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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1118719
審判番号 不服2002-20212  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-17 
確定日 2005-06-17 
事件の表示 平成11年特許願第14053号「導波管用モード変換器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月4日出願公開、特開2000-216601〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年1月22日の出願であって、平成14年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年11月8日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成14年11月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
上記手続補正は、補正前の請求項1に記載された
「横断面長円形孔部と横断面長方形孔部とを、軸心方向の略中央にて段差をもって接続状に形成したモード変換孔を有する導波管用モード変換器に於て、上記横断面長方形孔部の隅部にアール部を形成し、上記横断面長円形孔部の凹曲面部が半円形状に形成され、1個のブロック体に上記モード変換孔を貫設したことを特徴とする導波管用モード変換器。」
という発明を、
「横断面長円形孔部と横断面長方形孔部とを、軸心方向の略中央にて段差をもって接続状に形成したモード変換孔を有する導波管用モード変換器に於て、上記横断面長方形孔部の隅部に半径 1.5mm〜4.0mm のアール部を形成し、1個のブロック体に上記モード変換孔を貫設したことを特徴とする導波管用モード変換器。」
という発明に変更することを含むものである。

2.補正の適否
上記補正のうち、補正前の「上記横断面長円形孔部の凹曲面部が半円形状に形成され」という構成が補正後の発明で削除されている点は、発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮にはあたらず、上記補正が誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明でないことも明らかである。したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していない。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成14年11月8日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年6月4日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「横断面長円形孔部と横断面長方形孔部とを、軸心方向の略中央にて段差をもって接続状に形成したモード変換孔を有する導波管用モード変換器に於て、上記横断面長方形孔部の隅部にアール部を形成し、上記横断面長円形孔部の凹曲面部が半円形状に形成され、1個のブロック体に上記モード変換孔を貫設したことを特徴とする導波管用モード変換器。」

2.引用発明及び周知技術
(1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開昭60-146504号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
イ.「本発明の一実施例を第3図,第4図に示す。
第3図で、1は矩形導波管、2は円形導波管、5,6は前記矩形導波管1と円形導波管2の間に接続される長楕円型導波管及び正方形に近い矩形型導波管である。
・・・(中略)・・・
すなわち、第4図では矩形導波管1から円形導波管2への変換を2段階で行なっており、まず矩形導波管1に、矩形断面のE面の幅bより大きい幅の平行二辺と、二つ円弧で囲まれた第1の変換導波管である長楕円型導波管5を接続する。この場合、接続断面において矩形導波管1のE面で切られる長楕円型導波管5の円弧の面積と、長楕円型導波管5の円弧で切られる矩形導波管の2つのコーナ部の面積とがほゞ等しくなるようにしている。
・・・(中略)・・・
次に、この長楕円型導波管5と円形導波管2の間に第4図又は第5図の6に示すような断面が正方形に近い矩形型導波管6を接続し、その次に円形導波管2を接続する。矩形型導波管6は正規の矩形導波管1の幅aに比べ横幅a2(H面の幅に対応)が短く、縦幅b2(E面の幅に対応)を長くして、縦幅が横幅よりわずかに長い(縦横比約6:5)正方形に近い断面とし、その断面の各コーナはわずかに曲率を持たせている。また、この矩形型導波管6の横幅は円形導波管2の直径にほぼ等しくし、縦幅はこの直径より少し長くしている。」(2頁右上欄16行目〜右下欄9行目)
ロ.「したがって、第4図aのように長楕円形導波管5と正方形に近い矩形型導波管6を一体化したものの両端に矩形導波管(WR75)及び円形導波管(CR62)のフランジを取り付けることにより、簡単な矩形-円形導波管変換器を構成することができ、さらに第6図に示すように、長楕円型導波管5及び矩形導波管6にそれぞれフランジを取り付けることにより、全長約2cm程度の非常に小型の矩形-円形変換アダプタとして構成することができる。」(3頁左下欄19行目〜右下欄8行目)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「矩形-円形導波管変換器」は第4図a又は第6図のように「長楕円形導波管5と正方形に近い矩形型導波管6を一体化したもの」であるから、当該構成における長楕円形と正方形に近い矩形の導波管は「1個のブロック体」に「貫設」され、「軸心方向の略中央にて段差をもって接続状に形成」されるものである。
また、上記「コーナ」部のわずかな「曲率」はいわゆる「隅部のアール部」を構成している。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「長楕円型導波管と矩形型導波管とを、軸心方向の略中央にて段差をもって接続状に形成した導波管を有する矩形-円形導波管変換器に於て、上記矩形型導波管の隅部にアール部を形成し、上記長楕円型導波管の凹曲面部が円弧状に形成され、1個のブロック体に上記導波管を貫設した矩形-円形導波管変換器。」

(2)また、例えば特開昭58-104502号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イが記載されており、また例えば特開昭50-109484号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ロ、ハが記載されている。
イ.「各隅角部に四分円状の丸みが形成された断面矩形状の導波管において、断面での長辺の長さをa、短辺の長さをb、丸みの半径をrとしたとき、b/a≦0.50、 4.65-b/a×8.70<r/b≦0.50 であることを特徴とする導波管」(1頁左欄、特許請求の範囲)
ロ.「長軸に平行な1組の直線部と、前記直線部の各両端を夫々連結する1組の円弧からなる長円形断面の導波管において、長軸長さをD、短軸長さをd、rを長短軸比(d/D=r)とするとき、次式
0.44≦r≦0.5
を満足する断面形状を有することを特徴とする可撓性導波管。」(1頁左欄、特許請求の範囲)
ハ.「なお、本願発明の導波管の断面における半円弧の形状は完全に半円である必要はなく、近似的な形状でも所望の特性を満足するものである。」(3頁右下欄13〜15行目)

上記周知例1、2の記載によれば「長軸に平行な1組の直線部と、前記直線部の各両端を夫々連結する1組の円弧(半円)からなる長円形断面の導波管」は周知であり、「半円弧の形状は完全に半円である必要はなく、近似的な形状でも所望の特性を満足する」ものである。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、まず、引用発明の「矩形型導波管」と本願発明の「横断面長方形孔部」は「隅部にアール部を形成し」てある点を含めて実質的に同じ構成である。また、引用発明の「長楕円型導波管」と本願発明の「横断面長円形孔部」はいずれも「横断面円弧形孔部」であるという点で一致しており、引用発明の「凹曲面部が円弧状に形成され」という構成と本願発明の「凹曲面部が半円形状に形成され」という構成はいずれも「凹曲面部が所定の円弧形状に形成され」という構成の点で一致している。
また、引用発明の「矩形-円形導波管変換器」は導波管の矩形モードと円形モードの変換器であるから、引用発明の当該構成と本願発明の「導波管用モード変換器」の間に実質的な差異はなく、引用発明の「導波管」は本願発明でいう「モード変換孔」を構成している。
したがって、本願発明と引用発明は、
「横断面円弧形孔部と横断面長方形孔部とを、軸心方向の略中央にて段差をもって接続状に形成したモード変換孔を有する導波管用モード変換器に於て、上記横断面長方形孔部の隅部にアール部を形成し、上記横断面円弧形孔部の凹曲面部が所定の円弧形状に形成され、1個のブロック体に上記モード変換孔を貫設した導波管用モード変換器。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
「横断面円弧付孔部」及び「所定の円弧形状」に関し、本願発明は「横断面長円形孔部」であり、「凹曲面部が半円形状に形成され」ているのに対し、引用発明の構成は「長楕円型導波管」であり、「凹曲面部が円弧状に形成され」ている点。

4.当審の判断
上記相違点の「横断面円弧付孔部」及び「所定の円弧形状」について検討するに、例えば上記周知例1、2によれば「長軸に平行な1組の直線部と、前記直線部の各両端を夫々連結する1組の円弧(半円)からなる長円形断面の導波管」は周知であり、「半円弧の形状は完全に半円である必要はなく、近似的な形状でも所望の特性を満足する」ものであるところ、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらず、また適用後の作用効果も予想される範囲を超えるものではないから、当該周知技術に基づいて、凹曲面部の形状を引用発明の「円弧状」から本願発明の「半円形状」に変更するとともに、導波管の呼称を引用発明の「長楕円型導波管」から本願発明の「横断面長円形孔部」に変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1、2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-28 
結審通知日 2005-04-05 
審決日 2005-04-20 
出願番号 特願平11-14053
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01P)
P 1 8・ 121- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 衣鳩 文彦
浜野 友茂
発明の名称 導波管用モード変換器  
代理人 中谷 武嗣  

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