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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1119166
審判番号 不服2003-21477  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-05 
確定日 2005-06-27 
事件の表示 特願2001-388735「対物レンズ駆動装置及びこれを備えたディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-260258〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という)は、平成13年12月21日(優先権主張平成12年12月28日)に出願されたものであって、平成15年9月30日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、平成15年11月5日付けで特許法第121条第1項の審判が請求され、平成15年11月13日付けで手続補正書が提出されたものである。


II.平成15年11月13日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成15年11月13日付け手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について補正の内容
本件補正による補正内容は、特許請求の範囲においては、請求項1と請求項6を削除し、拒絶の理由を指摘していなかった請求項2と請求項7を独立請求項にして、新請求項1と新請求項5となし、請求項3〜5,請求項8〜10を、新請求項2〜4,新請求項6〜8と、上記新請求項の引用形式に項番を整理したもので、請求項の削除である。
また、請求項11は、上記請求項1及び請求項6の削除にともなう整理で、請求項9とすると共に、構成要素として「上記磁性部材は、基部と、上記基部の両端にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ弾接される一対のバネ部と、上記一対のバネ部にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ支持される一対の被支持部と、上記一対の被支持部にそれぞれ連続され、上記マグネットに対向して配置される一対のマグネット対向部とを有する、」を附加するものである。
さらに、【発明の詳細な説明】においては、上記特許請求の範囲の補正に対応しての補正をするものである。

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲において、請求項1〜8は請求項の削除であるから特許法第17条の2第4項第1号に、請求項9は磁性部材に関して具体的に限定を加えるものであるから限定的減縮で特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たすものと認める。

3.独立特許要件
次に、本件補正の請求項9に記載された発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するか)について、以下に検討する。

1)本件補正後発明
本件補正の【請求項9】に記載された発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項9】 対物レンズを介してディスク状記録媒体にレーザー光を照射することによって、該ディスク状記録媒体に対する情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うためのディスク装置であって、
前記対物レンズを保持する可動部と、
前記可動部を支持するベースと、を備え、
前記ベースは、
前記対物レンズの光軸方向に沿って設けられた、前記可動部を支持するための支持軸と、
マグネットと、を有し、
前記可動部は、
前記支持軸に、その軸回り方向に回動自在かつ軸方向に摺動自在に支持される被支持部と、
前記可動部を前記軸回り方向に回転させるための磁界を発生する第1のコイルと、
前記可動部を前記軸方向に移動させるための磁界を発生する第2のコイルと、
変形されたときに反発力を発生する性質を有し、この反発力を利用して前記可動部に取り付けられる一対の磁性部材と、を有し、
前記可動部は、上記マグネットに引き寄せられて該一対の磁性部材のマグネット対向部の各先端が磁束の中心部に位置決めされることにより、前記第1のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸回り方向における中立位置に保持され、前記第2のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸方向における中立位置に保持され、
上記磁性部材は、基部と、上記基部の両端にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ弾接される一対のバネ部と、上記一対のバネ部にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ支持される一対の被支持部と、上記一対の被支持部にそれぞれ連続され、上記マグネットに対向して配置される一対のマグネット対向部とを有する、ディスク装置。」(以下、「本願補正後発明」という)

2)刊行物について
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である、特開平10-283647号公報(以下、「刊行物」という)には、対物レンズ駆動装置に関するものであって、以下の記載がある。(下線は当審で付与)
(1-1)【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、CDなどの光記録媒体の再生に用いられる光ピックアップの対物レンズ駆動装置に関するものである。さらに詳しくは、対物レンズを保持したレンズホルダを磁気的に予め定められた中立位置に保持するための磁性片の構造に関するものである。
(1-2)【0006】本発明の課題は、レンズホルダを中立位置に復帰させるための磁性片をレンズホルダの目標とする取り付け位置に精度良く、しかも簡単に取り付け可能な対物レンズ駆動装置を提案することにある。・・・(中略)・・・対物レンズ駆動装置を提案することにある。
【0007】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明は、対物レンズを保持したレンズホルダをトラッキング方向およびフォーカシング方向に移動する磁気駆動回路と、当該磁気駆動回路を利用して前記レンズホルダを予め定められた中立位置に保持する磁気吸引力を発生する中立位置保持手段とを有する対物レンズ駆動装置において、前記中立位置保持手段は、前記レンズホルダに固定した第1および第2の磁性片と、これら第1および第2の磁性片を相互に連結している磁性材料からなる連結部とを有していることを特徴としている。
【0008】従って、本発明では、予め連結部によって連結された第1および第2の磁性片を用意しておけば、レンズホルダへの取付部品の点数を削減できる。また、複数の磁性片を1つずつ取り付ける場合と比べて取り付けが簡単になる。・・・(後略)・・・
(1-3)【0013】(実施の形態1)図1(a)は、本発明の実施の形態1に係る対物レンズ駆動装置の概略構成を示す平面図、図1(b)は、図1(a)におけるA-A線で切断した部分を示す断面図である。これらの図に示すように、本例の対物レンズ駆動装置1は、対物レンズ2を保持したレンズホルダ3と、レンズホルダ3に形成された軸孔4に差し込まれてレンズホルダ3を摺動可能に支持した支持軸6と、支持軸6が取り付けられているカップ状のホルダ支持部材7を有している。ホルダ支持部材7は固定配置されており、レンズホルダ3はホルダ支持部材7との間に構成されたトラッキング用磁気駆動回路およびフォーカシング用磁気駆動回路によってトラッキング方向およびフォーカシング方向に移動する。
【0014】トラッキング用磁気駆動回路は、レンズホルダ3の外周面5における直径方向の対峙位置に取り付けた一対のトラッキング用駆動コイル12a、12bと、ホルダ支持部材7の内周面8における各トラッキング用駆動コイル12a、12bに対峙した位置に取り付けた一対のトラッキング用磁石10a、10bによって構成される。トラッキング用磁石10a、10bは軸線Lの回りの周方向に分極着磁されており、トラッキング用駆動コイル12a、12bに電流を流すと、レンズホルダ3が軸線Lの回りを僅かに回転し、対物レンズ2のトラッキングを行う。
【0015】また、フォーカシング用磁気駆動回路は、トラッキング用駆動コイル12a、12bから軸線Lの回りの周方向にずれた位置においてレンズホルダ5の外周面5における直径方向の対峙位置に取り付けられた一対のフォーカシング用駆動コイル13a、13bと、ホルダ支持部材7の内周面8における各フォーカシング用駆動コイル13a、13bに対峙した位置に取り付けた一対のフォーカシング用磁石11a、11bによって構成される。フォーカシング用磁石11a、11bは単極着磁または軸線Lの方向に分極着磁されており、フォーカシング用駆動コイル13a、13bに電流を流すと、レンズホルダ3が軸線Lの方向に移動し、対物レンズ2のフォーカシングを行う。
【0016】本例の対物レンズ駆動装置1のレンズホルダ3には、このレンズホルダ3を予め定めた中立位置(図1(a)、(b)に示す状態)に保持する中立位置保持手段として磁性板20が取り付けられている。
【0017】図2(a)〜(c)は、磁性板20の構成を説明するための斜視図である。まず、図2(a)、(b)に示すように、本例の磁性板20は、各フォーカシング用磁石11a、11bに対峙する第1および第2の磁性片21a、21bと、第1および第2の磁性片21a、21bを連結した磁性部材からなる連結部23を備えている。第1および第2の磁性片21a、21bはレンズホルダ3の外周面5に密着する小さな長方形に形成され、連結部23はレンズホルダ3の上面5に密着して第1および第2の磁性片21a、21bの外周縁同士を連結している。また、連結部23にはレンズホルダ3に形成された軸孔4を塞がないように、孔などの逃げ部24が形成されている。
【0018】図2(c)に示すように、第1および第2の磁性片21a、21bの上にはフォーカシング用駆動コイル13a、13bが取り付けられる。従って、レンズホルダ3を中立位置に保持させる状態では、第1および第2の磁性片21a、21bが各フォーカシング用磁石11a、11bに対峙する。すなわち、第1および第2の磁性片21a、21bはフォーカシング用磁石11a、11bの磁気的中心位置に磁気吸引されるので、レンズホルダ3はトラッキング用駆動コイル12a、12bおよびフォーカシング用駆動コイル13a、13bに電流が流れていなければ図1(a)、(b)に示す中立位置に保持される。
【0019】このように、本例の対物レンズ駆動装置は、第1および第2の磁性片21a、21bが連結部23によって一体化された磁性板20を用いているので、1枚の磁性板20を固定するだけで、第1、第2の磁性片21a、21bの取り付けができる。従って、レンズホルダ3に対する取付部品の点数を削減できると共に、従来のように磁性片を1つずつ取り付けるよりも組立工数を低減できる。
(1-4)【0021】なお、磁性板20は図5(a)、(b)に示すように、第1および第2の磁性片21a、21b(図においては第1の磁性片21aの側だけを示してある。)の先端29にレンズホルダ3の側に折れ曲がった爪25を形成してもよい。この場合には、図5(c)、(d)に示すように、レンズホルダ3の外周面5に爪25が嵌まる切欠き9を形成しておく。このように形成すると、図5(c)、(d)に示すように、磁性板20の爪25が切欠き9に嵌まるように取り付ることができるので、磁性板20の位置決めが容易になる。
【0022】さらに、磁性板20の第1および第2の磁性片21a、21bの形状は単なる長方形に限るものではなく、例えば図6に示すような形状にしてもよい。図6(a)に示す磁性板20においては、第1および第2の磁性片21a、21bの先端29に2つの突起26が形成されている。図6(b)に示す磁性板20においては、第1および第2の磁性片21a、21bの先端29から連結部23の付近まで1本の溝27が切り込まれ、第1および第2の磁性片21a、21bが2本足になっている。また、図6(c)に示す磁性板20においては、第1および第2の磁性片21a、21bの先端29だけが細く形成されている。さらに、図6(d)に示す磁性板20においては、第1および第2の磁性片21a、21bの先端29から連結部23の第1および第2の磁性片21a、21bとの接続部分まで細く形成されている。このように、第1および第2の磁性片21a、21bの形状を変形したり厚さを変えることで、レンズホルダ3を中立位置に復帰させる磁気吸引力を変えることができ、フォーカシングおよびトラッキングの駆動感度を変えることができる。
(1-5)【0036】なお、図11(a)に示すように、2つの磁性板20を並べてインサート成形して、1つの駆動コイルが取り付けられる部分に2つの磁性片を配置してもよい。この場合にも、図11(b)に示すように、2つの磁性板20の連結部23にインサート成形するための位置決め孔28を形成しておく。また、連結部23がレンズホルダ3に形成された軸孔4と干渉しなければ、連結部23に逃げ部24を形成する必要はない。
(1-6)【0054】第1のスリット50aに差し込み固定された第1の磁性板20aには、図18(a)に示すように、連結部23に上側に凹んだ段差30が形成されている。一方、第2のスリット50bに差し込み固定された第2の磁性板20bには段差30が形成されていない。従って、第1の磁性板20aと第2の磁性板20bが接触しない。本例においても、トラッキング用磁石10a、10bおよびフォーカシング用磁石11a、11bに対峙してレンズホルダ3を予め定めた中立位置に保持する第1および第2の磁性片21a、21bが連結部によって連結されているので、磁性片を1つずつ取り付けるのに比べ、簡単に取り付けることができる。また、本例では、第1および第2の磁性板20a、20bを第1および第2のスリット50a、50bに固定しているので、接着剤などで固定する場合と比べて精度よく位置決めできる。従って、レンズホルダ3のフォーカシングおよびトラッキングの駆動感度のばらつきを抑えることができる。
(1-7)【0027】図7(a)に示すように、本例の対物レンズ駆動装置1のレンズホルダ3には、磁性板20を差し込むことができる一対のスリット50が形成されている。一対のスリット50は、軸孔4を挟む位置において、外周面5のトラッキング用駆動コイル12a、12bが取り付けられる部分に切り込みが入るように、レンズホルダ3の上面14から下側に向けて鉛直に切り込まれている。また、スリット50の軸孔4の近傍は軸孔4を避けるように形成された湾曲部51となっている。
【0039】・・・(中略)・・・、図13(b)に示すように、第2の磁性板20bの連結部23は、第1の磁性板20aの連結部23と交差する部分に下側に凹んだ段差30を備えているので、連結部23が互いに接触しないようになっている。本例においても、トラッキング用磁石10a、10bおよびフォーカシング用磁石11a、11bに対峙してレンズホルダ3を予め定めた中立位置に保持する第1および第2の磁性片21a、21bが連結部によって連結されているので、磁性片を1つずつ取り付けるのに比べ、簡単に取り付けることができる。

以上の記載を、図面を参照して整理すると、刊行物には次の発明が記載されているものと認める。
「CDなどの光記録媒体の再生に用いられる光ピックアップの対物レンズ駆動装置に関するレンズホルダを中立位置に復帰させるための磁性片をレンズホルダの目標とする取り付け位置に精度良く、簡単に取り付け可能な対物レンズ駆動装置であって、
対物レンズ2を保持したレンズホルダ3と、レンズホルダ3に形成された軸孔4に差し込まれてレンズホルダ3を摺動可能に支持した支持軸6と、支持軸6が取り付けられているカップ状のホルダ支持部材7を有して固定配置されており、
トラッキング用磁気駆動回路は、レンズホルダ3の外周面5における直径方向の対峙位置に取り付けた一対のトラッキング用駆動コイル12a、12bと、ホルダ支持部材7の内周面8における各トラッキング用駆動コイル12a、12bに対峙した位置に取り付けた一対のトラッキング用磁石10a、10bによって構成され、トラッキング用磁石10a、10bは軸線Lの回りの周方向に分極着磁されており、トラッキング用駆動コイル12a、12bに電流を流すと、レンズホルダ3が軸線Lの回りを僅かに回転し、対物レンズ2のトラッキングを行い、
フォーカシング用磁気駆動回路は、トラッキング用駆動コイル12a、12bから軸線Lの回りの周方向にずれた位置においてレンズホルダ5の外周面5における直径方向の対峙位置に取り付けられた一対のフォーカシング用駆動コイル13a、13bと、ホルダ支持部材7の内周面8における各フォーカシング用駆動コイル13a、13bに対峙した位置に取り付けた一対のフォーカシング用磁石11a、11bによって構成され、フォーカシング用磁石11a、11bは単極着磁または軸線Lの方向に分極着磁されており、フォーカシング用駆動コイル13a、13bに電流を流すと、レンズホルダ3が軸線Lの方向に移動し、対物レンズ2のフォーカシングを行い、
対物レンズ駆動装置1のレンズホルダ3には、このレンズホルダ3を予め定めた中立位置に保持する中立位置保持手段として磁性板20が取り付けられて、磁性板20は先端29にレンズホルダ3の側に折れ曲がった爪25を形成してレンズホルダ3の外周面5に爪25が嵌まる切欠き9を形成しておく、
磁性板20は第1および第2の磁性片21a、21bが連結部23によって一体化され2つ並べて配置して成る、
対物レンズ駆動装置。」(以下、「刊行物発明」という)

3)対比・判断
(1)対比
(i)刊行物発明における「CDなどの光記録媒体の再生に用いられる光ピックアップの対物レンズ駆動装置」であるが、レーザー光の照射をともなうもので、上記記載のものは情報の再生であるが記録にも適用できることは自明であるから、これらは本件補正後発明における「対物レンズを介してディスク状記録媒体にレーザー光を照射することによって、該ディスク状記録媒体に対する情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うためのディスク装置」に相当する。
(ii)刊行物発明における「対物レンズ駆動装置に関するレンズホルダ」であるが、これは本件補正後発明における「対物レンズを保持する可動部」に相当する。
(iii)刊行物発明における「レンズホルダ3に形成された軸孔4に差し込まれてレンズホルダ3を摺動可能に支持した支持軸6と、支持軸6が取り付けられているカップ状のホルダ支持部材7を有して固定配置」であるが、「レンズホルダ3を摺動可能」は「可動部」に、「ホルダ支持部材7」は「ベース」に、「軸孔4」は「可動部を支持する被支持部」であるから、これらは本願補正後発明の「可動部を支持するベースと、を備え、ベースは、対物レンズの光軸方向に沿って設けられた、可動部を支持するための支持軸」「支持軸に、その軸回り方向に回動自在かつ軸方向に摺動自在に支持される被支持部」に各々相当する。
(iv)刊行物発明における「一対のトラッキング用磁石10a、10b」「一対のフォーカシング用磁石11a、11b」は本願補正後発明の「マグネット」に相当する。
(v)刊行物発明における「レンズホルダ3の外周面5における直径方向の対峙位置に取り付けた一対のトラッキング用駆動コイル12a、12b」「トラッキング用駆動コイル12a、12bから軸線Lの回りの周方向にずれた位置においてレンズホルダ5の外周面5における直径方向の対峙位置に取り付けられた一対のフォーカシング用駆動コイル13a、13b」は、各々本願補正後発明の「可動部を軸回り方向に回転させるための磁界を発生する第1のコイル」「可動部を軸方向に移動させるための磁界を発生する第2のコイル」に相当する。
(vi)刊行物発明における「対物レンズ駆動装置1のレンズホルダ3には、このレンズホルダ3を予め定めた中立位置に保持する中立位置保持手段として磁性板20が取り付け」、及び、この磁性板の構成であるが「磁性板20は・・・2つ並べて配置」等は、本願補正後発明の「変形されたときに反発力を発生する性質を有し、この反発力を利用して前記可動部に取り付けられる一対の磁性部材」に相当する。
(vii)刊行物発明においての「磁性板20は第1および第2の磁性片21a、21bが連結部23によって一体化され2つ並べて配置」なる構成の磁性板の機能についてであるが、上記(1-3)の【0018】には、トラッキングコイル(本願補正後発明:第1のコイル)及びフォーカスコイル(同:第2のコイル)への駆動電流が供給されていない状態でのレンズホルダ(同:可動部)について“レンズホルダ3を中立位置に保持させる状態では、第1および第2の磁性片21a、21bが各フォーカシング用磁石11a、11bに対峙する。すなわち、第1および第2の磁性片21a、21bはフォーカシング用磁石11a、11bの磁気的中心位置に磁気吸引されるので、レンズホルダ3はトラッキング用駆動コイル12a、12bおよびフォーカシング用駆動コイル13a、13bに電流が流れていなければ図1(a)、(b)に示す中立位置に保持される。”との記載がされており、同じ記載は(1-6)の【0054】にもある。これは本願補正後発明の「可動部は、上記マグネットに引き寄せられて該一対の磁性部材のマグネット対向部の各先端が磁束の中心部に位置決めされることにより、前記第1のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸回り方向における中立位置に保持され、前記第2のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸方向における中立位置に保持」に相当する。
(viii)刊行物発明においての「第1および第2の磁性片21a、21bが連結部23によって一体化された磁性板20」であるが、これは本願補正後発明での「磁性部材は、基部と、基部の両端にそれぞれ連続され、マグネットに対向して配置される一対のマグネット対向部」に相当する。

結局、本願補正後発明と刊行物1発明との[一致点]と[相違点]は以下のようになる。
[一致点]
「対物レンズを介してディスク状記録媒体にレーザー光を照射することによって、該ディスク状記録媒体に対する情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うためのディスク装置であって、
前記対物レンズを保持する可動部と、
前記可動部を支持するベースと、を備え、
前記ベースは、
前記対物レンズの光軸方向に沿って設けられた、前記可動部を支持するための支持軸と、
マグネットと、を有し、
前記可動部は、
前記支持軸に、その軸回り方向に回動自在かつ軸方向に摺動自在に支持される被支持部と、
前記可動部を前記軸回り方向に回転させるための磁界を発生する第1のコイルと、
前記可動部を前記軸方向に移動させるための磁界を発生する第2のコイルと、
変形されたときに反発力を発生する性質を有し、この反発力を利用して前記可動部に取り付けられる一対の磁性部材と、を有し、
前記可動部は、上記マグネットに引き寄せられて該一対の磁性部材のマグネット対向部の各先端が磁束の中心部に位置決めされることにより、前記第1のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸回り方向における中立位置に保持され、前記第2のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸方向における中立位置に保持され、
上記磁性部材は、基部と、上記マグネットに対向して配置される一対のマグネット対向部とを有する、
ディスク装置」

[相違点]
磁性部材の構成であるが、本願補正後発明のものは、基部と一対のマグネット対向部を除く「基部の両端にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ弾接される一対のバネ部と、上記一対のバネ部にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ支持される一対の被支持部」をさらに有しているものであるが、刊行物発明にはこの記載がない点。

(2)判断
上記相違点は、要するに、磁性部材の形状構成に相違があると理解できるものである。また、当該構成要件に基づく作用効果は、本願明細書を参酌すると、
(a)「【0028】図3及び図4に示すように、磁性部材41は、基部41aの略中央部が第1の部材26の押さえ片30d、30dによって上方から押さえられ、バネ部41b、41bがそれぞれ第2の部材27の側壁部36b、36bの後半部内面に弾接され、被支持部41c、41cがそれぞれ第2の部材27の支持スリット36d、36dに挿入されることにより、可動部18に支持される。従って、マグネット対向部41d、41dは可動部18から突出された状態とされる。
【0029】 ・・・(省略)・・・
【0030】上記のように、磁性部材41、42には、それぞれバネ部41b、41b、42b、42bが設けられ、該バネ部41b、41b、42b、42bが側壁部36b、36bの内面に弾接される。このため、可動部18に対する磁性部材の41、42の位置決めを極めて容易に行うことができ、従って、マグネット対向部41d、41d、42d、42dが可動部18に対して適正に位置される。
【0031】また、磁性部材41、42の可動部18への取り付けの際には、基部41a又は基部42aを押さえ片30d、30d又は押さえ片30e、30eに係合し、バネ部41b、41b又はバネ部42b、42bを側壁部36b、36bの内面に弾接させ、被支持部41c、41c又は被支持部42c、42cを支持スリット36d、36d又は支持スリット36e、36eに挿入すればよい。このため、磁性部材41、42の可動部18に対する取り付けを極めて容易に行うことができる。尚、磁性部材41、42の可動部18に対する取り付け状態の信頼性を確保するため、上記のように磁性部材41、42を可動部18に取り付けた状態において磁性部材41、42を接着により可動部18に固定してもよい。」
等との記載がある。そして、上記構成要件によれば磁性部材は、少なくとも、磁性部材が配置されている可動部18の形状構成をもって、弾接、位置決め、及び、取り付けの容易性の作用効果をもつと理解される。
しかしながら、本願補正後発明には、可動部に係る事項のものについて、上記相違点以外に『対物レンズを保持する可動部・・・可動部を支持するベース』等程度の記載しかなく、その具体的な構成はない。また、請求理由を参酌しても、本件補正に係る事項に関して、特段の主張はされていない。
(b)翻って、刊行物発明のものであるが、磁性板について、上記(1-4)には「先端29にレンズホルダ3の側に折れ曲がった爪25を形成してもよい・・・(中略)・・・磁性板20の位置決めが容易になる。」【0021】、上記(1-7)には「磁性板20を差し込むことができる一対のスリット50が形成されている。」【0027】,「第1の磁性板20aの連結部23と交差する部分に下側に凹んだ段差30を備えている」【0039】等の記載があって、これらの磁性板の形状構成は少なからず、弾接機能、及び、位置決め機能等をもつことは技術常識的に明らかである。
また、刊行物発明の、上記(1-4)で記載の図5、同上記(1-6)の図18、同上記(1-7)の図7,図13等には、磁性板に折れ曲がった爪部をもち、ないし、段差部をのある非直線状に形成した磁性板をレンズホルダに配置した記載が具体的にある。
さらに、部材相互を組合せて一体化していく際においては、弾接をもっての係合、取付けの容易性、もしくは確実な保持等は、極めて普通に思考し、そのための手段を種々講じていくものであるから、上記相違点の構成要件程度は、特段可動部の構成はないものの、取り付け部分に対応して当業者が適宜容易になし得るものと認める。

したがって、本願補正後発明は、刊行物発明に発明に基づいて、当業者が容易に想到できるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成15年11月13日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1〜15に係る各発明は、平成15年8月1日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜15に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち【請求項11】に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項11】 対物レンズを介してディスク状記録媒体にレーザー光を照射することによって、該ディスク状記録媒体に対する情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うためのディスク装置であって、
前記対物レンズを保持する可動部と、
前記可動部を支持するベースと、を備え、
前記ベースは、
前記対物レンズの光軸方向に沿って設けられた、前記可動部を支持するための支持軸と、
マグネットと、を有し、
前記可動部は、
前記支持軸に、その軸回り方向に回動自在かつ軸方向に摺動自在に支持される被支持部と、
前記可動部を前記軸回り方向に回転させるための磁界を発生する第1のコイルと、
前記可動部を前記軸方向に移動させるための磁界を発生する第2のコイルと、
変形されたときに反発力を発生する性質を有し、この反発力を利用して前記可動部に取り付けられる一対の磁性部材と、を有し、
前記可動部は、上記マグネットに引き寄せられて該一対の磁性部材のマグネット対向部の各先端が磁束の中心部に位置決めされることにより、前記第1のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸回り方向における中立位置に保持され、前記第2のコイルに駆動電流が供給されていない場合には前記軸方向における中立位置に保持される、ディスク装置。」(以下、「本願発明」という)

2.刊行物
これに対して、原査定で引用された刊行物及びその記載された事項は、上記したとおりである(上記II.〔理由〕3.2)刊行物について を参照)。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.で検討した本願補正後発明から、磁性部材に関しての事項である、「上記磁性部材は、基部と、上記基部の両端にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ弾接される一対のバネ部と、上記一対のバネ部にそれぞれ連続され、上記可動部の両側面部にそれぞれ支持される一対の被支持部と、上記一対の被支持部にそれぞれ連続され、上記マグネットに対向して配置される一対のマグネット対向部とを有する」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「II.〔理由〕3.3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により刊行物発明のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項11に記載された発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原査定は妥当なものであり、本願はその余の請求項について言及するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-26 
結審通知日 2005-04-27 
審決日 2005-05-10 
出願番号 特願2001-388735(P2001-388735)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝鈴木 肇  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 中村 豊
山田 洋一
発明の名称 対物レンズ駆動装置及びこれを備えたディスク装置  
代理人 山本 寿武  
代理人 山本 寿武  

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