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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1119370 |
審判番号 | 不服2003-13413 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-08-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-14 |
確定日 | 2005-07-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 16931号「メモリ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月 6日出願公開、特開平11-212864〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成10年1月29日の出願であって、平成17年4月8日付け手続補正書で補正された明細書および図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 所定量のデータの処理に必要なメモリ容量を複数の分割メモリに分割して利用するメモリ装置において、 上記複数の分割メモリは、所定の処理期間中に処理されるデータを記憶している第1のメモリグループと、上記所定の処理期間中に入力されてくるデータを書き込んで記憶する第2のメモリグループと、を上記所定の処理期間が経過した時点で、上記第1のメモリグループのうちの少なくとも1つの分割メモリを除いて交互に切り換え、 上記除かれた分割メモリに書き込まれた一部のデータは、上記切り換え前後でそれぞれ読み出されて所定の処理に利用されることを特徴とするメモリ装置。」 2.引用例 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-52380号公報(以下、引用例1という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 (A)「 記録ディスクに形成された同心円状の各トラックを複数のセクタに分割するとともに、前記各セクタに、音声信号を時間圧縮して順次に分割記録する圧縮音声信号記録装置において、 音声信号を1セクタに新記録する所定量ずつに分割して形成された1セクタ量の音声データの(N-l)/N(N>1)を記憶する容量の2個の主メモリおよび残りの1/Nを記憶する容量の2個の副メモリと、 1セクタ量の音声データの最初の(N-l)/N、残りの1/Nの一方の前記主、副メモリへの順次書込みと、つぎの1セクタ量の音声データの最初の(N-l)/N、残りの1/Nの他方の前記主、副メモリへの順次書込みとを交互に行なわせる書込み制御手段と、 前記一方の主メモリの書込み中の前記一方の副メモリ、前記他方の主、副メモリの順次読出しと、前記他方の主メモリの書込み中の前記他方の副メモリ、前記一方の主、副メモリの順次読出しとを書込みより高速で交互に行なわせる読出制御手段と、 (中略) を備えたことを特徴とする圧縮音声信号記憶装置。」(公報1頁左下欄5行〜右下欄14行:特許請求の範囲) (B)「また、第1、第2主メモリ(8)、(9)は、制御信号Wm1、Wm2のハイレベルによつてそれぞれ書込みに制御され、第1、第2副メモリ(12)、(13)は、制御信号Ws1、Ws2のハイレベルによつてそれぞれ書込みに制御される。 したがつて、tx〜taの最初の期間Taには、制御信号Wm1のハイレベルによつて、最初の期間Twmの音声データ、すなわち期間T4のオーバラツプ期間T3だけ短い部分に圧縮記録される音声信号のデータが、第1主メモリ(8)に書込まれるとともに、制御信号 Ws1 のハイレベルによつて、残りの期間Twsの音声データ、すなわち残りのオーバラツプ期間T3の長さの部分に圧縮記録される音声信号のデータが、第1副メモリ(12)に書込まれる。 また、ta〜tbの2番目の期間Taには、制御信号Wm2のハイレベルによつて、期間Twm の音声データが第2主メモリ(9)に書込まれるとともに、制御信号Ws2のハイレベルによつて、残りの期間Twsの音声データが第2副メモリ(13)に書込まれる。 以降、同様の動作のくり返しにより、3番目の期間Taの1セクタ量の音声データは、第1主、副メモリ(8)、(12)に分割して書込まれ、4番目の期間Taの1セクタ量の音声データは、第2主、副メモリ(9)、(13)に分割して書込まれる。」(公報8頁左上欄9行〜右上欄12行) (C)「そして、セクタ選択信号によつてセクタ(S0)が指定される期間Twm には、第3図(b)に示すように、生成回路(25)が、記録期間Ts0にハイレベルの記録ゲート信号Grを生成して出力し、セクタ選択信号によつてセクタ(S1)〜(S3)それぞれが指定される期間Twm には、同図(c)、(d)、(c)に示すように、生成回路(25)が、記録期間Tsl、Ts2、Ts3それぞれにハイレベルの記録ゲート信号Grを生成して出力する。 なお、各記録期間Ts0〜Ts3は、それぞれ第4図(b)のフォーマットの約4msec、すなわち期間Twmより十分短い時間である。 そして、第2主メモリ(9)に音声データが書込まれる期間Twmには、第2副メモリ(13)および第1主、副メモリ(8)、(12)に保持された音声データを読出して奇数番目のセクタ(S0)または(S2)に圧縮音声信号を記録し、第1主メモリ(8)に音声データが書込まれる期間Twmには、第1副メモリ(12)および第2主、副メモリ(9)、(13)に保持された音声データを読出し、偶数番目のセクタ(S1)または(S3)に圧縮音声信号を記録するため、制御回路(28)は、入力された記録ゲート信号Grにもとづき、つぎに説明するタイミングで各制御信号Rm1、Rm2、RS1、Rs2を形成して出力する。」(公報8頁右下欄12行〜9頁左上欄14行) 上記(A)及び図1によれば、主メモリは副メモリの(N-1)倍の容量をもち、主メモリと副メモリによって一組のメモリを構成している。 上記(B)及び図2を参酌すると、期間Taは、主メモリに書き込みが行われる期間Twmと副メモリに書き込みが行われるTws期間からなっている。 上記(B)(C)及び図2によれば、副メモリは1セクタ量の音声データの後端の一部のデータを記憶し、次の1セクタ量の音声データとのオーバーラップ部分として読み出される。 以上より、引用例1には以下の発明が記載されている。 音声信号を時間圧縮して順次記録する圧縮音声信号記録装置に用いるメモリ装置であって、 1セクタ量の音声データの(N-l)/N(N>1)を記憶する容量の主メモリおよび残りの1/Nを記憶する容量の副メモリからなる2組のメモリを有し、 前記2組のメモリは、所定の処理期間中には一方の組の主メモリ(8)と副メモリ(12)に順次書き込み、前記所定の処理期間を経過した時点で他方の組の主メモリ(9)と副メモリ(13)に順次書き込みを行い、 前記所定の処理期間中、一方の組の主メモリ(8)への書き込み中に前記一方の組の副メモリ(12)、前記他方の組の主メモリ(9)、副メモリ(13)から順次読み出し、前記所定の処理期間経過後の所定期間中、他方の組の主メモリ(9)への書き込み中に前記他方の組の副メモリ(13)、前記一方の組の主メモリ(8)、副メモリ(12)から順次読み出すように制御され、 オーバーラップ部分となる副メモリに書き込まれた一部のデータは、前記所定の処理期間を経過した時点の前後でそれぞれ読み出されて所定の処理に利用されることを特徴とするメモリ装置。 3.対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下、前者という)と引用例1に記載された発明(以下、後者という)とを比較する。 後者では、1セクタ量の音声データを主メモリと副メモリからなる一組のメモリで記憶しているから、2組のメモリでは2セクタ量の音声データを記憶することになり、前者における「所定量のデータの処理に必要なメモリ容量」をもつことになる。 また、後者では、主メモリは副メモリの(N-1)倍の容量をもつから、後者の「副メモリ」は前者の「分割メモリ」に対応し、更に、後者の「2組のメモリ」は前者の「複数の分割メモリ」に対応している。 後者では所定の処理期間を経過した時点で一方の組から他方の組に、又は他方の組から一方の組に書き込みを切り換えているから、前者の「処理されるデータを記憶しているメモリグループと入力されてくるデータを書き込んで記憶するメモリグループを交互に切り換える」ことを行っている。 また、前者において切り換えから除かれた分割メモリにはデータのオーバーラップ部分が記憶されているので、前者の「除かれた分割メモリ」は後者「オーバーラップ部分となる副メモリ」と対応している。 してみると、両者は次の点で一致している。 所定量のデータの処理に必要なメモリ容量を複数の分割メモリに分割して利用するメモリ装置において、 上記複数の分割メモリは、所定の処理期間中に処理されるデータを記憶しているメモリグループと入力されてくるデータを書き込んで記憶するメモリグループを、所定の処理期間が経過した時点で、交互に切り換え、 書き込まれた一部のデータは、上記切り換え前後でそれぞれ読み出されて所定の処理に利用されることを特徴とするメモリ装置 一方、両者は以下の点で相違している。 後者では、オーバーラップする部分となる副メモリがメモリグループに含まれ、所定の処理期間を経過した時点で2組のメモリは交互に切り換えられるのに対し、前者では、オーバーラップ部分を記憶した分割メモリが、所定の処理期間を経過した時点で、第1のメモリグループから第2のメモリグループに切り換えられる分割メモリから除かれる点、 4.相違点についての検討 本願の明細書に記載された実施例において、複数の分割メモリから読み出されて行われる処理としてMDCTが示され、MDCTではサウンドグループ(SG)の境目においてデータを若干ダブらせて処理を行うことが記載されている。前者においては切り換えから「除かれた分割メモリ」にはサウンドグループ間でダブらせるデータが記憶されることになり、複数の分割メモリ全体の容量は、サウンドグループのデータを記憶するメモリ容量とダブらせた部分を記憶する「除かれた分割メモリ」の容量を合計した容量とになる。これに対し、後者では、オーバーラップさせる部分(ダブらせる部分と同義)は2セクタ量を記憶する2組のメモリ内に存在する副メモリであり、オーバーラップさせる部分のデータを記憶する余分のメモリを有していない。これは、後者においては読み出しの速度が書き込みの速度より速く、主メモリに書き込みを行っているうちに自身の副メモリ、他方の主メモリ、副メモリの読み出しが終了してしまうために、オーバーラップさせるデータを記憶するために余分のメモリを設ける必要がないからである。このように、書き込みと読み出しの速度差に着目し、オーバーラップ部分のデータを格納するメモリを書き込み期間の後半の副メモリを用いるようにした当業者にとって、2度読み出す必要のある場合にオーバーラップ部分のデータを記憶する余分のメモリを設ければ良いことは当然に念頭にあることにすぎない。そして、余分のメモリをもてば書き込みの期間の空き時間を利用して読み出しを行うという工夫もいらず、タイミング調整が容易になり、融通が利くようになることは自明のことである。従って、オーバーラップした部分のデータを記憶した分割メモリを第1のメモリグループ(読み出して処理に利用)から第2のメモリグループ(書き込みで記憶)に切り換えるときに、メモリグループの切り換えから除くようにすることは容易に為し得ることである。 5.むすび したがって、請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-04-28 |
結審通知日 | 2005-05-10 |
審決日 | 2005-05-23 |
出願番号 | 特願平10-16931 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野仲 松男、多賀 実 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
松浦 功 堀江 義隆 |
発明の名称 | メモリ装置 |
代理人 | 芝野 正雅 |