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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1119321
審判番号 不服2002-21718  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-07 
確定日 2005-07-07 
事件の表示 平成 7年特許願第244567号「地中探査レーダ用アンテナとそれを用いる地中探査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月 4日出願公開、特開平 9- 93020〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年9月22日の出願であって、平成14年9月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月4日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年12月4日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年12月4日付の手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「地表面にほぼ平行に近接して配置され、その地表面と予め定める一定の距離を保ちつつ移動され、
100MHz〜1000MHzのパルスが送信回路4から与えられ、
電磁波を土壌1に向けて放射し、地中埋設物2による反射波を受信し、
その受信した反射波の信号を、パルスの送信から反射波の受信までの時間に対応した地中埋設物の深さを検出する検出手段8,9,11,12に与える地中探査レーダ用アンテナにおいて、
地表面に平行な電気絶縁性基板52と、
基板から上方に間隔をあけて設けられる給電点53と、
給電点に関して基板に沿う第1方向両側に延びる一対の導電性第1部分であって、この各第1部分は、基板上に形成される主部分と、主部分の給電点寄りの端部から給電点に近づくように傾斜して立上る立上り部分とから成り、給電点に近づくにつれて先細状となる全体の形状が大略的に三角形である第1部分と、
2組の対を成す導電性第2部分であって、各組は、給電点に関して基板に沿って第1方向に垂直な第2方向両側に配置され、各対を成す第2部分は、第1部分の遊端部から折返して第2方向に延び、その第2方向に沿う給電点の位置付近で近接端が対向する第2部分と、
第1部分の遊端と第2部分とを接続する第1抵抗R1〜R4と、
各対の第2部分の近接端の間に接続される第2抵抗R5,R6とを含み、
給電点を通り基板に垂直な軸線に関してほぼ線対称に構成され、
第1部分の遊端部間の第1方向に沿う長さL1は550〜620mmであり、
立上り部分の主部分との接続部間の第1方向に沿う間隔L2は50〜200mmであり、
立上り部分の主部分からの高さH1は70〜100mmであり、
第2部分は、
基板上で、給電点を通り第1方向に延びる仮想直線上に中心を有する内外の2つの楕円間の領域内に形成され、
第1部分の遊端部付近で第1部分の側辺に沿う幅L3は約60mmであり、
近接端付近の幅L4は10〜20mmであり、
外の楕円の短辺の長さL5は320〜360mmであり、
第1部分の給電点付近を頂点とする角度θ1,θ2は、約30度であり、
第1および第2抵抗R1〜R4;R5,R6は、100〜200Ωであり、
基板52上に、一対の立上り部分58,60の両側方で立設固定される一対の支持板88,89と、
支持板88,89の上部を連結して補強する一対の支持棒90,91と、
一方の支持板89に固定され、他方の支持板88に向けて突出する取付部材92と、
取付部材92に固定され、給電点53に接続されるコネクタ54と、
コネクタ54に接続され、送信回路4および検出手段8,9,11,12に接続される可撓性ケーブルと、
基板52上に設けられ、基板52を上方から覆い、鉄から成り、接地される有底ハウジング86と、
ハウジング86の内面に固定され、フェライトから成る板87とを含むことを特徴とする地中探査レーダ用アンテナ。」
と補正された。
しかし、上記補正中の「可撓性ケーブル」については、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)の段落番号【0012】中に「この給電点53には可撓性ケーブルが接続されるコネクタ54が接続される。」と記載されているのみで、また同補正中の「検出手段8,9,11,12」についても、当初明細書の段落番号【0024】に「図10(2)で示される波形を有する信号が受信回路8に与えられる。」、同【0025】に「受信回路8の出力は、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路9に与えられる。処理回路9には、メモリ11が接続される。メモリ11には、前記原画像などがストアされ、さらにその処理された画像およびその他の情報がストアされる。陰極線管および液晶などによって実現される目視表示手段12には、これらの画像および情報が目視表示される。処理回路9には、キー入力手段18が接続される。」と記載されているのみで、関係する図9等を参照しても、上記補正中の「送信回路4および検出手段8,9,11,12に接続される可撓性ケーブル」との構成は、当初明細書中に見出すことはできない。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年12月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「電気絶縁性基板と、
基板から上方に間隔をあけて設けられる給電点と、
給電点に関して基板に沿う第1方向両側に延びる導電性第1部分であって、この第1部分は、基板上に形成される主部分と、主部分の給電点寄りの端部から給電点に近づくように傾斜して立上る立上り部分とから成り、給電点に近づくにつれて先細状となる全体の形状が大略的に三角形である第1部分と、
2組の対を成す導電性第2部分であって、各組は、給電点に関して基板に沿って第1方向に垂直な第2方向両側に配置され、各対を成す第2部分は、第1部分の遊端部から折返して第2方向に延び、その第2方向に沿う給電点の位置付近で近接端が対向する第2部分と、
第1部分の遊端と第2部分とを接続する第1抵抗と、
各対の第2部分の近接端の間に接続される第2抵抗とを含み、
給電点を通り基板に垂直な軸線に関してほぼ線対称に構成され、
第1部分の遊端部間の第1方向に沿う長さは550〜620mmである地中探査レーダ用アンテナ。」

(1)引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前公知の実願平4-8324号(実開平5-69691号)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)の段落番号【0013】には、「図3および図4は、送信アンテナ30および受信アンテナ31の概略的な構成を示す。両アンテナとも同一であり、エレメント51,52から電波を放射し、または電波を受信する。エレメント51と52との間には抵抗53が接続される。エレメント51間には抵抗54が接続される。これらのエレメント51,52は絶縁板55上に展開される。アンテナ30,31の中央には、コネクタ56が設けられる。」と記載されている。そして、【図面の簡単な説明】によれば、図3はアンテナの正面図で、図4はその側面図である。
また、段落番号【0001】の「本考案は、地中に埋設されている物体を地上で探知するための装置、特に地中探査レーダのアンテナを収納するための構造に関する。」と記載されている。
上記摘記した、引用文献の段落番号【0001】に係る記載によれば、図3および図4に示されるアンテナは、地中探査レーダのアンテナである。
一方、左右一対の2つのエレメント52に着目すると、このエレメント52への給電がコネクタ56を介して行われていることは自明であり、コネクタ56近傍に、給電点が存在することも自明である。そして、図3により、このエレメント52が給電点に関して絶縁板に沿う第1方向(図3の左右方向)両側に延びていること、さらに、図4を参照することによって、このエレメント52には、絶縁板上に形成される主部分と、コネクタ56に向かう点線で区画された略三角形の部位(図3の中央付近)があり、その部位は、前記主部分の給電点寄りの端部から給電点に近づくように傾斜して立上る形状(図4の中央部付近)となっており、しかも、給電点に近づくにつれて先細状となる全体の形状が大略的に三角形となっている。
次に、4つのエレメント51に着目すると、図3から、
2組の対を成し、各組は、給電点に関して基板に沿って第1方向に垂直な第2方向両側に配置され、各対を成すエレメント51は、エレメント52の遊端部から折返して第2方向に延び、その第2方向に沿う給電点の位置付近で近接端が対向する、形状・配置となっている。
また、全体として、給電点を通り絶縁板に垂直な軸線に関してほぼ線対称に構成されていることは、図3より明らかである。
してみると、引用文献には、
「絶縁板と、
絶縁板から上方に間隔をあけて設けられる給電点と、
給電点に関して絶縁板に沿う第1方向両側に延びるエレメント52であって、このエレメント52は、絶縁板上に形成される主部分と、主部分の給電点寄りの端部から給電点に近づくように傾斜して立上る立上り部分とから成り、給電点に近づくにつれて先細状となる全体の形状が大略的に三角形であるエレメント52と、
2組の対を成すエレメント51であって、各組は、給電点に関して絶縁板に沿って第1方向に垂直な第2方向両側に配置され、各対を成すエレメント51は、エレメント52の遊端部から折返して第2方向に延び、その第2方向に沿う給電点の位置付近で近接端が対向するエレメント51と、
エレメント52の遊端とエレメント51とを接続する抵抗53と、
各対のエレメント51の近接端の間に接続される抵抗54とを含み、
給電点を通り絶縁板に垂直な軸線に関してほぼ線対称に構成される地中探査レーダのアンテナ。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明中の「絶縁板」における絶縁とは電気的絶縁を意味し、その上にアンテナ回路を載置している基板であるから、この「絶縁板」は本願発明中の「電気絶縁性基板」と実質的に同じものであり、引用発明中の「エレメント52」「エレメント51」「抵抗53」「抵抗54」は、その機能作用からして、各々、本願発明中の「第1部分」「第2部分」「第1抵抗」「第2抵抗」に相当し、引用発明中の「地中探査レーダのアンテナ」は本願発明中の「地中探査レーダ用アンテナ」と同義であるから、
両者は、「電気絶縁性基板と、
基板から上方に間隔をあけて設けられる給電点と、
給電点に関して基板に沿う第1方向両側に延びる導電性第1部分であって、この第1部分は、基板上に形成される主部分と、主部分の給電点寄りの端部から給電点に近づくように傾斜して立上る立上り部分とから成り、給電点に近づくにつれて先細状となる全体の形状が大略的に三角形である第1部分と、
2組の対を成す導電性第2部分であって、各組は、給電点に関して基板に沿って第1方向に垂直な第2方向両側に配置され、各対を成す第2部分は、第1部分の遊端部から折返して第2方向に延び、その第2方向に沿う給電点の位置付近で近接端が対向する第2部分と、
第1部分の遊端と第2部分とを接続する第1抵抗と、
各対の第2部分の近接端の間に接続される第2抵抗とを含み、
給電点を通り基板に垂直な軸線に関してほぼ線対称に構成される地中探査レーダ用アンテナ。」の点で一致し、本願発明における「第1部分の遊端部間の第1方向に沿う長さは550〜620mm」との数値的限定が、引用発明中に存在しない点でのみ相違する。
(3)判断
そこで、この相違点について検討する。
アンテナの設計に際して、当業者は、使用する周波数、必要な利得や感度、使用形態等を考慮して、理論的にその最適寸法を追求するばかりでなく、寸法等のパラメータを変更しながら、必要な特性が得られるかどうかの実験やシミュレーションをして、最適値を見いだしている。このことは、例えば、森田 清 他2名著「マイクロ波アンテナ」(株式会社 オーム社、昭和34年1月10日発行)第140頁等を参照すれば明らかである。
してみると、引用発明においても、その実施に際して、各寸法を決めずに、アンテナを作成できないことが明らかな以上、測定実験やシミュレーションを行って、本願の図11に示されるごときデータを取得し、その結果に基づいて、最適数値を決めるのは、当業者が当然なすべきことにすぎない。
一方、本願発明中の「550〜620mm」との数値限定は、本願の発明の詳細な説明によれば、実験測定された、図11の特性をその根拠としているものと認めれられるが、使用される周波数は500MHzの場合だけであって、全ての周波数でこの特性になるものとは考えられず、その一方で、本願発明中には、使用周波数に関して、何の限定もされていない。また、この図11の特性にはなだらかな変化はあるものの、「550〜620mm」とそれ以外で、特性上顕著な変化が発生しているものとも認められない。そして、本願出願前公知の特開平7-50504号公報の段落番号【0015】に、同様の装置で「500mm」(50cm)の例が記載されているように、同程度の寸法が周知ということもできる。
したがって、本願発明中の「550〜620mm」の限定は、発明の実施に際しての実験やシミュレーションで見いだしうる程度の単なる限定乃至設計的事項にすぎず、格別な作用・効果も奏しないから、上記相違点に格別な創意工夫を認めることはできない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明について特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-26 
結審通知日 2005-05-10 
審決日 2005-05-27 
出願番号 特願平7-244567
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 圭一郎右田 勝則  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 野元 久道
浜野 友茂
発明の名称 地中探査レーダ用アンテナとそれを用いる地中探査方法  
代理人 西教 圭一郎  

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