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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1118703
審判番号 不服2000-13811  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-31 
確定日 2005-06-16 
事件の表示 平成 9年特許願第159066号「ゲーム装置、対戦ゲームにおけるキャラクタの対戦動作制御方法及び制御プログラムを記録した可読記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月12日出願公開、特開平11- 4969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年6月16日の出願であって、平成12年7月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月28日付で手続補正がなされたものである。


第2.本願発明
本願発明は、平成12年9月28日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明は以下のとおりである。
「【請求項1】 プレイヤキャラクタおよびCPUキャラクタの少なくとも何れかの対戦キャラクタ同士を表示画面上で対戦させてゲームを行うゲーム装置において、前記プレイヤキャラクタの対戦動作を指示可能な操作手段と、前記操作手段からの操作指令に応じて前記プレイヤキャラクタを表示画面上で対戦させるように制御するプレイヤキャラクタ制御手段と、前記CPUキャラクタの対戦状況に応じた対戦動作を記憶する記憶手段と、前記対戦キャラクタの有効対戦動作を前記記憶手段に記憶させるように制御すると共に、前記記憶手段に記憶している複数の対戦動作情報から対戦状況に応じて選択した対戦動作を前記CPUキャラクタに表示画面上で実行させるように制御するCPUキャラクタ制御手段とを備えてなり、前記記憶手段は、各対戦状況判断に従って階層的にツリー状に構成された各記憶テーブルを有し、前記CPUキャラクタ制御手段は、対戦状況判断に従って対戦状況に応じた有効対戦動作を該当する記憶テーブルに記憶させるものであることを特徴とするゲーム装置。 」


第3.引用例刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-196744号公報(以下、「刊行物A」という。)には、以下の事項が記載されている。
(A-1).「【要約】【目的】遊戯者が制御するキャラクタとコンピュータ側から制御するキャラクタ間での対戦ゲームにおいて、コンピュータ側からの制御によるキャラクタの動きが予め決めた一律的(ワンパターン)となることを回避する。
【構成】遊戯者の操作により第一のキャラクタの行動を制御するデータが入力される入力装置と、該第一のキャラクタと対戦する第二のキャラクタの行動を制御するCPUと、 ゲームに登場するキャラクタの取りうる行動と、該行動の結果を知識データとして記憶するメモリと、該CPUの制御によりゲームを表示する出力装置を有し、該CPUは、ゲームの勝敗の結果に基づくゲームに登場するキャラクタの状態を参照し、該メモリに記憶される知識データに基づき、該第二のキャラクタの次回以降の行動を決定するためのデータベースを構築する。」(第1頁左下欄))
(A-2).「【0004】 即ち、従来のコンピュータゲーム装置においては、ゲーム装置の製作時あるいは、ゲームプログラムの作成時に、キャラクタの幾つかの行動パターン、及びゲーム実行中の様々な展開を想定し、特定の条件を満たした時にどのような行動を選択するかというパターンの選択法を、予めプログラムやデータベース等に設定しておくものであった。」(第2頁右欄第4〜10行))
(A-3).「 【0005】 このような従来の技術ではゲームの難易度や展開を製作者の意図した通りに容易に設定することができる。かかる場合、ゲームとして成立し易いがゲームの展開やコンピュータの実行内容が一律的(ワンパターン)に成りがちである。」(第2頁右欄第11〜15行)
(A-4).「【0010】 具体的には、本発明の目的は、ゲームの実行時にコンピュータ側で、コンピュータの制御によるキャラクタの行動パターンを自動的に学習し、学習した後はその学習成果をコンピュータが制御するキャラクタの行動パターンの一つとして実行可能とする学習機能を有するコンピュータゲーム装置を提供することにある。」(第2頁右欄第38〜43行)
(A-5).「【0014】 【作用】 本発明は、上記構成により、ゲーム中において、予め登録しておく知識データ及び、プレイヤ側及びコンピュータ側の行動の結果生じるキャラクタの状態の遷移の状況を基に、コンピュータ側のキャラクタの行動パターンを随時、作成し学習データとして記憶する。」(第3頁左欄第23〜28行)
(A-6).「【0026】 RAM3は、ワークRAMであり、行動パターンデータ30、キャラクタ状態データ31、プレイヤ個人データ32、キャラクタ状態遷移データ33を格納する。更に、SRAM4は、学習データ40を格納する。ROM5は、画像データ、音声データ等の出力データ50を格納する。」(第3頁右欄第38〜43行)
(A-7).「【0028】 同時に、CPU本体1は、ROM1に記憶される知識データ21、RAM3に記憶されるキャラクタ状態データ31、プレイヤ個人データ32、SRAM4の学習データ40を参照して、コンピュータ側行動決定プログラム102により処理されて、コンピュータ側キャラクタの行動を決定する。」(第3頁右欄第49行〜第4頁左欄第4行)
(A-8).「【0060】 具体的実施例として、コンピュータ側行動決定プログラム102の実行により次にどのような種類の行動を取るべきかを、このキャラクタ状態データ31(相手が立ち、又はしゃがみの状態か、リング中央か、端か、自分との距離が近いか等の情報)を参照して決定する。」(第5頁左欄第43〜48行)
(A-9).「【0065】 ゲーム途中において、CPU1のキャラクタ行動決定手続き10のコンピュータ側行動決定プログラム102にしたがいRAM3に記憶されるキャラクタ状態データ31、プレイヤ個人データ32を基に、ROM2内の知識データ21、SRAM4内の学習データ40のデータにしたがって行動を決定し、行動パターンデータ30として記憶する。」(第5頁右欄第48行〜第6頁左欄第4行)
(A-10).「更にRAM3に記憶されるキャラクタ状態遷移データ33は、学習データを構築するために必要な情報を時系列的に記録している。学習手続き12において、キャラクタ行動パターン学習プログラム122の実行の際に、このキャラクタ状態遷移データ33のデータを参照して、知識データ21と照合し、学習データ40を生成する。」(第5頁左欄第37〜42行)
(A-11).「【0070】 具体例としては、キャラクタがある行動を取る時に、それに対応した動き(モーション)が実行される。したがって、キャラクタ状態データ31からモーション番号を取り出し、その都度、このキャラクタ状態遷移データ33の領域に記録する。更に、生成されたモーション番号列を知識データ21中のモーション番号列21a-7と比較照合させることにより、プレイヤ側キャラクタがどういう行動を取ったかを知ることが出来る。」(第5頁左欄第43行〜同頁右欄第1行)
(A-12).「【0071】 即ち、図7において、キャラクタ状態遷移データ33は、第一には、プレイヤ側キャラクタが再生したモーション番号列を意味する。一方、CPU側のキャラクタの動き(モーション)も、独立に等価に評価している。したがって、第二にはCPU側キャラクタのモーション番号例も意味する。」(第5頁右欄第2〜7行)
(A-13).「【0072】 更に、図8は、SRAM4内に記憶される学習データ40の構成を示す図である。この学習データ40は、コンピュータ側のキャラクタ行動パターンであり、学習プログラム122の実行により生成されるデータである。」(第6頁右欄第8行〜12行)
(A-14).「【0073】 具体例として、キャラクタが、ある行動(知識データ21に記憶されている行動)を取った時に、次にどういう行動を、どういうタイミングで実行するかという情報を記録する。」(第6頁右欄第13〜16行)
(A-15).「【0077】 40a-3は、技の有効度即ち、初めに出す技40a-1と次に出す技40a-2の連携がどれだけ有効かを示す。したがって、実際に技が出された時の結果によって常に変動する。40a-4は、技を出す間隔即ち、最初の技40a-1を出してから次の技40a-2を出すまでの期間を表示フレーム数で示す。」(第6頁右欄第28行〜33行)
(A-16).「【0078】 図9は、図8をより理解し易くするための、学習データ40のデータ構造の概念図である。かかる学習データ40には、学習手続き12のプログラム処理により、知識データ21中のどの技とどの技が連携技として効果的であるかというデータが記憶される。(第6頁右欄第34行〜38行)
(A-17).「【0079】 コンピュータ側行動決定プログラム102の実行により、技40a-1の中からその時の状態に適した最初の技40a-1i を選択し、更にそれに続く連携技として技40a-2ijを選択する。(第6頁右欄第39〜42行)
(A-18).「【0103】 更に、既に学習済の行動パターンである場合(ステップS531において、YESの場合)、及び新しい行動パターンを学習した場合(ステップS534)、ついで勝敗結果に応じて学習した行動パターンの優先度を変化させる(ステップS535)。即ち、行動パターンの実行結果(技が相手に当たったか否か)によって、学習データ40中の40a-3に相当する値を変化させる。」(第8頁左欄第36〜43行)
(A-19).してみると、
刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「遊戯者が入力装置を操作して制御するキャラクタと、コンピュータ側から制御するキャラクタ間での対戦ゲームにおいて、プレイヤ側及びコンピュータ側の行動の結果生じるキャラクタの状態の遷移の状況を基に、コンピュータ側のキャラクタの行動パターンが随時作成されて学習データとして記憶手段に記憶され、さらに、行動パターンの実行結果(技が相手に当たったか否か)によって変化する技の有効度、技を出す間隔も前記記憶手段に記憶され、CPUは、入力装置の操作に基づいてプレイヤ側行動決定プログラムを制御すると共に、記憶されているキャラクタ状態データ、学習データ等を参照してコンピュータ側行動決定プログラムによりコンピュータ側キャラクタの行動を決定するゲーム装置。」


第4.本願発明と引用発明との対比
[1].発明特定事項の対応関係
(1).引用発明におけるCPUは、本願発明における「操作手段からの操作指令に応じて前記プレイヤキャラクタを表示画面上で対戦させるように制御するプレイヤキャラクタ制御手段」と「対戦動作を前記CPUキャラクタに表示画面上で実行させるように制御するCPUプレイヤキャラクタ制御手段」に対応する。
(2).引用発明において、技が相手に当たったか否かによって変化する技の有効度の良いキャラクタ行動パターンは、本願発明において、PTS(有効度数)の高いものから順に並べられて順番が若い番号ほど対戦動作が有効となる「有効対戦動作」に対応する。
(3).引用発明において、CPUキャラクタの対戦動作、および、その技の有効度等が記憶されている「学習データ」と、本願発明における「対戦動作を記憶する記憶手段、」とは、「CPUキャラクタの対戦動作を記憶する記憶手段」、「対戦キャラクタの有効対戦動作を前記記憶手段に記憶」する点において共通する。
(4).引用発明における「キャラクタ状態データ」は、前記(A-8)によると、相手が立ち、またはしゃがみの状態か、リング中央か、端か、自分との距離が近いか等の攻撃防御以外の情報であるから、本願発明において、「敵(プレイヤキャラクタ)がよろけている。」、「敵(プレイヤキャラクタ)がダウンしている」、「敵(プレイヤキャラクタ)がしゃがんでいる。」等の攻撃防御動作でない「対戦状況」に対応する。
(5).引用発明における、「RAM3に記憶されるキャラクタ状態データ、学習データ等を参照してコンピュータ側行動決定プログラムによりコンピュータ側キャラクタの行動を決定する」ことは、本願発明における「記憶手段に記憶している複数の対戦動作情報から対戦状況に応じて選択した対戦動作」に対応する。

[2].一致点
プレイヤキャラクタおよびCPUキャラクタの少なくとも何れかの対戦キャラクタ同士を表示画面上で対戦させてゲームを行うゲーム装置において、
前記プレイヤキャラクタの対戦動作を指示可能な操作手段と、前記操作手段からの操作指令に応じて前記プレイヤキャラクタを表示画面上で対戦させるように制御するプレイヤキャラクタ制御手段と、
前記CPUキャラクタの対戦動作を記憶する記憶手段と、
前記対戦キャラクタの有効対戦動作を前記記憶手段に記憶させるように制御すると共に、
前記記憶手段に記憶している複数の対戦動作情報から対戦状況に応じて選択した対戦動作を前記CPUキャラクタに表示画面上で実行させるように制御するCPUキャラクタ制御手段とを備えてなり、
前記CPUキャラクタ制御手段は、対戦状況判断に従って対戦状況に応じた有効対戦動作を記憶させるゲーム装置。

[3].相違点
対戦動作を記憶する記憶手段の記憶に関して、本願発明は、対戦状況に応じた対戦動作が記憶され、さらに、対戦状況判断に従って階層的にツリー状に構成された各記憶テーブルを有しているのに対し、引用発明は、そのような対戦状況判断に従って階層的にツリー状に構成されているか否か不明である点。

[4].相違点の判断
対戦動作(攻撃、ガード)を行なうときは、しゃがんでいる状態等の対戦状況を勘案して対戦動作を採用すること、すなわち、対戦状況と対戦動作との対応関係を勘案することは、前記(A-8)に示されるように戦いにおいては周知の事項であり、このことは、前記(A-10)〜(A-12)に、キャラクタの動き、例えば、しゃがんでいる状態、攻撃している状態が記録されることからも明らかである。
したがって、当該対応関係を勘案する手段として、対戦状況と対戦動作との対応関係を予め記憶させておくことは、対応関係をテーブルとして予め記憶しておくことが周知の対応関係勘案手段であるから、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項である。
しかも、その記憶手段として、対戦状況判断に従って階層的にツリー状に構成された記憶テーブルとすることは、当業者が容易に想到できることである。
すなわち、
コンピュータのデータ構造として階層的ツリー構造は、例えば、渡邊茂、正田英介、矢田公治編、「マイクロコンピュータハンドブック」(株式会社オーム社、昭和60年12月25日、P601〜612)に示されるように周知のデータ構造で、しかも、前記のように対戦動作は対戦状況を勘案して採用されるもの、例えば、しゃがんでいる状態等の対戦状況が対戦動作を制約するものであるから、対戦状況に基づいた階層的ツリー構造とすることは、当業者が容易に想到できることであり、さらに、記憶手段としての記憶テーブルは周知事項であることを勘案すれば、当該相違点は格別のものではない。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-17 
結審通知日 2005-03-22 
審決日 2005-04-26 
出願番号 特願平9-159066
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 國分 直樹
渡戸 正義
発明の名称 ゲーム装置、対戦ゲームにおけるキャラクタの対戦動作制御方法及び制御プログラムを記録した可読記録媒体  
代理人 植木 久一  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  

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