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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D |
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管理番号 | 1118946 |
審判番号 | 不服2001-22626 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-02-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-17 |
確定日 | 2005-06-22 |
事件の表示 | 平成7年特許願第169977号「液状製品塗布用アプリケータ及び該アプリケータを備えたメークアップアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成8年2月13日出願公開、特開平8-38248号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成7年7月5日の出願(優先権主張:1994年7月12日、仏国)であって、当審において、平成16年8月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、請求人より同年11月15日付けで意見書提出と共に手続補正がされたものであって、当該手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の発明は、次のとおりのものである。 「所定の可撓性を有するとともにステム部(5)の一端(5a)に固定された塗布部材(2)を具備する、液体メークアップ製品の塗布用アプリケータにおいて、ステム部(5)が塗布部材(2)と同様の撓みやすさを有することを特徴とするアプリケータ。」(以下、「本願発明」という) 【2】引用例及びその記載事項の概要 当審の拒絶理由において引用された、米国特許4509540号明細書(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 イ)「Referring to the drawing, a puff's main body 1 ・・・, it would be not preferable that this connector member 3 is too long or too short.」(第2欄第7〜25行) (訳文:図面を参照すると、適度に柔らかくかつ水吸収性を有する材質であるパフのメイン・ボディ1は、例えばスポンジで構成される。このメイン・ボディ1は、パフの先行技術のメイン・ボディのものと同様の形や寸法を有するように図中で示されているが、パフのメイン・ボディがそれ以外の形、および寸法を有し得ることは理解されるべきである。握り棒2は、長さ4〜6cm、直径0.5〜1.5cmで、プラスチック製、又は類似の材料で作られ、コネクター・メンバー3は、パフのメイン・ボディ1と握り棒2の間に固定して置かれたスプリングで構成される。 コネクター・メンバー3は好ましくは、パフが手によって保持された握り棒2により振動させられると、パフのメイン・ボディ1もまた前述の握り棒2が所定の時間遅れで振動するような、復元力を有するものとされる。従って、このコネクター・メンバー3が長すぎたり短すぎたりすることは望ましくない。) ロ)「The quantity of makeup powder put on the puff's main body 1 ・・・without any requirement for a high skill.」(第2欄第36〜50行) (訳文:これにより、パフのメイン・ボディ1の上に付けられたメーキャップ・パウダーは、従来のダスティング・モードによって得られる効果と同程度に肌上へ振りかけられる。こういった効果は、手の動きが間接的にバネもしくはこれと同等の素材によって構成されているコネクター・メンバー3によって、ある遅れを伴ってパフのメイン・ボディ1へと伝達されることにより発生すると考えられる。更に詳細に言えば、手の動きが、コネクター・メンバー3によって繊細な振動力へと変換され、この変換がパフのメイン・ボディ1へ伝達されるのである。つまり、これまで最も好ましい手法であると考えられていたダスティング・モードによるメーキャップが、高い技能の必要なしに実現できると言う点が、本発明により得られるのである。) ハ)図面にはメイン・ボディ1と、その端部に取り付けられたバネ状のコネクター・メンバー3と、コネクター・メンバー3のもう一つの端部に取り付けられた握り棒2からなる化粧用パフが図示されている。 ニ)「The manner in which makeup powder is applied to the skin may be generally classified into three modes, i.e., the spreading mode, the brush-applying mode and the dusting mode.」(第1欄第4〜7行) (訳文:メーキャップ・パウダーを肌へ塗布する方法は、一般的に3つの手法に分類される。すなわち、スプレッディング・モードと、ブラシ塗布モードと、ダスティング・モードである。) 上記の摘記事項を纏めると、引用例には以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。 (引用発明) 「バネもしくはこれと同等の素材によって構成されるコネクター・メンバー3の一端に固定されたスポンジ製のメイン・ボディ1を有するメーキャップ・パウダーの塗布用パフであって、 コネクター・メンバー3が、手の動きを微細な振動力へ変換し、時間遅れを伴ってメイン・ボディ1へ伝達するものであるパフ。」 【3】対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「コネクター・メンバー3」、「メイン・ボディ1」、「メーキャップ」の「塗布用パフ」は、各々本願発明の「ステム部」、「塗布部材」、「メークアップ製品の塗布用アプリケータ」に相当し、また、引用発明の「コネクター・メンバー3」が「バネもしくはこれと同等の素材によって構成される」ことは、本願発明の「所定の可撓性を有する」ことと言えるから、両者は、 「所定の可撓性を有するとともにステム部の一端に固定された塗布部材を具備する、メークアップ製品の塗布用アプリケータ。」 の点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 <相違点1> 塗布対象に関し、本願発明は「液体」であるのに対して、引用発明は「パウダー」(すなわち粉体)である点。 <相違点2> 本願発明では「ステム部が塗布部材と同様の可撓性を有する」としているのに対して、引用発明にはコネクター・メンバー3がバネで構成されていることから可撓性を有することや、パフのメイン・ボディ1がスポンジ等で構成されていることから可撓性を有するといえるものの、両者の可撓性の大小関係については明らかでない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (相違点1について) そもそも化粧用のアプリケータは、粉体用、液体用と、塗布対象により大きく構造を変えるものではなく、双方に使用できるものであることが周知である(必要ならば、特開平5-237436号公報の【産業上の利用分野】欄、実願昭63-159058号(実開平2-78111号)のマイクロフィルムの【産業上の利用分野】欄などを参照のこと。)。とすれば、主たる効果や使用法につき、ダスティング・モードのみの記載のみに留まるとは言え、引用発明のパフを液体化粧料の塗布に使用すること、すなわち、塗布対象を液体とすることに格別な困難性は認められない。 なお、上記周知の例として挙げた特開平5-237436号公報のアプリケータで用いられる塗布具のショア硬度はA30〜D80と示されているところ、本件明細書の【0013】欄にステム部の硬度として例示されている35〜90ショアAと重複しているところから見て、素材の撓み易さの度合いの観点からも塗布対象の変更はなんら不自然ではないと判断される。 (相違点2について) 「ステム部の可撓性」に関して、本件明細書では、段落【0011】にて「「塗布部材と同様の撓みやすさ」という表現によって、製品を表面に塗布するとき、例えばラッカーを爪に塗布するとき、塗布部材とステム部の可撓性部分が、実質的に一定の曲率の曲線、特に円弧を形成するような撓みやすさが意味される。ステム部のこの撓みやすさは、特に、ステム部を曲げるのにかけられる力Fが、0.3f≦F≦3f(fは塗布部材を曲げるのに必要な力)の範囲内になるように、選択される。好ましくは、ステム部の撓みやすさは、多くても塗布部材の撓みやすさに等しいように選択される。」と定義され、このように可撓性を定めることにより、段落【0008】に「本出願人は、アプリケータのステム部の撓みやすさを変えることによって、爪の塗布層に筋を形成することなく、剛性のステム部を持つアプリケータを用いる場合よりも、さらにより均一なラッカー層を爪上に得ることができることを知見した。この場合、アプリケータは、毛管作用により製品を爪の表面上を引っ張っていくことを知見した。従って、塗布部材は、ひっかきを生じたり筋を形成することなく、塗布されたラッカー層上を”浮かんで”移動する。」といった動きを実現するものと理解できる。この現象を生じさせるためにステム部を非常に撓みやすくしたものが本願発明であると考えられるが、その撓み加減を得るために求められるステム部乃至塗布部材の想定される材質としては、段落【0013】では「可撓性のステム部はエラストマー材料で形成される。・・・(中略)・・・35から90ショアA・・・硬度を有している。」といった記載や、段落【0015】では「この第2の実施例の変形例では、ステム部の少なくとも一部位が接触もしくは非接触巻回部によって形成された渦巻バネからなる。」といった記載、また段落【0016】では「第3の実施例では、ステム部は、硬度が90ショアーAから40ショアーD、好ましくは90から95ショアーAの範囲から選ばれた、高密度ポリエチレンもしくは低密度ポリエチレン(HDPEもしくはLDPE)等の比較的硬い材料により形成されている。」といった記載があり、想定されるステム部の形状として渦巻バネもあり得ること、硬度としては35から90ショアA、それに加えてもっと硬い90ショアAから40ショアDもあり得、ステム部と塗布部材との撓みやすさが同じとの条件下では塗布部材にも該硬度があてはまること、材質の性質としてゴム弾性を有するエラストマー材料もあり得ること、以上3点が認識される。 とすれば、引用発明の「コネクター・メンバー3」にしても、その形状はバネであり、また、上記摘記事項イ)、ロ)にあるように、振動しかつ復元力を有する点でゴム弾性を有するエラストマーと性質上通じるといえ、更に前記相違点1にかかる判断で示したように、化粧料塗布部材として選ばれる材料の硬度はショアー硬度がA30〜D80が一般的であってなおかつ本願発明で示されている数値範囲内であること等を総括すれば、本願発明の「ステム部」に求められる物性とその撓み易さの点において顕著な差があるとは認めがたい。また、この「コネクター・メンバー3」に合わせて選定される塗布部材自体が通常有する硬度にしても、コネクター・メンバー3に求められる、振動しかつ復元力を有する性質と同じ程度の撓み易さと言えるショアー硬度部材が含まれ得ることは、前述のとおり明らかである。 よって、上記相違点については、引用発明のバネ仕様のコネクター・メンバー、及び周知且つ慣用の塗布部材、各々の構造が本質的に内在している事項といえるから、引用発明の実施に際しての通常の材料選定によって容易に達成可能な事項と言える。 なお、請求人は上記判断に対し、平成16年11月15日付け意見書にて、引用例のスポンジがコネクター・メンバー3より堅い(意見書第4頁「何故なら、・・・(中略)・・・ある程度の硬さ(剛性)がなくてはなりません。もしパフ本体1がステム部と同程度に撓むものであったならばパッティング操作はほとんどできません。」参照)旨主張しているが、かかる主張は上記引用例摘記事項イ)のパフのメイン・ボディ1に関し、「柔らかく」としている記載事項と整合しない点で論理性を欠いた主張である。加えて、ダスティング・モードで使用されるパフは、総じて非常に柔らかい部類に属する傾向にあるという一般常識に照らし合わせてみると、パフが硬い素材であるという請求人の主張は常識に反するものと言え、直ちに採用することができない。 更に請求人は同意見書において、「塗布部材が”浮かんで”移動する」動作態様に基づく効果の違いを主張しているが、かかる”浮かんで”移動する現象は、アプリケータの撓み易さも要因の一つと考えられるものの、塗布される液体化粧料の粘度や密度も浮かぶか否かを大きく左右する要因となると考えられるため、単に撓み易さを特定した本願発明のものは、必ずしも浮かんで移動するための必須の要件を備えたものとは認定できず、上記判断を左右するものではない。 【4】むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-01-11 |
結審通知日 | 2005-01-18 |
審決日 | 2005-01-31 |
出願番号 | 特願平7-169977 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A45D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 扇野 博明、阿部 寛、松縄 正登、大河原 裕 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 一色 貞好 |
発明の名称 | 液状製品塗布用アプリケータ及び該アプリケータを備えたメークアップアセンブリ |
代理人 | 志賀 正武 |