• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
管理番号 1117824
異議申立番号 異議2003-71493  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-06-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-09 
確定日 2005-03-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3356164号「非磁性一成分トナー」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3356164号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 I 手続の経緯
本件特許第3356164号の請求項1に係る発明は、平成4年2月14日に出願された特許出願(特願平4-28492号)の一部を平成12年10月20日に新たな特許出願として出願されたもので、平成14年10月4日に設定の登録がなされた。
本件特許公報は平成14年12月9日に発行され、発行されたその特許に対して佐藤正及び株式会社リコーより特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その後指定期間内である平成16年6月1日に訂正請求書が提出され、異議申立人に対し審尋がなされ、異議申立人佐藤正より平成16年10月5日に回答書が提出された。

II 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を、訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は次のとおりである。
(a)特許請求の範囲の請求項1記載の「・・・装置を用いて薄層化させたトナーを潜像担持体に接触させて・・・」を、「・・・装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて・・・」と訂正する。
(b)明細書の段落【0009】に記載の「・・・装置を用いて薄層化させたトナーを潜像担持体に接触させて・・・」を、「・・・装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて・・・」と訂正する。
(c)明細書の段落【0021】に記載の「約1gの試料を試料3を昇温速度3℃/min.で加熱しながら、面積1cm2のプランジャー1により30kg/cm2の荷重を与え、」を、「約1gの試料3を昇温速度3℃/minで加熱しながら、面積1cm2のプランジャー1により30kg/cm2の荷重を与え、」と訂正する。
(d)明細書の段落【0025】に記載の「好ましい」を、「好ましい。」と訂正する。
(e)明細書の段落【0036】に記載の
「それらは以下を除き表1と同義である。
ジオールC : 水素添加ビスフェノールA
FA : フマル酸
表4にこれらのポリエステル樹脂の物性値を示す。」を、
「それらは表1と同義である。
表4にこれらのポリエステル樹脂の物性値を示す。」と訂正する。
(f)明細書の段落【0041】に記載の「これらトナーを図1に・・・」を、「これらトナーを図4に・・・」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無
訂正(a)は、「潜像担持体」をドラム状のものに限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正(b)は、訂正(a)による特許請求の範囲の減縮に伴ない、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との間に生じた不整合を正すものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正(c)、(d)、(f)は、明らかな誤記を正すものであるから誤記の訂正を目的とする訂正であり、訂正(e)は、不明りょうな記載部分を削除することで記載を明確にするものであるから明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、上記訂正(a)、(b)は、願書に添付された図面の【図4】に、潜像担持体が断面円形のものとして記載されていることに基づくものであり、断面円形の潜像担持体がドラム状のものであることは自明であるから、該訂正は、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。訂正(c)ないし(f)も願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3 訂正の適否に関する結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III 特許異議申立についての判断
1 本件特許発明
上記のとおり訂正が認められるので、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材ならびにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて供給して潜像を現像する画像形成方法において使用する非磁性一成分トナーであって、該トナーは少なくとも着色剤及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は多価アルコールと多塩基酸成分のみから成り、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(1)〜(4)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものであって、さらに該トナーの粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有して成ることを特徴とする非磁性一成分トナー。
式(1) Sp=4Tg-110
式(2) Sp=4Tg-170
式(3) Sp=90
式(4) Sp=120 」
(なお、特許請求の範囲において丸数字で表記されているものは、()付き数字に置き換えて記載した。以下同様に表記する。)

2 取消理由の概要
当審が通知した取消理由の「理由II」のうちの「理由(その3)」の概要は、本件請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物10〜12に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。

刊行物10 特開平1-284863号公報(異議申立人佐藤正が提出した甲第1号証)
刊行物11 特開平2-166462号公報(同じく甲第2号証)
刊行物12 ソフト技研出版部編「最近の電子写真プロセス技術と装置の最適設計・応用開発」平成元年6月30日、540〜545頁、630〜633頁(同じく甲第3号証)

3 各刊行物の記載事項
刊行物10には、次の事項が記載されている。
(10a)「1.少なくとも熱可塑性樹脂、ワックスおよび着色剤からなるトナーにおいて、・・・からなることを特徴とするトナー。」(1頁、特許請求の範囲)、
(10b)「本発明に適する熱可塑性樹脂の軟化点は、本発明の効果を損なわない限りは現像スピード、システムの機構上、低い軟化点を有する熱可塑性樹脂がよく、たとえば・・・ビスフェノール型ジオール、・・・から選ばれた少なくとも1つのジオール成分と、・・・テレフタル酸、・・・から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸と、トリメリット酸から合成されるポリエステル樹脂などがあげられる。」(2頁左下欄7〜20行)、
(10c)「本発明のトナーは例えば適当なキャリアと配合して2成分系現像材とされ得る。・・・また、本発明のトナー自体を絶縁性磁性トナーとして製造し、これを1成分現像剤として用いて磁気ブラシ現像方式を実施してもよい。さらに、インプレション現像方式やタッチダウン現像方式を実施する場合のトナーとして使用してもよい。」(4頁右下15行〜5頁左上欄行)、
(10d)「以下、実施例を挙げて具体的に説明する。
トナー1〜5の調製
・熱可塑性スチレンアクリル系樹脂 100重量部
・・・
・オフセット防止用添加剤 4重量部
低分子量ポリプロピレン(ポリプロピレンの熱分解生成物)・・・
・カーボンブラック 8重量部
MA#100(:三菱加成工業社製)
・ボントロンN-01 4重量部
(オリエント化学工業社製:ニグロシン系染料)
以上を10lヘンシェルミキサーに入れ、2000rpmで2分間混合したあとPCM30(l/d:32.5)で連続押出混練をした。
次に、冷却したあと2mmメッシュのフェザーミルで粗粉砕したあと、ジェット粉砕機で微粉砕し、気流式分級機で粗粉・微粉のカットをして、平均径11.2μmの粒子径を有するトナーを得た。
このトナーの表面に疎水性シリカ(R-974、日本アエロジル株式会社製)を0.2%処理する。
このようにして得られたトナーをトナー1とした。」(5頁左上欄8行〜右上欄11行)、
(10e)「トナー6の調製
・熱可塑性ポリエステル樹脂 100重量部
・・・
軟化点:109℃ Tg:64℃
・オフセット防止用添加剤 5重量部
酸化型低分子量ポリプロピレン
(ポリプロピレンの熱分解生成物)・・・
・カーボンブラック 7重量部
(#44:三菱化成工業(株))
・ボントロンS-34 3重量部
(オリエント化学工業社製:Cr含金油溶性染料)
以上をトナー1の調製と同様な方法で平均径10.4μmのトナーを得た。得られたトナーをトナー6とした。
なお、上記熱可塑性樹脂はビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物550g、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物550g、テレフタル酸410g、無水トリメリット酸45g、キシレン50gを3lの4つ口フラスコに入れ窒素気流中240℃で5時間反応させ、次に、270℃に昇温して、8時間反応させて得られた。このとき、副生成した水は、留去した。」(5頁右上欄17行〜左下欄21行)、
(10f)「トナーの評価
トナー1〜9、およびキャリアIまたはIIを組み合わせて現像剤を調製し、以下に記載した評価を行った。結果は表1に示した。」(6頁左下欄6〜9行)、
(10g)「(3)耐熱テスト
ガラスサンプル瓶(50cc)の中にトナー5gを入れ50℃±0.5℃のオーブン中に24時間放置した後・・・逆に倒立させ、トナーが落下するかどうかを調べた。
ランクA 0〜5秒の間に落下し、凝集なし。」(6頁右下欄3〜9行)、
(10h)「(5)画像テスト
キャリアIIとトナー6を7wt%のトナー濃度になるように1lのポリ瓶に入れ、ボールミル架台にのせ10時間、120rpmで現像剤を調整する。この現像剤をミノルタカメラ社製EP870に入れ10K枚の耐刷テストをし、カブリの有無を、評価し、以下のようにランク付けした。・・・
(6)感光体上へのトナーのフィルミングについて
・・・フィルミングの程度をミノルタカメラ社製EP870(複写速度35.0cm/s)を使用し、10K枚の耐刷テストをした後の感光体の表面を評価し、下記の様にランク付けした。
◎:全くフィルミングなし。」(7頁右上欄19行〜右下欄4行)、
(10i)トナー6について、「耐熱性テスト」の評価が「A」、「感光耐上のフィルミング」の評価が「◎」であること、(8頁、表1)、
(10j)「発明の効果
本発明のトナーは帯電の立ち上がりおよびその安定性に優れ、カブリおよび濃度に優れた良好な画像を提供でき、特に高速現像システムにおいて、転写紙への定着性、定着ローラーからの分離性に優れ、オフセット等のない良好な画像を提供できる。」(8頁左下欄1〜7行)。

刊行物11には、次の事項が記載されている。
(11a)「少なくともトナー搬送部材、トナー層厚規制部材、およびトナー搬送部材に接触しつつ自在に回転可能に支持されており、トナーを前記搬送部材に供給するトナー供給部材を有する静電記録装置を用いる画像形成方法において、少なくとも、結着樹脂と着色剤および帯電制御剤からなる磁性を有さないトナーであって、前記結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂とスチレン-アクリル酸メチルエステル共重合体を含有し、前記帯電制御剤として少なくともサリチル酸の金属塩および/またはサリチル酸誘導体の金属塩を含有するトナーからなる現像剤を用いることを特徴とする一成分現像方法。
(2)トナー粒子に、高疎水化処理した無機酸化物粉末を添加混合した現像剤を用いることを特徴とする上記請求項(1)記載の一成分現像方法。」(1頁、特許請求の範囲)、
(11b)「本発明の現像方法について説明すると、図面に示すように、・・・トナーはトナー供給部材4に供給される。そして、トナー供給部材4に取り込まれたトナーは・・・トナー搬送部材2に運ばれ、摩擦され、静電的あるいは物理的に吸着し、トナー搬送部材2が矢印方向に強く回転し、トナー層厚規制部材3により均一なトナー薄層が形成されると共に摩擦帯電する。その後トナー搬送部材2と接触もしくは近接している静電潜像担持体1の表面に運ばれ、潜像が現像される。」(4頁右下欄17行〜5頁左上欄11行)、
(11c)「実施例1
トナーとして
ポリオキシエチレン化ビスフェノールAとテレフタル酸より成る重量平均分子量10000のポリエステル樹脂 50部
スチレンモノマーとアクリル酸メチルエステルモノマーに過酸化ベンゾイルとジビニルベンゼンを加え懸濁重合法により重量平均分子量35万、Tg55℃のスチレン-アクリル酸メチルエステル共重合体(St/MA)
50部
カーボンブラック 10部
3,5-ジターシャリーブチルサリチル酸亜鉛 4部
を熱ロールミルで溶融混練し、・・・微粉砕した。得られた微粒子を分級し5〜20μmの粒径にした。更に本微粉末100部にコロイダルシリカ0.5部を混合して現像剤とした。
この現像剤を用いてタッチダウン現像方式を採用した電子写真複写機(リコー製反転現像機マイリコピーM-5)で画像出しを行ったところ、・・・カブリのない鮮明な画像が得られた。」(5頁左上欄15行〜右上欄19行)、
(11d)「図面は本発明の一成分現像方法を実施するのに適する一装置の説明図である。
1…静電潜像坦持体、2…トナー搬送部材、3…トナー層厚規制部材、4…トナー補給部材、5…攪拌羽根、6…トナー、7…トナータンク」(6頁左上欄17〜右上欄1行)、
(11e)

(図面)。

刊行物12には、次の事項が記載されている。
(12a)表7-16に、一成分現像法が分類され、非磁性現像法として「Touchdown法」があること(541頁)、
(12b)「2)タッチダウン法
・・・非磁性トナーを用いた現像方式はXeroxとIBMによって研究された。原理的には,弾性体上に静電気的,機械的あるいは粘着的に摩擦帯電されたトナーを保持させ,これを感光体に圧接し現像を行うものである。」(542頁23〜27行)、
(12c)「4)最近の非磁性1成分現像法
・・・図7-159は、リコー社M-5に用いられている非磁性現像器の例である。(フィード現象) これはトナー補給ローラー(2)によりトナーを現像ローラーにこすりつけて搬送する。」(544頁4〜14行)、
(12d)

図7-159 Ricoh-M-5
(12e)「この技術の欠点としては,スリーブと感光体間を非常に狭いギャップに保つ必要があり極めて高い加工技術が要求されることがあげられよう。図のようなシート状の感光体には適用できるが,現実的にはドラム状の感光体には適用が難しいと思われる。」(544頁下から6〜4行)。

4 対比
刊行物10には、潜像担持体に供給され潜像を現像し画像形成するトナーが記載され、トナー6として、カーボンブラック及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は、「ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物」、「ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物」(これらは多塩基酸成分である。)、「テレフタル酸」、「無水トリメリット酸」(これらは多価アルコール成分である。)からなり、そのガラス転移温度(Tg)が64℃、軟化点(Sp)が109℃であって、表面に疎水性シリカを有するトナー6(10e)が記載されていると認める(以下、「刊行物10記載のトナー」という。)。
本件発明と「刊行物10記載のトナー」を対比すると、「刊行物10記載のトナー」を構成するポリエステル樹脂のTg64℃とSp109℃は、xy座標(但し、Tgをx軸の変数、Spをy軸の変数とする)にプロットした時、式(1)Sp=4Tg-110、式(2)Sp=4Tg-170、式(3)Sp=90、式(4)Sp=120で表される直線で囲まれる範囲内に入るから、両者は、
「トナーを潜像担持体に供給して潜像を現像する画像形成方法において使用するトナーであって、該トナーは少なくとも着色剤及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は多価アルコールと多塩基酸成分のみから成り、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(1)〜(4)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものであって、さらに該トナーの粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有して成るトナー。
式(1) Sp=4Tg-110
式(2) Sp=4Tg-170
式(3) Sp=90
式(4) Sp=120 」
である点で一致するが、次の点で相違する。
本件発明のトナーは、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材ならびにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて供給して潜像を現像する画像形成方法で用いられる非磁性一成分トナーであるのに対して、「刊行物10記載のトナー」は、本件発明のような上記画像形成方法に用いる非磁性一成分トナーであることは示されていない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
刊行物10の実施例には、「刊行物10記載のトナー」はキャリアと共に用いる2成分現像剤として使用することしか具体的に記載されていないが、刊行物10には、同じ組成のトナーを、キャリアと共に用いる2成分現像剤としてばかりでなく、タッチダウン現像方式を実施する場合のトナーとしても使用できることが記載されている(10c)。
ここで、「タッチダウン現像方式」は、刊行物12によれば、非磁性一成分現像剤の現像方法であり、弾性体上に静電気的,機械的あるいは粘着的に摩擦帯電されたトナーを保持させ,これを感光体に圧接し現像を行うものである(12a、12b)。
一方、刊行物11には、磁性を有さないトナーを用いた一成分現像方法について記載され、現像方法を示す図面には、断面が円形で示される静電潜像担持体1、トナー搬送部材2、トナー層厚規制部材3及びローラー状のトナー補給部材4を備える静電記録装置が記載されており(11b、11d、11e)、該装置において、トナー補給部材4とトナー搬送部材2、トナー層厚規制部材3とトナー搬送部材2、トナー搬送部材2と静電潜像担持体1はそれぞれ当接している。また図中、「静電潜像担持体1」は、本件の【図4】と同様、断面が円形であるからドラム状のものであることは明らかである。
これらのことから、刊行物11には、非磁性一成分トナーを使用し、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給部材を備え、かつ該補給部材とトナー搬送部材、トナー層厚規制部材とトナー搬送部材がそれぞれ当接している装置を用いて、薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて供給して潜像を現像する画像形成方法が記載されていると認められる。
そして、刊行物11には、装置の機能について「トナー搬送部材2が矢印方向に強く回転し、トナー層厚規制部材3により均一なトナー薄層が形成されると共に摩擦帯電する。その後トナー搬送部材2と接触もしくは近接している静電潜像担持体1の表面に運ばれ、潜像が現像される。」(11b)という記載があることから、該装置を用いる画像形成方法は「タッチダウン現像方式」を採用したものといえる。
そうすると、刊行物10には、トナーをタッチダウン現像方式の実施に使用できることが記載されており、刊行物11には、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給部材を備え、かつ該補給部材とトナー搬送部材、トナー層厚規制部材とトナー搬送部材がそれぞれ当接している装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて供給して潜像を現像する、非磁性一成分現像剤を用いるタッチダウン現像方式を採用した画像形成方法が記載されているのであるから、「刊行物10記載のトナー」を、刊行物11に記載の画像形成方法に使用する非磁性一成分トナーとすることは当業者が容易に想到し得ることである。
なお、刊行物11の実施例において使用される、タッチダウン方式を採用した現像装置「リコー製マイリコピーM-5」は、刊行物12の記載によれば、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材ならびにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて薄層化させたトナーをベルト状の潜像担持体に接触させるものであると認められ(12c、12d)、刊行物12には、このような装置においてはスリーブと感光体間を狭いギャップに保つ必要があり極めて高い加工技術が要求されること、したがって、ドラム状感光体に適用することは難しいこと(12e)が記載されているが、刊行物11に記載の「一成分現像方法」の実施に使用される静電記録装置は、静電潜像担持体がトナー搬送部材と接触もしくは近接しているものであればその作用を奏することは明らかであり、静電潜像担持体をドラム状感光体とすることが示されているのであるから、スリーブとの間を狭いギャップに保つように設計されたドラム状感光体を使用することが困難であるとはいえない。
そして、刊行物10には、「刊行物10記載のトナー」は、「耐熱性テスト」で凝集しない(ランクA)こと、10,000枚の耐刷テスト後感光体上のフィルミングが全くないこと(◎)が記載されているから(10g〜10i)、「刊行物10記載のトナー」を一成分トナーとし、刊行物11に記載の画像形成方法に使用した場合においても、凝集や融着等が防止できることは当業者が予測し得ることと認められる。
したがって、本件発明は、刊行物10ないし12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非磁性一成分トナー
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材ならびにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて供給して潜像を現像する画像形成方法において使用する非磁性一成分トナーであって、該トナーは少なくとも着色剤及びポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は多価アルコールと多塩基酸成分のみから成り、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式▲1▼〜▲4▼で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものであって、さらに該トナーの粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有して成ることを特徴とする非磁性一成分トナー。
式▲1▼ Sp=4Tg-110
式▲2▼ Sp=4Tg-170
式▲3▼ Sp=90
式▲4▼ Sp=120
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子写真などの分野に用いられる非磁性一成分現像法におけるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は米国特許第2297691号、特公昭42-23910号公報および特公昭43-24748号公報などに種々開示されている通り、一般には光導電物質を含む感光体上に種々の手段により静電荷の電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで粉像として現像し必要に応じて紙などに該粉像を転写した後、加熱、加圧あるいは溶剤蒸気などにより定着するものである。
【0003】
また、近年、分光された光で露光して原稿の静電潜像を形成せしめ、これを各色のカラートナーで現像して色付きの複写画像を得、あるいは各色の複写画像を重ね合わせてフルカラーの複写画像を得るカラー複写の方法が実用化され、これに用いるカラートナーとしてバインダー樹脂中に各色の染料および/または顔料を分散せしめてなるイエロー、マゼンタ、シアンなどのカラートナーが製造されている。
【0004】
トナーの現像方法としては、装置の小型化、メンテナンスの簡略化、カラー化への対応などのために、最近、非磁性一成分現像法が採用されつつある。非磁性一成分現像法にはタッチダウン法などの接触現像法とプロジェクション法などの飛翔現像法とが公知であるが、いずれにしても現像スリーブ上に非磁性トナーを弾性ブレード等の塗布部材によって薄層で均一に塗布することがポイントである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非磁性一成分現像法では、一般に、トナーへの帯電性の付与方法が、上記のように薄層化されたトナーと現像スリーブや弾性ブレードなどとの接触によるものにならざるを得ないので、トナーに対する機械的なストレスは極めて大きく、特に連続使用時などにおいては発生する摩擦熱によって、トナーが凝集したり固化したりする場合が少なくない。このような現象は、最終的には現像スリーブや弾性ブレードへのトナー凝集塊の融着を引き起こし、致命的な画像欠陥となって現れる。
【0006】
この問題を解決するために、たとえば微粒子シリカなどの外添剤をトナー粒子表面にまぶしてトナー粒子を非粘着化し、粒子の凝集などを改善する方法も提案されている。しかし、この方法では現像器内での長期間の撹拌により、上記外添剤微粒子のトナー表面からの脱落や飛散、あるいはトナー粒子内への埋没などが起こるなど、初期の特性を維持できないため耐久性の面で不十分であった。結局、上記した問題は、非磁性一成分トナーにおいては主としてトナー用バインダー樹脂の特性の面からの改良が必要と考えられ、従来より抜本的な解決が望まれていた。
【0007】
また、カラートナーの場合、樹脂として上記の問題をクリアーするとともに画像の光沢性や透明性などの諸要求性能も満足するものである必要があった。本発明は上記した現状に鑑み、その課題を解決すべくなされたものであって、その目的は以下のような性能を有することにより、結果として経時安定性や耐久性などに優れた非磁性一成分現像方式による画像形成方法を提供することにある。
【0008】
▲1▼ トナーの凝集塊が発生しにくい。
▲2▼ 感光体、現像スリーブ、弾性ブレードなどへの融着が少ない。
▲3▼ 流動性が良く、トナーの搬送性が高い。
▲4▼ 高温高湿環境下でもトナーの凝集・融着が発生しにくい。
▲5▼ 定着時のオフセット現象が発生せず、定着強度も高い。
▲6▼ カラートナーとしての光沢性、透明性などに優れる。
▲7▼ 連続使用や長期の使用においても画質の変化が少ない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、非磁性一成分現像方式による画像形成方法において、特定の熱的特性を有するポリエステル樹脂をバインダー樹脂とするトナーを用い、その表面に微粒子添加剤を配すると上記目的を満足し得ることを見いだし本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びローラー状のトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材ならびにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて薄層化させたトナーをドラム状の潜像担持体に接触させて供給して潜像を現像する画像形成方法において使用する非磁性一成分トナーであって、前記トナーは着色剤およびポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂は多価アルコールと多塩基酸成分のみから成り、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式〜で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものであって、さらに該トナーの粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有して成ることを特徴とする非磁性一成分トナーに存する。
【0010】
式▲1▼ Sp=4Tg-110
式▲2▼ Sp=4Tg-170
式▲3▼ Sp=90
式▲4▼ Sp=120
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられる非磁性トナーは、着色剤、帯電制御剤、ポリエステル樹脂などを構成成分とする。
【0011】
本発明に係わる非磁性トナーに含有される着色剤としては、任意の適当な顔料や染料が使用される。たとえば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、アントラキノン染料、モノアゾおよびジスアゾ系染顔料など従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用し得る。これらの着色剤は、バインダー樹脂100重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは2〜10重量部の範囲で用いられる。
【0012】
帯電制御剤としては、公知のものがすべて使用可能である。たとえば、正帯電性用としてニグロシン染料、アミノ基含有ビニル系コポリマー、四級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂などがあり、負帯電性用としてクロム、亜鉛、鉄、コバルト、アルミニウムなどの金属を含有する含金属アゾ染料、サリチル酸もしくはアルキルサリチル酸の前記した金属との塩、金属錯体などが知られている。使用量としては、樹脂100重量部に対し0.1〜25重量部がよく、より好ましくは1〜15重量部がよい。この場合、帯電制御剤は樹脂中に添加してもよく、またトナー粒子表面に付着させた形で用いてもよい。
【0013】
これらの帯電制御剤のうち、そのトナーに対する帯電賦与能力やカラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないし淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正帯電性用としてはアミノ基含有ビニル系コポリマーおよび/または四級アンモニウム塩化合物が好ましく、負帯電性用としては、サリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどの金属塩、金属錯体が好ましい。
【0014】
これらのうち、アミノ基含有ビニル系コポリマーとしては、たとえばN,N-ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノメチルアクリレートなどのアミノアクリレート類とスチレン、メチルメタクリレートなどとの共重合樹脂が挙げられる。また四級アンモニウム塩化合物としては、たとえばテトラエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライドとナフトールスルホン酸との造塩化合物などが挙げられる。正帯電性トナー用としては、以上のアミノ基含有ビニル系コポリマーと四級アンモニウム塩化合物とを単独で添加してもよく、併用してもよい。
【0015】
また、サリチル酸もしくはアルキルサリチル酸の金属塩、金属錯体としては、各種公知の物質のうち、特に3,5-ジターシャリーブチルサリチル酸のクロムあるいは亜鉛錯体が好ましい。また、以上の着色剤や帯電制御剤は、トナー中での分散性、相溶性を改良するためにあらかじめ樹脂との前混練などによって予備分散処理、いわゆるマスターバッチ処理を行ってもよい。
【0016】
一方、本発明で使用されるポリエステル樹脂は多価アルコールと多塩基酸とより成り、必要に応じてこれら多価アルコールおよび多塩基酸の少なくとも一方が3価以上の多官能成分(架橋成分)を含有するモノマー組成物を重合することにより得られる。以上において、ポリエステル樹脂の合成に用いられる2価のアルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。これらのモノマーのうち、特にビスフェノールAアルキレンオキシド付加物を主成分モノマーとして用いるのが好ましく、中でも1分子当たりのアルキレンオキシド平均付加数2〜7の付加物が好ましい。
【0017】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多価アルコールとしては、たとえばソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
【0018】
一方、多塩基酸としては、たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、またはn-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、その他の2価の有機酸を挙げることができる。
【0019】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多塩基酸としては、たとえば1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、およびこれらの無水物、その他を挙げることができる。
【0020】
これらのポリエステル樹脂は、通常の方法にて合成することができる。具体的には、反応温度(170〜250℃)、反応圧力(5mmHg〜常圧)などの条件をモノマーの反応性に応じて決め、所定の物性が得られた時点で反応を終了すればよい。これらのポリエステル樹脂においては、前記した通り、その軟化点(Sp)およびガラス転移温度(Tg)が前記の式▲1▼〜▲4▼で表される範囲にあるものが使用され、それを具体的に第1図に示した。第1図でも明らかなように、本発明に関するポリエステル樹脂のSpは90〜120℃である。また、Tgの範囲は、例えば軟化点が90℃の時50〜65℃であり、軟化点が130℃の時60〜75℃である。この場合、Spが前記範囲より低い場合は定着時のオフセット現象が発生し易く、前記範囲より高い場合は定着エネルギーが増大し、カラートナーでは光沢性や透明性が悪化する傾向にあるので好ましくない。また、Tgが前記範囲より低い場合はトナーの凝集塊や固着を生じ易く、前記範囲より高い場合は熱定着時の定着強度が低下する傾向にあるため好ましくない。Spは主として樹脂の分子量で調節でき、数平均分子量として好ましくは2000〜20000、より好ましくは3000〜12000とするのがよい。また、Tgは主として樹脂を構成するモノマー成分を選択することによって調節でき、具体的には酸成分として芳香族の多塩基酸を主成分とすることによりTgを高めることができる。すなわち、前述した多塩基酸のうち、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸などおよびこれらの無水物、低級アルキルエステルなどを主成分として用いるのが望ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂のSpはJIS K7210およびK6719に記載されるフローテスターを用いて測定した。具体的には、第2図に示すように、フローテスター(CFT-500、島津製作所製)を用いて約1gの試料3を昇温速度3℃/minで加熱しながら、面積1cm2のプランジャー1により30kg/cm2の荷重を与え、孔径1mm、長さ10mmのダイ4から押し出す。これにより第3図に示すようなプランジャーストローク-温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度を軟化点としたものである。
【0022】
また、Tgの測定は示差走査熱量計(DSC)を用いて行った。一方、一般にポリエステル樹脂の酸価が高すぎる場合、安定した高帯電量を得ることが難しく、また高温高湿時における帯電安定性も悪化する傾向にあるので、本発明においてはその酸価を50KOHmg/g以下とするのがよく、より好ましくは30KOHmg/g以下となるよう調製するのがよい。酸価を前記範囲内に調節するための方法としては、樹脂合成時に使用するアルコール系および酸系のモノマーの添加割合を制御する方法の他、たとえばエステル交換法により酸モノマー成分をあらかじめ低級アルキルエステル化したものを用いて合成する方法やアミノ基含有グリコールなどの塩基性成分を組成中に添加することにより、残存酸基を中和する方法などが挙げられるが、これらに限らず公知のあらゆる方法を採用できることは言うまでもない。なお、ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070の方法に準じて測定される。ただし、樹脂が溶媒に溶解しにくい場合はジオキサンなどの良溶媒を用いても差し支えない。
【0023】
また、本発明に係わるトナーの樹脂として、本発明の性能を損なわない範囲内で他の公知の樹脂を混合使用することも可能である。例えば本発明以外のポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、スチレンブタジエン樹脂などが挙げられる。本発明に係わる非磁性トナーは、その粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有する。これらは、トナー粒子の粘着性、凝集性、流動性などを改良するとともに、トナーとしての摩擦帯電性や耐久性などの改善を主たる目的とするものである。具体的には、平均の一次粒子径が0.001〜5μm、特に好ましくは0.002〜3μmの表面を処理されてもよい有機および無機微粒子が挙げられ、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレートやシリコーン樹脂などを主成分とする樹脂ビーズ類、タルク、ハイドロタルサイトなどの鉱物類、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物などが挙げられる。
【0024】
これらの中でも酸化珪素微粒子がより好ましく、その表面が疎水化処理された酸化珪素微粒子が特に望ましい。疎水化の方法としては、例えば酸化珪素微粒子とヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、ジメチルジクロルシランなどの有機珪素化合物などとを反応あるいは物理吸着させ、化学的に処理する方法が挙げられる。非磁性トナーに対するこれらの微粒子添加剤の添加割合は、重量比で100:0.01〜10が好ましく、特に100:0.05〜5がより好ましい。
【0025】
本発明に係わる非磁性トナーにおいては、その他の構成成分として、低分子量のポリエチレンやポリプロピレンなどの離型剤など、公知のいかなる物質をも含有させることが可能である。トナーの粒度としては、平均粒径で3〜20μmが好ましく、さらには5〜15μmがより好ましい。
【0026】
本発明に係わる非磁性トナーは、従来公知の方法を含めて各種製造法で製造可能だが、一般的製造法としては次の例が挙げられる。
▲1▼ 樹脂、帯電制御物質、着色剤および必要に応じて加えられる添加剤をヘンシェルミキサーなどで均一に分散する。
▲2▼ 分散物をニーダー、エクストルーダー、ロールミルなどで溶融混練する。
▲3▼ 混練物をハンマーミル、カッターミルなどで粗粉砕した後、ジェットミル、I式ミルなどで微粉砕する。
▲4▼ 微粉砕物を分散式分級機、ジグザグ分級機などで分級する。
▲5▼ 場合により、分級物中にシリカなどをヘンシェルミキサーなどで分散する。
【0027】
また、上記の製造法とは全く異なる方法として、たとえば懸濁重合法による製造が挙げられる。本発明に係わる非磁性トナーは、前述した通り、樹脂として軟化点とガラス転移温度とが特定の範囲の、換言すれば低軟化点でも高ガラス転移温度のポリエステル樹脂を用いるとともにトナー粒子表面には微粒子添加剤を含有させることにより、機械的なストレスに対する強度を高め、トナーの凝集性や融着性を抑制し、耐久性を向上させることを可能にするものである。
【0028】
本発明のトナーは、電子写真における非磁性一成分現像方式による画像形成に有用である。以下に本発明のトナーを使用する画像形成方法について説明する。かかる画像形成方法は、薄層化させたトナーを潜像担持体に供給して潜像を現像する電子写真における非磁性一成分現像方式によるものである。なお、トナーの薄層化は、通常、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材およびトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材ならびにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて行われる。
【0029】
図面により、本発明の画像形成方法をさらに詳細に説明する。第4図は、本発明の画像形成方法の遂行に用いることのできる非磁性一成分トナーを使用した現像装置の一例を示す説明図である。図面において、トナーホッパー12に内蔵されている本発明のトナー11は、撹拌羽根10によりスポンジローラー(トナー補給補助部材)9に強制的に寄せられ、トナーはスポンジローラー9に供給される。そして、スポンジローラー9に取り込まれたトナーは、スポンジローラー9が矢印方向に回転することにより、トナー搬送部材7に運ばれ、摩擦され、静電的あるいは物理的に吸着し、トナー搬送部材7が矢印方向に強く回転し、スチール性の弾性ブレード(トナー層厚規制部材)8により均一なトナー薄層が形成されるとともに摩擦帯電する。その後、トナー搬送部材7と接触している静電潜像担持体6の表面に運ばれ、潜像が現像される。静電潜像はたとえば有機感光体に500VのDC帯電をした後、露光して得られる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記の実施例により限定されるものではない。なお、各実施例および比較例中、単に「部」とあるのはいずれも「重量部」を表すものとする。
ポリエステル樹脂1〜4の製造
第1表に示す組成の材料をガラス製3リットルの四つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で窒素気流下、前半200℃常圧、後半220℃減圧にて撹拌しつつ反応を進めた。軟化点を測定しながら反応の状態を追跡し、所定の物性に達した時点で反応を停止させ、次いで室温まで冷却して各ポリエステル樹脂を得た。
【0031】
【表1】

【0032】
なお、表1中、アルコールおよび酸成分を略号・記号で表したが、それらは以下の原材料名を表すものとする。
ジオールA:ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
ジオールB:ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
EG :エチレングリコール
TPA :テレフタル酸
IDSA :イソドデセニルコハク酸
TMAA :無水トリメリト酸
以上のポリエステル樹脂の物性値を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
比較用ポリエステル樹脂5〜8の製造
下記の表3に示される組成材料を用いる他は、前記のポリエステル樹脂の製造方法と全く同一にして反応を行った。軟化点を測定しながら反応を進め、所定の物性に達した時点で反応を停止させ、次いで室温まで冷却して各ポリエステル樹脂を得た。
【0035】
【表3】

【0036】
なお、表3中、アルコールおよび酸成分を略号・記号で表したが、それらは表1と同義である。
表4にこれらのポリエステル樹脂の物性値を示す。
【0037】
【表4】

【0038】
実施例1〜7および比較例1〜4
表5に実施例1〜7および比較例1〜4のトナー組成を一覧表にして示す。
【0039】
【表5】

【0040】
トナーの作製法としては以下のように行った。それぞれのトナーの材料をニーダーで溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉末を分級して粒径5〜20μmを選別してトナーを得た。コールターカウンターによって測定された体積平均粒径は、いずれも10±0.5μmの範囲内であった。これらのトナー100部に対して、微粒子シリカ(アエロジルR-972、日本アエロジル社製)0.5部をヘンシェルミキサーで外添した。
【0041】
これらのトナーを図4に示す現像装置を用いて、実写テストによる評価を行った。感光体としては、正帯電性トナーの場合(実施例1および比較例1)はセレンドラムを、負帯電性トナーの場合(実施例2〜7および比較例2〜4)は有機光導電体を用い、いずれも反転現像法により現像した。この場合、トナーの耐久性を確認するため、約2万枚のランニングテストを行い、トナーの凝集および融着状態を顕微鏡で観察した。また、画像濃度の変化を反射濃度計を用いて測定し、さらに画質の変動を目視で見た。なお、定着はシリコンローラーを用いてオイルを供給しながら行い、定着スピード120mm/秒、定着温度は180℃で行い、トナーの定着強度について定着後のコピーのベタ部を二つ折りにしてトナーの接着状態を観察し、定着性の評価を行った。
【0042】
評価結果をまとめて表6に示す。これによれば、本発明の非磁性一成分トナーを用いた画像形成方法は、高品位でかつ安定した画像が得られ、しかもトナーの凝集や融着がないので、トナーとしての耐久性にも優れる。また、トナーの定着性も良好である。一方、比較例によれば、現像スリーブや弾性ブレードへのトナーの融着に由来する画質の悪さが顕著であったり、定着強度の面で問題があるなど耐久性に乏しい。
【0043】
【表6】

【0044】
【発明の効果】
本発明によって得られる効果は以下の通りである。本発明の非磁性一成分トナーにより、
(1)長期にわたり連続使用した際も、初期の特性を維持し、トナーの凝集や帯電性の変化を起こさず、トナーフィルミングも発生しない。また、定着特性も良好である。
(2)経時変化や高温高湿などの環境変化に対して影響を受けない高画質のコピーが得られる。
(3)透明性や堅牢性に優れ、しかも良好な色相・彩度を有するカラートナーが得られ、カラー電子写真法に適用が可能である。
以上のように、本発明によれば容易に安定した高品質の画像が得られるので、本発明は工業的にきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は本発明に係わるポリエステル樹脂の軟化点とガラス移転温度の有効範囲の関係を表すグラフである
【図2】第2図はフローテスターの中心部分を示す概略の断面図である。
【図3】第3図はフローテスターのプランジャーストローク(変位)-温度曲線である。
【図4】第4図は本発明のトナーを用いた本発明の方法の実施に有用な現像装置の一例を示す模式的な説明図である。
【符号の説明】
1 プランジャー
2 シリンダー
3 試料
4 ダイ
5 ダイ押さえ
6 静電潜像担持体
7 トナー搬送部材
8 弾性ブレード(トナー層厚規制部材)
9 スポンジローラー(トナー補給補助部材)
10 撹拌羽根
11 トナー
12 トナーホッパー
【図面】




 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-08 
出願番号 特願2000-320316(P2000-320316)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G03G)
P 1 651・ 113- ZA (G03G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 菅野 芳男磯貝 香苗  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 秋月 美紀子
伏見 隆夫
登録日 2002-10-04 
登録番号 特許第3356164号(P3356164)
権利者 三菱化学株式会社
発明の名称 非磁性一成分トナー  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 武井 秀彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ