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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1118926
審判番号 不服2001-5068  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-04 
確定日 2005-06-23 
事件の表示 平成 5年特許願第335777号「低照度条件下における植物の栽培方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月25日出願公開、特開平 7-184479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年12月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年4月19日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「植物に5-アミノレブリン酸又はその塩を与えて栽培することを特徴とする、観葉植物、園芸植物、植物工場において人工光下で栽培される葉野菜、サトイモ、イネ及びハツカダイコンから選ばれる植物の低照度条件下における生育阻害改善方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-186304号公報(以下「引用例1」という。)には、各表と共に、
「5-アミノレブリン酸又はその塩を有効成分とする藻類の成長促進剤。」(特許請求の範囲、【請求項1】)、
「5-アミノレブリン酸又はその塩を有効成分とする藻類の炭酸ガス固定化能力向上剤。」(特許請求の範囲、【請求項3】)、
「本発明は、藻類の成長促進剤に関し、更に詳細には、5-アミノレブリン酸又はその塩を有効成分とする藻類の成長促進剤、・・・炭酸ガス固定化能力向上剤に関する。」(段落【0001】)、
「藻類は食料として重要であることはもちろん、また、健康食品として、・・・人工飼料などとしても利用されている。また、・・・、工業原料としても広く利用されており、人類にとって重要な役割を果たしている。」(段落【0002】)、
「藻類は、天然物として採取するか、池等で人工的に培養するのが一般的である。また、藻類の工業的培養法の研究も一部で進められており、例えば特開昭47-43388号、特開昭48-87077号、特開昭52-34295号等により培地成分、光の照射方法などが提案されているが、今のところ、工業的に充分な水準にはなく、クロレラ等の微細藻類で実用化した例がある・・・。」(段落【0003】)、
「藻類を人為的に栽培・・・する試みにはいくつかの課題がある・・・微生物と比較して成長速度が遅い・・・。・・・近年、・・・、炭酸ガスを固定化する一手段として藻類の利用が注目されているが、・・・、実用化するには充分なものではなかった。」(段落【0004】)、
「研究を行った結果、5-アミノレブリン酸又はその塩が藻類に対して強い成長促進作用を有し、また、・・・、炭酸ガスの固定化能力も向上させることを見出し、・・・た。」(段落【0006】)、
「藻類の成長促進剤の有効成分として用いられる5-アミノレブリン酸又はその塩は、除草剤及び殺虫剤として有用であることが知られているが・・・、藻類に対して成長促進作用を有することは全く知られていない。」(段落【0008】)、
「5-アミノレブリン酸又はその塩は、公知の化合物であ・・・る。」(段落【0009】)、
「5-アミノレブリン酸とその塩は、それぞれ単独でも、又はこれらの2種以上を混合して用いることもできる。」(段落【0010】)、
「5-アミノレブリン酸及びその塩は、天然に広く存在する物質であり、人体内にも存在し、極めて毒性の低いものである。また、藻類培養時など、藻類によって速やかに吸収利用される一方、自然界においては微生物等による分解を受けるため、残留性も極めて少なく、安全性の高いものである。」(段落【0013】)、
「本発明の藻類の成長促進剤の使用濃度は、5-アミノレブリン酸換算で、・・・。0.01ppm 未満では充分な効果が得られず、1000ppm を超えると効果がそれほど上がらないばかりか、却って成長を抑制してしまうこともあるので好ましくない。」(段落【0014】)、
「本発明の藻類の成長促進剤の適用対象となる藻類としては、特に限定されないが、例えば・・・、スピルリナ(Spirulina) 等の藍藻類;・・・、クロレラ(Chlorella) 等の緑藻類などが挙げられる。」(段落【0016】)、
「また、5-アミノレブリン酸又はその塩は、藻類の炭酸ガス固定化能力向上剤としても有効である。藻類の炭酸ガス固定化能力向上剤としての使用形態、添加方法、添加濃度等についても、全て藻類の成長促進剤の場合と同様である。」(段落【0018】)、
「本発明の藻類の成長促進剤は、・・・、藻類の優れた成長促進作用を示し、また光合成活性を向上させ、・・・、及び炭酸ガス固定化能力向上に優れた効果を示すものである。」(段落【0019】)、
「実施例を挙げて、・・・説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例1 ・・・SOT培地・・・に・・・スピルリナ プラテンシス・・・培養液10%を無菌的に接種し・・・、5-アミノレブリン酸(5-ALA) を、・・・添加し、・・・、白熱球で3000ルックスとなるように光を照射して、培養を行った。培養時間と菌体量を示すOD560 の値を表2に示す。」(段落【0020】)、
「表2から・・・、本発明の藻類の成長促進剤を添加することにより、藻類の生育が促進され、生産量が増大することが認められた。」(段落【0023】)、
「実施例7・・・MBM培地・・・に・・・クロレラ ブルガリス・・・の培養液5%を無菌的に接種し・・・、5-アミノレブリン酸(5-ALA) を、・・・添加し、・・・、白熱球にてフラスコ表面で5000ルックスとなるように光を照射して、培養を行った。通気は、炭酸ガス:空気=1:1の混合空気を・・・バブリングした。培養日数と菌体量を示すOD560 の値を表9に示す。」(段落【0039】)、
「表9から・・・、5-ALA を添加することにより、藻類の成長が促進されることが認められた。」(段落【0042】)、
「表11から・・・、5-ALA を添加することにより、藻類の炭酸ガス固定化率が向上することがわかった。」(段落【0048】)、
「実施例10・・・SOT培地・・・に・・・スピルリナ プラテンシス・・・IAM M-135、NIES-39及びNIES-46 の培養液10%を無菌的に接種し・・・、5-ALA を、それぞれ・・・添加し、・・・、白熱球で5000ルックスとなるように光を照射して、培養を行った。培養日数と菌体量を示すOD560 の値を表12、13及び14に示す。」(段落【0049】)、
「表12、13及び14から・・・、本発明の藻類の成長促進剤を添加することにより、藻類の生育が促進され、生産量が増大することが認められた。いずれの菌株に対しても効果があることが分かるが、その感受性には差異が見られ、IAM M-135 に対して他の2株より低濃度において効果を示した。」(段落【0053】)、
「実施例11 実施例10と同様に調製した培地入りル式びんに、・・・B6溶液を ・・・添加して、・・・スピルリナ プラテンシス・・・NIES-39を接種後のOD560 値が0.08〜0.09の範囲となるように接種し・・・5-ALA をそれぞれ0及び500ppmとなるように添加し、・・・白熱球にてル式びんの表面照度が20000 ルックスとなるようにル式ビンの両側面に照射した。培養日数に対する菌体量を示すOD560 の値、実施例5と同様の方法にて測定したフィコシアニン量、溶存酸素計により測定した光合成活性(酸素発生速度)を表16に示す。」(段落【0054】)、
「表16から・・・、5-ALA の添加により、増殖が促進し、光合成の活性が向上し、色素含量も向上していることがわかった。」(段落【0057】)、
「表17から・・・、5-ALA の添加により、増殖が促進し、光合成の活性が向上し、色素含有量が向上していることがわかった。又、・・・成育条件が悪い時ほど5-ALA の添加効果が大きいことがわかった。」(段落【0060】)、
「表18から・・・、5-ALA の添加により色素含有量が増大しており、この効果は、・・・成育条件の悪い時ほど効果が大きいことがわかった。」(段落【0063】)、
との記載が認められ、また、これらの記載によれば、引用例1には、

「藻類に5-アミノレブリン酸又はその塩を用いて栽培する、藍藻類および緑藻類から選ばれる藻類の5000ルックスまたは20000 ルックスなどの照度条件下における成長促進方法。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「藻類」および「用いて」は、本願発明の「植物」および「与えて」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「成長促進方法」と、本願発明の「生育阻害改善方法」は植物の「生育方法」で、および、引用例1発明の「5000ルックスまたは20000 ルックスなど」と、本願発明の「低照度」は、「照度条件」で共通する。したがって、両者は、
「植物に5-アミノレブリン酸又はその塩を与えて栽培する、植物の照度条件下における生育方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本願発明では、「観葉植物、園芸植物、植物工場において人工光下で栽培される葉野菜、サトイモ、イネ及びハツカダイコンから選ばれる植物の低照度条件下における生育阻害改善方法」であるのに対し、引用例1発明では、「藍藻類および緑藻類から選ばれる藻類の5000ルックスまたは20000 ルックスなどの照度条件下における成長促進方法」である点。

4.判断
上記相違点について検討すると、引用例1の生育対象植物として、藍藻類および緑藻類であるが、引用例1には、5-アミノレブリン酸又はその塩を緑藻類(クロレラ)に施用することで、炭酸ガス固定化能力(すなわち光合成活性)を向上させる技術が開示されている。そして、出願人が審判請求の手続補正書で提示した参考資料1に記載されているように、「光合成の光化学的反応の機作についてみると、緑藻のそれは高等植物と基本的に同じ」であるから、引用例1に記載された技術を本願発明のように、高等植物である観葉植物、園芸植物、植物工場において人工光下で栽培される葉野菜、サトイモ、イネ及びハツカダイコンに適用することに格別の困難は認められない。また、照度条件についてみると、引用例1に記載された技術事項から、5-アミノレブリン酸又はその塩は、5000ルックス以下の照度条件でも、光合成活性を向上させるものと予測し得るので、本願発明のように、光の不足により光合成活性が低下する低照度条件下における栽培にも5-アミノレブリン酸又はその塩を適用することに、特に困難性も認められない。そして、成育方法についてみると、引用例1発明の「成長促進」は、ある種の成長阻害要因の除去または軽減を行ったものと解することができ、本願発明の「生育阻害改善」に相当するものと認められる。してみると、本願発明のとる構成は、引用例1発明および引用例1に記載された技術事項から当業者が必要に応じて容易になしうる程度のものと認められる。
そして、本願発明が上記相違点に係る構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および引用例1に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1および引用例1に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-14 
結審通知日 2005-04-19 
審決日 2005-05-11 
出願番号 特願平5-335777
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 林 晴男
渡戸 正義
発明の名称 低照度条件下における植物の栽培方法  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 高野 登志雄  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 有賀 三幸  
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