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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1118965
審判番号 不服2002-24501  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-19 
確定日 2005-06-23 
事件の表示 平成11年特許願第344467号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 2日出願公開、特開2000-210455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年1月26日に出願した特願平11-17400号の一部を平成11年12月3日に新たな特許出願としたものであって、平成14年8月5日付で拒絶理由通知がなされ、同年10月18日付で手続補正がなされ、同年11月14日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年1月16日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年1月16日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年1月16日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「制御対象の遊技動作を制御するための遊技プログラムを記憶する記憶手段を備え、前記遊技プログラムに従って制御対象の遊技動作を制御するようにした遊技機において、複数個の制御対象毎に制御基板を設け、該各制御基板の内、主制御基板とそれ以外の制御基板とにおいて、それらの各記憶手段に記憶された前記遊技プログラムは、ブランチ命令により個別処理の順序を命令するためのメイン処理モジュールと、このメイン処理モジュールでの命令により個別の処理を行うサブモジュールとで構成され、該サブモジュールの内、当該機種に固有の固有モジュールが遊技プログラムの後方に配置されていることを特徴とする遊技機。」
と補正された。

上記補正は、平成14年10月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「メイン処理モジュール」を「ブランチ命令により個別処理の順序を命令するためのメイン処理モジュール」と限定し、同じく「サブモジュール」を「このメイン処理モジュールでの命令により個別の処理を行うサブモジュール」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された、特願平9-322075号(特開平11-137811号)の願書に最初に添付された明細書または図面(以下、先願明細書という。)には、
「遊技機の遊技内容を機能毎に分けた複数のプログラムモジュールを備え、 該プログラムモジュールを、前記遊技機の機種に対して共通の共通プログラムモジュールと、前記遊技機の特定の機種に特有の非共通プログラムモジュールとに分離し、 前記共通プログラムモジュールを前記非共通プログラムモジュールより前にアドレス化して構成した遊技プログラム、を記録した・・・遊技機用記録媒体。」(特許請求の範囲、【請求項1】)、
「遊技プログラムが同一でもデータテーブルが異なることにより異なるプログラムモジュールとして機能するときには、その遊技機の特定の機種に特有の非共通データテーブルを遊技機の機種に対して共通の共通データテーブルのアドレスの後方に位置させた構造を有するデータを記録した・・・遊技機用記録媒体。」(特許請求の範囲、【請求項2】)、
「遊技機の遊技内容を機能毎に分けた複数のプログラムモジュールを、前記遊技機の機種に対して共通の共通プログラムモジュールと、前記遊技機の特定の機種に特有の非共通プログラムモジュールとに分離し、前記共通プログラムモジュールを前記非共通プログラムモジュールより前にアドレス化して記憶した第一の記憶手段と、 遊技機の特定の機種に特有のデータを含んだデータテーブルを備えた第二の記憶手段と、を備えた遊技機。」(特許請求の範囲、【請求項3】)、
「本発明は、遊技プログラムを記憶させた遊技機用記録媒体及び遊技機に関するものである。」(段落【0001】)、
「従来の弾球遊技機は、制御プログラムのデータを遊技状態に対応した機能をモジュール化し、コマンド化する。・・・独自にプログラムモジュール化を行っていた。」(段落【0002】)、
「機種の変更に要する遊技プログラムの工数の低減、・・・を課題とする。」(段落【0004】)、
「1つの機種の遊技プログラムを他の機種の遊技プログラムに変更するとき、非共通プログラムモジュールを変更、追加又は削除するだけで良いし、また、共通プログラムモジュールのアドレスは変更する必要がないか、或いは、アドレスの軽微の変更に止まるのである。」(段落【0005】)、
「アドレス化は、遊技プログラムのアドレスを設定することをいう。共通プログラムモジュールをアドレス化した後に、非共通プログラムモジュールをアドレス化することが特徴である。アドレスには間接アドレス、直接アドレスいずれでも良い。・・・、プログラムリストにおいて、非共通モジュールのプログラムの文番号(或いは行番号)が後にくる(通常は文番号が大きくなる)ように設定する。即ち、夫々の遊技プログラムのソースプログラムをコーディングする際に、非共通プログラムモジュールを共通プログラムモジュールの後に位置させることである。」(段落【0006】)、
「共通プログラムモジュールとしては、例えば第1種パチンコ機の場合、初期設定処理、図柄変動処理、時短処理、大当り判定処理、大当り処理に関するプログラムモジュールが挙げられる。」(段落【0007】)、
「非共通プログラムモジュールとしては、弾球遊技機のCR機に特有のCR機プログラムモジュールが挙げられる。・・・。なお、非共通プログラムモジュールを高確率変動処理、高確率判定処理の単独構成としても良いし、他のプログラムモジュールと組合せても良く、様々な改変を施すことができる。」(段落【0008】)、
「記録媒体としては、代表的には、ROMが挙げられるが、その他、RAM、・・・CD-ROM等が挙げられ、また、主記憶媒体、補助記憶媒体いずれもでも良い。」(段落【0009】)、
「図3に示す遊技盤24に取り付けられている各種基板について・・・。・・・普通図柄表示装置基板59、・・・表示枠左上ランプ基板61、・・・表示枠右上ランプ基板63、・・・表示枠左LED基板65、・・・表示枠右LED基板67・・・、・・・左下入賞口LED基板69、・・・右下入賞口LED基板71・・・。・・・左入賞口LED基板73・・・。・・・右入賞口LED基板75が設けられている。」(段落【0016】)、
「パチンコ機1の裏側構造を図5を参照して・・・。・・・特別図柄表示装置33を格納した裏蓋110、又、裏蓋110の下側に主基板111が各々設けられている。・・・。・・・発射装置制御基板113、・・・、発射制御集合中継基板116・・・。・・・枠状態表示器118を備えた枠制御基板119が設けられている。・・・、電源ターミナル基板122、・・・端子基板123が設けられている。」(段落【0018】)、
「図6に示す本実施形態のパチンコ機1の・・・電子制御装置130は、主基板111に設けられた主制御部140、枠制御基板119に設けられた枠制御部150、主制御部140と一方向通信を行う特別図柄制御部160を含み構成されている。主制御部140は、・・・、CPU141、RAM142、ROM143、入出力インタフェース144、及びカウンタ146が・・・相互に接続されたものであり、パチンコ機1の遊技を司っているものである。・・・。枠制御部150は、・・・論理演算回路を含み構成されたワンチップマイコン(詳細は図示略)を有し、その入力端子が入出力インタフェース144と接続するとともに、その出力端子は・・・、各種ランプ基板61,63、・・・、普通図柄表示装置基板59、・・・、発射装置制御基板113と接続している。更に、主制御部140の入出力インタフェース144は電源ターミナル基板122及び特別図柄制御部160とも接続している。なお、パチンコ機1の各部に電源を供給する電源回路等の構成は周知であるから、図示及び説明は割愛する。」(段落【0019】)、
「主制御部140は、第一種始動口(普通電動役物)入賞検知スイッチ83、・・・等の検知結果に基づいて、当否判定などの遊技状態を判断し、特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示を特別図柄制御部160へ逐一送信する。」(段落【0020】)、
「図7に示す・・・。特別図柄制御部160はCPU161、RAM162、ROM163、入出力ポート164、VDP(Video Display Processor)165、・・・バス166、・・・D/A変換器167、・・・液晶表示盤用出力ポート168から構成されている。」(段落【0022】)、
「主制御部140のアドレスマップは、図8に示す通り、作業領域(0000H〜00A4H)、・・・、スタック領域(00EDH〜00FFH)、・・・、内蔵レジスタ領域(1000H〜103FH)、・・・、プログラム管理領域(E000H〜E0FFH)、機種ID領域(E100H〜E15FH)、・・・、データ領域(E200H〜EAF5H)、・・・、制御領域(EE00H〜F7DDH)、・・・から構成されている。・・・、データ領域及び制御領域等としてはROM143、・・・が対応する。・・・制御領域には、主に遊技を司る遊技プログラムが格納されている。」(段落【0023】)、
「図10(a)に示す遊技プログラムのソースプログラムリストの構造の特徴は、メインプログラムのメインモジュールから複数のモジュールを呼び出すことができるようになっており、また、それら複数のモジュールが共通モジュールと非共通モジュールとに分離されており、さらに、その共通モジュールの後に非共通モジュールがアドレス化されて配置されていることである。すなわち、共通モジュールのソースプログラムの文番号(或いは行番号)よりも非共通モジュールのプログラムの文番号の方が後方にくる(番号が大きくなる)ように設定してある。オブジェクトプログラムリストも同様となる。・・・、本実施形態では、遊技プログラムにおいて非共通モジュールの位置が共通モジュールよりも後にくることから、CR機から現金機へのプログラムの変更は、共通モジュールのアドレス変更が無く、非共通モジュールの変更等、わずかな改訂だけで済み、プログラムの変更作業が簡単になる。」(段落【0025】)、
「各ステップを説明する。・・・。ステップS7では他の制御部(枠制御部150、特別図柄制御部160等)への情報出力に必要なデータの作成が行われる。・・・。ステップS15及び16では、特別図柄を表示するためのデータ処理が行われ、特別図柄制御部160へ表示すべき特別図柄や背景などを指示するコマンドデータを逐一送信する。すなわち、特別図柄処理番号メモリを使用してプログラムモジュール(図示略)の呼び出しが行われ、各プログラムモジュールが遊技状態に応じて適宜選択されて実行される。・・・。ステップS22では、特別図柄表示装置33(LCD)に表示される特別図柄管理のためのコマンドの入出力が行われる。」(段落【0031】)、
「パチンコ機1に共通な共通モジュールの例を示す特別図柄駆動モジュールを図12を参照して説明する。この特別図柄駆動モジュールは、図11のステップS15の途中で呼び出されて実行されるものであり、ステップS15の処理で利用される複数のモジュールのうちの1つである。処理が開始されると、シフトカウンタを更新する(ステップS50)。・・・。ステップS52の終了後にリターンとなる。」(段落【0032】)、
「パチンコ機1に特有な非共通モジュールの例を示すCR機プログラムモジュールを図13(a)を参照して説明する。このCR機プログラムモジュールは、図11のステップS15の先頭で呼び出されて実行されるものであり、先ず大当り確率が高確率中かどうか判断し(ステップS100)、肯定判断なら高確率時データ、即ち図9の通常時の普通図柄変動時間テーブル、通常時の普通電動役物開放時間テーブル、及び高確率時の特別図柄変動テーブルのデータを読み取り(ステップS101)、大当り判定処理(ステップS103)を行い、リターンとなる。一方、ステップS100にて否定判断なら通常時データ、即ち図9の通常時の特別図柄変動時間テーブル、通常時の普通図柄変動時間テーブル、及び通常時の普通電動役物開放時間テーブルのデータを読み取り(ステップS102)、大当り判定処理(ステップS104)を行い、リターンとなる。大当り判定処理は周知であるからここでは割愛する。本モジュールにおける大当り判定処理(ステップS103)と、大当り判定処理(ステップS104)とでは、概ね処理は共通しているが、大当り確率が異なること・・・から、それに対応して、処理の一部が異なっており、詳細は周知であるから割愛する。」(段落【0033】)、
「パチンコ機1はCR機であるが、・・・現金機(図示略)に変更することができる。ここで、現金機(図示略)は、機械的構成はパチンコ機1と同様である・・・、また、ハードウェアも同様であるが、プログラムの非共通プログラムモジュールを時短機能を備えた現金機プログラムモジュールに差し替えたものに変更したものである。そこで、共通構成は割愛し、現金機(図示略)に特有の現金機プログラムモジュールを図13(b)を参照して説明する。同モジュールでは、先ず時短中かどうか判断し(ステップS200)、肯定判断なら時短時データ、即ち図9の通常時の特別図柄変動時間テーブル及び時短時の普通電動役物開放時間テーブルを読み取り(ステップS201)、否定判断なら通常時データ、即ち図9の通常時の特別図柄変動時間テーブル、通常時の普通図柄変動時間テーブル、及び通常時の普通電動役物開放時間テーブルを読み取り(ステップS202)、そして、ステップS201又はS202の後、大当り判定処理(ステップS203)を行い、リターンとなる。大当り判定処理は周知であるからここでは割愛する。こうして、本モジュールによれば、普通図柄表示装置27に表示される普通図柄の抽選時間が短縮され(いわゆる時短と呼ばれるもの)、第一種始動口(普通電動役物)41の開放時間が延長されるようにすることもでき、玉の持ちが良くなる。」(段落【0034】)、
「現金機(図示略)の遊技プログラムの処理の流れは、図11に示すCR機の遊技プログラムの処理全般を示すフローチャートと同様であり、モジュールの一例の構造を図14ないし図21を参照して説明する。この場合、前述のCR機の場合よりもモジュールの構造面を詳細に具体化して図示してある。なお、それら図面において、ブロックの中のアルファベットは処理の略語を示すものであり、また、ブロックの右肩に記載されている例えば、1-2などの記号はモジュールのグループ及び枝番号を示すものである。図14及び図15はモジュールの結合関係を階層構造(ツリー図)で示すもので、ここにおいて、図14の上段の4つのモジュールは、親モジュール、即ちレベル1であり、それらに従属するモジュールは、子モジュール、即ちレベル2であり、さらに、子モジュールの下にある数字だけのブロックはそれに従属する孫モジュール、即ちレベル3を示すものである。孫モジュールに従属するモジュールもあるが図示は割愛してある。また、図17ないし図21は、レベル2又はレベル3のモジュールに選択されるサブモジュールの一覧であり、モジュールのブロックの上にある番号はモジュールの通し識別番号であり、モジュールのブロックの下にある番号はそれに従属するモジュールの識別番号を示すものである。なお、図13(b)の非共通モジュールである現金機判断処理は、上述の図15に示す普通図柄管理処理(NOMMNG)に呼び出されて実行されるようになっている。」(段落【0036】)、
「図14及び図15に示すメインモジュールは、電源オンに起因して、プログラムスタート(START)、初期設定(VIRINIT)、メイン処理(MAINTOP)、リセット待ちループ処理(ENDLOP)の各モジュールが生成されるように構成されている。このうちのメイン処理は、OC11設定(OC1SET)、出力処理(POUT)、等速乱数更新処理(RNDMAK)、スイッチ読込み処理(SWIN)、入賞監視処理(BALCNT)、特定領域チェック処理(TRYCHK)、カウントチェック処理(CNTCHK)、賞球制御処理(PAYMNG)、エラー監視処理(ERRMNG)、LCD制御コマンド設定処理(CODSET)、タイマ減算処理(TMRMNG)、回転盤モータ制御処理(MOTOR)、大入賞口制御処理(OPNCHK)、普通電動役物制御処理(ACTMNG)、普通図柄管理処理(NOMMNG)、特別図柄駆動処理(MAKMNG)、特別図柄管理処理(TOKMNG)のモジュールから構成されている。」(段落【0037】)、
「割込み処理は、図16に示す通り、割込み発生に起因して、タイマ出力コンペア1割込み処理(TOC11SR)が生成されるように構成されている。このタイマ出力コンペア1割込み処理(TOC11SR)は、LCDコマンド出力処理(LCDOUT)、ダイナミックLED出力処理(DYNOUT)、効果音出力処理(MUSOUT)から構成されている。」(段落【0038】)
「サブモジュールを列挙すると、図17ないし図21に示す通り、非等速乱数更新処理(RNDMAK2)、カウンタ更新処理(CNTUP:汎用モジュール)、効果音選択処理(MUSSET)、効果音準備処理(MUSRDY)、出力作成処理(OUTMAK)、ランプ出力作成処理(LMPMAK)、遊技効果ランプ出力作成処理(WAKMAK)、LED出力作成処理(LEDMAK)、情報セット処理(PP1MAK)、ランプ・LEDデータ作成処理(BLTDRV:汎用モジュール)、外れ特別図柄取得処理(DIGSET)、第1種始動口入賞判定処理(TGOCHK)、大入賞口開放処理(TOPN)、大入賞口閉口処理(TCLS)、継続チェック処理(TNXT)、大当り終了処理(TENO)、変動時間短縮判定処理(TRTN)、当否判定処理(MCHK)、ブロックコピー処理(BLKCPY:汎用モジュール)、高速変動時間設定処理(MTMR)、左図柄書換処理(MVA1)、図柄書換処理(MVA10:汎用モジュール)、左図柄減速処理(MVA1S)、図柄減速処理(MVA1SO:汎用モジュール)、右図柄書換処理(MVB1)、左右同時減速処理(MVAB)、左図柄停止処理(MVA2)、右図柄停止処理(MVB2)、リーチ判定処理(MRJG)、中図柄書換処理(MVC1)、中図柄減速処理(MVC1S)、中図柄停止処理(MVC2)、特別図柄判定処理(MJDG)、リーチ選択処理(RSEL)、リーチ振分け処理(RPRA)、ショートリーチ変動処理(RST1)、中図柄停止移行処理(RNM1)、リーチ変動速切換処理(RGEN)、リーチ中図柄比較処理(RCCHK:汎用モジュール)、当り図柄通過処理(RTHR)、データセット処理(DTSET:汎用モジュール)、普通図柄作動ゲート通過判定処理(GOMNG)、普通図柄始動処理(NRM000)、普通図柄データセット処理(NRM100)、2バイト減算処理(DBLDEC:汎用モジュール)、タイトル画面・エラー画面処理(MDRCO)、図柄変動画面処理(MDRC1)、当りラインブリンク設定処理(MDRSB2)、リーチライン設定処理(MDRSB1)、大当り画面処理(MDRC2)、コマンドバケットパリティ付加(MKBCC)がある。ここで、汎用モジュールは、メインモジュールに共通的に使用されるもの、つまり2回以上使用されるものをいう。」(段落【0039】)、
「モジュール構造の一例であるが、他の形態のモジュール構造を図22を参照して説明する。このモジュールの非共通モジュールの数は2個以上設けたことが特徴である。メインモジュールはレベル1、レベル2、レベル3の3つの階層構造となっており、レベルが3つ存在する。すなわち、メインモジュールの下に階層構造をなすようにレベル2又はレベル3に共通モジュールと非共通モジュールが配置されている。メインモジュールのモジュールXでは、処理の途中で、共通モジュールBをコールして実行し、共通モジュールDを呼び出して実行し、共通モジュールHを呼び出して実行する。レベル2の共通モジュールAでは、共通モジュールEと、非共通モジュールを呼び出して実行する。共通モジュールDでは、共通モジュールR,S及び非共通モジュールを呼び出して実行する。共通モジュールHでは、共通モジュールV,W,X,Yを呼び出して実行する。なお、上記の階層構造に限定されず様々に構成することができる。」(段落【0040】)、
「本実施形態によれば、機種変更の際、非共通モジュールの手直しにより、他の機種の共通モジュールのアドレス変更がなく、ほとんどそのまま流用できるから、遊技プログラムの非共通プログラムモジュールを書き換えるだけでよく、遊技機の機種変更に際しての遊技プログラムの工数を著しく低減することができる。その際、非共通モジュールを全部手直ししなくとも、データ領域の一部の変更で済み、より一層工数が削減される効果がある。」(段落【0042】)、
「本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において本発明の構成を適宜改変できることは当然であり、このような改変も、本発明の技術的範囲に属するものである。」(段落【0043】)、
との記載が認められる。また、特別図柄制御部160については、CPU161、RAM162、ROM163等の電子部品から構成されているがどこにどのような形で取り付けられているのか明らかでない。しかし、特別図柄制御部を基板に設けることは周知であり(例えば、特開平8-322993号公報、特開平10-249028号公報参照)、特別図柄制御部160は、制御基板(以下、先願明細書の混同を避けるため「特別図柄制御基板」と称す。)に設けられていると認められる。また、枠制御基板119に設けた枠制御部150の論理演算回路を含み構成されたワンチップマイコン(詳細は図示略)には、ROM等の構成要素を内蔵していることが例をあげるまでもなく周知である。
これらの記載によれば、先願明細書には、

「枠状態表示器118および特別図柄表示装置33等の遊技態様を制御するための遊技プログラムを記憶するROM143を備え、前記遊技プログラムに従って枠状態表示器118および特別図柄表示装置33等の遊技態様を制御するようにした遊技機において、遊技機の遊技を司っている主制御部140を有する主基板111、枠状態表示器118を備えた枠制御基板119および特別図柄表示装置33を制御する特別図柄制御部160を有する特別図柄制御基板を設け、主基板111、枠制御基板119および特別図柄制御基板の内、主基板111と枠制御基板119および特別図柄制御基板とにおいて、それらのROM143、ワンチップマイコンに内蔵するROMおよびROM163の内、ROM143に記憶された前記遊技プログラムは、呼び出し(コール)により個別処理の順序を命令するためのレベル1のメインモジュールと、このレベル1のメインモジュールでの呼び出しにより個別の処理を行う共通モジュールと非共通モジュールとからなるレベル2又はレベル3のメインモジュールとで構成され、該レベル2又はレベル3のメインモジュールの内、当該遊技機の特定の機種に特有の非共通プログラムモジュールが遊技プログラムの後方に配置されている遊技機。」
との発明(以下「先願発明」という。)が開示されていると認めることができる。
(3)対比
そこで、本願補正発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「枠状態表示器118および特別図柄表示装置33等」、「遊技態様」、「ROM143」、「遊技機の遊技を司っている主制御部140を有する主基板111、枠状態表示器118を備えた枠制御基板119および特別図柄表示装置33を制御する特別図柄制御部160を有する特別図柄制御基板を設け」、「主基板111、枠制御基板119および特別図柄制御基板」、「主基板111」、「枠制御基板119および特別図柄制御基板」、「ROM143、ワンチップマイコンに内蔵するROMおよびROM163」、「呼び出し(コール)」、「レベル1のメインモジュール」、「レベル2又はレベル3のメインモジュール」および「当該遊技機の特定の機種に特有の非共通プログラムモジュール」は、本願補正発明の「制御対象」、「遊技動作」、「記憶手段」、「複数個の制御対象毎に制御基板を設け」、「各制御基板」、「主制御基板」、「それ以外の制御基板」、「各記憶手段」、「ブランチ命令、命令」、「メイン処理モジュール」、「サブモジュール」および「当該機種に固有の固有モジュール」に相当し、両者は、

「制御対象の遊技動作を制御するための遊技プログラムを記憶する記憶手段を備え、前記遊技プログラムに従って制御対象の遊技動作を制御するようにした遊技機において、複数個の制御対象毎に制御基板を設け、該各制御基板の内、主制御基板の記憶手段に記憶された前記遊技プログラムは、ブランチ命令により個別処理の順序を命令するためのメイン処理モジュールと、このメイン処理モジュールでの命令により個別の処理を行うサブモジュールとで構成され、該サブモジュールの内、当該機種に固有の固有モジュールが遊技プログラムの後方に配置されている遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:本願補正発明では、主制御基板とそれ以外の制御基板の各記憶手段に記憶された遊技プログラムが、各記憶手段とも、ブランチ命令により個別処理の順序を命令するためのメイン処理モジュールと、このメイン処理モジュールでの命令により個別の処理を行うサブモジュールとで構成され、該サブモジュールの内、当該機種に固有の固有モジュールが遊技プログラムの後方に配置されているのに対し、先願発明では、主基板111のROM143が、本願補正発明と同じような構造になっているものの、主基板以外の枠制御基板119のワンチップマイコンに内蔵するROMと特別図柄制御基板のROM163については、記憶された遊技プログラムがどのようなモジュール構造になっているのか明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討すると、先願発明では、主基板(主制御基板)に設けられた記憶手段であるROM143に記憶された遊技プログラムが、呼び出し(ブランチ命令)により個別処理の順序を命令するためのレベル1のメインモジュール(メイン処理モジュール)と、このレベル1のメインモジュールでの呼び出し(命令)により個別の処理を行うレベル2又はレベル3のメインモジュール(サブモジュール)とで構成され、該レベル2又はレベル3のサブモジュールの内、当該遊技機の特定の機種に特有の非共通プログラムモジュール(当該機種に固有の固有モジュール)が遊技プログラムの後方に配置されているものであり{()内は本願補正発明の技術的事項の表現。}、かくの如き遊技プログラムの配置構造を前記主基板と同様の機能を備える、それ以外の制御基板に設けられた記憶手段であるワンチップマイコンに内蔵するROMやROM163に適用して同じような構造とすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計事項にすぎない。
したがって、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一と認められるものであり、しかも本件出願の発明者および出願人が先願のそれらと同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年1月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年10月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「制御対象の遊技動作を制御するための遊技プログラムを記憶する記憶手段を備え、前記遊技プログラムに従って制御対象の遊技動作を制御するようにした遊技機において、複数個の制御対象毎に制御基板を設け、該各制御基板の内、主制御基板とそれ以外の制御基板とにおいて、それらの各記憶手段に記憶された前記遊技プログラムは、メイン処理モジュールとサブモジュールとで構成され、該サブモジュールの内、当該機種に固有の固有モジュールが遊技プログラムの後方に配置されていることを特徴とする遊技機。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項、および該記載から認定される先願発明は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、先願発明と実質的に同一であり、本願発明も、同様の理由により、先願発明と実質的に同一と認められるものであり、しかも本件出願の発明者および出願人が先願のそれらと同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一と認められ、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-19 
結審通知日 2005-04-26 
審決日 2005-05-11 
出願番号 特願平11-344467
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 林 晴男
渡戸 正義
発明の名称 遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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