされ、
かつ前記並列共振子の電極指の交叉幅が32λ未満に小さくされていることを特徴とする、弾性表面波フィルタ。」
(なお、請求項1の「直列椀」、「並列椀」は、それぞれ「直列腕」、「並列腕」の誤記であることは明らかであるから、上記のとおり認定した。)

本件補正についてその内容をみると、この補正は、請求項1に、「並列共振子の電極指の交叉幅が32λ未満に小さくされていること」を付加するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する。
(2)引用刊行物
当審で通知した拒絶の理由に引用された刊行物である「1992年電子情報通信学会秋季大会講演論文集、松田隆志外4名、「A-226、準マイクロ波帯SAW共振器型低損失フィルタ」、1-230頁 、(1992年発行)。(以下「引例1」という。)」には、
「1端子対のSAW共振器を直列腕と並列腕に接続した梯子型フィルタである。図1に梯子型フィルタの構成を示す。今回は1.5GHz帯のSAWフィルタについてSAW共振器の静電容量が特性に与える影響についてシミュレーションと試作を行い評価した。圧電基板に36°YcutX-LiTaO3を用い、Al-Cuの櫛形電極を形成した。中心周波数を1.5GHzにすると電極指のパターン幅は約0.6μmになる。図2に櫛形電極のSEM写真を示す。図のようにラインアンドスペースがほぼ1対1の良好なパターンを作製できた。(第1-230頁第10-18行、図1、図2)」と記載されている。
また、図2には、櫛形電極のラインアンドスペースがほぼ1対1で、電極指スペースと電極指先端-バスバー間のギャップもほぼ1対1であるSEM写真が示されている。そして、弾性表面波の波長をλとしたときに、櫛形電極の電極指ピッチが1λであることは周知であり、櫛形電極のラインアンドスペースがほぼ1対1であることより、ライン幅もスペース幅もほぼ0.25λで、電極指先端とバスバーとの間のギャップもほぼ0.25λであることが記載されているものと認められる。
(3)対比・判断
本件補正発明と引例1に記載された発明とを比較すると、引例1の「SAWフィルタ」は本件補正発明の「弾性表面波フィルタ」に相当するから、両者は、
「入出力間に構成された直列腕に直列共振子を有し、該直列腕と基準電位との間に構成された並列腕に並列共振子を有する梯子型回路構成の弾性表面波フィルタであって、
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に形成された複数の一端子対弾性表面波共振子とを備え、複数の一端子対弾性表面波共振子が、前記直列共振子及び並列共振子を構成するように配置されており、
弾性表面波共振子のインターデジタルトランスデューサにおける、一方のバスバーと、該バスバーとは反対側のバスバーに接続されている電極指先端との間のギャップ長が、弾性表面波の波長をλとしたときに、1.0λ以下である0.25λとなるようにされる、弾性表面波フィルタ。」である点で一致し、
(a)インターデジタルトランスデューサにおける、一方のバスバーと、該バスバーとは反対側のバスバーに接続されている電極指先端との間のギャップ長が、弾性表面波の波長をλとしたときに、1.0λ以下となるような弾性表面波共振子が、請求項1の発明は、並列共振子を構成している一端子対弾性表面波共振子のうち、すべての弾性表面波共振子であるのに対して、引例1に記載の発明には、並列共振子を構成しているすべての弾性表面波共振子が1.0λ以下であるかどうか明らかでない点、
(b)本件補正発明は、弾性表面波フィルタが、並列共振子の電極指の交叉幅が32λ未満に小さくされているのに対して、引例1に記載の発明はこの交叉幅がどのくらいか明らかでない点、で相違する。
次に、この相違点について検討する。
(a)の相違点について
梯子型回路構成としてフィルタを形成する際、通常、直列腕及び並列腕を構成する各共振子は直列腕の全て及び並列腕の全てをそれぞれ同一構成の共振子として格子型に構成することが普通であるから、本件補正発明においても通常どおり構成すること、すなわち、並列共振子を構成している一端子対弾性表面波共振子のすべてを、一方のバスバーと、該バスバーとは反対側のバスバーに接続されている電極指先端との間のギャップ長が、弾性表面波の波長をλとしたときに、1.0λ以下となるような弾性表面波共振子とすることに格別困難性を要しないものと認められる。
(b)の相違点について
弾性表面波フィルタでは、所望の共振特性やフィルタ特性を得るために電極指の交叉幅や開口長、対数を適宜選定して構成されることは技術常識であり、この交叉幅が不適当であるならばこれら所望の特性が得られないのであるから、並列共振子の電極指の交叉幅を32λ未満等の適度な値に設定することは設計事項である。また、この32λ未満の数値を臨界値とする根拠は図3〜図8の特性図からも認められず、本件補正発明により奏せられる作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


【3】本願発明について
(1)本願発明
平成16年12月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は平成13年7月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】入出力間に構成された直列腕に直列共振子を有し、該直列腕と基準電位との間に構成された並列腕に並列共振子を有する梯子型回路構成の弾性表面波フィルタであって、
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に形成された複数の一端子対弾性表面波共振子とを備え、複数の一端子対弾性表面波共振子が、前記直列共振子及び並列共振子を構成するように配置されており、
並列共振子を構成している一端子対弾性表面波共振子のうち、すべての弾性表面波共振子のインターデジタルトランスデューサにおける、一方のバスバーと、該バスバーとは反対側のバスバーに接続されている電極指先端との間のギャップ長が、弾性表面波の波長をλとしたときに、1.0λ以下となるようにされていることを特徴とする、弾性表面波フィルタ。」
(なお、請求項1の「直列椀」、「並列椀」は、それぞれ「直列腕」、「並列腕」の誤記であることは明らかであるから、上記のとおり認定した。)
(2)引用刊行物
当審で通知した拒絶の理由に引用された刊行物である「1992年電子情報通信学会秋季大会講演論文集、松田隆志外4名、「A-226、準マイクロ波帯SAW共振器型低損失フィルタ」、1-230頁 、(1992年発行)。(以下「引例1」という。)」には、前記【2】の(2)に記載したとおりの技術的事項が開示されている。
(3)対比・判断
本願発明は、前記【2】の(1)で検討した本件補正発明から「並列共振子の電極指の交叉幅が32λ未満に小さくされていること」を削除したものであるから、前記したように、本件補正発明が前記【2】の(3)に記載した理由によって、引例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる以上、本願発明についてもこれと同様に前記引例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
(4)むすび
以上のとおりであって、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、前記引例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-10 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2005-03-22 
出願番号 特願平10-144654
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H03H)
P 1 8・ 575- WZ (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 植松 伸二
内田 正和
発明の名称 弾性表面波フィルタ  

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