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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1118867
審判番号 不服2004-18110  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-02 
確定日 2005-06-23 
事件の表示 特願2000-385019「防音床構造及び防音床材」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 5日出願公開、特開2002-188238〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は平成12年12月19日の出願であって、平成16年7月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。


【2】平成16年9月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年9月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
〔1〕補正後の本願発明
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「【請求項1】床版と前記床版上の床材とを備える防音床構造であって、前記床版と前記床材との間に複数の防音床材が配置されており、前記防音床構造を縦断面で見た時、前記各防音床材が互いに離間しており、前記各防音床材の間に空間が設けられており、前記各防音床材が衝撃吸収材を備えており、前記衝撃吸収材の上面及び下面のいずれか一方のみが前記床材又は前記床版に直に又は接着剤を介して接しており、前記衝撃吸収材の上面又は下面と前記床材又は前記床版との間に前記衝撃吸収材を支持する支持材が設けられており、前記防音床材の端部間の距離が5〜70cmであり、前記支持材が前記床材又は前記床版に固定されており、前記床材が、JIS-A-5908に規定された方法で0.196〜98.1MPaの曲げ強さを有することを特徴とする防音床構造。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

〔2〕引用刊行物の記載事項
1.原査定の拒絶の理由で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-144999号公報(以下、「刊行物1」という。)には、防音床構造及び防音床材に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「床面形成下地となる板状捨貼材と前記板状捨貼材を支える床板とを備えており、床衝撃音が低減されている防音床構造であって、前記板状捨貼材と前記床板との間に複数の防音床材が配置されており、前記防音床構造を縦断面で見たとき、前記各防音床材が互いに離間しており、前記各防音床材の間に空間が設けられており、前記各防音床材が下側板状体と衝撃吸収材と上側板状体とを備えており、前記下側板状体が前記床板の上に設けられており、前記上側板状体が前記板状捨貼材の下に設けられており、前記衝撃吸収材が前記下側板状体と前記上側板状体との間に配置されており、JIS-A-1418に定めるバングマシンの衝撃による前記板状捨貼材の上下方向の最大瞬間変位量が10mm以内であることを特徴とする、防音床構造。」(【請求項1】)
(2)「【発明の属する技術分野】本発明は、建築物の重量床衝撃音を防止する床構造に関し、特に、床衝撃力の加振力を吸収し緩和する構造に関する。」(段落【0001】)
(3)「図1に示すように、本発明の一例の防音床構造1は、床面形成下地となる板状捨貼材2と板状捨貼材2を支える床板3とを備えている。この防音床構造1は、板状捨貼材2と床板3との間に複数の防音床材4が配置されている。各防音床材4は互いに離間しており、各防音床材4の間に空間5が設けられている。また、各防音床材4は、下側板状体6と衝撃吸収材7a,7bと上側板状体8を備えている。下側板状体6は床板3の上にビス 9で固定されており、上側板状体8は板状捨貼材2の下にビス10で固定されている。衝撃吸収材7a,7bは、下側板状体6と上側板状体8との間に配置されている。この防音床構造1は、JIS-A-1418に定めるバングマシンの衝撃による板状捨貼材2の上下方向の最大瞬間変位量が10mm以内であり、この防音床構造1上には、床11が形成される。」(段落【0019】)
(4)「【実施例】以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。実施例1 図1〜図3に示す防音床材を製造した。下側板状体を4.5mm厚×300mm×300mm鉄板とし、四隅にビス穴を設けた。次に、表2に示す配合処方例1の粘弾性体を、15mm厚×40mm×40mmの角柱状で作製した。このような粘弾性体を衝撃吸収材として、接着剤で上側板状体(12mm厚×250mm×250mm合板)の四隅に貼り付け、更に接着剤で下側板状体にも貼り付け防音床材を製造した。この防音床材の側面図が図2で、平面図が図3である。」(段落【0085】)
(5)「この防音床材を、複数のALC(100mm厚×650mm×1800mm)を床板として用いて、ALC間にまたがる様に、ALCの幅方向、長さ方向に約600mmピッチで90mm長さのDACビスで取付けた。この後、ALCの幅方向に、板状捨貼材としてのパーチクルボード(12厚×900mm×1800mm)を載せ、更に同サイズのパーチクルボードを、下のパーチクルボードに直交する方向で重ね合せ床下地面を形成し、図1に示す防音床構造を製造した。」(段落【0087】)
(6)「【発明の効果】本発明の防音床構造は、床面形成下地としての捨貼板材と床板との間に、複数の防音床材を離間させて設け、この防音床材とその間の空間とで、床の衝撃力を吸収緩和することにより、床板から生じる低周波数の騒音を著しく低減することができる。」(段落【0127】)
そして、上記(4)、(5)によれば、下側板状体が30cm幅×30cm長さである防音床材を、複数のALCを床板として用いて、ALCの幅方向、長さ方向に約60cmピッチで取付けているので、防音床材の端部間の距離は約30cmであるといえる。

これら(1)〜(6)の技術事項を含む刊行物1全体の記載及び図面並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認める。かっこ内は対応する刊行物1における構成・用語である。
「床版(床板3)と前記床版上の床材(板状捨貼材2と床11)とを備える防音床構造であって、前記床版と前記床材との間に複数の防音床材(防音床材4)が配置されており、前記防音床構造を縦断面で見た時、前記各防音床材が互いに離間しており、前記各防音床材の間に空間が設けられており、前記各防音床材が衝撃吸収材(衝撃吸収材7a,7b)を備えており、前記衝撃吸収材の上面又は下面と前記床材又は前記床版との間に前記衝撃吸収材を支持する支持材(上側板状体8又は下側板状体6)が設けられており、前記防音床材の端部間の距離が約30cmであり、前記支持材が前記床材又は前記床版に固定されている防音床構造。」(以下「刊行物1発明」という。)

2.同じく、特開平10-183805号公報(以下、「刊行物2」という。)には、防音二重床に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(7)「床基材と床下地との間に防振ゴムを配設すると共に、弾性体で形成された空洞部内に流体を封入して構成される防振装置を上記防振ゴムと並列に配設して成ることを特徴とする防音二重床。」(【請求項1】)
(8)「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態の一例を説明すると、図1に示す床基材1と、防振ゴム3と、防振装置4とで戸建住宅や集合住宅等に用いられる防音二重床が構成されている。…」(段落【0007】)
(9)「さらに、床基材1と床下地2との間には、上記防振ゴム3と並列に防振装置4が配設されている。この防振装置4は、内部に空洞部6を有する弾性体5と、空洞部6内に封入される流体とで構成されており、振動入力を受けた弾性体5の変形を利用して、封入された流体の流動により、大きな減衰力を得る構造となっている。弾性体5の上面には床基材1の下面を支持する平板状の支持部5aが設けられ、弾性体5の下面には床下地2上に載置される幅広の平坦な載置面5bが設けられており、これにより弾性体5と上記防振ゴム3とを介して床下地2上に床基材1が安定良く支持されている。…」(段落【0009】)
(10)「【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明は、床基材と床下地との間に防振ゴムを配設すると共に、弾性体で形成された空洞部内に流体を封入して構成される防振装置を上記防振ゴムと並列に配設して成るから、防振装置における封入された流体の流動に伴う減衰効果によって、高い防音特性が得られ、床としての剛性を確保しながら、特に床重量衝撃で問題となる低音域(特に63〜125Hzの低周波数域)の防音性能を向上させることができる。」(段落【0013】)

これら(7)〜(10)の技術事項を含む刊行物2全体の記載及び図面並びに当業者の技術常識によれば、刊行物2には、以下の技術が記載されているものと認める。かっこ内は対応する刊行物2における構成・用語である。
「衝撃吸収材(防振ゴム3と防振装置4)の上面及び下面が床材(床基材1)又は床版(床下地2)に直に接している。」

〔3〕対比・判断
1.補正発明と刊行物1発明を比較すると、両者は、
「床版と前記床版上の床材とを備える防音床構造であって、前記床版と前記床材との間に複数の防音床材が配置されており、前記防音床構造を縦断面で見た時、前記各防音床材が互いに離間しており、前記各防音床材の間に空間が設けられており、前記各防音床材が衝撃吸収材を備えており、前記衝撃吸収材の上面又は下面と前記床材又は前記床版との間に前記衝撃吸収材を支持する支持材が設けられており、前記防音床材の端部間の距離が30cmであり、前記支持材が前記床材又は前記床版に固定されている防音床構造。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
補正発明では、「前記衝撃吸収材の上面及び下面のいずれか一方のみが前記床材又は前記床版に直に又は接着剤を介して接している」のに対して、刊行物1発明では、そのような事項を具備していない点。
<相違点2>
補正発明では、「前記床材が、JIS-A-5908に規定された方法で0.196〜98.1MPaの曲げ強さを有する」のに対して、刊行物1発明では、そのような事項を具備していない点。

2.相違点についての検討
<相違点1について>
刊行物2には、前記のとおり「衝撃吸収材の上面及び下面が床材又は床版に直に接している」という技術事項が記載されており、これに「上面及び下面のいずれか一方のみ」という限定を加えて「衝撃吸収材の上面及び下面のいずれか一方のみが床材又は床版に直に接している」として刊行物1発明に適用し、相違点1に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
<相違点2について>
床材の曲げ強さを、所望の防音性能が得られるように設定することは、当業者が適宜に採用し得る設計事項にすぎない。

3.作用効果
そして、補正発明によりもたらされる効果も、刊行物1発明及び刊行物2に記載の技術事項から当業者であれば当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものではない。

〔4〕むすび
したがって、補正発明は、刊行物1及び2記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
〔1〕本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成16年9月2日付け手続補正が上記のとおり却下されたので、平成16年6月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】床版と前記床版上の床材とを備えている、防音床構造であって、前記床版と前記床材との間に、複数の防音床材が配置されており、前記防音床構造を縦断面で見た時、前記各防音床材が互いに離間しており、前記各防音床材の間に空間が設けられており、前記各防音床材が衝撃吸収材を備えており、前記衝撃吸収材の上面及び下面のいずれか一方のみが前記床材又は前記床版に直に又は接着剤を介して接しており、前記衝撃吸収材の上面又は下面と前記床材又は前記床版との間に、前記衝撃吸収材を支持する支持材が設けられており、前記防音床材の端部間の距離が、5〜70cmであり、前記支持材が前記床材又は前記床版に固定されていることを特徴とする、防音床構造。
【請求項2】〜【請求項4】(記載を省略。)」(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)

〔2〕引用刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された引用刊行物の記載事項は、上記【2】〔2〕に記載したとおりである。

〔3〕対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明における、「前記床材が、JIS-A-5908に規定された方法で0.196〜98.1MPaの曲げ強さを有する」との構成を除外するものである。
そうすると、本願発明の技術事項を全て含み、かつ、前記除外した構成を付加することにより減縮された補正発明が、上記【2】〔3〕に記載したとおり、刊行物1及び2記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、刊行物1及び2記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたものと言わざるを得ない。

〔4〕むすび
したがって、本願発明は、刊行物1及び2記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるので、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-20 
結審通知日 2005-04-26 
審決日 2005-05-09 
出願番号 特願2000-385019(P2000-385019)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 575- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 木原 裕
南澤 弘明
発明の名称 防音床構造及び防音床材  
代理人 徳永 博  
代理人 冨田 和幸  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 興作  
代理人 高見 和明  

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