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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1118969
審判番号 不服2003-325  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-06 
確定日 2005-06-23 
事件の表示 平成11年特許願第171823号「音声メッセージ送出機能付き携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年1月12日出願公開、特開2001-7898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年6月18日の出願であって、平成14年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年2月5日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成15年2月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「操作者が操作入力を行う為の操作手段と、
前記操作手段から入力されたメッセージデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶されたメッセージデータを読み出し前記メッセージデータの音声信号に変換するデータ変換手段と、
前記変換後の音声信号を送出する送出手段とを有し、
通話中、前記操作手段で予め定められた所定の操作がなされた際に、前記データ変換手段が前記記憶手段中の所定のメッセージデータを読み出して音声信号に変換し、前記送出手段が前記変換した音声信号を送出することを特徴とする移動体無線通信端末。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「移動体無線通信端末」の構成を、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、「操作者が操作入力を行う為の操作手段と、前記操作手段から入力されたメッセージデータを記憶する記憶手段と、前記記憶されたメッセージデータを読み出し前記メッセージデータの音声信号に変換するデータ変換手段と、前記変換後の音声信号を送出する送出手段とを有し、通話中、前記操作手段で予め定められた所定の操作がなされた際に、前記データ変換手段が前記記憶手段中の所定のメッセージデータを読み出して音声信号に変換し、前記送出手段が前記変換した音声信号を送出する」構成に減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
次に、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。
[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.原審の拒絶理由に引用された特開平9-325795号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「手操作でデータを入力する手操作入力手段と、
この手操作入力手段により入力されたデータに応じた音声信号を送信する音声送信手段とを具備したことを特徴とする通信装置。」(特許請求の範囲、請求項1)
ロ.「【発明の属する技術分野】
本発明は、PHS(Personal Handyphone System)に代表される携帯型電話機等の通信装置に関する。」(2頁1欄、段落1)
ハ.「したがって、前記構成の携帯型電話機によれば、キー入力部12の「モード」キー12bの操作により通話モードがペンモードに設定されている状態で、まず、着信があるとバイブレータ20が駆動されてユーザに着信が無音で報知され、この後、「通話」キー12dを操作して回線接続し通話を行なう際には、メッセージメモリ14に予め記憶されている複数の応答メッセージが読み出されてタッチパネル表示部13にリスト表示され、ユーザは、受話用スピーカ19から聞こえる相手の会話に対応した応答メッセージを選択しペンPによりタッチして指定することで、該タッチ指定された応答メッセージが再生されて送信されるので、特に、この電話機本体10を劇場や映画館等の静粛を要する場所で使用する場合には、予め通話モードをペンモードに設定しておくことで、声を出して話さなくても、通話相手との会話を行なうことができる。」(4頁5〜6欄、段落31)
ニ.「【0033】また、前記実施形態では、メッセージメモリ14に予め記憶されている各種のメッセージデータを選択的にして再生送信する構成としたが、予めユーザ自身によりマイク18から吹き込んだ任意の複数の応答メッセージを音声RAMに記憶させ、このユーザ自身の声による応答メッセージを選択的に再生して送信する構成としてもよい。
【0034】さらに、タッチパネル表示部13にてペンPによりタッチ入力した手書きの文字データを認識し、該文字認識された文字列データを応答メッセージとして音声再生し送信する構成としてもよい。」(4頁6欄、段落33〜34)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「表示部13」と「ペンP」はユーザ(即ち、操作者)が応答メッセージを選択し送信するための操作手段(即ち、「操作者が操作入力を行う為の操作手段」)を構成しており、上記「メッセージメモリ14」は「複数の応答メッセージを記憶する記憶手段」であり、当該「複数の応答メッセージ」は、「予め記憶されている各種のメッセージデータ」ばかりでなく、ユーザ自身により入力された「音声」または「文字列データ」でもよいものであり、当該「文字列データ」は「ペンPによりタッチ入力した(即ち、操作手段から入力された)」ものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
「操作者が操作入力を行う為の操作手段と、
前記操作手段から入力された複数のメッセージデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶された複数のメッセージデータを読み出し、表示し、相手の会話に対応した応答メッセージを選択し、応答メッセージとして音声再生し送信する構成を備えた携帯型電話機等の通信装置。」

B.また、原査定に引用された特開平11-8711号公報(以下、「周知例」という。)には、以下の事項が記載されている。
イ.「【0010】
【発明の実施の形態】
(請求項1の発明)図1は、本発明の一実施例を説明するための要部概略ブロック図で、図中、11はキー入力部、12は音声合成部、13は電話機能部で、キー入力部11は、音声合成で発声させたい文字情報を入力するものであり、パソコンなどで通常利用されているキーボードを小型化したものやプッシュ式の電話に標準で付いている10(テン)キーなどを用いれば良い。音声合成部12は、キー入力部11で入力された文字情報を規則音声合成などの技術を用いて音声信号に変換するものであり、例えば、特開平5-113794号公報等に記載の音声合成方式などを用いれば良い。
【0011】電話機能部13は、通常の電話装置が有する機能を持つものであり、音声の入出力を行うマイク,スピーカー,電話の発呼,受信が行える機能,電話回線へ音声などの情報を送受信する機能などが含まれており、音声合成部12で変換された音声信号を電話回線へと送信する。なお、ここでは、便宜上、電話回線と記したが、無線電話機を利用する場合には、回線ではなく、無線での伝送路となる。
【0012】次に、請求項1に記載の発明を実際に利用する際の具体例で説明する。例えば、電車の中、映画館の中など声を発声することができない状況において、電話がかかってきた際に、キー入力部11で、例えば、「今、電車の中なので話すことができません。用件だけ話してください。後で連絡します。」と入力することにより、音声合成部12でこの文字情報を音声信号に変換し、電話機能部13から、この音声信号が電話回線を通じて相手の電話装置へと伝送される。」(2頁2欄、段落10〜3頁3欄、段落12)
ロ.「【0020】(請求項5の発明)図5は、請求項5に記載の発明の一実施例を説明するための要部概略ブロック図で、キー入力部51、音声合成部52、電話機能部53には、請求項1に記載の発明と同じものを用いれば良い。短縮キー登録部56では、良く使われる文章の文字情報を記憶しておき、その文字情報と短縮キーとの対応を登録しておく。例えば、短縮キー1は、「今、話すことができません。用件だけ話してください。」、短縮キー2は、「今、電話できません。後でかけ直してください。」などを登録しておく。キー入力部51では、短縮キーが入力された場合に、短縮キー登録部56に登録されている情報から、その短縮キーに対応する文字情報を取得し、音声合成部52で、その文字情報を音声信号に変換し、電話機能部53からその音声信号を送信する。
【0021】なお、本実施例では、短縮キー登録部56に各短縮キーに対応する文字情報を記憶していたが、文字情報ではなく、文字情報を音声信号に変換したデータをそのまま記憶しておき、音声合成を使うことなく、そのまま音声信号を送信するようにしても良い。
【0022】次に、請求項5に記載の発明を実際に利用する際の具体例で説明する。例えば、電車の中、映画館の中など声を発声することができない状況において、電話がかかってきた際に、キー入力部51で、短縮キー1を入力することにより、「今、話すことができません。用件だけ話してください。」という音声信号が電話機能部53から、この音声信号が電話回線を通じて相手の電話装置へと伝送される。」(2頁4欄、段落20〜4頁5欄、段落22)

例えば上記周知例に記載されているように、「取得した文字情報を音声信号に変換する音声合成部と、その音声信号を送信する電話機能部とを有し、電車の中、映画館の中など声を発声することができない状況において、電話がかかってきた際に、キー入力部で、短縮キーを入力することにより、短縮キーに対応する文字情報を取得し、音声合成部で、その文字情報を音声信号に変換し、電話機能部からその音声信号を送信することにより、この音声信号が電話回線を通じて相手の電話装置へと伝送される」構成は周知である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、補正後の発明の「前記記憶されたメッセージデータを読み出し前記メッセージデータの音声信号に変換するデータ変換手段と、前記変換後の音声信号を送出する送出手段とを有し、通話中、前記操作手段で予め定められた所定の操作がなされた際に、前記データ変換手段が前記記憶手段中の所定のメッセージデータを読み出して音声信号に変換し、前記送出手段が前記変換した音声信号を送出する」構成と引用発明の「前記記憶された複数のメッセージデータを読み出し、表示し、相手の会話に対応した応答メッセージを選択し、応答メッセージとして音声再生し送信する」構成はいずれも「メッセージ再生送出手段」の構成であるという点で一致している。
また、補正後の発明の「移動体無線通信端末」と引用発明の「携帯型電話機等の通信装置」との間に実質的な差異はない。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「操作者が操作入力を行う為の操作手段と、
前記操作手段から入力されたメッセージデータを記憶する記憶手段と、
メッセージ再生送出手段とを備えた移動体無線通信端末。」

(相違点)「メッセージ再生送出手段」に関し、補正後の発明は「前記記憶されたメッセージデータを読み出し前記メッセージデータの音声信号に変換するデータ変換手段と、前記変換後の音声信号を送出する送出手段とを有し、通話中、前記操作手段で予め定められた所定の操作がなされた際に、前記データ変換手段が前記記憶手段中の所定のメッセージデータを読み出して音声信号に変換し、前記送出手段が前記変換した音声信号を送出する」構成であるのに対し、引用発明は「前記記憶された複数のメッセージデータを読み出し、表示し、相手の会話に対応した応答メッセージを選択し、応答メッセージとして音声再生し送信する」構成である点。

そこで、上記相違点について検討するに、引用発明の「前記記憶された複数のメッセージデータを読み出し、表示し、相手の会話に対応した応答メッセージを選択し、応答メッセージとして音声再生し送信する」構成を実行するためには、例えば上記周知例に開示されているように、「取得した文字情報を音声信号に変換する音声合成部と、その音声信号を送信する電話機能部と」を有する必要があるところ、当該「音声合成部」と「電話機能部」はそれぞれいわゆる「データ変換手段」と「送出手段」を備えるものであり、また、引用発明の「相手の会話に対応した応答メッセージを選択し、応答メッセージとして音声再生し送信する」構成は、相手との会話中(即ち、通話中)に、例えば「受話用スピーカ19から聞こえる相手の会話に対応した応答メッセージを選択しペンPによりタッチして指定するすることで(即ち、操作手段で予め定められた所定の操作がなされた際に)」実行されるのであるから、前記引用発明の構成を補正後の発明のように「前記記憶されたメッセージデータを読み出し前記メッセージデータの音声信号に変換するデータ変換手段と、前記変換後の音声信号を送出する送出手段とを有し、通話中、前記操作手段で予め定められた所定の操作がなされた際に、前記データ変換手段が前記記憶手段中の所定のメッセージデータを読み出して音声信号に変換し、前記送出手段が前記変換した音声信号を送出する」構成とする程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年2月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「操作部から入力されたメッセージデータを記憶する手段と、
前記操作部で予め定められた所定の操作がなされた際に、前記記憶されたメッセージデータを読み出し前記メッセージデータの音声合成を行う手段と、
前記音声合成後の音声信号を送出する手段と、
を備えたことを特徴とする移動体無線通信端末。」

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明及び周知技術]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、上記補正に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る構成を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-25 
結審通知日 2005-04-26 
審決日 2005-05-10 
出願番号 特願平11-171823
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 実  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 浜野 友茂
野元 久道
発明の名称 音声メッセージ送出機能付き携帯電話機  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  
代理人 工藤 雅司  

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