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審決分類 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 無効としない G02F
管理番号 1117570
審判番号 無効2004-35138  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-03-17 
確定日 2005-06-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第2823993号発明「液晶表示装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件無効審判事件に係る特許第2823993号の手続の経緯は以下のとおりである。
平成 4年 8月 3日 特許出願
平成10年 6月15日 手続補正
平成10年 9月 4日 設定登録
平成14年 8月29日 ベンクジャパン株式会社より無効審判2002- 35360請求
平成15年 4月 7日 無効審判2002-35360につき、請求項2 にかかる特許を維持、請求項1、3に係る特許を 取り消すとの審決
平成15年 4月16日 無効審判2002-35360につきシャープ株 式会社出訴(平成15年(行ヶ)147号)
平成15年 4月18日 ベンキュージャパン株式会社より無効審判200 3-35158請求
平成15年 4月23日 シャープ株式会社より訂正審判2003-390 78請求
平成15年 4月30日 無効審判2002-35360につきベンクジャ パン株式会社出訴(平成15年(行ヶ)176号 )
平成15年 6月10日 訂正審判2003-39078につき訂正を認め るとの審決
平成15年 8月 7日 平成15年(行ヶ)147号につき訂正確定によ り審決を取り消すとの判決
平成15年11月14日 ベンキュージャパン株式会社より無効審判200 3-35468請求
平成16年 3月17日 ベンキュージャパン株式会社より本件無効審判2 004-35138請求
平成16年 5月31日 無効審判2003-35468につき請求項1〜 3にかかる特許を維持するとの審決
平成16年 7月22日 平成15年(行ヶ)176号につき審決を取り消 すとの判決
平成16年12月 9日 平成15年(行ヶ)176号の上告受理申立却下
(上記において、請求人の名称は、それぞれの無効事件等において登録されているものを用いた。)

2.訂正審判2003-39078における訂正事項
訂正審判2003-39078の訂正請求(平成15年4月23日付)の要旨は、特許第2823993号発明(平成4年8月3日特許出願、平成10年9月4日設定登録)の明細書を下記(1)ないし(3)のとおり訂正するものであった。(下線部は訂正部分を示す。)
(1)特許請求の範囲の請求項1を特許請求の範囲の減縮を目的として下記のように訂正する。
「液晶表示素子を照明する後方照明装置と、少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え、前記後方照明装置は、液晶表示素子の後方に配された導光板と、該導光板の端部に配された光源と、該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において、前記光源は、前記光源保持体に一体的に保持され、該光源保持体は、前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって、前記保持筺体および前記導光板に対して着脱自在とされたことを特徴とする液晶表示装置。」
(2)特許請求の範囲の請求項2を明りょうでない記載の釈明を目的として下記のように訂正する。
「液晶表示素子を照明する後方照明装置と、少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え、前記後方照明装置は、液晶表示素子の後方に配された導光板と、該導光板の端部に配された光源と、該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において、前記光源は、前記光源保持体に一体的に保持され、該光源保持体は、前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって、前記保持筺体に対して着脱自在とされ、前記光源保持体に、前記光源の電力供給用配線の保持機構が設けられたことを特徴とする液晶表示装置。」
(3)発明の詳細な説明の段落0011を明りょうでない記載の釈明を目的として下記のように訂正する。
「【実施例】本実施例の液晶表示装置は、図1,2の如く、液晶表示素子11を照明する後方照明装置を備え、該後方照明装置は、液晶表示素子11の後方(図中の下方)に平行に配された導光板12と、該導光板12の端部に配された光源13と、該光源13からの発散光を導光板12へ向けて反射する反射体14とを備え、更に液晶表示装置は、これらを保持する保持筺体15とを備えている。」

3.無効理由
3-1.無効理由
平成15年4月23日付の訂正審判請求書によってなされた明細書の発明の詳細な説明の段落【0011】についての訂正(上記2.(3)の訂正事項。以下、これを「本件訂正事項」という。審決注)は、明りょうでない記載の釈明を目的としたものではないので、当該訂正は特許法第126条第1項ただし書の規定を満たしておらず、特許法第123条第1項第7号の規定により本件特許に係る請求項1〜3の各発明についての特許は無効とすべきものである。

3-2.無効理由に関する請求人の主張
A)願書に添付した明細書及び図面の記載不備について
願書に添付した明細書の記載によれば、その【0011】段落に、後方照明装置は、導光板12と、光源13と、反射体14と、保持筺体15とから成ることが明記されている。すなわち、保持筺体15は後方照明装置を構成する一部材であることが明記されている。
しかし、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1においては、「後方照明装置を保持する保持筺体」とあり、保持筺体が後方照明装置を保持する構成となっているので、請求項1に記載されたこの「保持筺体」が如何なる部材であるかが「発明の詳細な説明」の記載を精査しても不明である。
また、請求項1においては、「該光源保持体は、…によって、前記保持筺体に対して着脱自在」(下線は請求人による付加)と記載されている。
したがって、「保持筺体」は、後方照明装置を保持すると共に、光源を一体的に保持する光源保持体をも着脱自在とすることとなり、明細書の発明の詳細な説明の【0018】段落に記載されている、「反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている」との記載との対応関係が不明瞭であり、当業者はその技術的思想を把握することができず、したがって請求項1に記載された特許発明の技術的意義を理解することができないものであると言わざるを得ない。
請求項1に従属している請求項2及び3の各発明についても同様である。
以上の理由により、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しているということはできず、願書に添付した明細書の記載は特許法第36条第4項の規定を満しておらず、また、特許請求の範囲の記載は不明りょうであるので、同第5項第1号、第2号の規定を満していないという状況にあった。
B)訂正審判による明細書【0011】段落の訂正
審判便覧の「54-10」の第5頁には、訂正審判における明りょうでない記載の釈明の類型として、
(1)それ自体記載内容が明かでない記載を正す場合。
(2)それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正す場合。
(3)発明の目的、構成又は効果が技術的に不明りょうとなっている記載等を正し、その記載内容を明確にする場合。
が挙げられており、ここで「釈明」とは、それ本来の意味と内容を明かにすることであるとされている。

C)願書に添付した明細書及び図面の開示内容
願書に添付した明細書の実施例に開示されている発明は、光源13と反射体14とは一体化されて光源ユニット25を構成しており、反射体14は導光板12に対して着脱自在とされており、保持筺体15の端部に形成された案内レールであるスライド機構22により反射体14を導光板12に対して容易に位置決めして着脱自在とした構成のものであって、この着脱のための位置決めを容易ならしめるためにスライド機構22を用いたと言う構成となっている。そして、実施例にあっては、このスライド機構が、保持筺体の端部に案内レールとして形成されているというのである。
ところで、願書に最初に添附した明細書の特許請求の範囲の請求項1では、「前記反射体は、スライド機構により導光板に対して着脱自在とされた」と記載されている。
この記載は、明細書の【0011】段落の記載と何ら矛盾するものでなく、かつ、明細書の【0018】段落の、「反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている。」との記載と整合しており、明細書全体を通じて何らの不整合も生じていなかったのである。
しかるに、これを出願公告決定の謄本送達前の手続補正により請求項1の記載を「後方照明装置は保持筺体によって保持される」構成に変更すると共に、「該光源保持体は、前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって、前記保持筺体に対して着脱自在とされた…」と変更した結果、上述の如き不整合を生じるに至ったのである。

D)訂正の不適法性について
明りょうでない記載の釈明とはそれ本来の意味、内容を明かにすることであるという趣旨から言えば、例えば、元来あった記載の間における不整合についての補充、訂正等を言うものと解され、後から加えられた記載(本件の場合、平成10年6月15日付手続補正書においてなされた特許請求の範囲の補正による記載)のために当初からの記載との間で不整合を生じた場合、その釈明をなすに当り、後から加えられた補正の正当性を主張するために、本来何ら不都合の生じていなかった記載を合理的な理由を示すことなしに訂正することは、明りょうでない記載の釈明とは言えず、単なる辻褄合せのための変更にすぎないと言うべきである。
本件の場合について言えば、明りょうでない記載の釈明の根拠とするところは、次の2点にあるとされている。
(a)【0007】段落に請求項1の記載と同一の記載があること(訂正審判2003-39078の審決第3頁第30行〜同第4頁第3行参照)。
(b)図1から、光源13および反射体14が液晶11及び保持筺体15に対して引き出されている様子がみてとれ、またその際に導光板12が引き出されていないことがみてとれること(同審決第3頁第12行〜同第15行、及び第4頁第4行〜同第7行参照)。

しかし、(a)は特許請求の範囲の記載の補正に伴ってそれと同一表現となるように補正された記載であり、合理的な理由を説明するための根拠になりえないことは明かである。
一方、(b)は、図面の記載のみに根拠を求めるものである。図面から、光源13および反射体14がスライド機構22によりガイドされて導光板12に対して着脱自在に引き出される際に、光源13および反射体14が保持筺体15と相対的に運動することになる構成となっていることはみてとれると言える。

ところで、【0011】段落についての訂正は、各請求項の発明において、保持筺体が後方照明装置を保持する構成を前提としているにも拘らず、【0011】段落には、保持筺体は後方照明装置との一構成要素であると記載されていることの矛盾を、明りょうでない記載のためであるとし、これを釈明するためになされたのであった。
訂正後の【0011】段落の記載によれば、
(イ)後方照明装置は導光板12、光源13、反射体14を備えており、
(ロ)液晶表示装置は、更に保持筺体15とを備えている
というものであるが、保持筺体15が何を保持するのかについては必ずしも明りょうではない上に、「保持筺体15とを備えている。」の表現は不自然なものとなっている。
しかし、保持筺体が後方照明装置を保持するものであることは、図1、図2及び願書に添付した明細書の記載から明かであると言うことはできない。
図面において反射体14が保持筺体15と相対的に運動する構成になっていることのみをもって、保持筺体15が後方照明装置の一構成要素であると解すべき合理的根拠は全くなく、図1、図2のみをもって保持筺体15は後方照明装置を保持するためのものであるなどという認定を行うことは到底許されるものではない。

さらに、訂正後の記載によれば、「これらを保持する保持筺体15」とあり、保持筺体15は複数のものを保持している表現となっているところ、それらが何であるかは明細書の記載のみでは明りょうではない。本来の意味、内容を明かにするための訂正でありながら、却って訂正後の記載は不明りょうなものとなっている。

以上の次第で、【0011】段落の訂正は、特許法第126条第1項ただし書に規定される明りょうでない記載の釈明でないことは明白であり、「特許請求の範囲を訂正することによって生じた不整合の辻褄を合わせるためになされた単なる記載の変更」であると言うべきである。

3-3.被請求人の主張
訂正前の明細書の段落0011は、保持筐体15が後方照明装置に含まれるかの如き表現となっており、「少なくとも該後方照明装置を保持する保持筐体」という本件特許の請求項1の記載等と整合せず、不明りょうであった。本件訂正事項は、かかる不整合を解消し、保持筐体が後方照明装置を保持するものであることを明らかにしたものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
訂正審判において訂正の対象とされる明細書は、特許法126条1項に規定されているとおり、「願書に添付した明細書」であり、「願書に最初に添付した明細書」ではない。よって、「願書に添付した明細書」に不明りょうな記載が存在すれば、当該記載が後から加えられたか否かに関係なく、明りょうでない記載の釈明として訂正することができるのである。
また、訂正前の請求項1及び明細書の段落0007には、「後方照明装置を保持する保持筐体」という記載が存在し、保持筐体が後方照明装置を保持するものであることは明示されていたので、請求人の主張は失当である。

4.特許明細書及び図面の記載事項
特許明細書には以下の記載がある。
「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ワードプロセッサやパーソナルコンピュータ等の表示に使用される液晶表示装置に関するものである。

【0006】本発明は、上記課題に鑑み、組み立てが容易で、光源の交換も容易に行え、また、高輝度でコンパクトな液晶表示装置の提供を目的とする。
【0007】【課題を解決するための手段】本発明による課題解決手段は、図1,2の如く、液晶表示素子11を照明する後方照明装置と、後方照明装置を保持する保持筺体15とを備え、前記後方照明装置は、液晶表示素子11の後方に配された導光板12と、該導光板12の端部に配された光源13と、該光源13を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において、前記光源13は、光源保持体に一体的に保持され、該光源保持体は、光源13の長手方向に可動するスライド機構22により保持筺体15に対して着脱自在とされたものである。
【0008】そして、光源保持体に、光源13の電力供給用リード線17の保持機構19が設けられたものである。また、光源保持体は、光源13からの発散光を導光板12に向けて反射する反射体14である。
【0009】【作用】上記課題解決手段において、組み立て時および光源交換時には、光源13と一体化された光源保持体である反射体14を、スライド機構22にて保持筺体15から分離するだけで作業を行える。そうすると、交換が容易となる。
【0010】そして、反射体14に、光源13の電力供給用リード線17の保持機構19を設けているので、組み立て時および光源交換時にリード線17が邪魔にならず、かつコンパクトな液晶表示装置を得られる。
【0011】【実施例】本実施例の液晶表示装置は、図1,2の如く、液晶表示素子11を照明する後方照明装置を備え、該後方照明装置は、液晶表示素子11の後方(図中の下方)に平行に配された導光板12と、該導光板12の端部に配された光源13と、該光源13からの発散光を導光板12へ向けて反射する反射体14と、これらを保持する保持筺体15とを備えている。

【0014】前記反射体14は、高反射樹脂材料を用いて、押し出し成型法にて形成されたものであり、内周が断面円弧状とされ光源13を一体的に保持する光源保持部18と、光源13の電力供給用リード線17の保持機構(以下、リード線保持部という)19と、前後両方向(図中の上下方向)から前記導光板12の端部を挟み込んで保持する導光板保持部20とが設けられている。

【0016】前記リード線保持部19は、リード線17を嵌合する嵌合溝であり、反射体14の導光板12と逆側に配される。
【0017】前記導光板保持部20は、光源保持部18の開放側の前後両部分(図中の上下両部分)に延設された一対の保持片で、該保持部20の前後(上下)の間隔は、導光板12に対して遊嵌するようその厚さより大とされる。該導光板保持部20と前記光源保持部18の接続点には、内側に向けてストッパ21が突出形成される。
【0018】そして、反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている。該スライド機構22は、前記保持筺体15の端部に形成された案内レールであり、該案内レール22の端部は、反射体14を出し入れ可能とするよう開放されている。
【0019】図1,2中、24は回路基板、25は光源と反射体が一体化された光源ユニットである。

【0021】次に、保持筺体15内の導光板12の端部に反射体14の導光板保持部20を対応させながら、光源13を反射体14ごと保持筺体15に取り付ける。この際、反射体14を、スライド機構22により挿入方向へ案内しながら挿入するので、位置決めがしやすくなり、作業効率を向上できる。…
【0022】また、光源13の交換時には、反射体14を導光板12に対して分離し、交換作業をなす。この場合、スライド機構22を設け、導光板保持部20の一対の保持片の離間距離を導光板12の厚さより大としているので、反射体14をスライド機構22で導光板12からスライドさせるだけで分離でき、安全性を向上でき、交換作業が容易となる。

【0025】【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明によると、光源を光源保持体に一体化し、光源保持体をスライド機構にて保持筺体に着脱自在としているので、組み立て時に光源を取り付けるとき、スライド機構を通じて光源保持体ごと保持筺体に取り付けることができる。また、光源交換時に、光源を光源保持体ごと保持筺体から分離するだけで交換作業を行える。したがって、光源の取り付け作業および交換作業が容易となる。また、割れやすい光源を保護したまま取り扱うことで、安全性を向上できる。…」

また、図1は、本発明の一実施例の液晶表示装置を示す図であって、該図には、光源13および反射体14が、液晶11及び保持筐体15に対して、引き出されている様子がみてとれ、またその際に、導光板12が引き出されていないことがみてとれる。さらに、図1,2には、保持筐体15が、導光体12、反射体14の後方のみならず、導光板の前方にも配置されていることがみてとれる。

5.当審の判断
まず本件無効事件の判断にあたり、先行訂正審判事件(訂正審判2003-39078)において訂正の対象となる明細書は、「願書に添付した明細書」であって、特許明細書がこれにあたることは明らかである。

そして、訂正前の明細書の段落0011の記載は、保持筐体15が後方照明装置に含まれるかのような記載となっており、その点で、「少なくとも該後方照明装置を保持する保持筐体」という本件特許の請求項1の記載等と整合していない点についても両者に争いはない。

そこで、特許明細書の他の記載及び図面において、「保持筐体15」が、他の部材との関連においてどのように把握できるか、即ち、
i)後方照明装置は保持筐体を含むと把握すべきか、
ii)保持筐体は、液晶表示装置の一部材として把握できるか、
について以下検討する。
特許明細書には、
「【0007】【課題を解決するための手段】本発明による課題解決手段は、図1,2の如く、液晶表示素子11を照明する後方照明装置と、後方照明装置を保持する保持筺体15とを備え、前記後方照明装置は、液晶表示素子11の後方に配された導光板12と、該導光板12の端部に配された光源13と、該光源13を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において、前記光源13は、光源保持体に一体的に保持され、該光源保持体は、光源13の長手方向に可動するスライド機構22により保持筺体15に対して着脱自在とされたものである。」と記載されており、これから、
(a)液晶表示装置が、液晶表示素子11、後方照明装置、後方照明装置を保持する保持筺体15から構成されること、
(b)後方照明装置が、導光板12、光源13及び光源保持体から構成されること、
(c)光源13は、光源保持体に一体的に保持されること、並びに、
(d)光源保持体は、光源13の長手方向に可動するスライド機構22により保持筺体15に対して着脱自在とされたものであること、
が把握できる。
即ち、上記(a)〜(d)から、次の関係が把握できる。

液晶表示装置 ―┬──液晶表示素子11

├──後方照明装置
│ ├─導光板12
│ ├─光源13 ←┐一体的に保持
│ └─光源を保持する光源保持体 ←┘
│ ↑
│ スライド機構22により着脱自在
│ ↓
└――後方照明装置を保持する保持筐体15

また、特許明細書には、
「【0009】【作用】上記課題解決手段において、組み立て時および光源交換時には、光源13と一体化された光源保持体である反射体14を、スライド機構22にて保持筺体15から分離するだけで作業を行える。そうすると、交換が容易となる。」
と記載されており、これから、
(e)反射体14は、光源保持体であること、並びに、
(f)光源13及び反射体14は一体化されていること、
が把握できる。
さらに、特許明細書には、
「【0014】前記反射体14は、高反射樹脂材料を用いて、押し出し成型法にて形成されたものであり、内周が断面円弧状とされ光源13を一体的に保持する光源保持部18と、光源13の電力供給用リード線17の保持機構(以下、リード線保持部という)19と、前後両方向…から前記導光板12の端部を挟み込んで保持する導光板保持部20とが設けられている。…
【0018】そして、反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている。該スライド機構22は、前記保持筺体15の端部に形成された案内レールであり、該案内レール22の端部は、反射体14を出し入れ可能とするよう開放されている。
【0019】図1,2中、24は回路基板、25は光源と反射体が一体化された光源ユニットである。…
【0021】次に、保持筺体15内の導光板12の端部に反射体14の導光板保持部20を対応させながら、光源13を反射体14ごと保持筺体15に取り付ける。この際、反射体14を、スライド機構22により挿入方向へ案内しながら挿入するので、位置決めがしやすくなり、作業効率を向上できる。…
【0022】また、光源13の交換時には、反射体14を導光板12に対して分離し、交換作業をなす。この場合、スライド機構22を設け、…スライドさせるだけで分離でき、安全性を向上でき、交換作業が容易となる。」と記載されており、
(g)反射体14は、光源保持部18、リード線保持部19及び導光板保持部20から構成されること、
(h)光源13及び反射体14は一体化されて光源ユニット25を構成していること、並びに、
(i)一体化された光源13及び反射体14は、スライド機構22により、保持筺体15及び導光板12に対して着脱自在になっていること、
が把握できる。
即ち、上記(e)〜(i)から、次の関係が把握できる。

光源ユニット25―┬─反射体14(=光源保持体)┬光源保持部18
│ ↑ ├リード線保持部19
│ 一体化 └─導光板保持部20
│ ↓
└―光源13

スライド機構22により着脱自在

保持筐体15及び導光板12

また、図面から、上記事項(「4.特許明細書及び図面の記載事項」の図面からみてとれる事項参照)がみてとれることから、
(j)液晶表示装置は、一つの部材として保持筺体15を備えていること、
(k)保持筺体15は、光源13及び反射体14を保持し、それらを着脱自在にしていること、
(l)保持筐体15は、反射体14及び導光板12とは別体のものであること、並びに、
(m)保持筐体は液晶表示装置の前方にも有ること、
が把握できる。(なお、上記(a)〜(m)の事項は、それぞれの事項から把握できる事項を列挙したものであって、重複する事項を含むものである。)

してみれば、上記(a)〜(m)の事項から、特許明細書の他の記載及び図面からは、
i)後方照明装置は、後方照明装置を保持する保持筐体を含むものとしては記載されておらず、
ii)保持筐体は、液晶表示装置の一部材として把握できる、
ものであるから、本件訂正事項は、特許明細書及び図面から把握できる事項に基づいてなされたものである。

よって、本件訂正事項は、訂正前の段落【0011】において後方照明装置と保持筐体15との関係が明りょうでなかったところ、これを願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内において、明りょうにしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

なお、請求人は、『「保持筺体15とを備えている。」の表現は不自然なものとなっている。』と主張するが、該表現が有るからといって、特許明細書から総合的に判断した上記判断が異なるものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし3の特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-25 
結審通知日 2005-03-29 
審決日 2005-04-19 
出願番号 特願平4-206460
審決分類 P 1 112・ 853- Y (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 瀧本 十良三
町田 光信
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823993号(P2823993)
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 伊藤 高英  
代理人 高野 昌俊  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 山本 光太郎  
代理人 永島 孝明  
代理人 明石 幸二  
代理人 磯田 志郎  
代理人 伊藤 晴國  

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