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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01B
管理番号 1117908
異議申立番号 異議2003-72080  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-12 
確定日 2005-03-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3378510号「畦塗り機」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3378510号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3378510号の請求項1ないし5に係る発明は、平成10年9月17日の特許出願であって、平成14年12月6日に設定登録され、平成15年8月12日に異議申立てがなされ、その後、取消しの理由が通知され、その指定期間内である、平成16年10月25日に訂正請求がなされて請求項が1ないし3と訂正されたものである。


第2.訂正の適否
[1].訂正の内容
(1).訂正事項a
【請求項1】を
「走行車体に連結される機枠及びこの機枠の進行方向に対して左右方向に移動自在の可動機枠とを有する機体と、
この機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削してこの切削した土を旧畦の表面上に盛土する盛土ロータリーと、
この盛土ロータリーの後方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ前記盛土ロータリーにて旧畦の表面上に盛土された土をこの旧畦の表面に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、
前記盛土ロータリーの外側前方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の上面部を畦塗り用に前処理する前処理ロータリーとを具備し、
前記盛土ロータリーは、旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置され駆動系により回転される回転軸と、この回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の畦際及び旧畦の側面部の土を切削して旧畦の表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪とを有し、
前記前処理ロータリーは、旧畦の上方に位置して旧畦の上面部を横切る略水平方向を軸方向として配置され前記盛土ロータリーの前記駆動系により連動回転される連動回転軸と、この連動回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の上面部を切削して水平状に前処理する複数の前処理爪とを有し、
前記可動機枠を前記機枠の一端側外方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より外側方に突出する畦塗り作業位置に移動され、前記可動機枠を前記機枠の一端側内方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より内側方に後退する非畦塗り作業位置に移動されるものであり、
前記機体は、前記盛土ロータリーを深浅調節する第1の調節手段と、前記前処理ロータリーの前処理位置を上下動調節する第2の調節手段とを有し、前記盛土ロータリーは,前記第1の調節手段にて旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節可能に支持され、前記前処理ロータリーは.前記第2の調節手段にて旧畦の上面部に対して上下方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とする畦塗り機。」と訂正する。
(2).訂正事項b.
【請求項2】および【請求項3】の削除。
(3).訂正事項c.
【請求項4】および【請求項5】を各々【請求項2】および【請求項3】に繰り上げる。
(4).訂正事項d.
【0008】を
「【課題を解決するための手段】
請求項1記載の畦塗り機は、走行車体に連結される機枠及びこの機枠の進行方向に対して左右方向に移動自在の可動機枠とを有する機体と、この機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削してこの切削した土を旧畦の表面上に盛土する盛土ロータリーと、この盛土ロータリーの後方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ前記盛土ロータリーにて旧畦の表面上に盛土された土をこの旧畦の表面に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、前記盛土ロータリーの外側前方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の上面部を畦塗り用に前処理する前処理ロータリーとを具備し、前記盛土ロータリーは、旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置され駆動系により回転される回転軸と、この回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の畦際及び旧畦の側面部の土を切削して旧畦の表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪とを有し、前記前処理ロータリーは、旧畦の上方に位置して旧畦の上面部を横切る略水平方向を軸方向として配置され前記盛土ロータリーの前記駆動系により連動回転される連動回転軸と、この連動回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の上面部を切削して水平状に前処理する複数の前処理爪とを有し、前記可動機枠を前記機枠の一端側外方に向かって移動することにより前記盛土ロータリ、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より外側方に突出する畦塗り作業位置に移動され、前記可動機枠を前記機枠の一端側内方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より内側方に後退する非畦塗り作業位置に移動されるものであり、前記機体は、前記盛土ロータリーを深浅調節する第1の調節手段と、前記前処理ロータリーの前処理位置を上下動調節する第2の調節手段とを有し、前記盛土ロータリーは、前記第1の調節手段にて旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節可能に支持され、前記前処理ロータリーは、前記第2の調節手段にて旧畦の上面部に対して上下方向に位置調節自在に支持されているものである。」と訂正する。
(5).訂正事項e.
段落【0012】を
「また、走行車体にて機体が旧畦に沿って進行されるとき、前処理ロータリーの複数の前処理爪及び盛土ロータリーの複数の切削爪は、走行車体の進行に向かって回転されることにより、これら複数の前処理爪及び複数の切削爪による推進力にて走行車体の走行抵抗が軽減される。また、第1の調節手段を調節操作することにより、この第1の調節手段にて盛土ロータリーが旧畦の畦際及び旧畦の側面部を切削して旧畦の削りとられた表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節される。さらに、第2の調節手段を調節操作することにより、この第2の調節手段にて前処理ロータリーが旧畦の上面部に対してこの旧畦の上面部を切削して前処理する所定の位置に調節される。」と訂正する。
(6).訂正事項f.
段落、【0013】〜【0017】を削除する。
(7).訂正事項g.
明りょうでない記載の釈明を目的として【0018】を、
「請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、複数の前処理爪は、これら前処理爪の先端部に旧畦の上面部を水平状に切削する水平状の切削刃をそれぞれ有するものである。」と訂正する。
(8).訂正事項h.
段落【0020】を、
「請求項3記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、畦塗り体は、旧畦の上面部に盛土された土をこの旧畦の上面部に塗り付けて旧畦の上面部を水平状に修復する円筒状の上面修復部と、この上面修復部の端部に固定され旧畦の側面部に盛土された土をこの旧畦の側面部に塗り付けて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復する田面側に向かって拡開した円錐形状の側面修復部とを有して構成されているものである。」と訂正する。
(9).訂正事項i.
段落【0131】を
「また、前処理ロータリーの複数の前処理爪は旧畦の上方に位置して略水平方向を軸方向として配置された連動回転軸に突設し、盛土ロータリーの複数の切削爪は旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置された回転軸に突設したので、これら前処理ロータリーの複数の前処理爪及び盛土ロータリーの複数の切削爪は、走行車体の進行方向に向かって回転され、これら複数の前処理爪及び複数の切削爪による推進力にて走行車体の走行抵抗を軽減できる。また、第1の調節手段を調節操作することにより、この第1の調節手段にて盛土ロータリーを旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に簡単かつ確実に深浅調節できる。さらに、第2の調節手段を調節操作することにより、この第2の調節手段にて前処理ロータリーを旧畦の上面部に対してこの旧畦の上面部を切削して前処理する所定の位置に簡単かつ確実に調節される。」と訂正する。
(10).訂正事項j.
段落【0132】および【0133】を削除する。
(11).訂正事項k.
段落【0134】を、
「請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、複数の前処理爪の先端部の水平状の切削刃にて旧畦の上面部を切削して旧畦の上面を全体として確実に水平状に前処理できる」と訂正する。
(12).訂正事項m.
段落【0135】を、
「請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、畦塗り体の上面修復部にて旧畦の上面部が水平状に修復できるとともに、この畦塗り体の側面修復部にて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復でき、したがって、旧畦を水漏れしない状態に修復して新畦に整畦できる。」と訂正する。
(猶、下線部分は訂正個所を示す。)

[2].訂正要件(目的、新規事項、変更)の検討
(1).訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された「機体」、「盛土ロータリー」および「前処理ロータリー」について限定するものであり、当該限定事項は、明細書の【請求項2】、【請求項3】、【0014】、【0016】、【0062】、【0069】、【0105】、【0132】および【0133】等に記載されているから、当該訂正は、減縮を目的とした訂正に該当する。
(2).訂正事項bは、【請求項2】および【請求項3】を削除するものであるから、当該訂正は、減縮を目的とした訂正に該当する。
(3).訂正事項d、e、iは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
(4).訂正事項c、f、g、h、j、k、mは、上記訂正事項bと整合を図るものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
(5).訂正事項a〜mは、新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

[3].まとめ
以上のように、上記訂正は、明瞭でない記載の釈明、及び減縮を目的とした訂正に該当し、しかも新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、平成15年改正前の特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので当該訂正を認める。


第3.特許異議申立についての判断
[1].本件の請求項1〜3に係る発明
前記「第2.」で示したように前記訂正が認められるものであるから、本件の請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1〜3」という)は、前記訂正に係わる訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された以下のとおりのものである。
<1>.請求項1
走行車体に連結される機枠及びこの機枠の進行方向に対して左右方向に移動自在の可動機枠とを有する機体と、
この機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削してこの切削した土を旧畦の表面上に盛土する盛土ロータリーと、
この盛土ロータリーの後方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ前記盛土ロータリーにて旧畦の表面上に盛土された土をこの旧畦の表面に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、
前記盛土ロータリーの外側前方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の上面部を畦塗り用に前処理する前処理ロータリーとを具備し、
前記盛土ロータリーは、旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置され駆動系により回転される回転軸と、この回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の畦際及び旧畦の側面部の土を切削して旧畦の表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪とを有し、
前記前処理ロータリーは、旧畦の上方に位置して旧畦の上面部を横切る略水平方向を軸方向として配置され前記盛土ロータリーの前記駆動系により連動回転される連動回転軸と、この連動回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の上面部を切削して水平状に前処理する複数の前処理爪とを有し、
前記可動機枠を前記機枠の一端側外方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より外側方に突出する畦塗り作業位置に移動され、前記可動機枠を前記機枠の一端側内方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より内側方に後退する非畦塗り作業位置に移動されるものであり、
前記機体は、前記盛土ロータリーを深浅調節する第1の調節手段と、前記前処理ロータリーの前処理位置を上下動調節する第2の調節手段とを有し、前記盛土ロータリーは,前記第1の調節手段にて旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節可能に支持され、前記前処理ロータリーは.前記第2の調節手段にて旧畦の上面部に対して上下方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とする畦塗り機。
<2>.請求項2
「複数の前処理爪は、これら前処理爪の先端部に旧畦の上面部を水平に切削する水平上状の切削刃をそれぞれ有する、ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
<3>.請求項3
畦塗り体は、旧畦の上面部に盛土された土をこの旧畦の上面部に塗り付けて旧畦の上面部を水平状に修復する円筒状の上面修復部と、この上面修復部の端部に固定され旧畦の側面部に盛土された土をこの旧畦の側面部に塗り付けて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復する田面側に向かって拡開した円錐状の側面修復部とを有して構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。

[2].特許法第29条第2項の検討
<1>.当審で通知した取消理由に引用された刊行物記載事項
(1).特開平10-33006号公報(以下「刊行物1」という)記載事項
(1-1).「走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に旧畦上に土を盛り上げる盛土機構を設け、該盛土機構の進行方向後方位置に整畦機構を設けてなり、上記旧畦の一方側面に盛土係留部を形成可能な形成体をもつ形成機構を具備してなることを特徴とする整畦機。」(第2頁左欄第2〜7行)
(1-2).「走行機体1の後部に三点リンク式の連結機構2により機枠3を上下動可能に連結している。
4は盛土機構であって、この場合回転ロータからなる盛土体5から構成され、この盛土体5はロータ胴5aの外周に複数個の掻上刃5bを突設すると共にロータ板5aに取付軸5cを突設してなり、上記機枠3に盛土体5をその回転軸線を畦造成方向と平行にして回転自在に取付け、機枠3に走行機体1に設けられた動力取出軸6により回転する主軸7を軸受し、盛土体5を主軸7より変向用ギヤ列8及びチェーン機構9を介して回転させ、盛土体5により畦際の圃場面の土を削出軌跡Nをもって削土して、旧畦に向けて跳ね上げて盛り上げるように構成している。」(第2頁第2欄第10〜24行)
(1-3).「12は整畦機構であって、畦Wの一方側面W2及び畦の上面W1を整畦可能な回転整畦体13を備えてなり、回転整畦体13を押圧機構14により畦面に押圧するように構成している。
この場合、上記回転整畦体13は、畦Wの一方側面W2を整畦可能な外周面15a及び畦の角部W3側の上面W1を整畦可能な外周面15bを有して回転軸線Rを中心とする横回り回転ロール状の下部回転整畦体15と、畦Wの上面W1を整畦可能な円筒状の外周面16aを有して回転軸線Rを中心とする横回り回転ロール状の上部回転整畦体16とからなり、この下部回転整畦体15を円錐状の内周面15cを有する傘状に形成すると共に上部回転整畦体16を円筒状の内周面16bを有する円筒状に形成し、・・・これにより主軸7によって上部回転整畦体16及び下部回転整畦体15を回転軸線Rを中心として横回り回転させ、かつ下部回転整畦体15の回転接触により畦Wの一方側面W2及び角部W3側の上面を締圧整畦すると共に上部回転整畦体16により畦Wの畦Wの上面W1を締圧整畦するように構成している。」(第2頁第2欄第30行〜第3頁第3欄第25行)
(1-4).「主軸7より自在継手53を介して駆動軸44を回転させるように設け、駆動軸40と保持軸48との間にチェーン機構54を設けると共に保持軸48と保持軸49との間にチェーン機構55を設け、・・・上側の保持軸48に削土機構56としての旧畦Wの上面を削土可能な複数個の直刀状及びなた状の削土体56aを取付け、これにより主軸7によって保持軸48・49を回転させ、」(第3頁第4欄第8〜21行)
(1-5).「・・・盛土体5の削出軌跡Nと畦の側面W2とが合致するようにしているが、削出軌跡Nが畦の側面W2内に食い込む状態・・・に設定することもでき、又、例えば盛土機構4として、畦造成方向に対して交差する方向の回転軸線をもつ回転ロータを採用することもでき、・・・」(4頁第6欄第18〜24行)
(1-6).「【発明の効果】本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、走行機体を畦に沿って走行すると一方では盛土機構が畦際の圃場泥土を旧畦上に盛り上げ、他方では整畦機構が駆動し、整畦機構により盛土は締圧整畦されることになり、」(第4頁第6欄末行〜第5頁第7欄第4行)
(1-7).第2図には、削土機構(56)を盛土機構(4)の外側前方に位置することが示されている。
(1-8).第7図には、保持軸(48)の軸方向を略水平として配置すること、削土体(56a)を保持軸(48)の周面部に軸方向に放射状に突設させること、削土体(56a)により畦の上面(W1)を水平状に切削することが示されている。
(1-9).してみると、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「走行機体の後部に3点リンク式連結機構を介して機枠3が連結され、当該機枠には、掻上刃(5b)を備えて、畦際の圃場面の土を削土して、旧畦に向けて跳ね上げて盛り上げる盛土体(5)、盛土を締圧整畦する回転整畦体(13)、及び削土体(56a)を具備した削土機構(56)が設けられた整畦機において、盛土体、回転整畦体、削土機構は駆動系により連動回転され、それらの回転軸の方向が、前者は、畦造成方向に対して平行又は直角、後2者は畦造成方向に対して平行に配置され、さらに、削土機構が旧畦の上方に位置してその回転軸の周面部に放射状に配設された削土体により旧畦の上面部を水平上に前処理するようにした整畦装置」

(2).実願昭57-63891号(実開昭58-164405号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という)記載事項
(2-1).「本考案は、トラクタ本体に昇降自在に連設の作業装置をトラクタ本体に対して左右に駆動スライドさせる機構を設けてある耕耘機、田植機等の農作業機に関する。」(第1頁第18〜第2頁第1行)
(2-2).「・・・作業装置を非作業位置に上昇位置させた状態での路上走行等を安全,容易に行えるようにするために、作業装置をトラクタ本体に対して予め設定された左右位置(一般に、トラクタ本体の左右中心に作業装置の左右中止を合致させる位置)に復帰させる・・・」(第2頁第14〜19行)
(2-3).「この耕耘ロータリ装置(3)をリンク機構(2)の後部分(2A)、つまり、トラクタ本体(1)に対して、左右スライド自在に構成し、前記耕耘ロータリ装置(3)を油圧シリンダ(5A)を介してスライドさせる油圧機構(5)と、・・・前記油圧機構(5)を、耕耘ロータリ装置(3)の非作業位置への上昇に連動して耕耘ロータリ装置(3)をトラクタ本体(1)に対して予め設定された左右位置に自動復帰させるものに構成する。」(第4頁第10行〜第5頁8行)

(3).実願昭54-114008号(実開昭56-33031号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という)記載事項
(3-1).「・・・駆動車1(・・・)の前方に連結部2,3を設け、これらの連結部2,3に取外し得るように対応する連結部4,5を連結して草刈装置6を取付け、・・・草刈装置6をエンジンフレーム7およびアーム8,9,10,11に取付けたシリンダー12,13,14,15により作動するようにし、・・・第1アーム11に草刈ロータリーヘッド16を回動するシリンダー15を回動軸18によって取付け折りたため得るようにする。・・・移動時は駆動車1の横に突出しないので駆動車1の通れる狭い場所に容易に進行でき、草刈作業時は・・・横に延ばし、ロータリーヘッド16内のロータリーの回転により草刈作業を行う。」(第2頁第7行〜第4頁第2行)

(4).実願昭59-59097号(実開昭60-171108号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という)記載事項
(4-1).「・・・トラクタが路上を走行したり、果樹園内の狭い場所を走行するときには作業機をトラクタ側に上げて機体幅員を狭くし、また、作業中は圃場面に降ろして、・・・・」(第2頁第7〜10行)
(4-2).「トラクタ1の車体一側には作業機取付体4が突出して設けられている。この作業機取付体4の後部に作業機支持外筒5の基部がピン6を介して上下回動可能に枢支され、この作業機支持外筒5内には作業機支持内筒7の基部側が摺動可能に嵌装され、作業機支持内筒7の先端には、ロータリカッタ8の伝動フレーム9が取付けられている。また、作業機取付体4には、前記作業機支持外筒5を枢支した位置と近接して油圧シリンダ10の基部を枢支するための支持アーム11が立設され、ピン12を介して枢支している。」(第4頁第3〜13行)
(4-3).「ロータリカッタ8が作業を行わない、即ち、農用トラクタ1の路上走行時や移動時には、第4図に示すように作業機支持外筒5と作業機支持内筒7の挿通孔27に固定ピン26を挿通し((イ)の状態)、この状態で油圧シリンダ10のピストンロッドを収縮させると、作業機支持外筒5は(ロ)の仮想線に示すようにピン6を中心に上方(矢印)に回動してロータリカッタ8は持上げられ、農用トラクタ1の走行を容易にする。」(第8頁第2〜10行)

(5)特開平7-132002号公報(以下「刊行物5」という)記載事項
(5-1).「走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に畦際の泥土を旧畦の一方側面側に移送可能な土移送機構を設け、該土移送機構の進行方向後方位置に整畦体を設け、かつ該整畦体を畦締動作させる整畦機構を設け、土移送機構の進行方向前方位置に畦の上部を削出可能な削出機構を設けて構成したことを特徴とする整畦機。」(請求項1)
(5-2).「この土移送機構4は、機枠3に下支持部材5を下向き突設すると共に上支持部材6を水平突設し、下支持部材5に駆動軸7を横設し、駆動軸7に取付部材8を揺動自在に軸受けし、上支持部材6にハンドル9により伸縮調節可能な連結ロッド10を枢着し、連結ロッド10の下端部を取付部材8の中程部にピン11により連結し、取付部材8にそり状の安定部材8aを上下調節自在に取付け、・・・」(第2頁第2欄第21〜28行)

(6).特開平10-56807号公報(以下「刊行物6」という)記載事項
(6-1).「【請求項1】新畦を形成する畦成形部(23)の前方に、左右方向かつ外側下がりに傾斜した斜めロータリ軸(4)に多数突設した斜め耕耘爪(5)の回動半径を先細りにして、元畦法面(G2)と畦際の田面(G3)とを切削して土を元畦(G)方向にかき寄せる斜軸ロータリ(6)と、左右方向かつ畦の上面と平行の上面耕耘軸ケース(11)に同一回動半径を有する上面耕耘爪(13)を放射状に多数突設して、元畦上面(G1)を耕耘する上面耕耘ロータリ(14)とを設けたことを特徴とする畦塗機。
【請求項2】前記斜軸ロータリ(6)と上面耕耘ロータリ(14)との相対的上下位置を変更可能にしたことを特徴とする請求項1記載の畦塗機。」
(6-2).「即ち、上面耕耘ロータリ14と斜軸ロータリ6との相対位置を変更できるので、畦の高さを変更するために斜軸ロータリ6の高さを変更した場合でも、元畦上面G1の耕深を最適に調節することができる。」(第3頁第3欄第3〜7行)

(7).特開昭60-98903号公報(以下「刊行物7」という)記載事項
(7-1).「走行機体に連結され、盛土ロータ、畦叩き板等を配備し、畦際の泥土を盛土ロータで畦上に盛土しつつ畦叩き板で叩き締め固めて整畦するものであって、上記盛土ロータの走行方向前方位置に畦上面部を削り出する削出刃を配設し、かつ該削出刃を上下調節自在に構成したことを特徴とする整畦装置。」(特許請求の範囲)
(7-2).「また本実施例では、・・・該従ギャ(27)に前記削出刃(4)を有する削出ロータ(28)を連結し、前記ロータ軸(2c)の回転によって削出刃(4)を回転するように構成し、かつ盛土ロータ(2)の盛土カバ(29)の前面上部に支点ブロック(30)を回動自在に突設し、この支点ブロック(30)に調節ロッド(31)をスライド自在に貫挿し、調節ロッド(31)の上部に数個の調節孔(32)を形成し、かつ上部に調節カラ(33)を貫挿し、この調節カラ(33)と前記選択した調節孔(32)とに調節ピン(34)を差込み、・・・削出刃(4)を上下調節自在にすると共に、この削出刃(4)に前記圧縮バネ(36)によって逃げ干渉作用を付与するようにしている。」(第2頁左下欄第4行〜同頁右下欄第11行)
と記載されている。

(8).特開平9-84409号公報(以下「刊行物8」という)記載事項
(8-1).「図1において、符号1は、図示しない畦塗り機の畦塗り部の前側に装着されて元畦5の田面7側部分を、掘削部分6のように掘削する前処理装置である。この前処理装置1は、水平回転軸2の外周に、多数の爪取付けボックス3,3…を介して多数の掘削爪4,4…を装着している。
上記掘削爪4,4…は、元畦5及び田面7を縦方向に掘削する縦刃部4aと、縦刃部4aから一側にほぼ直角に屈曲して形成され、元畦5及び田面7を横方向に掘削する横刃部4bとからなり、元畦5側が浅く、田面7側が深くなるように横刃部4bで階段状に掘削するように、縦刃部4aの長さ(回転半径)を異ならせている。そして、元畦5には、掘削爪4,4…によって掘削部分6が掘削され、元畦5の田面7側に、元畦5側が浅く、田面7側が深くなる、ほぼ水平の階段が形成される。」(第2頁第2欄第20〜35行)

<2>.本件発明(1〜3)特定事項と引用発明との対応関係
(1).引用発明における、「盛土体(5)」、「回転整畦体(13)」、「削土機構(56)」、「掻上刃(5b)」、「削土体(56a)」、「整畦機」は、本件発明における「盛土ロータリー」、「畦塗り体」、「前処理ロータリー」、「切削爪」、「前処理爪」、「畦塗り機」にそれぞれ相当する。
(2).引用発明における「連結機構及び当該機構に連結された機枠」は、「盛土ロータリー」、「畦塗り体」、「前処理ロータリー」等の整畦装置を保持すると共に走行車体に連結される、整畦連結・保持手段の点において、本件発明1における「機体」と共通する。

<3>.本件発明1と引用発明との対比・判断
(1).一致点
「走行車体に連結される整畦連結・保持手段と、
この整畦連結・保持手段に回転自在に設けられ旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削してこの切削した土を旧畦の表面上に盛土する盛土ロータリーと、この盛土ロータリーの後方に位置して前記整畦連結・保持手段に回転自在に設けられ前記盛土ロータリーにて旧畦の表面上に盛土された土をこの旧畦の表面に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、
前記盛土ロータリーの外側前方に位置して前記整畦連結・保持手段に回転自在に設けられ旧畦の上面部を畦塗り用に前処理する前処理ロータリーとを具備し、前記盛土ロータリーは、旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置され駆動系により回転される回転軸と、この回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の畦際及び旧畦の側面部の土を切削して旧畦の表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪とを有し、
前記前処理ロータリーは、旧畦の上方に位置して略水平方向を軸方向として配置され前記盛土ロータリーの前記駆動系により連動回転される連動回転軸と、この連動回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の上面部を切削して水平状に前処理する複数の前処理爪とを有することを特徴とする畦塗り機。」
(2).相違点
(i).整畦連結・保持手段の構造に関して、引用発明は、走行体に連結される連結機構、及び盛土ロータリー、畦塗り体及び前処理ロータリーを保持する機枠にて構成されているのに対し、本件発明1では、走行体に連結される機枠及びこの機枠の進行方向に対して左右方向移動自在の可動機枠とから構成され、当該可動機枠の左右方向移動により、「盛土ロータリー」、「畦塗り体」、「前処理ロータリー」等の整畦装置を畦塗り作業位置と、非畦塗り作業位置に移動する点。
(ii).「盛り土ロータリー」について、本件発明1は、「機体に盛土ロータリーを深浅調節する第1の調節手段と、を有し、前記盛土ロータリーは,前記第1の調節手段にて旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節可能に支持され」ているのに対し、引用発明は当該調節手段の有無については記載されていない点
(iii).「前処理ロータリー」について、本件発明は、「機体に前処理ロータリーの前処理位置を上下動調節する第2の調節手段を有し、前記前処理ロータリーは、前記第2の調節手段にて旧畦の上面部に対して上下方向に位置調節自在に支持されている」のに対し、引用発明は当該調節手段の有無については記載されていない点、
(3).相違点の検討
(i).相違点(i)の検討
走行車体に作業装置を連結する作業機において、作業時には走行車体の一方側の車輪より外側方に当該作業装置が突出する作業位置となる作業機の場合に、当該作業機の路上走行等を安全に行うために、走行車体の一方側の車輪より内側方に当該作業装置を後退移動させた非作業位置に保持すること、及び、当該作動装置の作業位置、非作業位置への左右移動手段を、走行車体に連結される機枠に配設することは、刊行物2乃至4等に記載されるように、周知技術である。
そして、引用発明における盛土ロータリー、畦塗り体及び前処理ロータリーは、走行車体に連結されて畦塗り作業を行う作業装置で、作業時には車体側方に突出して作業するものであり、しかも路上走行するものであるから、引用発明においても、路上走行等を安全に行えるようにするために、盛土ロータリー、畦塗り体及び前処理ロータリーを、作業位置、非作業位置に左右移動自在とすること、その為に、走行車体に連結された機枠に当該移動手段を設けることは、前記周知事項に基づいて当業者が容易に想到できるものである。
(ii).相違点(ii)の検討
畦塗り機の盛土手段を深浅調節手段により深浅調節可能に支持する点については、引用刊行物5及び6等に記載されるように、周知技術である。
したがって、引用発明において、盛土ロータリーを深浅調節手段により深浅調節可能に支持することは、当業者が容易になし得るものである。
(iii).相違点(iii)の検討
引用刊行物7に、前処理ロータリー(削出ロータ(28))を上下方向に位置調節自在に、かつこの調節位置で上動可能に支持する支持手段が記載されているから、引用発明において、前処理ロータリーの支持手段として、引用刊行物7に記載された支持手段を採用することは、当業者が容易になし得るものである。
(iv).まとめ
よって、本件発明1は、引用発明、刊行物7に記載された発明、及び上記周知事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものである。

<4>.本件発明2と引用発明との対比・判断
本件発明2は、本件発明1の「前処理爪」についてさらに、「前処理爪の先端部に旧畦の上面部を水平状に切削する水平状の切削刃を有する」と限定したものであるから、引用発明との相違点は、本件発明1について挙げた相違点、及び前記限定事項、すなわち、本件発明2における「前処理爪」は「水平状の切削刃」であるのに対し、引用発明を認定した刊行物1に示される前処理爪は、「直刀状及びなた状」である点。
上記相違点について検討する。
本件発明2について挙げた相違点については、「第3.[2].<3>.(3)」に記載したとおりである。
次に、当該限定事項について検討する。
前処理爪の形状については、引用刊行物8に、旧畦の上面部及び側面部を水平状に切削する切削爪として、縦刃部と縦刃部から一側にほぼ直角に屈曲して形成される横刃部とからなる切削爪(掘削爪(4))が記載されている。
そして、引用発明における前処理ロータリーは、畦の上面部を水平状に切削するものであるから、引用発明における前処理爪を、刊行物8に記載された「切削爪」に置換することは、引用発明の実施例に「直刀状及びなた状」のものが示されているから当業者が容易に想到し得るものである。
よって、本件発明2は、引用発明、刊行物7,8及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得るものである。

<5>.本件発明3と引用発明との対比・判断
本件発明3は、本件発明1の「畦塗り体」についてさらに、「畦塗り体は、旧畦の上面部に盛土された土をこの旧畦の上面部に塗り付けて旧畦の上面部を水平状に修復する円筒状の上面修復部と、この上面修復部の端部に固定され旧畦の側面部に盛土された土をこの旧畦の側面部に塗り付けて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復する田面側に向かって拡開した円錐形状の側面修復部とを有して構成されている」と限定したものであるから、引用発明との相違点は、本件発明1について挙げた相違点、及び前記限定事項である。
上記相違点について検討する。
本件発明1について挙げた相違点については、「第3.[2].<3>.(3)」に記載したとおりである。
次に、前記限定事項について検討する。
引用発明を認定した刊行物1の「上部回転整畦体(16)」及び「下部回転整畦体(15)」は、本件発明3における「上面修復部」及び「側面修復部」にそれぞれ相当する。
してみると、当該限定事項は実質的には相違点とはならないものである。
したがって、本件発明3は、本件発明1と同様に、引用発明、刊行物7に記載された発明、及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得るものである。


第4.むすび
各相違点を総合的に判断しても格別の作用効果は認められないから、本件発明1〜3についての特許は、引用発明、前記刊行物7、8に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1〜3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
畦塗り機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行車体に連結される機枠及びこの機枠の進行方向に対して左右方向に移動自在の可動機枠とを有する機体と、
この機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削してこの切削した土を旧畦の表面上に盛土する盛土ロータリーと、
この盛土ロータリーの後方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ前記盛土ロータリーにて旧畦の表面上に盛土された土をこの旧畦の表面に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、
前記盛土ロータリーの外側前方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の上面部を畦塗り用に前処理する前処理ロータリーとを具備し、
前記盛土ロータリーは、旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置され駆動系により回転される回転軸と、この回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の畦際及び旧畦の側面部の土を切削して旧畦の表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪とを有し、
前記前処理ロータリーは、旧畦の上方に位置して旧畦の上面部を横切る略水平方向を軸方向として配置され前記盛土ロータリーの前記駆動系により連動回転される連動回転軸と、この連動回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の上面部を切削して水平状に前処理する複数の前処理爪とを有し、
前記可動機枠を前記機枠の一端側外方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より外側方に突出する畦塗り作業位置に移動され、前記可動機枠を前記機枠の一端側内方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より内側方に後退する非畦塗り作業位置に移動されるものであり、
前記機体は、前記盛土ロータリーを深浅調節する第1の調節手段と、前記前処理ロータリーの前処理位置を上下動調節する第2の調節手段とを有し、
前記盛土ロータリーは、前記第1の調節手段にて旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節可能に支持され、
前記前処理ロータリーは、前記第2の調節手段にて旧畦の上面部に対して上下方向に位置調節節自在に支持されている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】 複数の前処理爪は、これら前処理爪の先端部に旧畦の上面部を水平状に切削する水平状の切削刃をそれぞれ有する、
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】 畦塗り体は、旧畦の上面部に盛土された土をこの旧畦の上面部に塗り付けて旧畦の上面部を水平状に修復する円筒状の上面修復部と、この上面修復部の端部に固定され旧畦の側面部に盛土された土をこの旧畦の側面部に塗り付けて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復する田面側に向かって拡開した円錐形状の側面修復部とを有して構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は畦塗り機に係り、水田を区画する旧畦を畦塗り修復して新畦に整畦するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、旧畦の畦塗り作業は、旧畦の水漏れを防ぐとともに、旧畦の側面部等の崩れた部分及び旧畦の上面部が踏圧されて凹んだ凹部を平らに補修するために行われているが、この旧畦の畦塗り作業時には、旧畦の締め固められた固い土部分をできるだけ残した状態で旧畦に泥土を塗り付けて旧畦を修復することが望ましく、また、旧畦の表面部の雑草等は、その雑草等を根元から除去するとともに、これら雑草等の根は旧畦の表層部に補強用に残した状態で旧畦に泥土を塗り付けることが望ましい。
【0003】
そこで、これら旧畦の畦塗り作業には労力を要することから人手によることなく機械的手段によって行なうものとして特開平60-98903号公報に記載された構成が知られている。
【0004】
すなわち、前記特開平60-98903号公報には、走行車体に連結される機体に畦際の泥土を切削して旧畦上に盛土する盛土ロータリーを回転自在に設け、この盛土ロータリーの後方に位置して前記機体に前記盛土ロータリーにて盛土された泥土を旧畦上に叩き締め固めて旧畦を整畦する畦叩き板を上下動自在に設け、前記盛土ロータリーの前方に位置して前記機体に旧畦の上面部を切削する前処理ロータリーを回転自在に設け、前記盛土ロータリーは、前記機体の進行方向すなわち、旧畦の側方に位置して旧畦の延在方向を軸方向として並設された複数の回転軸の周面部に畦際を切削する複数の切削爪をそれぞれ設け、前記前処理ロータリーは、前記機体の進行方向すなわち、旧畦の上方に位置して旧畦の延在方向を軸方向とする回転軸の周面部に旧畦の上面部を切削する複数の前処理爪をそれぞれ設ける構成が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に記載された畦塗り機の構成では、前処理ロータリーの複数の前処理爪は旧畦の延在方向を軸方向とする回転軸を中心として回転されるため、特開平60-98903号公報の第2図に示されているように、複数の前処理爪にて旧畦の上面部の固い土部分が凹弧状に刳り取られて切削され、旧畦の上面部の固い土部分が削り取られ過ぎることがあり、また、雑草等の根も除去され易く、さらに、凹弧状に刳り取られた切削凹部内に盛土する土量も多くを必要とする問題がある。
【0006】
また、前処理ロータリーの複数の前処理爪は旧畦の延在方向を軸方向とする回転軸の周面部に設けられ、盛土ロータリーの複数の切削爪は旧畦の延在方向を軸方向として並設された複数の回転軸の周面部に設けられているため、これら複数の前処理爪及び複数の切削爪は走行車体の走行方向に対して交差する方向に向かっての回転となり、走行車体の走行時に前処理ロータリーの複数の前処理爪が旧畦の上面部の土圧を受けるとともに、盛土ロータリーの複数の切削爪が畦際等の土圧を受け、これら各前処理爪及び各切削爪が走行車体の走行抵抗となる問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、旧畦の上面部を削り取り過ぎることなく水平状に切削して前処理でき、かつ、旧畦の表層部に雑草等の根を残した状態で前処理でき、走行車体の走行抵抗を軽減できる畦塗り機を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の畦塗り機は、走行車体に連結される機枠及びこの機枠の進行方向に対して左右方向に移動自在の可動機枠とを有する機体と、この機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削してこの切削した土を旧畦の表面上に盛土する盛土ロータリーと、この盛土ロータリーの後方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ前記盛土ロータリーにて旧畦の表面上に盛土された土をこの旧畦の表面に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、前記盛土ロータリーの外側前方に位置して前記機体の前記可動機枠に回転自在に設けられ旧畦の上面部を畦塗り用に前処理する前処理ロータリーとを具備し、前記盛土ロータリーは、旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置され駆動系により回転される回転軸と、この回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の畦際及び旧畦の側面部の土を切削して旧畦の表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪とを有し、前記前処理ロータリーは、旧畦の上方に位置して旧畦の上面部を横切る略水平方向を軸方向として配置され前記盛土ロータリーの前記駆動系により連動回転される連動回転軸と、この連動回転軸の周面部に軸方向に放射状に突設され旧畦の上面部を切削して水平状に前処理する複数の前処理爪とを有し、前記可動機枠を前記機枠の一端側外方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より外側方に突出する畦塗り作業位置に移動され、前記可動機枠を前記機枠の一端側内方に向かって移動することにより前記盛土ロータリー、前記畦塗り体及び前記前処理ロータリーが前記走行車体の一方側の車輪より内側方に後退する非畦塗り作業位置に移動されるものであり、前記機体は、前記盛土ロータリーを深浅調節する第1の調節手段と、前記前処理ロータリーの前処理位置を上下動調節する第2の調節手段とを有し、前記盛土ロータリーは、前記第1の調節手段にて旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節可能に支持され、前記前処理ロータリーは、前記第2の調節手段にて旧畦の上面部に対して上下方向に位置調節自在に支持されているものである。
【0009】
そして、走行車体にて機体が旧畦に沿って進行されるとともに、前処理ロータリー、盛土ロータリー及び畦塗り体がそれぞれ回転されることにより、前処理ロータリーの複数の前処理爪にて旧畦の上面部が切削されて畦塗り用に順次水平状に前処理される。このとき、旧畦の上面部の固い土部分が凹弧状に刳り取られることがないため、旧畦の上面部の固い土部分が削り取られ過ぎることがなく、また、旧畦の表層部に雑草等の根を残した状態で前処理される。
【0010】
また、盛土ロータリーの複数の切削爪にて旧畦の畦際及び旧畦の側面部が畦塗り用の土として切削されるとともに、これらの土が跳ね上げられて旧畦の削りとられた表面上に順次盛土される。このとき、盛土される旧畦の上面部が予め水平状に前処理されているため、旧畦の水平状の上面部にはこの旧畦の上面部を修復する必要量の土量が盛土される。
【0011】
さらに、畦塗り体にて旧畦上に盛土された土がこの旧畦の上面部及び側面部の表面に塗り付けられて旧畦が修復されて順次新畦に整畦される。
【0012】
また、走行車体にて機体が旧畦に沿って進行されるとき、前処理ロータリーの複数の前処理爪及び盛土ロータリーの複数の切削爪は、走行車体の進行に向かって回転されることにより、これら複数の前処理爪及び複数の切削爪による推進力にて走行車体の走行抵抗が軽減される。また、第1の調節手段を調節操作することにより、この第1の調節手段にて盛土ロータリーが旧畦の畦際及び旧畦の側面部を切削して旧畦の削りとられた表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節される。さらに、第2の調節手段を調節操作することにより、この第2の調節手段にて前処理ロータリーが旧畦の上面部に対してこの旧畦の上面部を切削して前処理する所定の位置に調節される。
【0013】(削除)
【0014】(削除)
【0015】(削除)
【0016】(削除)
【0017】(削除)
【0018】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、複数の前処理爪は、これら前処理爪の先端部に旧畦の上面部を水平状に切削する水平状の切削刃をそれぞれ有するものである。
【0019】
そして、複数の前処理爪の先端部の水平状の切削刃にて旧畦の上面部が切削されて旧畦の上面が全体として水平状に前処理される。
【0020】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、畦塗り体は、旧畦の上面部に盛土された土をこの旧畦の上面部に塗り付けて旧畦の上面部を水平状に修復する円筒状の上面修復部と、この上面修復部の端部に固定され旧畦の側面部に盛土された土をこの旧畦の側面部に塗り付けて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復する田面側に向かって拡開した円錐形状の側面修復部とを有して構成されているものである。
【0021】
そして、畦塗り体の上面修復部にて旧畦の上面部が水平状に修復されるとともに、この畦塗り体の側面修復部にて旧畦の側面部が下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復されて順次新畦に整畦される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1、図2及び図3において、1は機体で、この機体1は走行車体としてのトラクタTに連結される機枠2と、この機枠2の進行方向に対して左右方向に移動自在に設けられた可動機枠3とを有し、前記可動機枠3には、畦塗り用の土を切削して旧畦A上に盛土する回転自在の盛土ロータリー4と、この盛土ロータリー4の後方に位置して旧畦A上に盛土された土をこの旧畦Aの表面に塗り付けて旧畦Aを修復する回転自在の畦塗り体5と、前記盛土ロータリー4の外側前方に位置して旧畦Aの上面部を畦塗り用に前処理する回転自在の前処理ロータリー6とがそれぞれ設けられている。
【0024】
前記機枠2は、中空角柱状部材にて左右方向に延在して形成された主フレーム7を有し、この主フレーム7の両端近傍部にロワアーム8がそれぞれ前下方に向かって傾斜して一体に突設され、この両側のロワアーム8の先端部に連結ピン9がそれぞれ外側方に向かって水平状に突設されている。
【0025】
また、前記主フレーム7の中間下部に軸受体10が固定され、この軸受体10内に前記主フレーム7と交差する方向の前後方向の入力軸11が抜止めされた状態で回転自在に軸支されている。この入力軸11は、先端側のスプライン軸部が前記軸受体10の先端部から前方に向かって突出されているとともに、後端側のスプライン軸部が前記軸受体10の後端部から後方に向かって突出されている。
【0026】
そして、前記入力軸11の先端側のスプライン軸部にはトラクタTの動力取出軸に連結した第1の動力伝達軸の一端部がスプライン嵌合により連結され、前記入力軸11の後端側のスプライン軸部には後述する出力軸に第2の動力伝達軸の一端部がスプライン嵌合により連結されるようになっている。
【0027】
また、前記主フレーム7の中間上部にトップアーム12が前上方に向かって傾斜して一体に突設され、このトップアーム12の先端部に連結ピン13が着脱可能に取り付けられている。そして、前記両側部のロワアーム8の連結ピン9及び前記トップアーム12の連結ピン13にトラクタTの三点懸架機構の三点連結部がそれぞれ回動自在に連結されるようになっている。
【0028】
さらに、図1、図2及び図3に示すように、前記主フレーム7の両端部には上下に離間した一対の連結板14がそれぞれ後方に向かって平行に一体に突設され、この両端部の一対の連結板14の後端部間に連結軸15がそれぞれ着脱自在に垂直状に取り付けられている。
【0029】
そして、前記両側のロワアーム8及びトップアーム12を有する主フレーム7と、入力軸11を有する軸受体10と、連結軸15を有する左右一対の連結板14とにより前記機枠2が構成されている。
【0030】
つぎに、前記可動機枠3は、図1、図2及び図3に示すように、中空円筒状部材にて左右方向に延在して形成された第1の伝動ケース16と、この第1の伝動ケース16の一端部に上下方向に回動自在に設けられ前下方に向かって突出された第2の伝動ケース17と、この第2の伝動ケース17の前端部に固定され前上方に向かって傾斜して突出された第3の伝動ケース18と、前記第1の伝動ケース16の後方に位置してこの第1の伝動ケース16に支持された中空円筒状部材にて左右方向に延在して形成された第4の伝動ケース19とを有している。
【0031】
そして、前記第1の伝動ケース16は、この第1の伝動ケース16の中間部より左側に偏位した位置に固定されたギヤケース20を備えている。このギヤケース20には、前記第1の伝動ケース16と交差する方向の前後方向に延在した出力軸21が回転自在に軸支され、この出力軸21は先端側に前記ギヤケース20の前端部から前方に向かって突出したスプライン軸部を有するとともに、後端部に前記ギヤケース20内に位置してベベルギヤ22が固定されている。
【0032】
また、前記ギヤケース20の両側に位置して前記第1の伝動ケース16内には第1の連動軸23及び第2の連動軸24がそれぞれ第1の伝動ケース16内に設けられた図示しない軸受体にて回転自在に軸支されている。そして、前記第1の連動軸23の一端部には前記第1の伝動ケース16の一端側内に位置してスプロケット25が固定され、この第1の連動軸23の他端部には前記ギヤケース20内に位置して前記出力軸21のベベルギヤ22に噛合したベベルギヤ26が固定されている。
【0033】
また、前記第2の連動軸24一端部には前記ギヤケース20内に位置して前記出力軸21のベベルギヤ22に噛合したベベルギヤ27が固定され、この第2の連動軸24の他端部は前記第1の伝動ケース16の他端部に固定されたチェンケース28内に突出されている。
【0034】
さらに、前記ギヤケース20の両側方に位置して前記第1の伝動ケース16の左右には板状の連結部材29がそれぞれ前方に向かって略水平状に一体に突設され、この左右の連結部材29の先端部に上下に離間した一対の連結板30がそれぞれ固定され、この一対の連結板30間には連結軸31がそれぞれ着脱可能に垂直状に取り付けられている。
【0035】
そして、前記左右の一対の連結板30間に取り付けられた左右の連結軸31と、前記主フレーム7の左右の一対の連結板14間に取り付けられた左右の連結軸15とは略同じ間隔で離間して取り付けられている。
【0036】
また、前記左右の連結部材29のうち、右側の連結部材29に支柱32が固定され、この支柱32の上部に支持フレーム33が設けられている。この支持フレーム33は、前記支柱32の上部に外側方に向かって水平状に固定され中空円筒状部材にて左右方向に延在して形成された支持部材34と、この支持部材34の一端側に互いに離間して前方に向かって突出した状態で上下方向に回動自在に取り付けられた一対のブラケット35と、この一対のブラケット35間に位置して前記支持部材34に前方に向かって突出して一体に固定された支持アーム36と、を有している。
【0037】
つぎに、前記第2の伝動ケース17は、中空筒状部材にて形成され、一端部に回動体37を有し、この回動体37が前記第1の伝動ケース16の一端部にこの第1の伝動ケース16の一端部を中心として回動自在に取り付けられている。また、この第2の伝動ケース17の先端部には、旧畦Aの田面側Bに位置して旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cを畦塗り用の土として切削して旧畦A上に盛土する前記盛土ロータリー4が回転自在に設けられている。
【0038】
前記盛土ロータリー4は、図1、図2及び図5に示すように、前記第2の伝動ケース17の先端部に設けられた軸受体38にて旧畦Aと交差する略水平方向を軸方向として配置され回転自在に軸支された回転軸39と、この回転軸39の周面部に軸方向に放射状に突出された複数の爪ホルダー40と、これら各爪ホルダー40に着脱可能に取り付けられて放射状に突出され旧畦Aの畦際及び旧畦Aの田面側Bの側面部Cを切削して旧畦Aの表面上に跳ね上げて盛土する複数の切削爪41とを有している。
【0039】
前記回転軸39は、この回転軸39の内端側が前記第2の伝動ケース17の先端部を貫通した状態で前記軸受体38にて片持式に回転自在に軸支されている。そして、この第2の伝動ケース17の先端部から外側方の旧畦Aと交差する略水平方向に向かって突出された回転軸39の部分の周面部に前記複数の切削爪41が放射状に突出されている。
【0040】
また、前記第2の伝動ケース17の先端部内に位置して前記回転軸39の内端側にはスプロケット42が固定され、このスプロケット42と前記第1の伝動ケース16内の第1の連動軸23の一端側に固定されたスプロケット25との間には無端チェーン43が回行自在に掛け回されている。また、前記回転軸39の内端部は前記第2の伝動ケース17の先端部から内側方に向かって突出された連動軸部44として形成されている。
【0041】
また、前記複数の切削爪41は、旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cを略垂直状に切削する縦切刃41aと、この縦切刃41aの先端部から略水平状に折り曲げられ旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cを略水平状に切削する横切刃41bとにて形成され、これら複数の切削爪41は、横切刃41bにて旧畦A側が浅く、田面側Bが深く切削されるように縦切刃41aの長さを異ならせて形成されている。
【0042】
そして、旧畦A側には縦切刃41aの長さが短いすなわち回転半径が小さい切削爪41が配設され、田面側B側には縦切刃41aの長さが順次長くなるすなわち回転半径が順次大きくなる切削爪41が配設され、これら長短の各切削爪41にて旧畦Aの側面部Cが略階段状に切削されるようになっている。
【0043】
つぎに、前記第3の伝動ケース18は、中空筒状部材にて形成され、前記第2の伝動ケース17の前端部に前上方に向かって傾斜した状態に突出して固定され、この第3の伝動ケース18の一端部すなわち後端部内には前記盛土ロータリー4の回転軸39の連動軸部44が回転自在に突出され、この連動軸部44にスプロケット45が固定されている。
【0044】
また、前記第3の伝動ケース18の先端部に左右方向に延在した連動軸46が回転自在に軸支され、この連動軸46には前記第3の伝動ケース18の先端部内に位置してスプロケット47が固定され、このスプロケット47と前記連動軸部44のスプロケット45との間には無端チェーン48が回行自在に掛け回されている。
【0045】
また、前記第3の伝動ケース18の先端部から外側方に向かって突出した前記連動軸46の突出部に伝動軸49の一方の自在継手50がスプライン嵌合により連結され、この伝動軸49の他方の自在継手51をスプライン嵌合により連結した回転軸52が前記支持フレーム33の内側のブラケット35の先端部に固定された変速ボックス53に回転自在に軸支されている。
【0046】
そして、前記ギヤケース20に設けた出力軸21と、前記第1の連動軸23と、前記相対するスプロケット25,42及びこれらスプロケット25,42間に掛け回した無端チェーン43とにて前記盛土ロータリー4の回転軸39を回転させる駆動系54が構成されている。また、この駆動系54にて前記前記第3の伝動ケース18内のスプロケット45,47及びこれらスプロケット45,47間に掛け回した前記無端チェーン48、前記連動軸46及び前記伝動軸49を介して前記回転軸52が回転され、この回転軸52にて前記前処理ロータリー6が連動回転されるようになっている。
【0047】
つぎに、前記前処理ロータリー6は、図1、図2及び図5に示すように、前記支持フレーム33の左右のブラケット35の先端部間に旧畦Aの上面部Dの上方に位置して略水平方向を軸方向として配置され回転自在に軸支された連動回転軸55と、この連動回転軸55の周面部に軸方向に放射状に突設された複数の爪ホルダー56と、これら各爪ホルダー56に着脱可能に取り付けられて放射状に突出され旧畦Aの上面部Dを切削して水平状に前処理する複数の前処理爪57と、を有している。
【0048】
そして、前記連動回転軸55は、この連動回転軸55の両端部に連結用のフランジ58をそれぞれ有し、この一端部のフランジ58が前記支持フレーム33の外側のブラケット35の先端部に回転自在に軸支された支軸59のフランジ60に着脱自在に連結され、この他端部のフランジ58が前記変速ボックス53に軸支された前記回転軸52のフランジ61に着脱自在に連結されている。
【0049】
そして、前記連動回転軸55は、前記盛土ロータリー4の駆動系54にて連動回転されるようになっている。また、前記前処理ロータリー6の連動回転軸55は、前記変速ボックス53内に設けられた変速機構を変速調節することにより、所定の回転数に調節され、この前処理ロータリー6が所定の回転速度で回転されて旧畦Aの上面部Dが前処理されるようになっている。
【0050】
また、前記複数の前処理爪57は、旧畦Aの上面部Dすなわち上層部を所定の深さに略垂直状に切削する縦切刃57aと、この縦切刃57aの先端部から略水平状に折り曲げられ旧畦Aの上面部Dすなわち上層部を水平状に切削する水平状の切削刃57bとにて形成されている。そして、これらの各前処理爪57の切削刃57bにて旧畦Aの上面部Dすなわち上層部を所定の深さで水平状に切削して前処理するようになっている。
【0051】
つぎに、前記第4の伝動ケース19は、図1に示すように、この第4の伝動ケース19の略中間に位置して固定され前後方向に延在した板状の取付部材62を有し、この取付部材62は前記第1の伝動ケース16に固定された右側の連結部材29に連結固定されている。また、この第4の伝動ケース19の一端部に前記畦塗り体5が回転自在に設けられているとともに、この第4の伝動ケース19の他端部が前記第1の伝動ケース16の他端部に固定されたチェンケース28に固定されている。
【0052】
また、前記第4の伝動ケース19内に第3の連動軸63が挿通されて回転自在に軸支され、この第3の連動軸63の一端部が前記第4の伝動ケース19の一端部から外側方に向かって突出され、この第3の連動軸63の他端部が前記チェンケース28内に突出され、このチェンケース28内に位置して第3の連動軸63の他端部にスプロケット64が固定されている。また、前記チェンケース28内に位置してこのチェンケース28内に突出された前記第2の連動軸24にスプロケット65が固定されている。そして、前記第2の連動軸24のスプロケット65と前記第3の連動軸63のスプロケット64との間に無端チェーン66が回行自在に掛け回されている。
【0053】
前記畦塗り体5は、図1に示すように、前記第3の連動軸63の一端部に固定部材67にて固定されている。この畦塗り体5は、旧畦Aの上面部Dに盛土された土をこの旧畦Aの上面部Dに塗り付けて旧畦Aの上面部Dを水平状に修復する円筒状の上面修復部68と、この上面修復部68の内端部に固定され旧畦Aの肩部Eを面取り状に修復する肩修復部69と、この肩修復部69の内端部に固定され旧畦Aの側面部Cを田面側Bの下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復する円錐形状の側面修復部70と、を有している。
【0054】
そして、前記側面修復部70は略扇形状に形成された複数の修復板71にてこれらの各修復板71を互いに隣接する側端縁部のそれぞれを重ね合わせて全体として円錐形状に形成されてる。
【0055】
また、前記第1の伝動ケース16に設けられた支柱32に支持アーム72が固定され、この支持アーム72の後端部に前記第4の伝動ケース19と平行に延長アーム73が固定され、この延長アーム73の一端部に前記畦塗り体5の上方を被覆するカバー体74が支持されている。また、前記支持フレーム33の左右のブラケット35に前記前処理ロータリー6の上方を被覆するカバー体75が支持されている。さらに、前記第2の伝動ケース17に複数の取付片76が固定され、これら複数の取付片76に前記盛土ロータリー4の上方を被覆するカバー体77が支持されている。
【0056】
つぎに、前記第1の伝動ケース16の前記支持部材34に前記第2の伝動ケース17の先端部に設けられた前記盛土ロータリー4を深浅調節する第1の調節手段78が設けられている。この第1の調節手段78は、図2及び図6に示すように、前記第2の伝動ケース17の上方に位置して前記支持部材34に固定された支持アーム79と、この支持アーム79に定位置で回転自在に支持された調節螺杆80と、この調節螺杆80に上下動自在に螺合された上下動杆81と、前記調節螺杆80と前記上下動杆81との嵌合部を被覆するカバー体82とを有している。
【0057】
そして、前記支持アーム79は、この支持アーム79の先端部に平面視略コ字形状に形成された支持枠83が固定され、この支持枠83内に位置してこの支持枠83の両側に設けた支軸84にて挿通孔85を有する円筒状のホルダー86が回動自在に軸支されている。
【0058】
また、前記調節螺杆80は、この調節螺杆80の上端近傍部に前記ホルダー86の挿通孔85内に回転自在に挿通された円筒状の回転部87を有し、この回転部87の上端部に前記ホルダー86の上面より上方に突出した状態で支持される支持部88が形成され、この支持部88に前記ホルダー86の上面に設けたスリーブ89を介してハンドル90を有する嵌合体91が嵌合され、この嵌合体91はこの嵌合体91から前記支持部88に挿通した固定ピン92にてこの支持部88に固定されている。また、前記調節螺杆80には、この調節螺杆80の略中間部から下端にかけてこの調節螺杆80の周面に雄ねじ93が形成されている。
【0059】
また、前記上下動杆81は、中空円筒状に形成され、その内周部に前記調節螺杆80の雄ねじ93を螺合する雌ねじ94を有するねじ孔95が軸方向に形成され、この上下動杆81の雌ねじ94を有するねじ孔95内に前記調節螺杆80がこの雄ねじ93と雌ねじ94との螺合により挿入され、この調節螺杆80の回転によりこの調節螺杆80に上下動杆81が上下動自在に設けられている。
【0060】
さらに、前記カバー体82は、上下方向に延在した円筒状に形成され、前記ホルダー86の下方に位置したカバー体82の上面板部82aに前記調節螺杆80を回転自在に挿通した挿通孔96が形成され、この上面板部82aに連続した円筒状のカバー部97にて前記調節螺杆80と前記上下動杆81との嵌合部を被覆している。また、前記カバー体82の上面板部82aと前記ホルダー86との間に前記調節螺杆80を回転自在に挿通した挿通孔98を有するスリーブ99が介在固定されている。
【0061】
また、前記上下動杆81の下端部に支軸100にて前記第2の伝動ケース17に固定された取付片101が回動自在に軸支されている。
【0062】
そして、前記第1の調節手段78にて第1の伝動ケース16の支持部材34に前記盛土ロータリー4を先端部に有する第2の伝動ケース17が上下方向に回動自在に支持され、前記ハンドル90にて調節螺杆80を回転操作することにより、この調節螺杆80にて前記上下動杆81が上下動され、この上下動杆81にて前記支軸100及び取付片101により前記第2の伝動ケース17が前記第1の伝動ケース16を中心として上下方向に回動され、この第2の伝動ケース17の先端部の前記盛土ロータリー4が旧畦Aの畦際及び旧畦Aの田面側Bの側面部Cを切削して旧畦Aの表面上に跳ね上げる所定の位置に深浅調節されるようになっている。
【0063】
つぎに、前記第1の伝動ケース16に設けられた前記支持フレーム33に前記前処理ロータリー6の前処理位置を上下動調節する第2の調節手段102が設けられている。この第2の調節手段102は、図2に示すように、前記支持フレーム33に設けられた前記支持アーム36と、この支持アーム36に上下動自在に設けられた調節杆103と、この調節杆103の下端部に支軸104にて回動自在に軸支され前記前処理ロータリー6を設けた前記左右のブラケット35間に固定された固定板105とを有している。
【0064】
そして、前記支持アーム36は、この支持アーム36の先端部に平面視略コ字形状に形成された支持枠106が固定され、この支持枠106内に位置して支持枠106の両側に設けた支軸107にて挿通孔108を有する円筒状のホルダー109が回動自在に軸支されている。
【0065】
また、調節杆103は、前記ホルダー109内に上下動自在に挿通可能な径で上下方向に延在して形成され、その上部に上下方向に所定の間隔をおいてこの調節杆103の周面に開口した複数の調節孔110がそれぞれ形成され、これら複数の調節孔110のうち選択した位置の調節孔110に挿脱自在に挿通する固定ピン111を有している。
【0066】
そして、前記ホルダー109の上方に位置してこのホルダー109の上面から上方に突出された調節杆103の選択した位置の調節孔110に固定ピン111を挿通することにより、前記支持アーム36に調節杆103が固定ピン111にて抜止めされた状態で支持されるとともに、この調節杆103にて支持される前記左右のブラケット35の先端部の前記前処理ロータリー6が旧畦Aの上面部Dを前処理する所定の位置に支持されるようになっている。
【0067】
また、前記ホルダー109に対して前記調節杆103を上下動して前記前処理ロータリー6を旧畦Aの上面部Dに対して上下方向に位置調節し、この前処理ロータリー6を前処理する所定の位置に位置決めした状態で、ホルダー109の上面から上方に突出された調節杆103の選択した位置の調節孔110に固定ピン111を挿通することにより、この前処理ロータリー6が前処理する所定の位置に位置決め調節される。
【0068】
そして、この前処理ロータリー6にて旧畦Aの上面部Dを前処理するときに、その前処理爪57が旧畦Aの上面部D上の石等の塊体により押し上げられたときは、固定ピン111がホルダー109の上面に位置して調節杆103を下方に抜止めした状態となっているが、この固定ピン111にて調節杆103の上動が阻止されることがないので、前処理ロータリー6が調節位置で上動されるようになっている。
【0069】
すなわち、前記第2の調節手段102にて前記第1の伝動ケース16の支持部材34に前記前処理ロータリー6を先端部に有する前記左右のブラケット35が上下方向に回動自在に支持され、この左右のブラケット35の先端部の前処理ロータリー6が旧畦Aの上面部Dに対して上下方向に位置調節自在に、かつ、この調節位置で上動可能に支持されている。
【0070】
つぎに、120は前記機枠2にこの機枠2の進行方向に対して左右方向に前記可動機枠3を移動自在に連結しこの可動機枠3に設けられた前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6を前記機枠2の一端側外方に突出させた作業位置及びこの作業位置から前記機枠2の一端側内方に後退させた非作業位置にそれぞれ移動させる平行に枢着した一対のリンクである。
【0071】
前記一対のリンク120は、図1乃至図4に示すように、前後方向に延在した互いに同じ長さの板状部材にて形成され、これら一対のリンク120の両端部には前記機枠2の連結軸15及び前記可動機枠3の連結軸31をそれぞれ回動自在に挿通する円筒状の軸支部121がそれぞれ形成されている。
【0072】
そして、前記一対のリンク120の一端部の軸支部121が前記機枠2の左右の上下一対の連結板14間に位置してこれら連結軸15にてそれぞれ回動自在に枢着されている。また、前記一対のリンク120の他端部の軸支部121が前記可動機枠3の左右の上下一対の連結板30間に位置してこれら連結軸31にてそれぞれ回動自在に枢着されている。
【0073】
また、前記機枠2の左右の連結軸15の相互の間隔と前記可動機枠3の左右の連結軸31の相互の間隔とはそれぞれ同じ間隔で配置されているので、これら相対する前後の連結軸15,31に一対のリンク120の両端部をそれぞれ枢着することにより、この一対のリンク120は前記機枠2と前記可動機枠3との間に平行に枢着されている。
【0074】
そして、前記一対のリンク120により、前記可動機枠3の前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が、前記機枠2の一端側外方に突出させ前記機枠2を牽引するトラクタTの一方側の車輪Eより外側方に突出させた畦塗り作業位置及びこの畦塗り作業位置より前記機枠2の一端側内方に後退させトラクタTの一方側の車輪Eより内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ切換え移動されるようになっている。
【0075】
また、前記可動機枠3の前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が移動される前記機枠2の一端側内方の前記非畦塗り作業位置は、前記可動機枠3の前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6にて本畦塗り機が全体として重量バランスが崩れない位置となっている。
【0076】
つぎに、122は前記一対のリンク120により前記可動機枠3の前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた状態でこの可動機枠3を固定する可動機枠固定手段である。
【0077】
前記可動機枠固定手段122は、図2及び図3に示すように、前記機枠2の主フレーム7の略中間部に固定された取付枠123と、この取付枠123に取付軸124にて一端部が回動自在に軸支されたロッド125と、このロッド125の他端側が進退自在に挿通され他端部が前記可動機枠3の左側の連結軸31に回動自在に軸支されシリンダー126とを有している。
【0078】
そして、前記取付枠123は、前記主フレーム7の後部に固定された固定部の上下に取付板127を設けて側面視略コ字形状に形成され、前記上下の取付板127間に前記取付軸124が軸支されている。
【0079】
また、前記ロッド125は、このロッド125の一端側に前記可動機枠3の前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が畦塗り作業位置に移動されたときロックピン128を挿通する第1の連通孔129が形成されているとともに、このロッド125の他端側に前記可動機枠3の前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が非畦塗り作業位置に移動されたとき前記ロックピン128を挿通する第2の連通孔130が形成されている。
【0080】
さらに、前記シリンダー126は、このシリンダー126の一端側に前記第1の連通孔129及び第2の連通孔130に連通するピン挿通孔131が形成され、このピン挿通孔131から前記第1の連通孔129または前記第2の連通孔130に前記ロックピン128が選択的に挿脱自在に挿通されるようになっている。また、このロックピン128はハンドル128aを備えている。
【0081】
そして、前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に切換え移動するときは、前記ロックピン128をピン挿通孔131から引き抜いた状態でシリンダー126に対してロッド125が進退動して切換え移動される。
【0082】
また、前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が畦塗り作業位置に移動されたとき、シリンダー126のピン挿通孔131からロッド125の第1の連通孔129にロックピン128を挿通することにより、盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が畦塗り作業位置に固定され、また、盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が非畦塗り作業位置に移動されたとき、シリンダー126のピン挿通孔131からロッド125の第2の連通孔130にロックピン128を挿通することにより、盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が非畦塗り作業位置に固定されるようになっている。
【0083】
つぎに、132は前記機枠2側の入力軸11の回転を前記可動機枠3側の出力軸21に伝達する動力伝達軸で、この動力伝達軸132は、図3に示すように、互いにスプライン嵌合により周回方向が固定で軸方向にのみ伸縮自在に嵌合された内筒体133及び外筒体134と、前記内筒体133の端部に設けられ前記出力軸21にスプライン嵌合により固定された自在継手135と、前記外筒体134の端部に設けられ前記入力軸11にスプライン嵌合により固定された自在継手136とを有している。
【0084】
そして、前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が畦塗り作業位置及びこれらが非畦塗り作業位置に移動されるとき、前記動力伝達軸132の内筒体133及び外筒体134が伸縮するとともに、前記両端部の自在継手135,136がそれぞれ折れ曲がるように回動して前記盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6の移動を可能にするようになっている。
【0085】
つぎに、前記実施の形態の作用を説明する。
【0086】
機枠2のトップアーム12に連結ピン13にてトラクタTのトップリンクを連結するとともに、機枠2の両側のロワアーム8に連結ピン9にてトラクタの両側のロワリンクをそれぞれ連結する。また、機枠2の入力軸6に図示しない動力伝達軸体の一端部のユニバーサルジョイントをスプライン嵌合により連結するとともに、この動力伝達軸体の他端部のユニバーサルジョイントをトラクタTの動力取出軸にスプライン嵌合により連結する。
【0087】
つぎに、畦塗り作業時は、トラクタTの一方側の車輪Eを修復する旧畦Aの畦際に配置した状態で、可動機枠固定手段122のロックピン128をシリンダー126のピン挿通孔131から引き抜き、このシリンダー126とロッド125とのロックを解除し、このシリンダー126に対してロッド125を進退可能な状態にする。
【0088】
そして、一対のリンク120により可動機枠3を機枠2の一端側外方に向かって移動することにより、この可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ機枠2の一端側外方のトラクタTの一方側の車輪Eより外側方に突出され、これら盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が、それぞれ図4に示すように、旧畦Aを修復する畦塗り作業位置に移動される。
【0089】
すなわち、盛土ロータリー4は旧畦Aの田面側Bに位置して旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cを切削して旧畦Aの表面上に跳ね上げて盛土する位置に移動されるとともに、畦塗り体5は旧畦Aの表面上に盛土された土をこの旧畦Aの表面に塗り付けて旧畦Aを修復する位置に移動され、かつ、前処理ロータリー6は盛土ロータリー4の外側前方に位置して旧畦Aの上面部Dを畦塗り用に前処理する位置に移動される。
【0090】
このとき、一対のリンク120はそれぞれの前後の連結軸15,31を中心として回動されるとともに、この一対のリンク120にて可動機枠3が機枠2の一端側外方に向かって移動される。また、可動機枠固定手段122のシリンダー126は連結軸31を中心として回動されるとともに、このロッド125は主フレーム7に固定された取付枠123の取付軸124を中心として回動され、かつ、このロッド125はシリンダー126に対して伸縮する状態に進退して回動される。
【0091】
さらに、動力伝達軸132の両端部の自在継手135,136がそれぞれ折り曲がる状態で回動しながら動力伝達軸132が入力軸11を中心として機枠2の一端側外方に向かって移動される。したがって、一対のリンク120により可動機枠3が機枠2の一端側外方に向かってスムーズに移動される。
【0092】
また、可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ畦塗り作業位置に移動されると、可動機枠固定手段122のシリンダー126の先端側に形成されたピン挿通孔131にロッド125の第1の連通孔129が連通する。
【0093】
そして、このシリンダー126のピン挿通孔131からロッド125の第1の連通孔129にロックピン128を挿通することにより、このロックピン128にてシリンダー126にロッド125が固定され、このシリンダー126及びロッド125にて機枠2の主フレーム7と可動機枠3の第1の伝動ケース16とを繋ぎ止める1本のかすがい体が構成される。
【0094】
また、この1本のかすがい体を構成したシリンダー126及びロッド125にて機枠2の主フレーム7に可動機枠3が固定されるとともに、この可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ畦塗り作業位置に固定される。また、シリンダー126及びロッド125にて機枠2の主フレーム7に可動機枠3が固定されることにより、このシリンダー126及びロッド125にて一対のリンク120が回動不能になる。
【0095】
また、盛土ロータリー4が田面側Bに位置して旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cを切削する位置に移動された状態で、旧畦Aの修復状況等により必要に応じて、第1の調節手段78のハンドル90を回動操作すると、このハンドル90にて調節螺杆80がホルダー86に支持された状態で定位置で回動されるとともに、この調節螺杆80に沿って上下動杆81が上下動される。
【0096】
そして、この上下動杆81にて第2の伝動ケース17が第1の伝動ケース16を中心として上下方向に回動されるとともに、この第2の伝動ケース17の盛土ロータリー4が上下動され、この盛土ロータリー4が畦塗り体5の位置を基準として旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cを切削する所定の作業位置に調節される。
【0097】
さらに、前処理ロータリー6が旧畦Aの上面部Dを前処理する所定の位置に移動された状態で、旧畦Aの上面部Dを前処理する状況、たとえば、旧畦Aの上面部Dの荒れ状況等により必要に応じて、調節杆103の調節孔110から固定ピン111を引き抜く。
【0098】
そして、ホルダー109に対して調節杆103を上下動すると、この調節杆103にて前処理ロータリー6を先端部に設けた左右のブラケット35が支持フレーム33の支持部材34を中心として上下方向に回動される。また、左右のブラケット35が上下方向に回動されるとき、左側のブラケット35に軸支された回転軸52にて伝動軸49の他方の自在継手51が折れ曲がる状態で回動され、この伝動軸49の他方の自在継手51により回転軸52を設けた左側のブラケット35及び右側のブラケット35が上下方向に容易に回動される。
【0099】
また、左右のブラケット35が上下方向に回動されることにより、この左右のブラケット35にて前処理ロータリー6が旧畦Aの上面部Dに対して上下方向に位置調節され、この前処理ロータリー6が旧畦Aの上面部Dを前処理する所定の位置に位置決めされた状態で、ホルダー109の上面から上方に突出された調節杆103の選択した位置の調節孔110に固定ピン111を再び挿通する。これにより、この前処理ロータリー6が畦塗り体5の位置を基準として旧畦Aの上面部Dを前処理する所定の位置に位置決めされる。
【0100】
さらに、畦塗り作業位置に可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ位置固定された状態で、田面側Bの状況等により必要に応じて、ホルダー113に対して支柱115を上下動することにより、この支柱115の下端部の規制輪116が上下動調節される。
【0101】
そして、この規制輪116をこの輪本体118の周面が地面に対して所定の接地圧で接地し、かつ、この規制輪116の環状刃119が回転して地面を垂直状に切断しながら直進移動する高さに調節する。また、この状態でホルダー113に対して支柱115を固定することにより、下端部の規制輪116が環状刃119にて地面を垂直状に切断しながら直進移動可能に調節された高さ位置に位置固定される。
【0102】
つぎに、トラクタTにて機枠2を連結した畦塗り機が牽引進行されるとともに、このトラクタTの動力取出軸にて動力伝達軸体を介して入力軸11が回転されることにより、この入力軸11により回転されるて動力伝達軸132にて可動機枠3側の出力軸21が回転される。
【0103】
また、出力軸21が回転されると、この出力軸21に連動される第1の連動軸23及び無端チェーン43にて盛土ロータリー4が回転されながら進行されるとともに、この盛土ロータリー4の駆動系54に連動される無端チェーン48、伝動軸49及び回転軸52にて前処理ロータリー6が回転されながら進行され、さらに、出力軸21に連動される第2の連動軸24、チェンケース28内の無端チェーン66及び第3の連動軸63にて畦塗り体5が回転されながら進行される。
【0104】
そして、前処理ロータリー6の複数の前処理爪57にて旧畦Aの上面部Dが切削されるが、これらの前処理爪57は先端部に水平状の切削刃57bを有することにより、これらの前処理爪57の先端部の水平状の切削刃57bにて旧畦Aの上面部Dが畦塗り用に順次水平状に切削され、この旧畦Aの上面部Dが平らに地均しした状態に順次前処理される。
【0105】
このとき、前処理爪57は旧畦Aの上面部Dを横切る方向を軸方向として配置された連動回転軸55に放射状に突設され、かつ、これらの先端部の切削刃57bが水平状に形成されていることにより、旧畦Aの上面部Dの固い土部分が凹弧状に刳り取られることがないため、旧畦Aの上面部Dの固い土部分が削り取られ過ぎることがなく、また、旧畦Aの上面部Dの雑草等は根元部分から切断されるとともに、旧畦Aの表層部に雑草等の根を残した状態で前処理される。
【0106】
また、前処理ロータリー6の複数の前処理爪57にて旧畦Aの上面部Dを切削して前処理するときに、その前処理爪57が旧畦Aの上面部D上の石等の塊体により押し上げられると、これら塊体にて前処理ロータリー6が調節位置で上動されて塊体を乗り越える。
【0107】
すなわち、固定ピン111はホルダー109の上面に位置して調節杆103を下方に抜止めした状態となっているだけで、この固定ピン111にて調節杆103の上動が阻止されることがなく、また、前処理ロータリー6を軸支した左右のブラケット35は支持フレーム33の支持部材34にこの支持部材34を中心として上下方向に回動自在に支持されているとともに、前処理ロータリー6の連動回転軸55の他端部を連結した変速ボックス53の回転軸52が伝動軸49の他方の自在継手51に連結されているので、前処理ロータリー6の前処理爪57が旧畦Aの上面部D上の石等の塊体により押し上げられると、前処理ロータリー6の連動回転軸55の他端部にて伝動軸49の他方の自在継手51が折れ曲がり、前処理ロータリー6の上動が阻止されることがなく、したがって、塊体にて前処理ロータリー6が調節位置で上動されて塊体を乗り越える。
【0108】
また、盛土ロータリー4の複数の切削爪41にて旧畦Aの畦際及び旧畦Aの側面部Cが切削されるが、これらの複数の切削爪41は、旧畦A側には縦切刃41aの長さが短いすなわち回転半径が小さい切削爪41が配設され、田面側Bには縦切刃41aの長さが順次長くなるすなわち回転半径が順次大きくなる切削爪41が配設されていることにより、これらの複数の切削爪41にて旧畦Aの側面部Cの上部から田面側Bに向かって旧畦Aの側面部C側が浅く、田面側Bが順次深くなる状態で略階段状に切削されるとともに、これらの土が跳ね上げられて旧畦Aの削りとられた表面上に順次盛土される。
【0109】
このとき、盛土される旧畦Aの上面部Dが予め水平状に地均しした状態に前処理されているため、旧畦Aの水平状の上面部Dにはこの旧畦Aの上面部Dを修復する必要量の土量が盛土される。また、旧畦Aの側面部Cには略階段状に切削された階段状部分に盛土される。
【0110】
さらに、畦塗り体5にて旧畦Aの表面上に盛土された土がこの旧畦Aの上面部D及び側面部Cの表面に塗り付けられて旧畦Aが修復されて新畦に順次整畦される。すなわち、畦塗り体5の上面修復部68にて旧畦Aの上面部Dの固い土部分に土が順次塗り付けられて締め固められ旧畦Aの上面部Dが水平状に順次修復されるとともに、この畦塗り体5の肩修復部69にて旧畦Aの肩部に土が順次塗り付けられて締め固められ旧畦Aの肩部が下方に向かって傾斜した面取り状に順次修復され、かつ、畦塗り体5の側面修復部70にて旧畦Aの側面部Cに土が順次塗り付けられて締め固められ旧畦Aの側面部Cが下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に順次修復される。
【0111】
このとき、旧畦Aの側面部Cには略階段状に切削された階段状部分に盛土されていることにより、この旧畦Aの側面部Cに塗り付けられて締め固められる土は旧畦Aの側面部Cを切削された階段状部分で受け止められ、この階段状部分にて旧畦Aの側面部Cに塗り付けられた土が崩落し難い状態に締め固められる。
【0112】
したがって、畦塗り体5にて旧畦Aは上面が水平状で側面が下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復された新畦に順次整畦される。そして、旧畦Aの表面部に塗り付けられて締め固められる土により、旧畦Aのひび割れ部分及びもぐら等により開けられた穴等が確実に塞ぎ込まれ、この新畦を挟んだ一方の田面側Bから他方の田面側B等の側方に水漏れすることを確実に防止できる新畦に順次整畦される。
【0113】
また、トラクタTにて機体1が旧畦Aに沿って進行されるとき、前処理ロータリー6の複数の前処理爪57及び盛土ロータリー4の複数の切削爪41は、トラクタTの進行に向かって回転されることにより、これら複数の前処理爪57及び複数の切削爪41による推進力によりトラクタTの走行抵抗が軽減される。
【0114】
つぎに、非畦塗り作業時は、可動機枠固定手段122のロックピン128をシリンダー126のピン挿通孔131から引き抜くこにより、このシリンダー126とロッド125との固定が解除され、このシリンダー126に対してロッド125が進退可能になり、機枠2の主フレーム7に対する可動機枠3の固定が解除される。
【0115】
また、一対のリンク120により可動機枠3を機枠2の一端側内方に向かって移動することにより、この可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6が、それぞれ図4に示すトラクタの一方側の車輪Eの外側方の畦塗り作業位置から図1に示すように機枠2の一端側内方のトラクタの一方側の車輪Eより内側方に後退され、この可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ畦塗り作業を行なわない所定の非畦塗り作業位置に移動される。
【0116】
このとき、一対のリンク120は、それぞれの前後の連結軸15,31を中心として回動され、可動機枠固定手段122のシリンダー126は、連結軸31を中心として回動されるとともに、このロッド125は、主フレーム7に固定された取付枠123の取付軸124を中心として回動され、かつ、このロッド125はシリンダー126に対して伸縮する状態に進退して回動される。
【0117】
また、動力伝達軸132の両端部の自在継手135,136がそれぞれ折り曲がる状態で回動しながら動力伝達軸132が入力軸11を中心として機枠2の一端側内方に向かって移動される。したがって、一対のリンク120により可動機枠3が機枠2の一端側内方に向かってスムーズに移動される。
【0118】
また、可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ非畦塗り作業位置に移動されると、可動機枠固定手段122のシリンダー126の先端側に形成されたピン挿通孔131にロッド125の第2の連通孔130が連通する。
【0119】
そして、このシリンダー126のピン挿通孔131からロッド125の第2の連通孔130にロックピン128を挿通することにより、このロックピン128にてシリンダー126にロッド125が固定され、このシリンダー126及びロッド125にて機枠2の主フレーム7と可動機枠3の第1の伝動ケース16とを繋ぎ止める1本のかすがい体が構成される。
【0120】
また、この1本のかすがい体を構成したシリンダー126及びロッド125にて機枠2の主フレーム7に可動機枠3が位置固定されるとともに、この可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6がそれぞれ非畦塗り作業位置に固定される。また、シリンダー126及びロッド125にて機枠2の主フレーム7に可動機枠3が固定されることにより、このシリンダー126及びロッド125にて一対のリンク120が回動不能になる。
【0121】
そして、可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6を畦塗り作業位置から非畦塗り作業位置に切換え移動できるので、この可動機枠3の盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6を非畦塗り作業位置に移動したとき、この盛土ロータリー4、畦塗り体5及び前処理ロータリー6にてトラクタT側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれることがなく、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行が確保され、かつ、道路走行時の交通障害の問題も解消される。
【0122】
つぎに、前記実施の形態では、縦切刃57aと水平状の切削刃57bとを有する複数の前処理爪57を備えた前処理ロータリー6を、支持フレーム33の外側のブラケット35のフランジ60と変速ボックス53に軸支された回転軸52のフランジ61とに着脱自在に連結する場合について説明したので、縦切刃57aと水平状の切削刃57bとを有する複数の前処理爪57を備えた前処理ロータリー6に変えて、旧畦Aの上面部Dを薄く切削しながら旧畦Aの上面部Dに繁茂する雑草等を根元から切断する複数の前処理爪137を備えた前処理ロータリー138を、支持フレーム33の外側のブラケット35のフランジ60と変速ボックス53に軸支された回転軸52のフランジ61とに着脱自在に連結するようにしてもよい。
【0123】
この場合は、たとえば、図7及び図8に示すように、前処理ロータリー138は、支持フレーム33の外側のブラケット35のフランジ60と変速ボックス53に軸支された回転軸52のフランジ61とに着脱自在に連結するフランジ139を両端部に有する連動回転軸140と、この連動回転軸140にこの連動回転軸140の軸方向に間隔をおいて固定された複数の爪取付体141と、これら複数の爪取付体141のそれぞれに回動自在に取り付けられた複数の前記前処理爪137と、を有している。
【0124】
そして、前記複数の爪取付体141は、前記連動回転軸140の周面に相対して離間して固定された一対の取付片142をそれぞれ有し、この一対の取付片142間に取付軸143が固定され、この取付軸143に略U字形状の爪取付具144が回動自在に軸支されている。
【0125】
また、前記複数の前処理爪137は、上端部が狭く下端部が広い形状で正面視略三角形状に形成され、その上端部に前記爪取付具144に回動自在に取り付けられた取付部145が形成されているとともに、その下端部に旧畦Aの上面部Dを薄く切削しながら旧畦Aの上面部Dに繁茂する雑草等を根元から切断する水平状の切削刃146が形成されている。
【0126】
そして、支持フレーム33の外側のブラケット35のフランジ60と変速ボックス53に軸支された回転軸52のフランジ61とに連動回転軸140の両端部のフランジ139を着脱自在に連結することにより、この支持フレーム33の外側のブラケット35のフランジ60と変速ボックス53に軸支された回転軸52のフランジ61との間に前処理ロータリー138が回転自在に設けられる。
【0127】
また、前記前処理ロータリー138の連動回転軸140は変速ボックス53内に設けられた変速機構を変速調節することにより、所定の回転数に調節され、この前処理ロータリー138が所定の回転速度で回転されて旧畦Aの上面部Dが前処理されるようになっている。
【0128】
このように構成することにより、前記実施の形態の場合と同様に盛土ロータリー4の駆動系54により前処理ロータリー138が回転されると、この前処理ロータリー138の複数の前処理爪137の水平状の切削刃146にて旧畦Aの上面部Dを薄く水平状に切削しながら旧畦Aの上面部Dに繁茂する雑草等が根元から切断され、この旧畦Aの上面部Dが水平状に前処理されるとともに、この旧畦Aの表層部に雑草等の根を残した状態で前処理される。
【0129】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、前処理ロータリーの複数の前処理爪にて旧畦の上面部を切削して畦塗り用に水平状に前処理でき、このとき、旧畦の上面部の固い土部分が凹弧状に刳り取られることがないため、旧畦の上面部の固い土部分が削り取られ過ぎることがなく、旧畦の表層部に雑草等の根を残した状態で前処理できる。
【0130】
また、盛土ロータリーの複数の切削爪にて旧畦の畦際及び旧畦の側面部を切削してこれらの土を跳ね上げて旧畦の削りとられた表面上に盛土できるが、このとき、盛土される旧畦の上面部が予め水平状に前処理されているため、旧畦の水平状の上面部に必要量の土量を確実に盛土できる。
【0131】
また、前処理ロータリーの複数の前処理爪は旧畦の上方に位置して略水平方向を軸方向として配置された連動回転軸に突設し、盛土ロータリーの複数の切削爪は旧畦と交差する略水平方向を軸方向として配置された回転軸に突設したので、これら前処理ロータリーの複数の前処理爪及び盛土ロータリーの複数の切削爪は、走行車体の進行方向に向かって回転され、これら複数の前処理爪及び複数の切削爪による推進力にて走行車体の走行抵抗を軽減できる。また、第1の調節手段を調節操作することにより、この第1の調節手段にて盛土ロータリーを旧畦の畦際及び旧畦の田面側の側面部を切削して旧畦の表面上に跳ね上げる所定の位置に簡単かつ確実に深浅調節できる。さらに、第2の調節手段を調節操作することにより、この第2の調節手段にて前処理ロータリーを旧畦の上面部に対してこの旧畦の上面部を切削して前処理する所定の位署に簡単かつ確実に調節される。
【0132】(削除)
【0133】(削除)
【0134】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、複数の前処理爪の先端部の水平状の切削刃にて旧畦の上面部を切削して旧畦の上面を全体として確実に水平状に前処理できる。
【0135】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、畦塗り体の上面修復部にて旧畦の上面部が水平状に修復できるとともに、この畦塗り体の側面修復部にて旧畦の側面部を下方に向かって拡開傾斜した傾斜面に修復でき、したがって、旧畦を水漏れしない状態に修復して新畦に整畦できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施の形態を示す畦塗り機を示すもので、畦塗り作業機器を非畦塗り作業位置に移動した状態の平面図である。
【図2】
同上側面図である。
【図3】
同上機体の一部の拡大平面図である。
【図4】
同上畦塗り作業機器を畦塗り作業位置に移動した状態を示す平面図である。
【図5】
同上畦塗り作業状態を示す説明図である。
【図6】
同上第1の調節手段を示す拡大断面図である。
【図7】
他の実施の形態の前処理ロータリーの平面図でる。
【図8】
同上断面図である。
【符号の説明】
1 機体
4 盛土ロータリー
5 畦塗り体
6,138 前処理ロータリー
39 回転軸
41 切削爪
54 駆動系
55,140 連動回転軸
57,137 前処理爪
57b,146 切削刃
68 上面修復部
70 側面修復部
78 第1の調節手段
102 第2の調節手段
A 旧畦
B 田面側
C 側面部
D 上面部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-09 
出願番号 特願平10-263450
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
塩崎 進
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3378510号(P3378510)
権利者 松山株式会社
発明の名称 畦塗り機  
代理人 樺澤 襄  
代理人 服部 秀一  
代理人 小橋 立昌  
代理人 小橋 信淳  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 服部 秀一  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 聡  

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