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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200322792 | 審決 | 特許 |
不服200321212 | 審決 | 特許 |
不服200213631 | 審決 | 特許 |
不服200511384 | 審決 | 特許 |
不服200312709 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B |
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管理番号 | 1119163 |
審判番号 | 不服2005-336 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-06 |
確定日 | 2005-06-29 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第191050号「長尺マスキング材および塗装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月30日出願公開、特開平 8- 24734〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年7月20日の出願であって、平成16年12月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年1月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年1月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「被処理物のマスキング個所に適合する形状を長手方向で所定個数に分割した複数個のユニットからなりエンジニアリングプラスチックあるいはエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを材料とし、各ユニットは相互若干重なるようにして組合わされ、該重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収するようにしたことを特徴とする長尺マスキング材」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「熱可塑性プラスチックシートまたは熱可塑性プラスチック発泡体あるいはエンジニアリングプラスチックあるいはエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを材料とし、」について「熱可塑性プラスチックシートまたは熱可塑性プラスチック発泡体(を材料とし)」との限定を削除するものであって、択一的記載要件の削除に相当し、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-144548号(実開平2-66265号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「〔産業上の利用分野〕 本考案は柱状物や枠体の表面処理から保護することを必要とされる部分に被着され、該部分を保護するマスキング材に関するものである。 〔考案の背景〕 例えば自動車のドアの窓枠部分とそれより下の部分とを色分けして塗装するような場合にはまず該窓枠部分をマスキング材によって保護してからドアを所定色に塗装し、次いで該マスキング材を取はずして窓枠部分を別の所定色に塗装する。」(明細書1頁13行〜同2頁2行) イ.「第7図〜第11図には本考案の他の実施例が示される。第7図〜第9図に示すマスキング材(23),(24),(25)の両側壁(23)A,(23)B,(24)A,(24)B,(25)A,(25)Bは開口部(23)C,(24)C,(25)Cに向って若干開くテーパー状とされ、該両側壁(23)A,(23)B,(24)A,(24)B,(25)A,(25)Bの中間部にはリブ状の挾搾部(23)D,(23)E,(24)D,(24)E,(25)D,(25)Eが形成され・・・ている。該マスキング材(23),(24),(25)は前実施例のマスキング材(13)と同様に第10図に示すように窓枠(1)Aに取付けられる。即ちマスキング材(23),(24),(25)の三個によって窓枠(1)A全体が保護されるが、この際マスキング材(23),(24),(25)の接ぎ目においては若干重ね合わされる。そして該マスキング材(23),(24),(25)は第11図に示すように窓枠に取付けられた状態で弾性材料の弾性によって該マスキング材(23),(24),(25)の挾搾部(23)D,(23)E,(24)D,(24)E,(25)D,(25)Eが窓枠(1)Aの両端部に係合する。」(明細書5頁1〜19行) ウ.「本考案のマスキング材に用いられる弾性材料としてはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル・・・等のプラスチック、あるいは該プラスチックの発泡体・・・等が用いられる。」(明細書5頁20行〜同6頁7行) 上記記載事項ア〜ウ、及び第7〜11図記載事項等によると、引用例には、 「自動車のドアの窓枠部分に適合する形状を長手方向で三個に分割したマスキング材23,24,25からなりポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチック、あるいは該熱可塑性プラスチックの発泡体を材料とし、各マスキング材23,24,25はその接ぎ目において若干重ね合わされる、マスキング材」 の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例記載の発明を対比すると、引用例記載の発明の「自動車のドア」は、その技術的意義からみて、本願補正発明の「被処理物」に相当し、以下同様に、「窓枠部分」は「マスキング個所」に、「長手方向で三個に分割したマスキング材23,24,25」は「長手方向で所定個数に分割した複数個のユニット」に、「各マスキング材23,24,25はその接ぎ目において若干重ね合わされる」は「各ユニットは相互若干重なるようにして組合わされ」に、「マスキング材」は「長尺マスキング材」に、それぞれ、相当する。 してみると、両者は、 「被処理物のマスキング個所に適合する形状を長手方向で所定個数に分割した複数個のユニットからなり、各ユニットは相互若干重なるようにして組合わされた長尺マスキング材」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明においては、長尺マスキング材がエンジニアリングプラスチックあるいはエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを材料とするのに対し、引用例記載の発明においては、長尺マスキング材がポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチック、あるいは該熱可塑性プラスチックの発泡体を材料とする点。 [相違点2]本願補正発明においては、各ユニットは相互若干重なるようにして組合わされ、該重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収するようにしたのに対し、引用例記載の発明においては、各ユニットは相互若干重なるようにして組合わされるが、該重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収するようにしたか否か明らかでない点。 (4)判断 [相違点1]について マスキング材の材料として、エンジニアリングプラスチックやエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを用いることは、周知技術[例えば、特開平5-261323号公報,特開平6-134387号公報,実願平4-90829号(実開平6-48852号)のCD-ROM、参照。]である。そうすると、引用例記載の発明において、上記周知技術を勘案して、上記[相違点1]に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。 [相違点2]について <検討1> 引用例記載の発明の「長尺マスキング材」は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチック、あるいは該熱可塑性プラスチックの発泡体を材料とするから、塗装工程等の熱処理による温度変化、吸排湿等の湿度変化によって特に長手方向に変形する。しかしながら、引用例記載の発明においては、被処理物のマスキング個所に適合する形状を長手方向で所定個数に分割した複数個の各ユニットは相互若干重なるように組合わされるのであるから、前記長手方向の変形は各ユニット相互の重なり部分の巾の変動によって吸収されるものと認められる。そして、前回の使用で膨張、収縮その外の熱変形等により長尺マスキング材の形状に変化を生じた場合でも、重なり部分を摺動して調節することにより反復使用が可能となるものである。また、前記[相違点1]についてで検討したように、マスキング材の材料として、エンジニアリングプラスチックやエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを用いた場合においても、各ユニット相互の重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収し得ることは、明らかである。 <検討2> 温度変化や湿度変化によって長手方向に変形し易い材料からなる長尺部品と温度変化や湿度変化によって長手方向に変形し難い材料からなる長尺部品とからなる物品において、一方の長尺部品を長手方向で所定個数に分割した複数個のユニットから構成し、各ユニットは相互若干重なるようにして組合わせ、該重なり部分によって物品の長手方向の変形を吸収することは、周知技術[例えば、特開昭55-31610号公報,実願昭56-55198号(実開昭57-169478号)のマイクロフィルム、参照。]である。そうすると、引用例記載の発明において、上記周知技術を勘案して、各ユニットの重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収するように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。また、前記[相違点1]についてで検討したように、マスキング材の材料として、エンジニアリングプラスチックやエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを用いた場合においても、各ユニット相互の重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収するように構成することは、前記周知技術を勘案して、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例記載の発明,及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年1月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年8月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「被処理物のマスキング個所に適合する形状を長手方向で所定個数に分割した複数個のユニットからなり熱可塑性プラスチックシートまたは熱可塑性プラスチック発泡体あるいはエンジニアリングプラスチックあるいはエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを材料とし、各ユニットは相互若干重なるようにして組合わされ、該重なり部分によって各ユニットの長手方向の変形を吸収するようにしたことを特徴とする長尺マスキング材」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の構成に欠くことができない事項である「エンジニアリングプラスチックあるいはエンジニアリングプラスチックに熱可塑性プラスチックを混合したポリマーアロイを材料とし、」について、択一的記載要件である「熱可塑性プラスチックシートまたは熱可塑性プラスチック発泡体(を材料とし)」との構成を付加したものである。そうすると、本願発明の構成要件の内、択一的記載要件である「熱可塑性プラスチックシートまたは熱可塑性プラスチック発泡体(を材料とし)」を削除したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例記載の発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、本願発明の択一的記載要件である前記「熱可塑性プラスチックシートまたは熱可塑性プラスチック発泡体(を材料とし)」については、そもそも、引用例記載の発明が具備している[引用例記載の発明の「ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチック、あるいは該熱可塑性プラスチックの発泡体(を材料とし)」の構成、参照。]ところである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-04-21 |
結審通知日 | 2005-04-26 |
審決日 | 2005-05-10 |
出願番号 | 特願平6-191050 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B05B)
P 1 8・ 575- Z (B05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺川 ゆりか、村山 禎恒 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
平城 俊雅 飯塚 直樹 |
発明の名称 | 長尺マスキング材および塗装方法 |
代理人 | 宇佐見 忠男 |