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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
管理番号 1117418
審判番号 不服2001-8628  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-24 
確定日 2005-05-27 
事件の表示 平成6年特許願第9410号「アイドル回転数制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成7年8月15日出願公開、特開平7-217484〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
(1)出願:平成6年1月31日
(2)拒絶理由通知:平成12年7月24日(発送日:平成12年8月1日)
(3)意見書の提出:平成12年9月29日
(4)拒絶査定:平成13年4月13日(発送日:平成13年4月24日)
(5)審判請求:平成13年5月24日(方式補正:平成13年6月20日)
(6)手続補正書の提出:平成13年6月20日
(7)上記(6)の手続補正書による補正について補正却下の決定
:平成16年4月30日(発送日:平成16年5月21日)
(8)拒絶理由通知:平成16年6月3日(発送日:平成16年6月8日)
(9)意見書、手続補正書の提出:平成16年8月2日

2.拒絶理由の概要
当審が通知した上記1.(8)の拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内で頒布された刊行物である特開昭61-81547号公報及び特開平4-342852号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

3.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記1.(9)の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「スロットルバルブを迂回するバイパス通路に空気流量制御弁を備えるエンジンにおいて、この空気流量制御弁の開度を、少なくともエンジン温度に基づく暖機補正増量及びエンジン回転数に基づくフィードバック補正増量を含む補正量に基づいて制御して吸入空気量を調節することにより、暖機過程におけるアイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、
減速走行時のフューエルカットが終了した際のエンジン回転数の変化率を検出し、
前記エンジン回転数の変化率があらかじめ設定された所定値を超える際にエンジンにかかる電気負荷が大きいほど大きく設定された初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正し、
その後前記復帰時補正量を所定の減少率で減少しながら前記補正量を補正することを特徴とするアイドル回転数制御方法。」

4.引用文献
(1)引用文献1
当審が通知した拒絶理由に引用された特開昭61-81547号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「3.前記目標アイドル回転数は前記エンジン冷却水温度に応じて変化することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の内燃エンジンのアイドル回転数フィードバック制御方法。」(第1頁右下欄10〜13行)
(b)「(発明の概要)
上記目的を達成するために本発明においては、内燃エンジンのアイドル時に目標アイドル回転数と実回転数との偏差に応じて当該エンジンの吸気系のスロットル弁をバイパスバイパス通路に設けた制御弁の作動量を制御して補助空気量を制御し、前記偏差を無くすようにしたアイドル回転数フィードバック制御方法において、前記内燃エンジンが減速時の所定運転状態にあるときには当該エンジンへの燃料供給を遮断し、前記エンジンの回転数が前記目標アイドル回転数より高くエンジン冷却水温度に応じて変化する所定フューエルカツト解除回転数より高い値に設定され前記冷却水温度に応じて変化する所定回転数以下となつたとき前記フィードバック制御開始時の前記作動量の初期値を設定し、該フィードバック制御が開始される迄の間該初期値に対応する補助空気量を前記エンジンに供給するようにし、充填効率を高めた後フューエルカツト解除を行なわせ、フューエルカツト解除後の失火によるエミッション悪化を防止するようにした内燃エンジンのアイドル回転数フィードバック制御方法を提供するものである。」(第2頁右下欄15行〜第3頁左上欄16行)
(c)「先ず、第2図は本発明の回転数制御方法を示し、減速時に第1図のスロットル弁5が全開となり時間経過と共にエンジン回転数Neが減少し、第1の所定回転数NAH又は第2の所定回転数NAL(<NAH)以下になると(第2図(a))、制御弁6が開弁して空気通路8を介し補助空気が供給されるようになり後述する補助空気の減速モードの制御が開始される。更にエンジン回転数が減少して所定のアイドル回転数上限値NH以下になると補助空気量はフィードバックモードにより制御されエンジン回転数Neが上限値NHと下限値NLとの間に保持される。これら所定のアイドル回転数の上限値NHと下限値NLとはエンジン冷却水温や電気装置15の電気負荷状態等の変化に応じてその都度エンジンに最適な値に設定される。
減速運転モードにおけるフューエルカツト解除回転数NPCはエンジン冷却水温度Twに応じて変化し、例えば第3図に点線で示すように、所定温度TWA(例えば60℃)以下のときには第1の所定回転数NPCH(例えば17000rpm) 、以下のときには第2の所定回転数NPCL(例えば900rpm)となるように設定されている。また、前記第1、第2の所定回転数NAH、NALは夫々前記第1、第2のフューエルカット解除回転数NPH、NPLよりも僅かに高い回転数に設定され且つ前記エンジン冷却水温度Twに応じて変化するように設定されており、第3図に実線で示すように前記所定温度Tw以下のときには第1の値NAH(例えば2000rpm)、以上のときには第2の値NAL(例えば1200rpm)となる。即ち、前記第1、第2の各所定値NAH、NALは前記第1、第2のフューエルカット解除回転数NPCH、NPCLと共に前記エンジン冷却水温度Twに応じて変化し、且つこれらの各フューエルカット解除回転数NPH、NFLよりも常に所定回転△Ne(=300rpm)だけ高い回転数に設定される。
前記減速モードにおいては補助空気の供給量は第図(b)に示すようにエンジン回転数Neが第1又は第2の所定回転数NAH又は、NAL以下となつたときに制御弁6が所定開弁時間デユーテイ比DXREPに亘り開弁して所定量の補助空気が供給される。この所定時間DXREPは後述するようにアイドル回転数フィードバック制御時における制御弁6の制御量の平均値である。エンジン回転数Neが低下して前記所定のアイドル回転数上限値NHに達したとき、制御弁6は前記値DXREPを作動量の初期値としてフィードバック制御が開始される。」(第4頁左上欄18行〜同右下欄5行)

上記各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、次のような発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「スロットルバルブ(5)を迂回するバイパス通路に制御弁(6)を設け、この制御弁(6)の作動量を、少なくともエンジン回転数に基づくフィードバック補正量を含む補正量に基づいて制御して補助空気量を調節することにより、暖機過程におけるアイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、
エンジン回転数が減速走行時のフューエルカットを解除するフューエルカット解除回転数よりわずかに高い所定回転数以下となつたとき、前記フィードバック補正開始時の前記作動量の初期値を設定し、充填効率を高めた後フューエルカツト解除を行なわせ、その後該初期値により前記フィードバック補正量に基づく制御が開始されるアイドル回転数制御方法。」

(2)引用文献2
同じく当審が通知した拒絶理由に引用された特開平4-342852号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「【0010】図1に概略的に示したエンジンは自動車用のもので、その吸気系1には図示しないアクセルペダルに応動して開閉するスロットルバルブ2を配設するとともに、このスロットルバルブ2を迂回するバイパス通路3を設け、このバイパス通路3にアイドル回転数制御用の流量制御弁4を介設している。流量制御弁4は、VSVと略称される電磁開閉式のものであって、その端子4aに印加する駆動電圧のデューティ比を制御することによってその実質的な開度を変化させることができ、それによって前記バイパス通路3の空気流量を調整し得るようになっている。」(第3頁第3欄段落【0010】)
(b)「【0015】このアイドル回転数制御用プログラムは、エンジン冷却水温が一定以上になる暖機状態で実行されるもので、スロットルバルブ2が開成している際には、流量制御弁4に印加する駆動電圧のデューティ比を予め定めた設定値Kに固定し、スロットルバルブ2が閉じた際には、回転数センサ14により検出される実際のエンジン回転数NEが目標回転数Mに収束するように前記流量制御弁4に印加する駆動電圧のデューティ比を変化させてその開度をフィードバック制御するようになっている。そして、フィードバック制御中に図2に示すようなルーチンを繰り返し実行するようにしている。すなわち、このルーチンでは、ステップ51で前述した減速フューエルカットが解除されて燃料噴射状態に復帰した直後であるか否かを判断し、そうでない場合にはそのままその回のルーチンは終了するが、復帰した直後である場合にはステップ52に進む。ステップ52では算出された最新の回転降下率ΔNEを読み込んでステップ53に進む。回転降下率ΔNEは、回転数センサ14により検出されるエンジン回転数NEに基いて逐次算出されるものである。ステップ53では、読み込んだ回転降下率ΔNEに対応するスキップ量γを記憶情報たるマップから読み出すことによって決定する。このマップには図3に示すように、フューエルカット解除時におけるエンジン回転数NEの回転降下率ΔNEの大小に対応して増減するような値のスキップ量γが設定してある。すなわち、これらのスキップ量γは、回転降下率ΔNEが大きくなるほど大きくなり、小さくなるほど小さくなるように設定されており、予め実験等により最適なものを選定して記憶させておく。」(第3頁第4欄段落【0015】)
上記各記載及び図面の記載を総合すると、引用文献2には、次のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「スロットルバルブ(2)を迂回するバイパス通路(3)に流量制御弁(4)を設け、この流量制御弁(4)の開度を、少なくともエンジン回転数に基づくフィードバック補正量を含む補正量に基づいて制御して空気流量を調節することにより、アイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、
フューエルカットが終了した際のエンジンの回転降下率(ΔNE)を検出し、前記エンジンの回転降下率(ΔNE)が大きいほど大きいスキップ量(γ)に基づき前記流量制御弁(4)の開度を補正するとともに、前記フィードバック補正を行うアイドル回転数制御方法。」

5.本願発明と引用発明との対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「制御弁(6)」、「作動量」及び「補助空気量」は、その機能や技術的意義に照らして、本願発明の「空気流量制御弁」、「開度」及び「吸入空気量」のそれぞれに相当する。
そして、引用発明1においては、エンジン回転数に基づいて、アイドル時のエンジン回転数のフィードバック補正を行うものであるから、少なくともエンジン回転数に基づくフィードバック補正増量に基づいて制御弁(6)の作動量を制御して、吸入空気量を調節していることは明らかである。
また、引用発明1は,充填効率を高めた後にフューエルカット解除を行わせるものであるから、引用発明1において「エンジン回転数が減速走行時のフューエルカツトを解除するフューエルカット解除回転数よりわずかに高い所定回転数以下となつたとき、前記フィードバック補正開始時の前記作動量の初期値を設定」することは、減速走行時のフューエルカットが終了する際の制御弁(6)の作動量を初期値に基づいて補正することということができる。
したがって、引用発明1において「エンジン回転数が減速走行時のフューエルカットを解除するフューエルカット解除回転数よりわずかに高い所定回転数以下となつたとき、前記フィードバック補正開始時の前記作動量の初期値を設定し、充填効率を高めた後フューエルカット解除を行なわせ」ることと、本願発明において「減速走行時のフューエルカットが終了した際のエンジン回転数の変化率を検出し、前記エンジン回転数の変化率があらかじめ設定された所定値を超える際にエンジンにかかる電気負荷が大きいほど大きく設定された初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正」することとは、「減速走行時のフューエルカットが終了した際の空気流量制御弁の開度を初期値に基づく補正量で補正」する限りで一致する。
そして、引用発明1における「その後該初期値により前記フィードバック補正量に基づく制御が開始される」ことは、それにより初期値がフィードバック補正量に基づいて補正されることになるのであるから、「その後前記補正量を補正する」限りで、本願発明における「その後前記復帰時補正量を所定の減少率で減少しながら前記補正量を補正する」ことと一致する。
したがって、本願発明と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「スロットルバルブを迂回するバイパス通路に空気流量制御弁を備えるエンジンにおいて、この空気流量制御弁の開度を、少なくともエンジン回転数に基づくフィードバック補正増量を含む補正量に基づいて制御して吸入空気量を調節することにより、暖機過程におけるアイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、
減速走行時のフューエルカットが終了した際の空気流量制御弁の開度を初期値に基づく補正量で補正し、
その後前記補正量を補正するアイドル回転数制御方法。」
〈相違点1〉
本願発明においては、「補正量」として「エンジン温度に基づく暖機補正増量」が含まれているのに対して、引用発明1においては、「エンジン温度に基づく暖機補正増量」が含まれているのか否か明確ではない点。
〈相違点2〉
本願発明においては、「減速走行時のフューエルカットが終了した際のエンジン回転数の変化率を検出し、前記エンジン回転数の変化率があらかじめ設定された所定値を超える際にエンジンにかかる電気負荷が大きいほど大きく設定された初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正」するのに対して、引用発明1においては「エンジン回転数が減速走行時のフューエルカットを解除するフューエルカット解除回転数よりわずかに高い所定回転数以下となつたとき、前記フィードバック補正開始時の前記作動量の初期値を設定し、充填効率を高めた後フューエルカツト解除を行なわせ」る点。
〈相違点3〉
本願発明においては、「その後前記復帰時補正量を所定の減少率で減少しながら前記補正量を補正する」のに対して、引用発明1においては、「その後該初期値に基づいてフィードバック補正が開始される」点。

6.相違点についての検討及び判断
そこで、上記相違点1〜3について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1の記載事項(a)によれば、目標アイドル回転数はエンジン冷却水温度に応じて変化することが示されており、しかも、エンジン温度に基づいて吸入空気量の暖機時補正増量を行うことは、この出願前より当業者に広く知られた周知の技術である。
したがって、本願発明の相違点1に係る事項は、引用発明1や前述した周知の技術に基づき、当業者が格別の困難を伴うことなく容易に想到し得る程度のことである。

(2)相違点2について
ここで、本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「流量制御弁(4)」、「空気流量」、「エンジンの回転降下率(ΔNE)」及び「スキップ量(γ)」は、その技術的意義や機能に照らして、本願発明における「空気流量制御弁」、「吸入空気量」、「エンジン回転数の変化率」及び「初期値に基づく復帰時補正量」のそれぞれに相当する。
そうすると、引用発明2は、「スロットルバルブを迂回するバイパス通路に空気流量制御弁を備えるエンジンにおいて、この空気流量制御弁の開度を、少なくともエンジン回転数に基づくフィードバック補正を含む補正量に基づいて制御して吸入空気量を調節することにより、アイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、フューエルカットが終了した際のエンジン回転数の変化率を検出し、前記エンジン回転数の変化率が大きいほど大きい初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正するとともに、前記フィードバック補正を行うアイドル回転数制御方法。」ということができる。
引用発明1及び引用発明2は、いずれもバイパス通路に備える空気流量制御弁を制御して吸入空気量を調節することにより、アイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法に関するものであり、引用発明1は減速走行時、引用発明2はレーシング時(空吹かし時)を前提としているものの、フューエルカット終了時のエンジン回転数の急激な降下を防止する点で課題が共通しているから、両者に接した当業者にとって、引用発明1に引用発明2を適用し、「フューエルカット解除回転数よりわずかに高い所定回転数以下となつたとき、前記フィードバック補正開始時の前記作動量の初期値を設定し、該フィードバック補正が開始される迄の間該初期値に対応する補助空気量を前記エンジンに供給する」ことに代えて、「減速走行時のフューエルカットが終了した際のエンジン回転数の変化率を検出し、前記エンジン回転数の変化率が大きいほど大きく設定された初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正する」よう構成することは、容易に想到し得ることである。
ところで、引用発明2においては、フューエルカットが終了した際のエンジン回転数の変化率を検出し、前記エンジン回転数の変化率が大きいほど大きい初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正しているが、エンジン回転数の変化率が所定値以下では、復帰時補正量も小さくなるのであるから、引用発明1に引用発明2に適用するにあたり、「前記エンジン回転数の変化率があらかじめ設定された所定値を超える際」に復帰時補正量で補正量を補正することは、抑制すべきエンジン回転数の変化率等を勘案することにより、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項というべきである。
また、フューエルカットが終了した際、エンジンが駆動する電気負荷等の負荷が高いほど、エンジン回転数がより大きな変化率で低下することは、当業者にとって自明ともいうべき事項と解されるところ、アイドリング時のエンジン回転数の急激な降下を防止するため、電気負荷の大小に応じて、スロットルバルブを迂回するバイパス通路に備える空気流量制御弁の開度の補正量を設定することは、例えば、特開昭61-81546号公報(特に第1頁左下欄6行〜第2頁右上欄2行、第5頁右下欄5行〜第6頁右上欄12行を参照のこと)、特開平5-272379号公報(特に第2頁段落【0007】、第4頁段落【0020】、【0021】を参照のこと)、特開平2-91445号公報(特に第3頁左下欄11行〜第4頁左上欄4行)にみられるよう本願出願前より周知の技術である。
さらに、引用文献1には、従来技術の問題点として「エンジン冷却水温が低いときにアイドル運転を行つた場合や、アイドル運転時にエンジンにヘッドライト、エアコン等の電気負荷が掛つたとき等にはエンジンの負荷が増大してアイドル回転数が低下してエンジンストールが生じ易く」と記載されていることから、引用発明1に引用発明2を適用するにあたり、引用発明2における「前記エンジン回転数の変化率が大きいほど大きい初期値」を、特に電気負荷に着目し、「エンジンにかかる電気負荷が大きいほど大きい初期値」とすることは、これを妨げる特段の事情も見当たらず、当業者が上記した周知の技術を勘案することにより容易に想到し得ることというべきである。
したがって、本願発明の相違点2に係る構成は、当業者が引用発明1、2及び上述した周知の技術に基づいて、容易になし得ることである。

(3)相違点3について
引用発明1においては、「その後該初期値に基づいてフィードバック補正が開始される」ので、「前記作動量の初期値」は、その後のフィードバック補正により徐々に消失するものと解される。
また、引用発明2においては、前述のとおり「前記エンジン回転数の変化率が大きいほど大きい初期値に基づく復帰時補正量で前記補正量を補正するとともに、前記フィードバック補正を行う」が、引用発明1と同様に、フィードバック補正が開始されれば、「初期値に基づく復帰時補正量」は、その後のフィードバック補正により徐々に消失するものと解される。
そして、エンジン制御の分野において、過渡的な運転状態の変化に対応して、制御量に補正量を付加し、この補正量を所定の減少率で減少させることは、本件出願前より広く行われていると解されるところ、スロットルバルブを迂回するバイパス通路に備えた空気流量制御弁の開度の制御量に付加する補正量を所定の比率で減少させることは、例えば、特開昭61-25940号公報(特に第5頁右下欄14〜20行を参照のこと)、特開平4-314944号公報(特に第4頁第5欄段落【0029】を参照のこと)にみられるように本願出願前より周知の技術である。
してみると、上記「(2)相違点2について」で述べたように、引用発明1に引用発明2を適用するにあたり、引用発明1における「その後該初期値に基づいて前記フィードバック補正量に基づく制御が開始される」ことに代え、「その後前記復帰時補正量を所定の減少率で減少しながら前記補正量を補正する」ことにより、本願発明の相違点3に係る構成とすることは、これを妨げる特段の事情も見当たらず、上述した周知の技術を勘案することにより、当業者が容易になし得ることである。

(4)相違点についての検討及び判断のむすび
以上のように、本願発明のような構成とすることは、引用発明1、2及び前述した周知の技術に基づいて、当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到し発明をすることができたものであり、しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用発明1、2及び前述した周知の技術から予測できる作用効果以上の格別顕著な作用効果を奏するものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者がその出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-11 
結審通知日 2005-03-22 
審決日 2005-04-06 
出願番号 特願平6-9410
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 所村 美和  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 平城 俊雅
清田 栄章
発明の名称 アイドル回転数制御方法  
代理人 赤澤 一博  

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