• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1117440
審判番号 不服2003-962  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-16 
確定日 2005-06-17 
事件の表示 特願2000-149909「マンション売買支援システム及びオークションセンタ用機器とデータセンタ用機器並びに記録媒体」拒絶査定に対する審判事件[平成13年11月30日出願公開、特開2001-331690]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成12年5月22日の出願であって、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「オークションセンタ用機器とでマンション売買支援システムを構成するデータセンタ用機器であって、
各種物件の事例データを格納するデータベース部と、オークションセンタ用機器からの事例データ検索依頼を受ける検索依頼受付部と、検索依頼物件の事例データを検索する検索部と、検索結果の事例データを返送する検索結果返送部と、を備えることを特徴とするデータセンタ用機器。」

2.引用例に記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3061933号公報(平成11年9月28日発行、以下「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。
1)【考案の属する技術分野】 本考案は、オークションを通じて不動産の売買価格若しくは賃貸価格を決定する不動産オークションシステムに関するものである。(段落番号【0001】。)
2) 図1は、本考案に係る不動産オークションシステムの一実施例を示す概略ブロック図である。本実施例の不動産オークションシステム1は、大画面を有する表示装置2と、オークションの進行を制御するオークション制御手段3と、買手情報を記憶し管理する買手データベース4に接続している買手認証手段5と、不動産物件およびこの不動産物件の売手に関する不動産情報を記憶し管理する不動産データベース6と、オークションの成約または不成約を登録する登録データベース7を備えた伝票処理装置8と、オークション制御手段3との間で信号転送を担う中継器9に接続された複数の買手用端末10,10,…,10と、オークション制御手段3に接続してインターネットなどの外部ネットワーク11との間でデータ授受を可能とする通信端末12とを備えて構成されている。この通信端末12は、外部ネットワーク11に接続された通信端末13を通して撮像手段14による不動産などの動画・静止画のデータ伝送を受けてオークション制御手段3に転送したり、他のデータベースに格納された不動産情報のデータ伝送を受けてオークション制御手段3に転送する。尚、本実施例では、オークション制御手段3と買手認証手段5は一つの制御装置15内に組み込まれており、オークション制御手段3には、オークションの進行役を務めるセリ人が操作するセリ人操作盤15が接続されている。また、以上の各種装置、各種構成手段および各種データベースは、コンピュータなどの計算機端末に組み込まれたり、回路形成される。(段落番号【0016】。)
3) 前記不動産データベース6は、不動産物件の売買価格または賃貸価格を評価するのに必要な不動産情報を蓄積しており、オークション制御手段3の伝送要求に応じて不動産情報を提供する。その不動産情報としては、不動産物件の外観や内部構成を示す静止画または動画、持ち主(売手、貸手)の画像、売手の最低希望価格などが例示され、この他に、計画道路にかかるか否か、市街化調整区域、区画整理事業の範囲、建築条件付きか否か、接道状況(不動産の土地に接する道路が、公道、私道、通常道路か否かなど)、建坪率、容積率、日照問題、斜線規制(「道路斜線」、「隣地斜線」、「北側斜線」および「高度斜線」)、日照権問題、土地境界線などの法規制情報、水道管やガス管の敷設状況、生活環境(学校や校区、病院、買い物場所など)、高圧電力線の有無などの環境情報、崖地や窪地などの不整形地か否か、断層の有無などの地理的情報、風土や水勢などから当該地の良否を決める風水情報、路線価格の変動、不動産物件の属する行政区の人口変動などの統計情報、不動産鑑定士や税理士、弁護士などの専門家による不動産鑑定情報が挙げられる。その不動産鑑定の対象は、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権、農地、林地、宅地見込地、貸家およびその敷地、借地権付建物、区分所有建物およびその敷地などである。(段落番号【0018】。)

上記記載1)から、引用例1は不動産オークションシステムについてのものであり、上記記載2)から、不動産オークションシステムはオークション制御手段と、不動産物件およびこの不動産物件の売手に関する不動産情報を記憶し管理する不動産データベースとを備えて構成されているといえる。また、上記記載3)から、不動産データベースは、不動産物件の売買価格または賃貸価格を評価するのに必要な不動産情報を蓄積しており、オークション制御手段の伝送要求に応じて不動産情報を提供するのであるから、引用例1の不動産データベースは、不動産情報を蓄積する手段と、不動産情報を提供する手段とを備えているといえる。
したがって引用例1には、「オークション制御手段とで不動産オークションシステムを構成する不動産データベースであって、前記不動産データベースは不動産物件の売買価格を評価するのに必要な不動産情報を蓄積する手段と、オークション制御手段の伝送要求に応じて不動産情報を提供する手段とを備えることを特徴とする不動産データベース。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比する。
引用例1に記載された発明の「オークション制御手段」と、本願発明の「オークションセンタ用機器」は、オークション用の手段である点で一致し、オークションは売買支援の一形態であるから、引用例1に記載された発明の「不動産オークションシステム」と本願発明の「マンション売買支援システム」は、不動産売買支援システムである点で一致し、引用例1に記載された発明の「不動産データベース」と本願発明の「データセンタ用機器」とは、データ蓄積・提供手段である点で一致している。
また、引用例1に記載された発明の「不動産物件の売買価格を評価するのに必要な不動産情報」と本願発明の「各種物件の事例データ」は、物件の売買価格を評価するためのデータである点で一致し、引用例1に記載された発明の「蓄積する手段」は、データを蓄積するという機能からみて、本願発明の「データベース部」に相当する。
したがって、本願発明と引用例1に記載された発明は、「オークション用の手段とで不動産売買支援システムを構成するデータ蓄積・提供手段であって、各種物件の売買価格を評価するためのデータを格納するデータベース部を備えることを特徴とするデータ蓄積・提供手段。」である点で一致し、次の点で相違している。
(相違点1)
オークション用の手段が、本願発明ではオークションセンタ用機器であるのに対して、引用例1に記載された発明ではオークション制御手段であり、データ蓄積・提供手段が本願発明ではデータセンタ用機器であるのに対して、引用例1に記載された発明では不動産データベースである点。
(相違点2)
本願発明はマンション売買を対象とするのに対して、引用例1に記載された発明は不動産売買を対象としている点。
(相違点3)
データベース部が、本願発明では各種物件の事例データを格納しているのに対して、引用例1に記載された発明では不動産物件の売買価格を評価するのに必要な不動産情報を蓄積している点。
(相違点4)
本願発明のデータセンター用機器は、オークションセンタ用機器からの検索依頼を受ける検索依頼受付部と、検索依頼物件のデータを検索する検索部と、検索結果のデータを返送する検索結果返送部とを備えているのに対し、引用例1に記載された発明の不動産データベースは、伝送要求に応じて不動産情報を提供する手段を備えている点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
システムを構成する複数の手段について、どの手段を独立した構成単位とし、どこに設置するかは、システムの規模、保守管理の利便性等を考慮して当業者が適宜決定すべき事項であるから、引用例1に記載された発明のオークション制御手段、不動産データベースを独立した構成単位とし、各々をセンタに設置することとし、本願発明のオークションセンタ用機器、データセンタ用機器のように構成することは格別のものではない。
(相違点2について)
マンションは土地、一戸建てと並び代表的な不動産売買の対象商品であるから、引用例1に記載された発明の不動産として、マンションを対象とすることは当業者が容易になし得たことである。よって相違点2は格別のものではない。
(相違点3について)
過去の売買価格を参考に価格を決定することは、例えば、日高俊明,モバイル・オークションの実現を目指す大阪南港中古車共同組合,SunWold,株式会社IDGジャパン,1999年12月 1日,第9巻第12号,p.34〜38、特に「過去の落札データを蓄積しONAAの会員に提供」の項、特開平11-194707号公報第15段落、特開平11-195069号公報第34段落および39段落、特開2000-137736号公報第24段落および第29段落に記載されるように周知事項であり、また、過去の売買は一種の売買事例であるから、引用例1に記載された発明の売買価格を評価するのに必要な情報として該周知事項を採用して事例データを格納するように構成することは当業者が容易になし得たことである。
(相違点4について)
引用例1に記載された発明の不動産データベースは、オークション制御手段の伝送要求に応じて不動産情報を提供する手段を備えているところ、オークション制御手段が発する伝送要求は、データを格納する手段に格納されたデータの中から、特定のデータを伝送することを要求するものであるから、特定のデータを検索して返送することをオークション制御手段が求めていることは当業者が容易に理解できる。そして、検索依頼を受け付け、該検索依頼に基づいて検索し、検索結果を返送することはデータベースの通常の使用形態であるから引用例1に記載された発明に対して前記通常の使用形態を適用し、不動産データベースをオークション制御手段の伝送要求を受けつけた際に、伝送要求に対応するデータを検索し、検索結果を返送するようにするために、データベース部に加え、検索依頼受付部、検索部、検索結果返送部を備えるように構成することは当業者が容易になし得たことである。
また、これら相違点に基づく効果も格別のものではない。

なお、請求人は平成15年2月14日付け手続補正書により補正された審判請求書のハ)で以下の主張をしている。(丸付き数字は一部表記を改めた。)。
「なお、審査官は、引用例2、3にはセリ結果、落札データ過去の履歴の参照を可能とすることが記載されていると指摘されましたが、引用例2及び3におけるセリ結果又は落札データは、中古車の車種や年代ごとのデータであって、類似する取引の情報であり、本願第1発明における物件自体の事例データとは質的に相違するものです。すなわち、中古車等は大量生産されており、そして、車種や型、年代といった少ない要因で価格を決める際の参考とすることができるため、類似する取引の情報を使用してもほぼ適正な価格を把握することが可能であります。一方、マンションの価格に影響する要因としては、最寄駅及び都心までの所要時間、土地柄・隣接環境の良否、土地の権利、建物のグレード、経過年数、修繕履歴及び修繕積立金の多寡、管理の良否、方位、騒音の有無等多数有るため、一部の要因のみで適正価格を把握することは不可能です。本願第1発明は、多数の要因が影響するマンションの価格を決める際の参考となるデータとして、そのマンション自体の事例データをオークションに参加する者に提供するものであります。
また、審査官は、引用例4には管理データベースを有し、データベースの情報を参照して、過去の履歴を考慮して評価可能なシステムが記載されており、また、引用例5には不動産の情報を検索して情報を提供するデータベースを有するシステムが記載されており、そして、引用例5、6には不動産の情報として過去の取引価格である事例データを含む情報を用いることが記載されている旨指摘されていますが、引用例4〜6には、中古マンションの事例データについては記載されておりません。本願第1発明は、特に中古マンションである登録依頼物件の事例データを対象とするものであり、引用例5、6における不動産の事例データとは異なるものであります。すなわち、引用例5、6で扱う不動産(マンションを含む)の事例データは、実質的には土地又は土地を含む物件の取引であります。土地(土地付き建物)とマンションとを比較すると、1.土地は分筆等により変更になることが多いためDB化しても検索が難しくなる(そのため、坪単位等に換算された相場がDB化される)が、マンションは分割されることがないためDB化すれば物件自体(例えばAマンションB棟C階D号室)のデータを検索することが簡単となる点で相違する。2.土地付き建物は権利関係が通常所有権又は親族による少数の共有関係であり、そして、取壊しや新・増・改築等が比較的自由にできることから物件自体に変化が起きやすいため、DB化しても過去の事例は同じ状態ではないことが多く、参考になり難い。一方、マンションは通常堅固な躯体で区分され、権利関係も多数の共有で有るため、取壊しや新・増・改築等を自由にすることは困難であり当該物件に状況変化が起こらないことがほとんどであり、DB化した場合過去の事例は同じ状態であると推定でき、参考になる点で相違する。本願第1発明は、これらの相違点1.、2.に着目し、不動産のうちの特にマンションを対象とするものであり、引用例5、6とは質的に相違しています。そして、このことは、他の引用例にも記載されておらず、示唆もされておりません。したがって、本願第1発明は、引用例1〜6の存在にかかわらず、新規性及び進歩性があります。」
上記主張について検討する。上記主張が本願請求項5の記載に基づくものか否かはさておき、上記主張は要するに中古車とマンション、土地(土地付き建物)とマンションの性質の相違を述べ、該相違点に着目して本願発明はマンション自体の事例データを提供する点に特徴があるというものと解される。
しかしながら、過去の売買を事例として参考にし価格を決定することは、(相違点3について)で示したように周知事項であり、マンションの売買においても事例データを提供するようにすることは当業者が適宜なし得た事項である。そして売買対象をマンションとした場合にその事例の具体的内容をマンション売買に適合したものとすることは当然であり、かつマンション自体の事例データが価格決定の際に大いに参考になることは、本願による開示を待つまでもなく、通常のマンション売買の経験上明らかであるから、マンション自体の事例データを提供することは格別のものではない。
したがって、請求人の主張を検討しても審決の結論は変わらない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-07-23 
結審通知日 2003-07-29 
審決日 2003-08-11 
出願番号 特願2000-149909(P2000-149909)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 岡 千代子
平井 誠
発明の名称 マンション売買支援システム及びオークションセンタ用機器とデータセンタ用機器並びに記録媒体  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ