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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1118636
審判番号 不服2003-22004  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-13 
確定日 2005-03-17 
事件の表示 平成10年特許願第64299号「ガス栓」〔平成11年9月14日出願公開(特開平11-248014)〕拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成10年2月27日に出願されたもので、その発明は、平成15年6月6日付、平成15年12月10日付の各手続補正に係る明細書の、特許請求の範囲(請求項1〜4)に記載された事項によって特定される、次のとおりのものと認める。(なお、平成15年12月10日付手続補正は、誤記の訂正に係るものである。)
「【請求項1】内部に流入路および流出路が形成された本体と、この本体に回動可能に設けられ、上記流入路と流出路とを連通、遮断する栓体とを備えたガス栓において、上記本体に、一端部が上記流入路に連通し、他端部が上記本体の外面に開口する分岐孔を形成し、この分岐孔の開口部又はその近傍には、上記分岐孔を閉じる蓋体とガス管を接続可能な継手とがそれぞれ着脱可能に取り付けることができ、かつ上記蓋体と上記継手とのいずれか一方を取り外すことによって他方を取り付けることができる装着部を形成し、上記継手が上記分岐孔に連通した状態で上記装着部に取り付けられることを特徴とするガス栓。
【請求項2】上記装着部を上記栓体の回動軸線とほぼ直交する方向を向く上記本体の外面に形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス栓。
【請求項3】上記装着部が、上記栓体の外面に上記栓体の回動軸線とほぼ直交する方向を向くようにして形成された取付平面と、この取付平面に形成されたねじ孔とを有していることを特徴とする請求項2に記載のガス栓。
【請求項4】上記流出路が開口する上記本体の端部に、ガス器具のガス流入路を有する接続部に螺合することにより、上記流出路と上記ガス器具のガス流入路とを連通させる継手部材を回転可能に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス栓。」(上記のうち、請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という)

2.引用例とその記載事項の概要
これに対し、本願を拒絶すべきものとした、原査定の理由では、本願の出願前に頒布された刊行物として、実願平4-91045号(実開平6-49862号)のCD-ROM(以下、「第1引用例」という)、及び、登録実用新案第3017511号公報(以下、「第2引用例」という)を引用したが、その記載事項の概要は次のとおりである。
(1)第1引用例には、「ガス栓」に関して次のイ〜ヘの記載がある。
イ 「【実施例】
・・・図1〜図4を参照して説明する。・・・図において符号1はガス栓本体である。このガス栓本体1の一端部には流入口部1aが形成され、他端部には流出口部1bが形成されている。これら流入口部1aと流出口部1bとは、ガス栓本体1の内部に形成されたガス通路1cによって連通せしめられている。」(第5頁第24行〜第6頁第3行)
ロ 「【0012】
上記ガス通路1cの中間部には、貫通孔5aを有する栓体5が回動自在に配置されている。栓体5は、ガス通路1cを開閉するためのものであり、図1に示す状態ではガス通路1cを閉じている。その状態から栓体5をハンドル6によってほぼ90°回動させると、ガス通路1cの上流側(流入口部1a側)と下流側(流出口部1b側)とが貫通孔5aを介して連通し、ガス通路1cが開かれる。」(第6頁第13〜18行)
ハ 「【0014】
上記ガス栓本体1には、流入口部1aと栓体5との間に位置する外面に突出部1dが形成されている。この突出部1dには、その先端面からガス通路1cに至る装着孔1eが形成されている。この装着孔1eには、接続口金(接続部)6が回動自在に取り付けられている。」(第6頁第23〜27行)
ニ 「【0015】
接続口金6は、図4に示すように、中央部において直角に屈曲した管状をなすもので、基端部側の嵌合部6aと、この嵌合部6aに対して直交する方向に延びる筒部6bとから構成されている。嵌合部6aは、装着孔1eに回動自在に嵌合され、ストップリング7によって抜け止めされている。嵌合部6aの外周面と装着孔1eの内周面との間は、Oリング8,9によってシールされている。」(第6頁第28行〜第7頁第4行)
ホ 「【0027】
流出口部1bに接続されたガス機器に加えて新たなガス機器を設置する場合には、そのガス機器のガス管に迅速継手のソケットを取り付け、ソケットを接続口金6のプラグ部6cに接続する。すると、・・・新たなガス機器にもガスが供給される。」(第10頁第9〜14行)
ヘ 「【0029】
なお、この考案は、上記の実施例に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である・・・上記の実施例においては、接続部たる接続口金6をガス栓本体1と別体に形成しているが、突出部1dの外周面にプラグ部6cと同様のプラグ部を形成するとともに。装着孔1eの内部にそれをソケットの着脱に応じて開閉する弁体を設けるようにしてもよい。」(第10頁第22行〜第11頁第4行)

(2)また、第2引用例には、「ガス栓におけるエアーパージ装置」に関して次のとおりの記載(ト、チ)がある。
ト 「【0005】
1.栓本体に対してエアーパージ孔を設けると共に、このエアーパージ孔の出口内に内ネジを設けたこと、
前記エアーパージ孔の出口の先端に凹溝を形成したこと、
前記凹溝内に収まる外形のホースエンド部材に対して直角に貫通せしめて固定ネジを挿入すると共に、前記ホースエンド部材内に形成したパージ流路に連通するパージ導入路を形成し、このパージ導入路は固定ネジの先端に形成した外ネジを前記パージ孔の内ネジに螺合することによりパージ孔と連通する構造であること、
を特徴とするガス栓におけるエアーパージ装置。
・・・
【作用】
ホースエンド部材に対しては、先にホースを接続し、これをパージ孔に固定ネジを利用して取り付けるものであって、・・・エアーパージ及び気密検査は、閉子(ハンドル)を操作することにより行い、終了後は、パージ孔の出口にプラグを装着して密閉する。」(第5頁第3〜23行)
チ 「【実施例】
以下、実施例図に基づいて本考案を詳述する。
図1及び図2において、1はガス栓本体、・・・4はガス栓本体1の横腹の部分に形成されたパージ孔であって、このパージ孔4の出口4a側は突出し、この出口4aの先端には水平方向の凹溝5が形成してあると共に、出口4a内には内ネジ4bが設けられている。
6はパージ孔4の出口4aにおいて、内ネジ4bに螺合してパージ孔4を密閉しているプラグであって、このプラグ6はエアーパージ及び気密或いは動圧検査時以外にはパージ孔4に装着されている。」(第5頁第25行〜第6頁第5行)
「【0009】
図5、図6は・・・パージ装置をガス栓本体1側のパージ孔4に取り付けた状態を示し、ホース11はあらかじめホースエンド部材7のホース接続部7aに接続し、・・・固定ネジ9の外ネジ9aを内ネジ4bにねじ込むことにより取り付ける」(第6頁第14〜18行)

3.発明の対比
(1)本願発明の構成事項と第1引用例の上記記載事項とを対比すると、第1引用例記載の「ガス栓本体」は、本願発明でいう「本体」に相当している。そして、同引用例上記イ、ロの記載は、「内部に流入路および流出路が形成された本体と、この本体に回動可能に設けられ、上記流入路と流出路とを連通、遮断する栓体とを備えたガス栓」を開示する記載といえる。
更に、第1引用例(ハ)記載の「装着孔1e」は、「流入口部1aと栓体5との間に位置」する突出部の先端面(外面)から「ガス通路1c」に至る部分に形成されているところから、本願発明でいう「一端部が上記流入路に連通し、他端部が上記本体の外面に開口する分岐孔」に相当する部分を含むものといえる。また、上記の装着孔1eの開口部に回動自在に取り付けられている「接続口金(接続部)6」は、第1引用例(ホ)の記載から明らかなように<ガス管を接続可能な継手>といえるものであるから、前記装着孔1eの、接続口金が取り付けられている部分は、<継手を取り付けることができる装着部>とみることができる。
したがって、第1引用例記載のガス栓においても、<継手が上記分岐孔に連通した状態で装着部に取り付けられ>ていることになる。
(2)上記の対比から、第1引用例にも、次の発明が記載されていると認められ、この点は本願発明との一致点といえる。
【一致点】「内部に流入路および流出路が形成された本体と、この本体に回動可能に設けられ、上記流入路と流出路とを連通、遮断する栓体とを備えたガス栓において、上記本体に、一端部が上記流入路に連通し、他端部が上記本体の外面に開口する分岐孔を形成し、この分岐孔の開口部には、ガス管を接続可能な継手を取り付けることができる装着部を形成し、上記継手が上記分岐孔に連通した状態で上記装着部に取り付けられるガス栓」に係る発明である点。
一方、本願発明と第1引用例記載の発明とは、次の点で相違する。
【相違点】 本願発明では「分岐孔の開口部又はその近傍には、上記分岐孔を閉じる蓋体とガス管を接続可能な継手とがそれぞれ着脱可能に取り付けることができ、かつ上記蓋体と上記継手とのいずれか一方を取り外すことによって他方を取り付けることができる装着部を形成」している。
これに対して、第1引用例記載の発明では、上記ニ、ヘの記載(「ストップリング7によって抜け止めされている」、「突出部1dの外周面にプラグ部6cと同様のプラグ部を形成・・・してもよい。」)からみて、継手(接続口金)を、装着孔(分岐孔の開口部)に対して「着脱可能」とすることが想定されているとはいえず、装着孔を閉じる「蓋体」や、「蓋体とガス管を接続可能な継手とがそれぞれ着脱可能に取り付けることができる」装着部を形成することについての言及がない。

4.相違点の検討
第2引用例記載の「パージ装置」は、ホースエンド部材7を備えているところから、ガス管を接続することが可能な<継手>とみることができるし、同じく「プラグ」は、上記パージ装置を取り外した後のパージ孔(分岐孔)を塞ぐ<蓋体>とみることができる。
そうすると、第2引用例の上記記載(ト、チ)は、「ガス栓」に関して、<分岐孔(パージ孔)の開口部に、上記分岐孔を閉じる蓋体(プラグ)と、ガス管を接続可能な継手(パージ装置)とを、それぞれ着脱可能に取り付けることができ、かつ上記蓋体と上記継手とのいずれか一方を取り外すことによって他方を取り付けることができる装着部を形成>することを開示したものといえ、これは、上記相違点に係る本願発明の構成と実質的に同じものである。
しかも、上記と同様の構成は、第2引用例の他、実公平4-33495号公報、実公平6-7224号公報にも開示があるし、また、上記のような構成は、エアーパージや気密検査等のために使用される継手に限らず、通常のガス器具用の継手(ガスコック)の着脱に関しても採用されているところから(実願昭58-140413号(実開昭60-47968号)のマイクロフィルム参照)、当該技術分野において必要に応じて採用されている一般的な周知技術といえる。
もっとも、上記の相違点で指摘したように、第1引用例記載の発明は、継手を装着孔に対して「着脱可能」とすることを想定したものではないから、当該発明に上記の一般的な周知技術を採用することが直ちに可能だというわけではない。しかし、上記の第2引用例以下に示されているように、ガス用継手の全てが必ずしも常に使用されるというものでもない以上、ガス栓の用途等によっては、そのような予備的な継手を、固定的に設けておく必要がない場合がありうることは明らかであるし、第1引用例記載の発明について、上記の周知技術を採用できる構成に変更することに格別の工夫を必要とするとも認められない。
また、上記の周知技術を採用する結果として、製品の小型化や低価格化を実現できることは、当業者であれば容易に予測しうるところというべきである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記各引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本願発明については特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項2以下の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2005-01-18 
結審通知日 2005-01-18 
審決日 2005-01-31 
出願番号 特願平10-64299
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕柳田 利夫  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 田々井 正吾
大野 覚美
発明の名称 ガス栓  
代理人 原田 三十義  
代理人 渡辺 昇  

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