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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1117823
異議申立番号 異議2003-72034  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-07-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-11 
確定日 2005-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3379122号「インクジェット記録装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3379122号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3379122号に係る発明の出願は、平成4年12月15日に特許出願され、平成14年12月13日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人東芝テック株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月12日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を次に訂正する(下線は訂正箇所を示す)。
「【請求項1】インクジェットヘッドと該ヘッドの駆動手段とを備えたインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは、底壁と天壁および対向する2つの側壁に囲まれた圧力室を複数有し、隣接する圧力室は共通の1つの側壁を堺として配置されており、各側壁の少なくとも一部は壁に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電物質からなり、前記駆動手段は前記対向する2つの側壁の圧電物質に電界を印加し、充電して前記圧電物質を変形させて駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有し、前記圧電物質に電界を印加して前記駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させる際に前記駆動圧力室に隣接する非駆動圧力室において誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に前記放電開始タイミングを設定し、前記放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとしたことを特徴とするインクジェット記録装置。」
2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2,3を削除する。
3)訂正事項c
明細書段落【0008】を次に訂正する(下線は訂正箇所を示す)。
「【課題を解決するための手段】本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと該ヘッドの駆動手段とを備えたインクジェット記録装置において、インクジェットヘッドは、底壁と天壁および対向する2つの側壁に囲まれた圧力室を複数有し、隣接する圧力室は共通の1つの側壁を堺として配置されており、各側壁の少なくとも一部は壁に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電物質からなり、駆動手段は対向する2つの側壁の圧電物質に電界を印加し、充電して圧電物質を変形させて駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有し、前記圧電物質に電界を印加して前記駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させる際に前記駆動圧力室に隣接する非駆動圧力室において誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に放電開始タイミングを設定し、放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとしたことを特徴とする。また、本発明の参考例のインクジェット記録装置は、駆動手段に電界を印加して圧力室を膨張、収縮させて圧力室内のインク圧力を変動させることによりインクを吐出するインクジェット記録装置において、駆動手段は、充電して圧電物質を変形させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有し、放電開始タイミングをメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点近傍かそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に設定し、放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとしたことを特徴とする。また、係るインクジェット記録ヘッドにおいて、放電により圧力室が収縮することを特徴とする。」

(2)訂正の目的、新規事項の有無、拡張変更の存否の各要件についての判断
上記訂正事項aは、請求項1について、「充電して前記圧電物質を変形」がいわゆる押し打ちのものであることの限定、「誘引されるメニスカス振動」が非駆動圧力室において誘引されることの明瞭化、及び「それに続くメニスカス」が誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からであることの限定、を願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなすものである。
また、上記訂正事項bは、請求項2,3の削除である。
さらに、上記訂正事項cは、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるためのものである。
したがって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.異議申立てについての判断
(1)本件発明
本件請求項1に係る発明は訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記訂正事項a参照。以下、「本件発明」という。)。

(2)刊行物1とその記載事項
取消理由に引用された刊行物1(特開平4-357037号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
a.「このようなインクジェットプリンタヘッドにおいて、隣接する二つの側壁32の電極37にそれぞれ逆の電位の電圧を印加すると、この部分の側壁32は、底部シート30の矢印方向の極性に対して直交する方向の電位を受けて図14に点線で示すように剪断歪みを起こす。これにより、剪断歪みを起こした側壁32の間の圧力室(溝31)の容積が急激に小さくなり、その圧力室の圧力が高められてインクが吐出口から飛翔される。」(2頁2欄8〜16行)
b.「さらに、図5(c)に示すように、圧電部材2の表面に天板10を接着する。この時、メッキ膜の膜厚よりも厚いレジスト膜7(略20μm)が除去されているので、天板10を圧電部材2の上面に良好に接合させることができる。そして、各溝3の先端に連通する多数のインク吐出口11が形成されたノズル板12を基板1と圧電部材2と天板10との側面に固定することにより、インクジェットプリンタヘッドが完成される。なお、天板10はインク供給部(図示せず)と各溝3とを接続するインク供給管13を有する。また、図1に示すように、各溝3の開口面を天板10により閉塞することによって圧力室14が形成される。」(4頁6欄10〜21行)
c.「このような構成において、図1において、中央の圧力室14のインクを吐出させる場合について述べる。圧力室14のそれぞれにはインク供給管13からインクが供給される。ここで、中央の圧力室14の電極8と左側に隣接する圧力室14の電極8との間に配線パターン9を介して電圧Aを印加し、中央の圧力室14の電極8と右側に隣接する圧力室14の電極8との間に電圧Bを印加する。A,Bの電圧の極性は逆で、上部支柱4aには矢印により示す分極方向と直交する方向に電界がかけられる。これにより、中央の圧力室14の左側の支柱4は左方に歪み右側の支柱4は右側に歪み、中央の圧力室14の容積が増大し、その両側の圧力室14の容積は減少する。」(4頁6欄22〜34行)
d.「図2に電圧A,Bの印加状態と中央の圧力室14の圧力Pの変化とを示すが、一定の期間aの間で電圧A,Bが緩やかに高められるため、容積が減少した左右の圧力室14のインクがインク吐出口11から飛翔することはない。中央の圧力室14は容積の増大により内圧が低下しインク吐出口11のメニスカス(インクの表面)が若干後退するがインク供給管13のインクを吸引する。図2のbの時点では、これまでとは逆の電圧が電極8に急激に印加されるため、中央の圧力室14の左側の支柱4は右側に歪み右側の支柱4は左側に歪み、中央の圧力室14の容積は急激に減少する。これにより、中央の圧力室14のインク吐出口11からインクが飛翔される。この時の電圧は図2にcによって示す一定期間印加され、この間は飛翔中のインク滴の尾部はインク吐出口11から分離されることはない。図2のdの時点で電極8への電圧印加を急激に遮断すると、歪んだ支柱4が元の姿勢に復帰するため中央の圧力室14の内圧が急激に低下し、したがって、インク吐出口11のインクが内方に吸引され飛翔中のインク滴の尾部が圧力室14の中心を通る直線上で分離される。これにより、インク滴の飛翔方向が一定となり、飛翔中のインク滴が複数に分離される状態、すなわち、サテライトドットの発生を防止することができる。電極8への通電を遮断した瞬間に、中央の圧力室14の左右両側の圧力室14の内圧は上昇するが、インク吐出口11からインクを飛翔させる程の圧力には達しない。」(4頁6欄35行〜5頁7欄10行)
e.「以上のように、支柱4の天板10側の一部(上部支柱4a)は剛性の高い圧電部材2により形成されているが残りの部分(下部支柱4b)は圧電部材2より剛性の低い基板1により形成することができ、この結果、圧電部材2の上部支柱4aの歪に対する基板1の下部支柱4bによる抵抗力が低減され、したがって、支柱4の歪量を大きくしてインク滴の吐出特性を向上させることが可能となる。」(5頁7欄11〜18行)

(3)刊行物1に記載された発明の認定
インクジェットプリンタヘッドを備えた装置は、インクジェットプリンタということができ、インクジェットプリンタヘッドを駆動するための駆動回路を有する駆動手段を備えていることは明らかである。
また、記載事項b,c,dと図1からみて、支柱4は上部支柱4aと基板1の底部(圧力室14の底側となる部分)から連続する下部支柱4bとからなり、記載事項aと図14も参酌すれば、支柱4は支柱に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電部材2からなり、記載事項eによれば上部支柱4aは圧電部材2により形成されているものである。
さらに、図2も参酌すれば、前記駆動手段の駆動回路は、図1図示中央の吐出駆動される圧力室14を、対向する2つの支柱4の圧電部材2に電界を一定期間印加し、圧電部材2を変形させて容積を増大させてインクを吸引し、逆電圧を急激に印加して容積を急激に減少させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させるように駆動しているものである。
したがって、刊行物1には、上記記載事項a〜eを含む明細書及び図面の全記載によれば、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「インクジェットプリンタヘッドと該ヘッドの駆動手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インクジェットプリンタヘッドは、基板1の底部と天板10および対向する2つの支柱4に囲まれた圧力室14を複数有し、隣接する圧力室14は共通の1つの支柱4を堺として配置されており、各支柱4の上部支柱4aは支柱に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電部材2からなり、前記駆動手段は、吐出駆動される圧力室14を、対向する2つの支柱4の圧電部材2に電界を一定期間印加し、圧電部材2を変形させて容積を増大させてインクを吸引し、逆電圧を急激に印加して容積を急激に減少させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有したことを特徴とするインクジェットプリンタ。」

(4)対比・判断
本件発明(前者)と引用発明(後者)を対比するに、後者の「インクジェットプリンタヘッド」、「インクジェットプリンタ」、「天板10」、「圧電部材2」、及び「吐出駆動される圧力室14」は、それぞれ、前者の「インクジェットヘッド」、「インクジェット記録装置」、「天壁」、「圧電物質」、及び「駆動圧力室」に対応する。
前者の「底壁」は、実施例では「側壁」となる部分を含まない「底壁プレート」からなるものであるが、単に圧力室を囲む「底壁」というだけでは、後者の「基板1の底部」と差異はない。
また、前者の「側壁」は、実施例では「底壁プレート」からなる部分を含まないものであるが、単に圧力室を囲む「側壁」というだけでは、後者の「支柱4」と差異はない。
さらに、後者の「圧電部材2」からなる「上部支柱4a」は支柱4の「少なくとも一部」ということができる。
したがって、両者は、「インクジェットヘッドと該ヘッドの駆動手段とを備えたインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは、底壁と天壁および対向する2つの側壁に囲まれた圧力室を複数有し、隣接する圧力室は共通の1つの側壁を堺として配置されており、各側壁の少なくとも一部は壁に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電物質からなり、前記駆動手段は駆動回路を有したことを特徴とするインクジェット記録装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>前者では、駆動回路が「前記対向する2つの側壁の圧電物質に電界を印加し、充電して前記圧電物質を変形させて駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる」ものであり、かつ、「前記圧電物質に電界を印加して前記駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させる際に前記駆動圧力室に隣接する非駆動圧力室において誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に前記放電開始タイミングを設定し、前記放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとした」のに対して、後者では、駆動回路が「駆動圧力室を、対向する2つの側壁の圧電物質に電界を一定期間印加し、圧電物質を変形させて容積を増大させてインクを吸引し、逆電圧を急激に印加して容積を急激に減少させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる」ものであり、上記メニスカスと放電との関係に係る事項については不明である点。

以下、相違点について検討する。

本件発明の駆動回路は、圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後に圧力室を膨張(放電による復帰を含む。)させてインクを吸引する、いわゆる押し打ち方式に属するものであり、引用発明の駆動回路は、圧力室を膨張させてインクを吸引した後に圧力室を収縮(放電による復帰を含む。)させてインク滴を吐出する、いわゆる引き打ち方式に属するものであるが、両方式とも周知の方式であって、必要に応じて適宜選択採用されているものである。
取消理由に引用された刊行物2(特開平4-175168号公報)には、「第5図に示すように・・・電極4に正電圧(+V)を印加した場合には、圧電アクチュエータ3は・・・剪断変形する。・・・インク流路7内のインク11が圧縮され・・・インク滴12が飛翔される。電極4への通電が途絶えると電界がなくなるので・・・元の形状に復元する・・・ためインク供給部10からインク11が吸い込まれる。また、第6図に示すように、電極4に負電圧(-V)を印加するしてもよい。この場合・・・インク流路7は膨張され・・・インク11が吸い込まれ、・・・負電圧が途絶えたときに・・・元の形状に復元され・・・インク流路7は圧縮され・・・インク滴12がノズル9から飛翔される。」(3頁左下欄2行〜右下欄7行)との記載があり、第5図に示されたものは押し打ち方式であり、第6図に示されたものは引き打ち方式であって、両方式のいずれを採用しても良いことが示されている。
そして、該第5図に示された押し打ち方式は、その電圧曲線からみて、圧電アクチュエータ3即ち圧電物質に正電圧による電界を印加してインク流路7即ち圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後、その印加状態を保持し、次に放電するものであることは明らかである。
引用発明においても、刊行物2の第5図に示された押し打ち方式の工程を適用することに阻害要因はないから、その駆動回路を相違点に係る本件発明の駆動回路となすことは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることである(以下、該適用したものを「押し打ち方式とした引用発明」という。)。
また、記録時に非駆動圧力室に対応するノズルから無用のインク滴を吐出させないようにすることは当然に考慮される設計事項であり、引用発明においても、刊行物1に記載事項dとして「一定の期間aの間で電圧A,Bが緩やかに高められるため、容積が減少した左右の圧力室14のインクがインク吐出口11から飛翔することはない。」及び「電極8への通電を遮断した瞬間に、中央の圧力室14の左右両側の圧力室14の内圧は上昇するが、インク吐出口11からインクを飛翔させる程の圧力には達しない。」と記載があるように考慮されており、その記載からみて、該無用のインク滴が吐出され易いのは、非駆動圧力室が容積減少・内圧上昇即ち収縮方向に向かうことでインクに圧力が加えられるときであり、かつ、その吐出を防止するためには、該圧力が緩やかに加えられるようにすることやインク圧が高くならないようにすることが把握できるものである。
引用発明のように隣接する圧力室が共通の1つの側壁を堺として配置されているものにあっては、非駆動圧力室が収縮方向に向かうときが、駆動圧力室が膨張方向に向かうときでもあることは明らかであり、押し打ち方式とした引用発明においては、駆動圧力室が膨張方向に向かうのは放電が開始されたときであって、放電に伴い非駆動圧力室内のインクに圧力が加えられることから、非駆動圧力室に対応するノズルから無用のインク滴を吐出させないようにするためには、該圧力が緩やかに加えられたりインク圧が高くならないように放電状態を設定することが容易に想起されるものである。
ところで、圧力室に圧力変動があればメニスカス振動が発生することは周知の事項であり、押し打ち方式とした引用発明においては、駆動圧力室の収縮に伴って非駆動圧力室側にも圧力変動が生じてメニスカス振動が発生し、駆動圧力室の収縮状態が保持されている間、減衰しながらその振動を繰り返すことは明らかである。
そして、メニスカス振動が発生しているインクに圧力が加えられるとき、メニスカス振動が吐出方向に向いているときに圧力が加えられればメニスカスの吐出方向への移動を一層促し、メニスカス振動が反吐出方向に向いているときに圧力が加えられれば該振動と該圧力によるインク圧とが相殺されることはよく知られていることである(例えば、特開平1-152068号公報、特開平2-233258号公報等参照)。
してみれば、押し打ち方式とした引用発明において、メニスカス振動が発生している非駆動圧力室のインク圧が放電により高くならないようにするために、放電をメニスカス振動が反吐出方向に向いているときに行うようにすることは当業者であれば容易に想起できることであるから、放電開始タイミングをメニスカスが反吐出方向への後退期間中に設定し、かつ、放電が該期間中に終了するように設定することも容易に想起できることといえる。
そのような設定は、放電時間Tfが0以下であるはずはなく、該後退期間はメニスカス振動周期Tmの1/2以下であるから、0<Tf<Tm/2となって、本件発明における「前記圧電物質に電界を印加して前記駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させる際に前記駆動圧力室に隣接する非駆動圧力室において誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に前記放電開始タイミングを設定し、前記放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとした」との規定を満たすものでもある。
これらのことから、上記相違点は当業者が容易に想到できたものというよりなく、しかも、上記相違点に係る構成を備えた本件発明が予測を越える格別の作用効果を奏するとも認められないから、本件発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術的事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、仮に、本件発明の「底壁」と「側壁」との関係に、実施例におけるように、「底壁」が「側壁」となる部分を含まないもの(「底壁プレート」)からなるものであることが意図されているとしても(認め難いことであるが)、そのような関係は周知にすぎず(例えば、特開昭63-247051号公報、同63-252750号公報等参照。)、上記判断に影響を与えるものではない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インクジェット記録装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクジェットヘッドと該ヘッドの駆動手段とを備えたインクジェット記録装置において、
前記インクジェットヘッドは、底壁と天壁および対向する2つの側壁に囲まれた圧力室を複数有し、隣接する圧力室は共通の1つの側壁を堺として配置されており、各側壁の少なくとも一部は壁に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電物質からなり、前記駆動手段は前記対向する2つの側壁の圧電物質に電界を印加し、充電して前記圧電物質を変形させて駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有し、
前記圧電物質に電界を印加して前記駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させる際に前記駆動圧力室に隣接する非駆動圧力室において誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に前記放電開始タイミングを設定し、
前記放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、
0<Tf<Tm
としたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はインク滴の吐出によって記録を行うインクジェット記録装置に関し、特にそれに用いるインクジェットヘッドの駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧力室の側壁を圧電物質からなるせん断モードアクチュエータで形成したインクジェットヘッドは特開昭63-252750号公報(EP 0278590)に詳しく開示されている。
【0003】
そこではヘッドの構造や吐出原理が説明され、また種々の特長が述べられている。特に、ノズル配置の高密度化の可能性には優れたものがある。
【0004】
しかしこの種のヘッドでは圧力室の側壁がせん断モードで変形する圧電物質であり、しかも隣接する圧力室とはその側壁を共有するため、ある圧力室を駆動すると当然ながら隣接圧力室内にも圧力変動を起こしてしまう。インク滴の吐出圧を高めるほど隣接圧力室の圧力変動は大きくなる。これはこの種のヘッドが原理上抱える基本的技術課題である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、ある圧力室を駆動してインク滴を吐出させると、隣接圧力室にも圧力変動を起こし、非駆動にもかかわらず隣接圧力室に連通するノズルからインクが流出したり、吐出圧が高いとインク小滴が飛び出すまでに至り、紙面やヘッド周囲を汚してしまう。また飛び出したインク滴が他のノズル口付近に付いて、吐出ダウンを起こす。
【0006】
こうした問題は、両隣の圧力室を駆動したときの中央の非駆動圧力室に於て特に顕著となる。
【0007】
本発明はこうした問題を解決して、高周波数駆動、高速度インク滴吐出および安定吐出を実現したインクジェット記録装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと該ヘッドの駆動手段とを備えたインクジェット記録装置において、インクジェットヘッドは、底壁と天壁および対向する2つの側壁に囲まれた圧力室を複数有し、隣接する圧力室は共通の1つの側壁を堺として配置されており、各側壁の少なくとも一部は壁に垂直に電界を印加して電界方向に剪断変形する圧電物質からなり、駆動手段は対向する2つの側壁の圧電物質に電界を印加し、充電して圧電物質を変形させて駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有し、前起圧電物質に電界を印加して前記駆動圧力室を収縮させてインク滴を吐出させる際に前記駆動圧力室に隣接する非駆動圧力室において誘引されるメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点からそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に放電開始タイミングを設定し、放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとしたことを特徴とする。また、本発明の参考例のインクジェット記録装置は、駆動手段に電界を印加して圧力室を膨張、収縮させて圧力室内のインク圧力を変動させることによりインクを吐出するインクジェット記録装置において、駆動手段は、充電して圧電物質を変形させた後、その状態を保持し、次に放電させる駆動回路を有し、放電開始タイミングをメニスカス振動が最も吐出方向に達した時点近傍かそれに続くメニスカスが反吐出方向への後退期間中に設定し、放電時間Tfをメニスカス振動周期をTmとして、0<Tf<Tmとしたことを特徴とする。また、係るインクジェット記録ヘッドにおいて、放電により圧力室が収縮することを特徴とする。
【0009】
また応答性を高めるように、駆動手段として、隣接ノズルのメニスカス振動のうち、メニスカスが最初に最も前進した時点近傍か、その後のメニスカス後退期間中に前記放電開始タイミングを設定し、前記放電時間Tfはメニスカス振動周期をTmとするとき、0<Tf<Tmとなるよう設定する。
【0010】
【実施例】
以下に本発明の実施例に沿って詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の記録装置に用いるインクジェットヘッドの斜視図で、一部を破断してその内部をも示したものである。図2は圧力室に垂直に切断したときの断面図を拡大して示したものである。
【0012】
図1に於て圧力室1は平行に多数配置され、その一端は端部に付設されたノズルプレート4のノズル2に連通する。圧力室1は各圧力室共通の底壁45と天壁35および対向する側壁6に囲まれた長方形断面の長い流路である。
【0013】
インクは図示していないインクカートリッジから天壁35上に設けた供給部64と天壁35に設けた穴を通じて圧力室1の他端部に補給される。60は引出し電極であって、引出し電極60を通じて図示していない駆動回路からの駆動電圧信号が印加される。
【0014】
図2において、側壁20、21、22、23は圧電物質で作られた上部側壁、下部側壁からなり、上部側壁、下部側壁は矢印16のように互いに逆方向に分極される。側壁上には引出し電極60に通じる電極29、30、31、32、33が蒸着されている。
【0015】
ここで側壁20、21、22、23を挟む電極に対し、電極30、32を接地し、電極29、31、33を正電圧として電界を与えると、上部側壁、下部側壁は破線で示すようにくの字形に圧力室内に向かってせん断変形する。その結果圧力室24、26内のインクに圧力が加えられてノズル6、8からインク滴が吐出する。
【0016】
駆動原理上隣接した圧力室は同時に駆動できないので、互いに隣接しない圧力室を一つのグループとして二つのグループに分け、交互に駆動する。図2においては圧力室24、26、28のグループと圧力室25、27のグループは分けて交互に駆動される。
【0017】
インク滴の吐出原理やヘッド構造は従来例と同様のためここでは更なる詳しい説明は省くこととする。
【0018】
図3に駆動波形を示した。波形aは一方のグループ、bは他方のグループの圧力室を駆動するもので、交互駆動のようすを表しており、波形bは波形aの中間に位置する。
【0019】
電極間に電界を印加して急速に(短い時間Trで)圧電素子を充電して側壁を圧力室内方へ変形させ、しばらく保持した後、Tf時間で放電して元に戻る。Tkは充電開始から放電開始までの時間である。Tは繰り返し周期である。本ヘッドにあっては前述の通り交互に駆動しなければならないため、他形式のヘッドに比較して同駆動周波数を確保するには半分のパルス幅でなければならず、高駆動周波数化にとってはパルス幅Tpの縮小化が重要である。
【0020】
図4は駆動波形の各パラメータ(Tr、Tk、Tf、Vh)とインク滴吐出速度(Droplet Velocity)の関係を示したものである。駆動波形の各パラメータを変えつつ、二つの圧力室を同時駆動して(例えば図2に於て圧力室25、27を駆動して)インク滴吐出速度(Wanted Velocity)を調査し、またその駆動によって生じる非駆動の中央圧力室(図2に於ける圧力室26)に連通するノズルからのインク小滴の吐出速度(UnwantedVelocity)を調査したものである。尚、所望の吐出インク滴をWanted、非駆動にも拘らず飛び出すインク滴をUnwantedと以下呼ぶこととする。
【0021】
ここでUnwanted発生原因について補足説明する。図2の二つの圧力室25、27を駆動したとき、破線のように側壁がせん断変形する。しかし次に放電して側壁が元に復帰するとき圧力室26内の圧力が高まり、圧力室26からノズルを通じてインク滴が、即ちUnwantedが発生してしまう。
【0022】
図4はTrを矢印のように小から大に変えていったときwantedのインク滴速度は低下し、またUnwantedの速度も低下していくことを表している。Tkその他についても図の見方は同様である。図4より、Unwantedを防止するにはTr、Tfを長くすることが、またVhを小さくすることが好ましいことがわかる。しかしTrを長くしていくとWantedの速度が極度に低下していってしまうという結果が得られており、対策とはなり得ない。Trは0〜数μsに設定する。Vhを小さくすることはWantedの速度を低下させ、同時に吐出インク滴量を減少させるため、これも対策としては難しい。Tfを長くしていくとUnwantedの速度は低下していくものの、後述するように相当長くしなければ効果が出ないことが分かっている。しかし、Tfが長過ぎるとパルス幅Tpが伸びて、駆動周波数が低下するため、TfのみでUnwanted対策の効果を得ることは困難である。
【0023】
Tkを図4に示したt1以上に設定すれば、吐出インク滴速度、インク適量が一定となるため、Tkはt1以上に設定する。一方、Unwanted対策に対しては最適なTkが存在する。次に放電開始タイミングTkについて説明する。図5の曲線dは代表的なヘッドを用いて、図2における二つの圧力室25、27をTr=2μs、Tf=20μs、吐出インク量0.1μg、吐出速度7m/sに設定して駆動したとき、圧力室25、27に挟まれた非駆動圧力室26から吐出されるUnwantedの速度を時間Tk、即ち放電開始タイミングに対してプロットしたものである。
【0024】
Tkを変えていくと周期的にUnwantedの速度が変化する。また速度のピークは次第に低下していく。Tkを矢印51、52、53、54で示す領域に選択すればUnwantedの発生を防止できることが分かる。
【0025】
この現象を解析するために、長いTk(例えばTk=300μs)を持つ駆動波形で圧力室25、27を駆動させたときに圧力室26のノズル7に形成されるメニスカスの位置を観察した結果が曲線gである。ゼロ点はメニスカスが図6の状態であり、待機状態を表す。
【0026】
信号が入ると圧力室26は急速に拡大し、メニスカスは大きく圧力室側へ後退する。後退したメニスカスは前進、後退の振動を繰り返して次第に減衰して最終的には初期状態に戻る。この振動周期Tmは圧力室内のインクのコンプライアンス、側壁のコンプライアンス、圧力室の流路寸法、インク密度によって決まるものであり、実施例にあっては約40μsであった。
【0027】
曲線dとgを対比させると、矢印で示した領域51、52、53、54は曲線gの頂点付近から谷にかけての区間である。即ち、メニスカスが吐出方向へ最も前進した時点近傍か、それに続くメニスカスの後退期間中に放電を開始することによってUnwantedを防止できることが分かる。
【0028】
これらの期間に放電を開始すればUnwantedを防止できる理由は、放電により側壁が変形状態から元に復帰することによって生じるノズル口方向へのインク流れを、メニスカスの振動に表れる逆方向の流れが抑えるように働くためと考えられる。
【0029】
尚、前記従来例では充電開始から放電開始までの時間をL/a(Lは圧力室長、aはインク中の音速)で規定しているが、この時間は丁度図5中のタイミングt1付近を表すもので、むしろUnwantedに対しては好ましくないタイミングである。
【0030】
駆動周波数のアップを図るため以下に更に詳しく説明する。
【0031】
矢印51、52、53、54で示した領域はTkを長くしていくと広がる傾向にある。しかしTkを長くするとパルス幅Tpが長くなって駆動周波数が低下する。従って好ましくは領域51、52を、できれば領域51内でTkを設定するのがよい。
【0032】
図5の曲線は他の幾種類かのTfについても得ることができ、Tfを変えていったときのUnwantedの防止範囲を知ることができる。
【0033】
図7は横軸にTfを、縦軸にTkを取って、Unwantedの速度ゼロの領域を斜線で図示したものである。領域61には図5で言えば矢印51の領域が含まれ、領域62には矢印52の領域が含まれる。
【0034】
尚、Tkを無限に長くしてメニスカスを待機状態に落ち着けたとき、unwantedを発生させないTfの最小値は大体40μsであり、領域63で表した。
【0035】
二点鎖線56はパルス幅Tp=100μsから決まる駆動周波数5KHzの限界線を表し、鎖線56の右上領域では5KHz以上が不可能となる。同様に一点鎖線57は7.5KHzの限界線を表す。
【0036】
図7によれば、Tkを高周波数駆動が期待できる領域61内に設定するとき、Tfを長くしていくと、Unwantedが発生するので、Tfには上限が存在することが分かる。その理由は、図5を参照するとき、メニスカス振動は振動初期である矢印51付近では振幅が大きく、メニスカスの移動速度が速い。にも拘らず、Tfが長すぎるとメニスカス振動に対して制振効果が小さく、且つTfが長いためメニスカスの前進区間とTfの期間が重なることによるものと考えられる。
【0037】
メニスカスの後退期間が振動周期Tmの1/2であることを考え合わせると、Tfとして1/2Tm付近が好ましい値であことが推測できる。実際、図7においてTfとしては1/2Tmを中心として、ほぼ0<Tf<Tmが有効な範囲であった。
【0038】
以上の結果および考察をまとめると
・メニスカスの振動が待機状態に落ち着くほどTkやTfを長くすればUnwantedを防止可能だが、そのためにはTkとTfのいずれかまたは両者を相当長くする必要があり、駆動周波数が著しく低下する。
【0039】
・しかし、隣接圧力室のノズルに誘引されるメニスカス振動のうち、メニスカスが最も吐出口側へ前進した時点か、その後のメニスカスの後退中に放電開始を始めることによって、その液圧を利用することができ、短いTk、Tfにも拘らずUnwantedを防止できる。
【0040】
・さらに、メニスカス振動のうち、最初にメニスカスが最も前進した時点か、その後のメニスカスの後退中に放電開始を始め、且つTfを0<Tf<Tmの範囲に設定することによって、高周波数駆動、例えば5KHz以上の高応答化が可能であり、またこの条件であれば7.5KHzも可能である。
【0041】
尚、以上の実施例に関する説明では代表的ヘッドの特性を中心に説明してきたが、圧力室やノズルの寸法等が異なっても、同様のヘッド構造である限り本発明による原理は適用可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によるインクジェット記録装置によれば、高周波数駆動、高速度インク滴吐出であっても、吐出ダウンや紙面の汚れの原因となる、非駆動にも拘らず吐出する不用インク滴、即ちUnwantedを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いるインクジェットヘッドの実施例の斜視図。
【図2】 本発明に用いるインクジェットヘッドの圧力室部分の断面図。
【図3】 本発明に用いるインクジェットヘッドの駆動波形の実施例を示す図。
【図4】 本発明の駆動条件とインク滴吐出速度の関係を示す図。
【図5】 隣接した非駆動圧力室からの不用インク滴の吐出速度とメニスカスの振動の実施例を示す図。
【図6】 メニスカスの待機状態を示す図。
【図7】 本発明の不用なインク滴が吐出しない駆動条件の範囲を示した実施例の図。
【符号の説明】
1 圧力室
2 ノズル
4 ノズルプレート
5〜9 ノズル
16 分極方向
20〜23 側壁
24〜28 圧力室
29〜33 電極
35 天壁プレート
45 底壁プレート
60 引出し電極
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-01 
出願番号 特願平4-334593
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤本 義仁  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 番場 得造
清水 康司
登録日 2002-12-13 
登録番号 特許第3379122号(P3379122)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 インクジェット記録装置  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  
代理人 名塚 聡  
代理人 永井 浩之  
代理人 名塚 聡  
代理人 宮嶋 学  
代理人 宮嶋 学  
代理人 永井 浩之  
代理人 吉武 賢次  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 井上 正則  
代理人 岡田 淳平  
代理人 勝沼 宏仁  

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