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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1119141 |
審判番号 | 不服2003-10402 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2005-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-06 |
確定日 | 2005-06-29 |
事件の表示 | 特願2000-573732「クロモグリク酸ナトリウムを含有する外用液剤および目のアレルギー症状の治療または予防方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月30日国際公開、WO00/16771〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1999年(平成11年)9月22日(優先権主張 1998年(平成10年)9月24日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成15年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日に審判請求がなされるとともに、同年6月9日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年6月9日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年6月9日付け手続補正を却下する。 [理由] 上記補正は、補正前の請求項1の「クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、及び清涼化剤としてdl-カンフルとd-ボルネオールを含有する点眼液であって、メントールを含有しない点眼液。」を「クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、及びメントールを含有する点眼液。」に変更するものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮に該当せず、且つ請求項の削除、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のいずれにも該当しないことが明らかである。 したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本件審判の請求について (1)本願発明 平成15年6月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜2に係る発明は、平成14年10月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という)。 「クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、及び清涼化剤としてdl-カンフルとd-ボルネオールを含有する点眼液であって、メントールを含有しない点眼液。」 (2)引用刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前(優先日前)に頒布された刊行物である刊行物2〜4には、それぞれ次の事項が記載されている(摘示した各記載事項を以下、「記載イ」などという)。 <刊行物2>(国際公開第98/13040号パンフレット) (イ)「クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、及びメントールを含有することを特徴とする点眼剤。」 (請求の範囲第1項) (ロ)「メントールを主とする芳香剤が、点眼剤においてしばしば清涼化剤として配合されている。例えば、文献(Research Disclosure 31997、注:刊行物3)にはクロモグリク酸ナトリウム溶液に芳香剤を加えることにより患者のコンプライアンスがあがることが開示されている。」 (3頁1〜4行) (ハ)「本発明者らは、これまで清涼化剤として点眼剤にしばしば用いられてきたメントールが、クロモグリク酸ナトリウム点眼時に生ずる刺激性の不快な眼痛を軽減することができることを見いだした。」 (3頁15〜18行) (ニ)「メントールの清涼感および香りからもたらされる患者の爽快感及び点眼時の眼痛を軽減できる効果とあいまって、患者の点眼を習慣づける効果をもたらすことを見いだし、本発明を完成した。」 (4頁2〜4行) <刊行物3>(RESEARCH DISCLOSURE,(1990),31997,P.914) (ホ)刊行物3には、クロモグリク酸ナトリウム溶液に芳香剤を配合することにより、患者に対する治療効果と共に患者のコンプライアンスの改善が達成されることが記載され(左欄2〜4行)、また、使用し得る芳香剤にはメントール、ユーカリプトール、カンフル、及びサリチル酸メチルが含まれることが記載されている(同欄7〜8行)。 <刊行物4>(特開平9-132526号公報) (ヘ)「メントール類、カンフル類及びボルネオール類を含有してなる点眼剤において、(a)メントール、カンフル及びボルネオールの総量が0.01〜0.05重量%、(b)メントールに対するカンフル及びボルネオールの配合比が重量比としてそれぞれ0.5〜1.0であることを特徴とする点眼剤。」 (請求項1) (ト)「点眼剤には、差し心地を爽快にする等の目的のため、香料などの清涼化剤がしばしば配合される。この清涼化剤において汎用されるものとしては、メントール類、カンフル類、ボルネオール類、ユーカリ油、ゲラニオール、ウイキョウ油、ベルガモット油等が挙げられるが、単独では眼に対する刺激性を強めることなしに清涼感及び持続性を高めることは極めて困難であった。 例えばl-メントールを単独かつ高濃度で点眼液中に配合すると、清涼感は持続するが、熱感が生じたり、眼に刺激を生じたりすることがある。また、清涼感、冷感を向上する目的で香料を比較的高濃度で配合すると、特に点眼剤に通常配合する濃度(0.03重量%)以上では、(1)香料由来等の違和感を感じる、(2)眼に対する刺激や障害が起こり易いなどの実用上の不具合が生じることが多々ある。 本発明は上記事情に鑑みなされたもので、メントール類、カンフル類、ボルネオール類を組み合わせ配合することにより、冷感が強くしかも清涼感の持続性を高め、かつ眼に対する刺激性を極めて低減させた点眼剤を提供することを目的とする。」 (段落0002-0004、原文では(1)(2)は丸囲み数字で表記されている。) (チ)「第2の構成成分であるカンフル類は・・・dl-カンフル、d-カンフルなどを挙げることができる。」 (段落0008) (リ)「第3の構成成分であるボルネオール類は・・・d-ボルネオール、dl-ボルネオール、リュウノウなどを挙げることができる。」 (段落0009) (3)対比・判断 刊行物2の「点眼剤」は、背景技術における「溶媒」の記載(2頁20〜22行)及び実施例における「滅菌精製水」を加えた処方(6頁)からみて「点眼液」と解されるから、刊行物2には、「クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、及びメントールを含有する点眼液」の発明が記載されているといえる(記載イ)。 そして刊行物2のメントールは清涼化剤に該当するから(記載ロ、ハ、ニ)、本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 本願発明も刊行物2に記載された発明も、ともに「クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、及び清涼化剤を含有する点眼液」である点。 <相違点> 点眼液に配合する清涼化剤に関して、本願発明ではdl-カンフルとd-ボルネオールを含有し且つメントールを含有しないとしているのに対し、刊行物2に記載された発明ではメントールを含有するとしている点。 そこで、上記相違点について以下に検討する。 <相違点の検討>(清涼化剤について) 刊行物2に記載された発明において、メントールは、他の作用効果(眼痛の軽減)を併せ奏するものの、清涼感及び爽快感をもたらす清涼化剤の一種として添加されており(記載ロ、ハ、ニ)、また同刊行物には、点眼液に配合し得る清涼化剤としてメントール以外のものも存在することが、刊行物3を引用しつつ示唆されている(記載ロ)。 この刊行物3には、クロモグリク酸ナトリウム溶液に配合して患者のコンプライアンス改善が達成できる芳香剤(清涼化剤に相当)として、メントールの他に、ユーカリプトール、カンフル及びサリチル酸メチルが挙げられている(記載ホ)。 また刊行物4にも、点眼液において汎用される清涼化剤として、メントール類の他に、カンフル類、ボルネオール類、ユーカリ油、ゲラニオール、ウイキョウ油及びベルガモット油が挙げられ、これらは単独では眼に対する刺激性を強めることなしに清涼感及び持続性を高めることは極めて困難であったという事情が存在したことも示されている(記載ト)。 そうすると、刊行物2に記載の点眼液に清涼化剤として配合されているメントールに代えて、点眼液の分野でメントールと同様に汎用される他の清涼化剤を複数組合せて配合してみること、例えば、カンフル類及びボルネオール類の配合を試みることは、刊行物4にみられるような技術常識に基づき当業者が適宜なし得ることである。 特に、dl-カンフル、d-ボルネオールは眼科用剤における汎用の清涼化剤であり(日本医薬品添加剤協会編集「厚生省薬務局審査課推薦 医薬品添加物事典」(1994-1-14)pp.35,36,139,140,228,347を参照)、刊行物4においてもカンフル類、ボルネオール類がメントール類に次いで挙げられていることからも(記載ト)、dl-カンフルとd-ボルネオールの組合せは当業者が普通に検討する組合せであって、これら2種を清涼化剤として使用することに格別の困難性を見出すことはできない。 なお、刊行物4ではdl-カンフルとd-ボルネオールの組合せは「比較例」として示され(5頁表3の比較例5)、当該処方においては清涼感、冷感、清涼感の持続性についての評価は高くないものの、眼刺激性については良い評価が得られており、一般に清涼感、冷感、清涼感の持続性は消費者の好みに左右されるものであることを考慮すれば、この記載によって上記2種のみでの使用が阻害されるものでもない。 また本願明細書の記載からみて、上記2種の組合せの効果は当業者の予測の範囲内のものと認められる。 (4)むすび したがって、本願発明は、刊行物2〜4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-04-19 |
結審通知日 | 2005-04-26 |
審決日 | 2005-05-10 |
出願番号 | 特願2000-573732(P2000-573732) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 572- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨永 保 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 中野 孝一 |
発明の名称 | クロモグリク酸ナトリウムを含有する外用液剤および目のアレルギー症状の治療または予防方法 |
代理人 | 片山 英二 |
代理人 | 小林 純子 |
代理人 | 古橋 伸茂 |