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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M |
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管理番号 | 1117474 |
審判番号 | 不服2003-17870 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-09-16 |
確定日 | 2005-04-11 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第523662号「燃料噴射式内燃エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年11月10日国際公開、WO94/25742、平成 8年10月29日国内公表、特表平 8-510306〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1994年4月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1993年4月29日、オーストラリア国)を国際出願日とする出願であって、平成15年6月5日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月16日付で手続補正がなされたものである。 2.平成15年10月16日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年10月16日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「内燃エンジンにおいて、少なくとも一つの燃焼室と、燃料を前記燃焼室の各々に送出するように構成された夫々の燃料噴射器手段とを有し、各燃料噴射器手段は、選択的に作動可能なノズルを持つノズルチャンバを有し、前記ノズルは、前記ノズルチャンバを前記燃焼室と連通するように作動でき、前記内燃エンジンは、前記ノズルチャンバから前記燃焼室に送出するために燃料を計量する燃料計量手段と、キャビティで形成されたガスチャンバ手段とを更に有し、 前記キャビティは、少なくとも一部が前記燃焼室の壁内に配置され、コンプレッサによってガスを供給されると共に、前記ノズルチャンバから横方向に間隔を隔てられ、前記ノズルチャンバにガスを供給するために前記ノズルチャンバと連通しており、 燃料は、前記ノズルチャンバから前記燃焼室にガス中に同伴された状態で送出される、内燃エンジン。」 と補正された。 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「外部供給源」をこれに含まれる事項である「コンプレッサ」に変更するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-134262号公報(以下、「引用例1」という。)には、「筒内噴射式内燃機関」に関して、次の事項が図面とともに記載されている。 ア.「まず第1図には船外機用の筒内噴射式2サイクル3気筒内燃機関が示されている。シリンダボディ10にはクランク軸12が縦置き配置され、クランク軸12にはコンロッド13を介して、横置き配置の各気筒内に収容されるピストン14が連結されている。15はシリンダヘッドであり、ピストン14の頂部との間で燃焼室16を画成する。 18はインジェクタであり、このインジェクタ18から各気筒の燃焼室16に臨むノズル19が延在している。また20はそれぞれ点火プラグである。・・(略)・・。 前記インジェクタ18には、燃料タンク30からの燃料が燃料ポンプ31、水分離器32、燃料ポンプ33を経て導入され、その燃料圧力は調圧器34によって調圧される。また後述する加圧気体の圧力が調圧器35によって調圧される。インジェクタ18は、エンジン制御ユニット36によって、最適な噴射時期を得るように、かつ燃焼室16からの加圧された気体をノズル19を介して最適な時期で抜き取ることができるように制御される。 第2図には前記インジェクタ18の一実施例の構造が示されている。まず40は燃料調量器であり、この燃料調量器40は前述の燃料タンク30から燃料通路41を介して導入される燃料を調量してその噴射口42から通路44内に燃料を噴射する。この通路44は通路45を介して加圧気体貯溜室46に連通しており、この加圧気体貯溜室46は第2図には図示しないが前述の調圧器35に連通している。 通路44はまた、第1図に示した燃焼室に臨むノズル19に連通しており、このノズル19はその口元部においてポペット型の開閉弁48により開閉される。開閉弁48の弁棒49はノズル19内を延在して第2図の上方にまで至り、ここにおいてコイルばね50により開閉弁48を閉じる方向に付勢されている。52はソレノイドコイルであり、このソレノイドコイル52が励磁されることにより弁棒49をコイルばね50の付勢力に抗して下降させ、開閉弁48を押し下げてノズル19を開口させる。なお第2図において53は弁棒49にねじ固定されるとともにコイルばね50の一端が当接される可動部材、54は燃料通路41と加圧気体貯溜室46を仕切り、燃料通路41内の燃料の脈動を制御するダイヤフラムである。なお、前記ソレノイドコイル52および燃料調量器40の作動は前述のエンジン制御ユニット36によって制御される。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左下欄第18行) 上記記載事項アによると、引用例1には、 「内燃機関において、少なくとも一つの燃焼室16と、燃料を前記燃焼室16の各々に送出するように構成された夫々のインジェクタ18とを有し、各インジェクタ18は、選択的に作動可能なノズル19を持つノズルチャンバを有し、前記ノズル19は、前記ノズルチャンバを前記燃焼室16と連通するように作動でき、前記内燃機関は、前記ノズルチャンバから前記燃焼室16に送出するために燃料を計量する燃料調量器40と、キャビティで形成された加圧気体貯溜室46とを更に有し、 前記キャビティは、前記燃焼室16の壁を構成するシリンダヘッド15の上に取り付けられたインジェクタ18内に配置され、燃焼室16からの加圧された気体を供給されると共に、前記ノズルチャンバから横方向に間隔を隔てられ、前記ノズルチャンバに気体を供給するために前記ノズルチャンバと連通しており、 燃料は、前記ノズルチャンバから前記燃焼室16に気体中に同伴された状態で送出される、内燃機関。」 との発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-253564号公報(以下、「引用例2」という。)には、「内燃機関エンジン用燃料供給装置」に関して、次の事項が図面とともに記載されている。 カ.「本発明は、シリンダ、該シリンダ内で往復運動するピストン、蓄積チャンバを形成する手段、ピストンの往復運動に応じて加圧ガスを該シリンダから該蓄積チャンバへ供給し、それによって加圧ガスを該蓄積チャンバ内に蓄積するために該シリンダと該蓄積チャンバとの間を連通させる弁付き供給導管手段、該蓄積チャンバと該シリンダとの間を連通させ、そして該蓄積チャンバからの加圧ガスを圧力下の燃料と選択的に混合させ、その結果の燃料・ガス混合気を該シリンダ内へ吐出すように作動する弁付き吐出し導管手段、および燃料源と連通し、そして該弁付き吐出し導管手段が該蓄積チャンバからの加圧ガスを圧力下の燃料と混合させ、その結果の燃料・ガス混合気を該シリンダ内へ吐出すように作動するのに十分な圧力において該弁付き吐出し導管手段に圧力下の燃料を供給するために作動するようになっている手段を含んで成る内燃機関エンジンを提供するものである。」(第5頁左上欄第2〜19行) キ.「蓄積チャンバ31は、さまざまの形状をとることが可能であるが、少なくともその一部分はシリンダ23を形成するエンジンブロックすなわちヘッド22内に形成されているのが好ましい。」(第5頁右下欄第14〜17行) ク.「再び図1を参照して、弁付き吐出し導管手段51は、シリンダ23と連通する第1端部および第2端部すなわちめくら端部123を含む第1分岐導管すなわちセグメント121ならびに第1分岐導管121と連通する第1端部および蓄積チャンバ31と連通する第2端部を含む第2分岐導管すなわちセグメント125を含んで成る。」(第9頁左上欄第15行〜同頁右上欄第1行) (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「内燃機関」は、本願補正発明の「内燃エンジン」に相当し、以下同様に、「燃焼室16」は「燃焼室」に、「インジェクタ18」は「燃料噴射器手段」に、「ノズル19」は「ノズル」に、「燃料調量器40」は「燃料計量手段」に、「加圧気体貯溜室46」は「ガスチャンバ手段」に、「気体」は「ガス」に、それぞれ相当する。 してみると、両者は、 「内燃エンジンにおいて、少なくとも一つの燃焼室と、燃料を前記燃焼室の各々に送出するように構成された夫々の燃料噴射器手段とを有し、各燃料噴射器手段は、選択的に作動可能なノズルを持つノズルチャンバを有し、前記ノズルは、前記ノズルチャンバを前記燃焼室と連通するように作動でき、前記内燃エンジンは、前記ノズルチャンバから前記燃焼室に送出するために燃料を計量する燃料計量手段と、キャビティで形成されたガスチャンバ手段とを更に有し、 前記キャビティは、ガスを供給されると共に、前記ノズルチャンバから横方向に間隔を隔てられ、前記ノズルチャンバにガスを供給するために前記ノズルチャンバと連通しており、 燃料は、前記ノズルチャンバから前記燃焼室にガス中に同伴された状態で送出される、内燃エンジン。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点]本願補正発明においては、キャビティは、少なくとも一部が燃焼室の壁内に配置され、コンプレッサによってガスを供給されるのに対し、引用例1記載の発明においては、キャビティは、燃焼室の壁を構成するシリンダヘッドの上に取り付けられた燃料噴射器手段内に配置され、燃焼室からの加圧されたガスを供給される点。 (4)判断 上記[相違点]について検討する。 引用例2には、上記記載事項カ〜クによると、シリンダ、該シリンダ内で往復運動するピストン、蓄積チャンバを形成する手段、ピストンの往復運動に応じて加圧ガスを該シリンダから該蓄積チャンバへ供給し、それによって加圧ガスを該蓄積チャンバ内に蓄積するために該シリンダと該蓄積チャンバとの間を連通させる弁付き供給導管手段、該蓄積チャンバと該シリンダとの間を連通させ、そして該蓄積チャンバからの加圧ガスを圧力下の燃料と選択的に混合させ、その結果の燃料・ガス混合気を該シリンダ内へ吐出すように作動する弁付き吐出し導管手段、および燃料源と連通し、そして該弁付き吐出し導管手段が該蓄積チャンバからの加圧ガスを圧力下の燃料と混合させ、その結果の燃料・ガス混合気を該シリンダ内へ吐出すように作動するのに十分な圧力において該弁付き吐出し導管手段に圧力下の燃料を供給するために作動するようになっている手段を含んで成る内燃機関エンジンにおいて、「蓄積チャンバ31は、シリンダ23を形成するエンジンブロックすなわちヘッド22内に形成され、弁付き吐出し導管手段51から横方向に間隔を隔てられ、弁付き吐出し導管手段51にガスを供給するために第2分岐導管125を介して弁付き吐出し導管手段51と連通している」技術が開示されている。 また、燃料が、ノズルチャンバから燃焼室にガス中に同伴された状態で送出される内燃エンジンにおいて、「コンプレッサ等の外部供給源によってガスを供給する」ことは、周知の技術[必要なら、引用例1の第2頁左上欄第8〜12行の記載,実願昭59-178125号(実開昭61-92763号)のマイクロフィルム,特開昭63-88268号公報の第4頁左下欄第12行〜同頁右下欄第2行の記載,特開平2-95771号公報の第1頁右下欄第3行〜第2頁左上欄第2行の記載,特開平2-115569号公報の第1頁右下欄第1〜13行の記載,特開平2-233866号公報,特開平4-19359号公報,特開平4-72461号公報,特開平4-86374号公報、参照。]である。 そうすると、引用例1記載の発明において、引用例2記載の上記技術,上記周知の技術を勘案して、「前記キャビティは、少なくとも一部が前記燃焼室の壁内に配置され、コンプレッサによってガスを供給される」ように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。 そして、本願補正発明の効果も、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年10月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明1」という。)は、平成15年1月30日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。 「内燃エンジンにおいて、少なくとも一つの燃焼室と、燃料を前記燃焼室の各々に送出するように構成された夫々の燃料噴射器手段とを有し、各燃料噴射器手段は、選択的に作動可能なノズルを持つノズルチャンバを有し、前記ノズルは、前記ノズルチャンバを前記燃焼室と連通するように作動でき、前記内燃エンジンは、前記ノズルチャンバから前記燃焼室に送出するために燃料を計量する燃料計量手段と、キャビティで形成されたガスチャンバ手段とを更に有し、 前記キャビティは、少なくとも一部が前記燃焼室の壁内に配置され、外部供給源によってガスを供給されると共に、前記ノズルチャンバから横方向に間隔を隔てられ、前記ノズルチャンバにガスを供給するために前記ノズルチャンバと連通しており、 燃料は、前記ノズルチャンバから前記燃焼室にガス中に同伴された状態で送出される、内燃エンジン。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明の構成に欠くことができない事項である「コンプレッサ」をこれを含む事項である「外部供給源」に変更したものである。 そうすると、本願発明1の構成に欠くことができない事項である「外部供給源」をこれに含まれる事項である「コンプレッサ」に変更したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-11-18 |
結審通知日 | 2004-11-19 |
審決日 | 2004-11-30 |
出願番号 | 特願平6-523662 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩瀬 昌治 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
亀井 孝志 平城 俊雅 |
発明の名称 | 燃料噴射式内燃エンジン |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 吉武 賢次 |