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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G |
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管理番号 | 1118751 |
審判番号 | 不服2002-22107 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-11-14 |
確定日 | 2005-06-20 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第221929号「廃棄物溶融処理炉」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月26日出願公開、特開平11- 51354〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年8月4日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年8月2日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりの次のものである。 【請求項1】炉上部から炉内に差し込まれた電極へ投入する電力が、出滓樋から流れ落ちる出滓スラグの温度を温度検出器で検出し、該検出温度に基づき制御装置により電源装置をコントロールしている廃棄物溶融処理炉において、 溶融炉から流れ出る出滓スラグの温度を検出する、放射温度検出器その他の温度検出器と、 該温度検出器による検出点を所定方向に動かし、出滓スラグが流れ落ちる範囲をカバーする所定の角度範囲を繰り返し走査する走査装置と、 少なくとも一回の走査で検出した温度の最大値を出滓スラグ温度として出力して該スラグ温度に基づいて電極に投入する電力を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする廃棄物溶融処理炉。 2. 引用例に記載された事項 原審の平成14年5月23日付けの拒絶理由通知において引用された特開平5-201753号公報(以下「引用例1」という。)は、本願出願前において頒布された刊行物であって、そこには、廃棄物焼却灰溶融炉のスラグ水砕装置の発明に関して次の記載がある。 a)「【従来の技術】この種の装置としては例えば図7に示されるような装置がある。図において、1は廃棄物焼却灰溶融炉を示し、2はその炉本体、3は炉蓋、4は電極、5は焼却灰の投入口、6は排ガスダクトを夫々示す。7は炉1内に装入されて溶融処理される焼却灰、8は溶融金属、9は溶融スラグである。10は炉本体2における溶融スラグの排出口である。11は排出口10から流出し流下する溶融スラグの流下空間の側方に備えさせたノズル、12は水砕槽である。該装置においては電極4からのアークにより焼却灰7が加熱される。加熱によって生成した溶融スラグ9は排出口10から流出し水砕槽12に向け流下する。・・・」(段落0002) b)「【発明が解決しようとする課題】この従来の廃棄物焼却灰溶融炉のスラグ水砕装置では、排出口10から流出し流下してくる溶融スラグ流13の位置が次の1〜4のような種々な理由によって図8に符号13a,13bで示す如く左右に変位する。1排出口10から流出する溶融スラグの一部が排出口10に対して付着、固化し、後からの溶融スラグがそこを乗り越えて流出する。2廃棄物焼却灰7の種類は非常に雑多でありそれが次々と炉に投入される為、それに応じて溶融スラグ9の組成が変化しその都度溶融スラグの粘度が変化する。3上記投入に伴なう溶融スラグ9の温度の変化によりその粘度が変化する。4炉に対する上記焼却灰7の投入に伴ない炉内の溶融スラグ9の湯面の上下位置が変化し、それに応じて排出口10からの溶融スラグの流出量が変化する。・・・」(段落0003、当該段落に記載された下線付き数字は、原文の丸数字を代用したものである。) c)「【実施例】以下本願の実施例を示す図面について説明する。図1には廃棄物焼却灰溶融炉のスラグ水砕装置が略示される。尚溶融炉及び水砕槽は例えば前記図7のものと同様のものが適用される。・・・・・次に28はスラグ流位置検出手段として例示する熱センサで、多数の温度計29を溶融スラグ流13の変位方向と同じ横方向に並設して構成してある。上記温度計29としては例えば熱電対が用いられるが放射温度計その他の高温温度計を利用してもよい。・・・」(段落0007) d)「上記構成のものにあっては、排出口10から流出し下方の水砕槽に向けて流下する溶融スラグを水砕する場合、センサ28によって溶融スラグ流13の存在位置が検出される。即ち、熱センサ28における多数の温度計29は各々の前方の温度を検出する為それらの検出温度は溶融スラグ流13の有無に応じて変わり、熱センサ28全体としては図2の(A)に示されるような分布となる。従ってその分布から、熱センサ28による検出範囲の一方の端から距離Lのイの点に溶融スラグ流13が存在することが検出される。」(段落0008) e)「次に上記熱センサ28及び熱センサ32は、何れも夫々一つずつの温度計のみを用いてその温度計を前記ノズル21のヘッド22の場合と同様に横方向に首振りさせ、それらの温度計が高温度を検出する点の首振りの角度でもって溶融スラグ流の存在位置を検出するようにしてもよい。」(段落0013) 3. 引用例に記載された発明 引用例1の上記a)からe)に摘示した記載及び図1、図2、図7によれば、引用例には次の発明が記載されている。 「廃棄物焼却灰溶融炉の上部から炉内に差し込まれた電極と、排出口から流出し流下する溶融スラグの温度を熱センサで検出し、溶融炉から流れ出る溶融スラグの温度を検出する放射温度計その他の高温温度計と、 該高温温度計による検出点を所定方向に動かし、溶融スラグが流下する範囲をカバーする所定の角度範囲を繰り返し首振りさせる機能を備えた廃棄物焼却灰溶融炉。」 (この発明を、以下「引用例1の発明」という。) 4. 対比・一致点・相違点 本願発明と引用例1の発明を対比すると、引用例1の発明の「廃棄物焼却灰溶融炉」、「排出口」、「溶融スラグ」、「高温温度計」及び「放射温度計」は、それぞれ本願発明の「廃棄物溶融処理炉」、「出滓樋」、「出滓スラグ」、「温度検出器」及び「放射温度検出器」に相当する。そして、引用例1の発明は、高温温度計による検出点を所定の角度範囲内で繰り返し首振り動作により動かして温度を検出するものであるから、本願発明の「走査装置」に相当するものを実質的に備えるものであることは当業者には自明であると認められる。 そうすると、本願発明と引用例1の発明の一致点及び相違点は、次のとおりのものである。 [一致点] 「炉上部から炉内に差し込まれた電極と、出滓樋から流れ落ちる出滓スラグの温度を温度検出器で検出する廃棄物溶融処理炉において、 溶融炉から流れ出る出滓スラグの温度を検出する、放射温度検出器その他の温度検出器と、 該温度検出器による検出点を所定方向に動かし、出滓スラグが流れ落ちる範囲をカバーする所定の角度範囲を繰り返し走査する走査装置とを備えた廃棄物溶融処理炉。」 [相違点] ・本願発明は、「電極へ投入する電力が、該検出温度に基づき制御装置により電源装置をコントロールしている」廃棄物溶融処理炉であって、「少なくとも一回の走査で検出した温度の最大値を出滓スラグ温度として出力して該スラグ温度に基づいて電極に投入する電力を制御する制御装置と」を備えたものであるのに対し、引用例1の発明がかかる構成を備えるものであるか否かについて引用例には明示の記載がない点。 5. 相違点についての検討 原審の拒絶査定の備考に引用された特開平4-24410号公報(以下「引用例2」という。)は、本願出願前において頒布された刊行物であって、そこには、石炭焚きボイラ設備の発明に関して次の記載がある。 「16は炉床部1b のスラグ抜出口15出口側に設けられた加熱堰で、堰本体16aの上部には堰本体16a内の溶融灰Bを外気から遮断する堰カバー体16bが設けられる。そして、加熱堰18の一端側入口16cは溶融灰導入管17を介してスラグ抜出口15に連通され、この溶融灰導入管17は燃焼ガス導入路に兼用されて、炉底部1bから溶融灰Bを加熱堰16内に導入するとともに、燃焼炉1内の高温の燃焼ガスAの一部を加熱堰16内に導入する。・・・・・また溶融灰Bを温度調整するための温度調整装置21が設けられている。この温度調整装置21は、溶融灰B中に没入された加熱用電極21aが,加熱堰16の他端側出口16dで溶融灰Bの温度を検出する赤外線放射温度計21b の検出信号に基づいて制御装置22により印加電流を制御され、溶融灰Bを所定温度に制御するものである。」(3頁上右欄7行ないし下右欄5行) 引用例2の上記の記載及び第2図によれば、引用例2には、加熱堰の出口から流れ出る溶融灰の温度を赤外線放射温度計で検出し、その検出信号に基づいて、溶融灰中に没入された加熱用電極の印加電流を制御装置により調節して溶融灰の温度を所定温度に制御する技術が記載されている。 そして、引用例1には、上記d)及びe)に摘示した記載並びに図2によれば、1回の走査で検出した温度分布の中の最高温度を示す位置を溶融スラグ流の位置として検出することが記載されているのであるから、引用例1の発明において、スラグの温度として1回の走査で検出した温度分布の中の最高温度として、その検出信号に基づいて電極に投入する印加電流を調整すること、すなわち、相違点に係る本願発明の構成をなすことは、当業者であれば引用例1記載の発明に引用例2記載の上記技術を適用することにより容易に想到できたことというべきである。 そして、本願発明の効果を検討しても、当業者であれば引用例1及び2記載の各発明に基づいて容易に予測し得る程度のものであって、これを超えるような格別顕著な効果を奏するものではない。 6. むすび したがって、本願発明は、引用例1及び2記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-04-19 |
結審通知日 | 2005-04-20 |
審決日 | 2005-05-09 |
出願番号 | 特願平9-221929 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F23G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永石 哲也 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
間中 耕治 岡本 昌直 |
発明の名称 | 廃棄物溶融処理炉 |
代理人 | 高橋 昌久 |
代理人 | 花田 久丸 |