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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1118919
審判番号 不服2003-21350  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-04 
確定日 2005-06-15 
事件の表示 平成6年特許願第167356号「遠隔データ取得及び通信のシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成7年7月4日出願公開、特開平7-170583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成6年6月27日(パリ条約による優先権主張 1993年6月25日(US)米国)の出願であって、平成15年7月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月4日付で手続補正がなされ、平成16年11月19日付けで審尋がなされ、同年12月14日に回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年12月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年12月4日付けの手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「遠隔データ取得及び通信のシステムであって、
各々のものが複数の略同一の指定されたデータ伝送間隔の各々においてデータ伝送を行うための無線送信機を有し、各々のものについての前記データ伝送間隔が同一システム内の他のもののデータ伝送間隔と独立かつランダムな関連である開始及び終端時間を有する、多数のデータ収集装置と、
各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを含む、複数の制御装置と、
データ伝送の受信、システムの制御及び受信されたデータの処理のためのデータ管理プラットホームコンピュータと、を含み、
前記多数のデータ収集装置はそれぞれ、電源が供給された後における各データ収集装置の初期伝送時刻が所定の発呼期間を通じて均一に広がるようにランダムに選択し、かつデータ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔、かつランダム間隔<<発呼期間)とすることを特徴とするシステム。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の「時間間隔」を「データ伝送間隔」に、「電源が供給された後にその最初のデータ伝送の時刻をランダムに選択し」という構成を「電源が供給された後における各データ収集装置の初期伝送時刻が所定の発呼期間を通じて均一に広がるようにランダムに選択し」という構成に、補正前の「データ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔)とする」という構成を「データ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔、かつランダム間隔<<発呼期間)とする」という構成に限定する補正である。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、上記補正は特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同条第4項(補正の目的)第2号の規定に適合している。

(2)独立特許要件
次に、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。
[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開昭57-34295号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「複数のデータ発生地点に、発生したデータにより変調入力を与える無線送信装置を備え、中央のデータ収集地点に、上記送信装置より送信される無線信号を受信する受信装置を備えた無線データ収集方式において、上記送信装置に、乱数発生器と、この乱数発生器の出力する乱数により遅延時間が制御される遅延回路とを備え、送信開始のタイミングを与える起動信号を上記遅延回路を介して上記送信装置に与える構成を特徴とする無線データ収集方式。」(1頁左下欄、特許請求の範囲第1項)
ロ.「この発明はこの点を改良するもので、無線チャネルが1つで済み、かつ一方向の伝送系にて情報を収集することができる無線データ収集方式を提供することを目的とする。」(2頁左上欄1〜4行目)
ハ.「図は本発明一実施例の要部回路構成図である。図は各地点に置かれたセンサ11〜1nと送信装置21〜2n、収集地点に置かれた受信装置3とで構成されている。」(2頁左上欄16〜19行目)
二.「ここで、本発明の特徴ある動作を説明する。遅延回路10の遅延時間は可変であり、乱数発生器11の出力する乱数により遅延時間が決定される。乱数発生器11は、遅延時間がタイマ回路9のパルス出力間隔に比べて十分小さい値になるような乱数を発生させる。
前にあげた例のようにタイマ回路9のパルス出力間隔が10分の場合なら、遅延時間は0分から1分の間を一様分布するように乱数が選ばれる。
一般に、各送信装置21〜2nは別々に電源を投入されるので、各送信装置内のタイマ回路9がパルスを出力する時期はずれているかあるいは重なつているかは分らない。」(2頁右下欄3〜15行目)
ホ.「また、各送信装置21〜2nが衝突が生じないようなタイミングで電源投入された場合でも、各送信装置21〜2nのタイマ回路9の時間基準にわずかなずれがあると、送信タイミングが少しずつずれて行き、ついには重なつてしまう可能性がある。」(3頁左上欄4〜8行目)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「各地点に置かれたセンサ11〜1nと送信装置21〜2n」は多数のいわゆる「データ収集装置」を構成している。また、送信装置を含む当該「データ収集装置」と収集地点に置かれた受信装置3は無線送受信手段により結合されているからこれらの要素からなる上記「無線データ収集システム」は「遠隔データ取得及び通信のシステム」を構成している。
また、上記「パルス出力間隔」と「遅延時間」の和は実際の「データ伝送間隔」を構成しており、そのデータ伝送間隔は10分から11分までの複数の略同一の間隔であり、乱数によりランダムに決定される遅延時間を含むデータ伝送間隔は同一システム内の他のもののデータ伝送間隔と独立かつランダムに設定されるものである。また、当該「パルス出力間隔」は例えば10分で「一定間隔」であり、当該遅延時間は1分以下の「ランダム間隔」であり、かつ「ランダム間隔<<一定間隔」である。
また、上記システムにおける各送信装置(即ち、データ収集装置)の電源は別々に、送信データの衝突が生じないようなタイミングで、投入される場合についても考慮されている。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「遠隔データ取得及び通信のシステムであって、
各々のものが複数の略同一の指定されたデータ伝送間隔の各々においてデータ伝送を行うための無線送信装置を有し、各々のものについての前記データ伝送間隔が同一システム内の他のもののデータ伝送間隔と独立かつランダムな関連である開始及び終端時間を有する、多数のデータ収集装置と、
上記送信装置より送信される無線信号を受信する受信装置を含み、
前記多数のデータ収集装置はそれぞれ、各データ収集装置の電源は別々に送信データの衝突が生じないようなタイミングで投入され、かつデータ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔)とするシステム。」

B.また、原審の拒絶理由で引用された特開平5-41886号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】 住戸ごとに設けられ電力、水道あるいはガス等の使用量のデータを所要の高周波信号に変換し電波を介し送出する戸別データ送出手段と、複数の住戸でなる小集団ごとに設けられ前記戸別データ送出手段よりの電波を受信しデータに復調する小集団データ受信手段と、通信回線等を介し複数の前記小集団データ受信手段で受信された各住戸のデータの収集を行う広域データ収集手段とで構成したことを特徴とする広域データ収集システム。」(2頁1欄、【請求項1】)
ロ.「【0007】主無線機イは小集団ごとに各住戸を見通せるような小高い場所、例えば、電柱の上部等に設置され、データ収集元よりの通信回線1に並列的に接続される。2はカウンタ設定部で、小集団ごとに異なる数値を設定する。3は呼び出しカウンタで、呼び出し信号が入力し終了するまでを1回としこの回数を計数する。4は設定カウンタで、呼び出しカウンタ3よりの信号がカウンタ設定部2の設定値に一致したとき信号を出力する。5はフックスイッチで、設定カウンタ4よりの信号に基づきオフフックし装置を通信回線1に接続する。6は復調部で、通信回線1を介し送られるデータ収集元よりの信号等を復調する。7は識別部で、復調部6よりの信号の識別を行う。8はメモリ部で、データ収集のためのシーケンスプログラム、自小集団の識別コードおよび各住戸の識別コード等を記憶すると共に、データ記憶領域に戸別無線機ロよりのデータを記録する。9は制御部で、メモリ部8よりの識別コードおよび識別部7を介しての信号等を送信部10に出力する。送信部10は制御部9よりの信号を所要の小さい電力の高周波信号に変換しアンテナ11を介し発射する。12は受信部で、戸別無線機ロよりの電波をアンテナ11を介し受信し復調する。13は変調部で、受信部12よりのデータ等を通信回線で伝送するための所要の信号に変換しフックスイッチ5を経て通信回線1を介しデータ収集元へ送出する。」(2頁2欄〜3頁3欄、【0007】)
ハ.「そして、制御部9を介しメモリ部8のデータ記憶領域の当該住戸の識別コードに相応する領域にそれぞれ一旦記録する。全部の住戸のデータの収集の後、メモリ部8より読み出した自小集団の識別コードを付し、変調部13を介し通信回線1に送出するための所要の信号に変換し、通信回線1を介しデータ収集元へ送出する。」(3頁4欄35〜41行目)

上記周知例1の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記複数の「主無線機イ」は「各々が(個別無線機ロからの)データ伝送を受信するための無線受信機」であり、受信されたデータを格納するための「メモリ8」を有し、当該受信されたデータを通信回線を介してデータ収集元へ送出するものであるから、上記周知例1によると「各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを有し、記憶されたデータを通信回線を介してデータ収集元へ送出する受信装置を備えた広域データ収集システム」は周知である。

C.また、例えば特開平1-195799号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
「この発明に係る集中自動検針装置の一実施例を第1図を用いて説明する。
第1図において、中央制御手段としての中央装置(100)はマイクロプロセッサからなる制御部(102)と、演算プログラムや検出データを記憶する記憶部(104)と、検出データを読み出すべき検出装置の読み出し番号等やその値の設定値を設定するための設定部(106)と、制御部(102)で処理される論理信号と伝送路(150)との間で入出力されるサイクリックなデジタル信号との間の信号変換および入出力制御を行う信号伝送部(110)と、制御部(102)の演算処理による集計結果等を出力するためのプリンタ制御部(112)と、検出データ等を表示する表示部(108)と、表示部(108)における表示を実行するか否かを切換える表示スイッチ(116)および制御部(102)の演算処理による集計結果等を別の制御手段、例えば複数の中央装置(100)を統括管理するさらに上位のコンピュータ(600)に出力する入出力制御手段であるインターフェイス(118)で構成されている。
伝送線(150)には中継伝送手段である中継伝送装置(200),(300)....が複数接続されている。
各中継伝送装置(200),(300)....はそれぞれ、伝送線(150)からのサイクリックなデジタル信号を受信して制御部(204),(304)....で用いられる論理信号に変換し、又は逆に論理信号からサイクリックなデジタル信号に変換する信号伝送部(202),(302)....と、複数の検出手段例えば電力量計等(以下メータと略称する)(M11)〜(Mnn)に発信器(T11)〜(Tnn)および接続ボックス(B11)〜(Bnn)を介して接続されている第1のインタフェイス(212),(312)....と、制御部(204),(304)....に接続され、メータ(M11)〜からの信号を受信するごとにカウント数を1つずつ進めるカウンタ(210),(310)....と、制御部(204),(304)に接続されカウンタ(210),(310)....のカウント数を記憶する記憶部(208),(308)....と、それぞれの中継伝送装置(200),(300)....のアドレスコードを設定するためのアドレス設定部(206),(306)....と、集中自動検針装置起動時の各メータ(M11)〜(Mnn)の初期表示値を設定するための可搬形制御手段である可搬形操作装置(500)を接続するための第2のインタフェイス(214),(314)....およびコネクタ(216),(314)....とで構成されている。」(3頁左下欄9行目〜4頁左上欄12行目)

上記周知例2の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「集中自動検針装置」は上位のコンピュータにより統括管理される複数の「中央装置」、「中継伝送装置」、「メータ」等からなるいわゆる「広域データ収集システム」の一例であるから、当該周知例2によれば「各々がメータからのデータ伝送を受信し記憶するためのメモリを有する中継伝送装置、複数の中継伝送装置を統括する複数の中央装置、複数の中央装置を統括するコンピュータと」からなる広域データ収集システムは周知である。

D.また、例えば特開平1-138890号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項イ、ロが記載されており、また、例えば特開昭61-295750号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項ハ、ニが記載されている。
イ.「これに対しガス検針データの収集は、例えば1ケ月単位で行なわれ、検針時にはセンタからの端末に検針データの応答要求を行ない、検針データの収集終了で元の監視データの送信状態に戻るようになる。」(2頁右上欄11〜15行目)
ロ.「逆に、ガス検針データの収集時間を例えば1時間と決めていた場合には、従来例にあっては12端末のガス検針データしか収集できないものが本発明にあっては120端末のガス検針データを収集することができる。」(5頁左上欄12〜16行目)
ハ.「この検針センター3による検針情報の収集を具体的に説明すると、検針センター3にはコンピュータが内蔵されており、複数の消費先からの検針情報をコンピュータによる情報収集プログラムに基づいて収集する。予め設定した検針時間帯毎に情報収集する消費先を割当てておき、設定した検針時間帯に達すると各消費先を個別に呼び出してポーリング方式により情報収集する。」(2頁右下欄4〜11行目)
ニ.「また予め設定した所定の検針時間帯、例えば毎月1日の午前零時から午前6時までの間のみ第1図に示したように点線側となる検針回線L4側に接続されることで、この所定の検針時間帯においてのみ検針回線からの検針情報を電話回線L1を介して伝送することができる。」(3頁右上欄5〜11行目)

上記周知例3、4の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、「検針データ収集システムにおいて、予め定めた時間帯にのみデータの収集を行う」ことは周知である。

[対比・判断]
そこで、補正後の発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「無線送信装置」は補正後の発明の「無線送信機」に対応している。
また、補正後の発明の「各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを含む、複数の制御装置と、データ伝送の受信、システムの制御及び受信されたデータの処理のためのデータ管理プラットホームコンピュータと」からなる構成と引用発明の「上記送信装置より送信される無線信号を受信する受信装置」の構成は、いずれの構成も「所定の受信系装置」である点で一致している。
また、補正後の発明の「電源が供給された後における各データ収集装置の初期伝送時刻が所定の発呼期間を通じて均一に広がるようにランダムに選択し」という構成は「送信データの衝突が生じないようにする」ためであるから、補正後の発明の当該構成と引用発明の「各データ収集装置の電源は別々に送信データの衝突が生じないようなタイミングで投入され」という構成は、いずれの構成も「各データ収集装置は送信データの衝突が生じないように初期伝送時刻が決定され」という構成である点で一致している。
また、補正後の発明の「データ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔、かつランダム間隔<<発呼期間)とする」という構成と引用発明の「データ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔)とする」という構成は、いずれの構成も「データ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔)とする」という構成である点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、
「遠隔データ取得及び通信のシステムであって、
各々のものが複数の略同一の指定されたデータ伝送間隔の各々においてデータ伝送を行うための無線送信機を有し、各々のものについての前記データ伝送間隔が同一システム内の他のもののデータ伝送間隔と独立かつランダムな関連である開始及び終端時間を有する、多数のデータ収集装置と、
所定の受信系装置を含み、
前記多数のデータ収集装置はそれぞれ、各データ収集装置は送信データの衝突が生じないように初期伝送時刻が決定され、かつデータ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔)とすることを特徴とするシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>「所定の受信系装置」に関し、補正後の発明は「各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを含む、複数の制御装置と、データ伝送の受信、システムの制御及び受信されたデータの処理のためのデータ管理プラットホームコンピュータと」からなる構成であるのに対し、引用発明は「上記送信装置より送信される無線信号を受信する受信装置」である点。

<相違点2>「各データ収集装置は送信データの衝突が生じないように初期伝送時刻が決定され」という構成に関し、補正後の発明は「電源が供給された後における各データ収集装置の初期伝送時刻が所定の発呼期間を通じて均一に広がるようにランダムに選択し」という構成であるのに対し、引用発明は「各データ収集装置の電源は別々に送信データの衝突が生じないようなタイミングで投入され」という構成である点。

<相違点3>「データ伝送間隔」に関し、補正後の発明は「データ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔、かつランダム間隔<<発呼期間)とする」という構成であるのに対し、引用発明は「かつ(ランダム間隔<<発呼期間)とする」という構成を備えていない点。

そこで、上記相違点1の「所定の受信系装置」について検討するに、上記周知例1によると「各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを有し、記憶されたデータを通信回線を介してデータ収集元へ送出する受信装置を備えた広域データ収集システム」は周知であるところ、上記周知例2によれば「各々がメータからのデータ伝送を受信し記憶するためのメモリを有する中継伝送装置(本願図1、図3の「集信装置」に相当する)、複数の中継伝送装置を統括する複数の中央装置(本願図1、図3の「制御装置」に相当する)、複数の中央装置を統括するコンピュータ(補正後の発明の「データ伝送の受信、システムの制御及び受信されたデータの処理のためのデータ管理プラットホームコンピュータ」に相当する)とからなる広域データ収集システムも周知であり、これらの周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の受信装置を周知の広域データ収集システムとするためにこれらの周知技術を適用して、引用発明の受信装置に受信したデータを格納するためのメモリ及び記憶したデータを通信回線を介してデータ収集元へ送出する構成を付加するとともに当該データ収集元がコンピュータからなることを明示し、かつ、このような受信装置を複数の制御装置として構成することにより、補正後の発明のような「各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを含む、複数の制御装置と、データ伝送の受信、システムの制御及び受信されたデータの処理のためのデータ管理プラットホームコンピュータと」からなる構成とする程度のことは当業者であれば容易なことである。

ついで、上記相違点2の「各データ収集装置は送信データの衝突が生じないように初期伝送時刻が決定され」という構成について検討するに、引用発明の「各データ収集装置の電源は別々に送信データの衝突が生じないようなタイミングで投入され」る構成における「別々に」電源投入を行う構成は実質的に(言い換えれば、自然に)電源投入がランダムに行われていると解されるところ、ランダム化の手段それ自体及びランダム化が事象を確率的に均一に分散させるための手段であることは周知であり、また例えば上記周知例3、4によれば「検針データ収集システムにおいて、予め定めた時間帯にのみデータの収集を行う」ことも周知であり、これらの周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明のシステムに発呼期間の制限を設けるとともに引用発明のランダム化に関する構成を発呼期間内でランダム化して行うように変更して、補正後の発明のような「電源が供給された後における各データ収集装置の初期伝送時刻が所定の発呼期間を通じて均一に広がるようにランダムに選択し」という構成に変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

また、上記相違点3の「データ伝送間隔」について検討するに、上記相違点2で検討したとおり、引用発明のシステムに発呼期間の制限を設ける程度のことは当業者であれば適宜成し得ることであるところ、上記周知例3、4の時間帯(発呼期間)は例えば1時間又は6時間であり、割当てられた全端末が例えばポーリングにより送信データの衝突をおこすことなく順次伝送されるのに十分な時間帯であるから、これらの時間帯(発呼間隔)が一定間隔よりも著しく小さいランダム間隔よりも著しく大きい値となる程度のことは当業者であれば自明のことである。したがって、「データ伝送間隔」を補正後の発明のような「一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔、かつランダム間隔<<発呼期間」という構成とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知例1〜4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が独立特許要件を満たしていないので、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年12月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「遠隔データ取得及び通信のシステムであって、
各々のものが複数の略同一の指定された時間間隔の各々においてデータ伝送を行うための無線送信機を有し、各々のものについての前記時間間隔が同一システム内の他のものの時間間隔と独立かつランダムな関連である開始及び終端時間を有する、多数のデータ収集装置と、
各々がデータ伝送を受信するための無線受信機、及び受信されたデータを格納するためのメモリを含む、複数の制御装置と、
データ伝送の受信、システムの制御及び受信されたデータの処理のためのデータ管理プラットホームコンピュータと、を含み、
前記多数のデータ収集装置はそれぞれ、電源が供給された後にその最初のデータ伝送の時刻をランダムに選択し、かつデータ伝送間隔を(一定間隔+ランダム間隔、ただし、ランダム間隔<<一定間隔)とすることを特徴とするシステム。」

2.引用発明
引用例に記載された引用発明及び周知例1〜4に記載された周知技術は、上記「第2.2(2)[引用発明及び周知技術]」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は、上記補正後の発明の「データ伝送間隔」を「時間間隔」に、また上記補正後の発明の「電源が供給された後における各データ収集装置の初期伝送時刻が所定の発呼期間を通じて均一に広がるようにランダムに選択し」という構成を「電源が供給された後にその最初のデータ伝送の時刻をランダムに選択し」という構成にそれぞれ一般化して拡張するとともに、補正後の発明から「かつランダム間隔<<発呼期間)とする」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を限定した上記補正後の発明が上記「第2.2(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知例1〜4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1〜4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-18 
結審通知日 2005-01-21 
審決日 2005-02-01 
出願番号 特願平6-167356
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 浜野 友茂
望月 章俊
発明の名称 遠隔データ取得及び通信のシステム  
代理人 玉真 正美  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 橘谷 英俊  

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