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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B09B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B09B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B09B
管理番号 1119400
異議申立番号 異議2003-73337  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-01-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-05-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3455363号「重金属固定剤の安定化方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3455363号の訂正後の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3455363号の請求項1に係る発明についての出願は、平成8年4月17日(優先権主張 平成7年4月17日、日本国)に特許出願され、平成15年7月25日にその特許の設定登録がなされたところ、村田博(以下、必要に応じて「申立人A」という)、三浦邦彦(以下、必要に応じて「申立人B」という)、伊勢川和江(以下、必要に応じて「申立人C」という)、三洋化成工業株式会社(以下、必要に応じて「申立人D」という)より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成16年9月6日に訂正請求がなされ、その後、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年4月14日に、上記平成16年9月6日付け訂正請求が取下げられ、新たに同日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を上記平成17年4月14日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
請求項1を、「【請求項1】ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その重金属固定剤にその主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)を含有させることを特徴とする重金属固定剤の安定化方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
明細書の段落【0004】の「0.1〜100モル%のアミン」(本件特許掲載公報第2頁第3欄第9行)を、「0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落【0024】の「例えばジメチルアミン、ジエチルアミン」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第32〜33行)を、「例えばジエチルアミン」と訂正し、また「イミノビスプロピルアミン、ポリエチレンイミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン」(本件特許掲載公報第3頁第6欄第29〜31行)を、「イミノビスプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落【0025】の「0.1〜100モル%」(本件特許掲載公報第3頁第6欄第35行)を、「0.5〜100モル%」と訂正する。
1-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、詳細に検討すると、a-1.「0.1〜100」を「0.5〜100」に訂正する、a-2.「アミン」を「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」と訂正し、さらにアミンから「高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミン」を除く訂正をする、というものである。
上記a-1.は、数値範囲を縮小するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、明細書の「好ましくは0.5〜」(本件特許掲載公報第3頁第6欄第35〜36行)の記載からみて、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記a-2.は、アミンを「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」と限定し、かつ「高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミン」を除いたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」という限定は明細書の段落【0015】、【0024】、【0026】の記載からみて、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、「高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミン」を除く訂正は、刊行物乃至先願明細書に記載された発明と同一であるとの特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2を根拠条文とする取消理由をまぬがれるためであるから適法であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項b〜dは、上記訂正事項aの訂正に伴って、訂正された特許請求の範囲の記載に整合させて明細書の記載を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
1-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
3-1.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1に係る発明は訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記1-1.(1)のとおりのものである(以下、必要に応じて「本件訂正発明」という)。

3-2.取消理由通知の概要
当審の取消理由通知の概要は、(1)請求項1に係る発明は刊行物1、2、18に記載された発明であるか、刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである、(2)請求項1に係る発明は先願明細書1〜3に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が上記先願明細書1〜3に記載された発明者と同一であるとも、また本件の出願時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、請求項1に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである、(3)本件明細書は記載不備であるから、請求項1に係る発明の特許は特許法第36条第4項乃至第6項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである、というものである。

3-3.特許法第29条違反(上記3-2.(1))について
3-3-1.刊行物の記載内容
(1)刊行物1:特開平1-218672号公報:申立人Aの提出した甲第1号証、申立人Dの提出した甲第6号証
(a)「1.有害なガスおよび重金属類を含むダストを含有する焼却炉からの排ガスにアルカリ剤を添加することによって、前記排ガス中の有毒ガスと反応させ、その反応物およびダストを飛灰として捕集し、このようにして捕集された前記重金属類類を含有するアルカリ含有飛灰に、キレート化剤を添加しそして水分の存在下において混合し、得られた混合物中の液相pHが12以下となるように前記水分の含有量を調整し、前記重金属類と前記キレート化剤との反応により生成したキレート化合物によって、前記アルカリ含有飛灰中の重金属類を、水に対し不溶化したことを特徴とする、アルカリ含有飛灰の処理方法。」(請求項1)
(b)「4.前記アルカリ含有飛灰中に含有されている複数の重金属に適合する複数の前記キレート化剤を使用する、請求項1から3の何れか1つに記載のアルカリ舎有飛灰の処理方法。」(請求項4)
(c)「5.前記アルカリ含有飛灰に、前記キレート化剤と共に高分子化合物を添加する、請求項1から4の何れか1つに記載のアルカリ含有飛灰の処理方法。」(請求項5)
(d)「この発明において使用するキレート化剤は、1種以上のキレート形成基を有し、重金属と反応して水に不溶性のキレート化合物を形成する水溶性の低分子化合物または高分子化合物であるか、あるいは、水に不溶性の低分子化合物または高分子化合物であることが必要である。前者のキレート化剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸基、・・・を有する化合物が使用され、後者のキレート化剤としては、例えば、アミノ酸基(グリシン基、イミノジ酢酸基等)、ポリアミノ基、ホスホメチルアミノ基等を有する化合物が使用される。」(4頁左上欄第2〜14行)
(e)「上述のように、アルカリ含有飛灰にキレート化剤を添加して、飛灰中に含有されている重金属類が溶出しないように安定化するに際し、複数の重金属の各々に適合する複数のキレート化剤を使用すれば、重金属類の安定化が促進され、または、キレート化剤の添加量を低減することができる。即ち、キレート化剤として、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムおよびホスホメチルアミノ基を有するキレート樹脂の2種類をそれぞれ0.5当量づつ使用した場合と、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム1種類のみを1当量使用した場合と、未処理の場合の溶出液中の重金属類の含有量を調べたところ、第2表の通りであった。 第2表から明らかなように、上記2種類のキレート化剤を使用した場合には、1種類のキレート化剤を使用した場合に比べて、特にZnの溶出量が格段に低下した。」(4頁右下欄第4〜20行)
(f)「キレート化剤と高分子化合物の1種または2種以上、あるいは、高分子のキレート化剤を使用すれば、飛灰中に含有されている重金属類の安定化の促進、および、キレート化剤添加量の低減化を図ることができる。即ち、飛灰に対するキレート化剤の添加により、安定したキレート化合物が生成しても、微粒のキレート化合物の粒子は、濾紙を通過して、見かけ上溶出する可能性がある。しかしながら、キレート化剤と共に高分子化合物を添加し、または、高分子のキレート化剤を使用すると、上述の微粒のキレート化合物の粒子は高分子のネットワークにより封じ込められ、従って、その溶出が確実に防止される。」(第5頁左下欄第12〜20行)
(g)「高分子化合物としては、添加後に飛灰中の成分との相互作用により不溶化または難溶化し、キレート化合物を捕集する作用を有する水溶性高分子化合物またはラテックス状態で水に分散された高分子化合物であって、例えば、・・・、ポリアミン系およびセルロース系等の水溶性高分子化合物、または、・・・、ポリアミン系、・・・等のポリマーラテックスが使用される。」(第5頁左下欄第1〜11行)
(h)「この発明によれば、ごみ焼却炉から発生し、捕集したアルカリ含有飛灰中の重金属類を、水に不溶化し、前記重金属類の溶出を、長期にわたり安定して防止し得る工業上有用な効果がもたらされる。」(第7頁左上欄第6〜10行)
(2)刊行物2:特開平4-267982号公報:申立人Aの提出した甲第2号証
(a)「固体状物質に、金属捕集剤と水溶性高分子とを添加し、固体状物質中に存在する金属を固定化することを特徴とする固体状物質中の金属固定化方法。」(請求項1)
(b)「固体状物質が、飛灰、鉱滓、土壌、汚泥のいずれかである請求項1記載の固体状物質中の金属固定化方法。」(請求項2)
(c)「これらの金属のうち特に水銀、カドミウム、鉛、亜鉛、銅、クロム等の人体に有害な重金属に対しては厳しい規制が設けられている。」(第2頁第1欄第21〜23行)
(d)「本発明において用いる金属捕集剤としては、通常の廃水処理に用いられている金属捕集剤を用いることができる。例えば、ジチオカルバミン酸基(-CSSH基)またはその塩を有する化合物、チオール基(-SH基)を有する化合物、アミノ基及びカルボン酸基を有する化合物等が挙げられる。また一硫化ナトリウム、二硫化ナトリウム、三硫化ナトリウム、四硫化ナトリウム、五硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム等も金属捕集剤として用いることができる。」(第2頁第2欄第26〜34行)
(e)「上記金属捕集剤とともに用いる水溶性高分子としては、平均分子量1000〜1000000程度を有する水溶性の高分子が好ましい。このような水溶性高分子としては、例えばポリアクリルアミド、或いはポリアクリルアミドの部分ケン化物、マンニッヒ変性物、ホフマン分解物、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリジメチルジアリルアンモニウムブロマイド、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダリン、アルキレンジクロライド-アルキレンポリアミン重縮合物、アニリン-ホルマリン重縮合物、アスパラギン酸-ヘキサメチレンジアミン重縮合物、アクリルアミド-ジアルキルアミノエチルアクリレート共重合体或いはその四級化物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、にかわ、ゼラチン、ペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、コラーゲン蛋白、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類、キトサン、プルラン、セルローズサルフェート、硫酸セルローズアセテート、澱粉、リン酸澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、アセチル澱粉、カチオン澱粉、デキストリン、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウムクロリド、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウムクロリドとスチレンとの共重合体、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリルアミド-アクリル酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-クロトン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド?メタクリル酸共重合体、(メタ)アクリルアミド?マレイン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-フマル酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-シトラコン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-ビニルスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-アリルスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド?スチレンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド?2-アクリルアミドエタンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体等が挙げられる。」(第3頁第3欄第26行〜第4欄第16行)
(f)「上記金属捕集剤と水溶性高分子の使用割合は、金属捕集剤に対し、水溶性高分子を0.01〜10倍量用いるのが好ましい。また金属捕集剤の添加量は固体状物質中に含まれる金属量によっても異なるが、固体状物質に対し、0.01〜20重量%である。金属捕集剤と水溶性高分子とは混合して用いてもよいが、別々に用いても良い。」(第3頁第4欄第33〜39行)
(g)「また本発明方法は、特に水銀、カドミウム、亜鉛、銅、クロム、砒素、金、銀、白金、バナジウム、タリウム等やその化合物の固定化に優れ、これらを含む固体状物質の処理に好適である。」(第3頁第4欄第46〜50行)
(h)「以上説明したように本発明方法は、金属捕集剤と水溶性高分子とを併用して飛灰、鉱滓、土壌、汚泥等の固体状物質中に存在する金属を固定化する方法を採用したことにより、固体状物質中の金属を確実に固定化することができる。また本発明方法により金属を固定化した固体状物質は、酸性雨等の低pHの水と接触した場合でも固定化された金属が遊離して溶出する虞がなく、きわめて安全性の高い金属固定化方法である。」(第5頁第7欄下から第4行〜第8欄最終行)
(3)刊行物3:「環境施設」工業出版社 第58号 第2〜14頁(平成6年12月1日):申立人Aの提出した甲第3号証
(a)「3.薬剤添加(液体キレート)混練法 飛灰の安定化処理法として,簡単かつ有効な方法を目標として開発されてきた。本方式はは重金属固定剤,凝集剤等の薬品,さらに必要に応じてpH調整剤を添加して加湿混練するもので,重金属類の溶出防止に十分な効果が得られる。」(第2頁右欄)
(b)「5.液体キレート(重金属固定剤)の種類 集塵灰の飛灰処理の方法の一つに液体キレートによる処理法(廃棄物処理法 施行令第4条に規定する薬剤処理に該当)がある。この薬剤処理用に用いられている液体キレートは,現在市場に出回っているカタログなどによると,表-3に示す3種類のものが代表的と見られる。・・・5-1 ピロリジン系イオウ化合物とは(重金属固定剤)」(第8頁左欄)
(c)第8頁表-3(重金属固定剤液体キレートの種類と構造)には、ジチオカルボキシル基を有する、ピロリジン系イオウ化合物、イミン系イオウ化合物、カルバミン酸系イオウ化合物が記載されている。
(d)第9頁表-4(液体キレートの性状及びコスト比較)には、イミン系の特徴として「硫化水素ガス発生」、カルバミン酸系の特徴として「硫化水素ガス発生(少々)」と記載されている。
(4)刊行物4:特開平1-123614号公報:申立人Aの提出した甲第4号証
(a)「本発明は、製鉄業におけるコークス炉・高炉ガス、石油精製業における種々の発生ガス、さらに種々の産業における煙道ガス等のガス中の有機硫黄化合物の除去方法に関し、特に乾式法による除去方法に関する。」(第1頁右下欄第10〜14行)
(b)「まず細孔容積の大きいことは、ガス中の有機硫黄化合物を反応吸収する活性がある第2級アミンを多く吸液する可能性のあることにつながる。」(第3頁左上欄第15〜18行)
(c)「<吸収反応>
2R2NH+CS2→R2NC(=S)SH2NR2 (R2N-CS2)-(R2NH2)+」(第4頁左上欄)
(5)刊行物5:G.D.THORN他著「THE DITHIOCARBAMATES AND RELATED COMPOUNDS」ELSEVIER PUBLISHING COMPANY 第37、228〜233頁(1962):申立人Aの提出した甲第5号証、申立人Bの提出した甲第2号証
(a)「N-置換ジチオカルバミン酸 RNHCSSH又はR2NCSSHは、通常アルコール又は水溶液中でCS2と1級又は2級アミンと反応によりアンモニウム塩として形成される。アミンを保存するため、アルカリ金属水酸化物を使用し、塩を形成させるのは通常の手段である。
RNH2+CS2+NaOH→RNHCSSNa+H2O」(第7頁第9〜15行 訳文 以下、同じ)
(b)第230頁の第4図には、CS2は第2級アミンと反応してジチオカルバミン酸ナトリウムを生成すること、ジチオカルバミン酸ナトリウムは分解してCS2を発生することが図示されている。
(6)刊行物6:特開平6-79254号公報:申立人Bの提出した甲第1号証、申立人Dの提出した甲第15号証
(a)「所要量の水、及びトリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、又はN1,N2-ビス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、若しくはそれらの塩とを、飛灰に添加し混練することを特徴とする飛灰の無害化処理方法。」(請求項1)
(b)「本発明においてキレート化剤の添加量は、飛灰中の重金属の含有量や重金属の形態により異なるが、通常、飛灰に対して0.1〜10重量%である。」(第2頁第2欄第19〜21行)
(7)刊行物7:「化学大辞典 6」共立出版株式会社 第830〜831頁(昭和38年12月15日):申立人Bの提出した甲第3号証
(a)「二硫化炭素・・・きわめて引火性が強く、有毒であり、消毒、殺虫の作用をもつ。・・・アミン、ことに第二アミンによってジチオカルバミン酸塩をつくる:(C2H5)2NH+CS2+NaOH→(C2H5)2NCSSNa」(二硫化炭素の項)
(8)刊行物8:特開昭62-286963号公報:申立人Cの提出した甲第1号証
(a)「式(1)及び式(2)で示すアルキレンビスジチオカルバミン酸塩の水溶液にエチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸又はそれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩を1種又は2種以上添加し、これらをアルカリ性水溶液としたことを特徴とする安定化されたアルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液。・・・略・・・」(請求項1)
(b)「本発明者らは、このような状況を克服するために鋭意研究した結果、pH7.5以上に調節されたアルカリ性のアルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液に、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸又はそれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩を1種又は2種以上添加(添加量:0.001〜10重量%)すると、該水溶液の薬効を損うことなく、低温のみならず常温における結晶析出又は変色を防止することを見出した。この方法は、添加剤の添加量が少量であることから経済的である。」(第2頁左下欄第4〜14行)
(c)「実施例1.200mlのガラス瓶に20重量%濃度のエチレンビスジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を100ml入れ、そこへエチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム塩(安定化剤)を表-1に記載の所定量を添加し、」(第3頁右上欄第9〜14行)
(9)刊行物9:特開昭48-61428号公報:申立人Cの提出した甲第2号証
(a)「モノ置換ジチオカーバミン酸アンモニウム水溶液にアルキル置換アミンを共存せしめることを特徴とするモノ置換ジチオカーバミン酸水溶液の安定化法。」(特許請求の範囲第1項)
(b)「これ等は農業用としては、殺(判読不能の一字)剤,殺虫剤、殺(判読不能の一字)虫剤等、工業用としてはスライムコントロール用、殺(判読不能の一字)用等として使用されている。」(第1頁右下欄第7〜10行)
(c)「そこで本発明者等はモノ置換ジチオカーバミン酸アンモニウム水溶液を低温時に保存、貯蔵し、該ジチオカーバメイト体の結晶の析出を防止せんとする研究を行った結果、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン等のアルキル置換アミンを添加すれば、すぐれた効果を奏し、長時間にわたって結晶化を防止しえることを見出した。」(第2頁左上欄第5〜12行)
(d)「実施例1 N-メチルジチオカーバミン酸アンモニウムの濃度を50%として、該有効成分に対して3.5および10%のものメチルアミン,トリエチルアミン,およびジエチルアミンをそれぞれ添加、撹拌し、均一な水溶液とした。」(第2頁右下欄第1〜5行)
(10)刊行物10:特開平1-218673号公報:申立人Cの提出した甲第3号証
(a)「焼却炉から発生し捕集された、有害な重金属類を含有する飛灰に、キレート化剤および高分子化合物を添加しそして水分の存在下において混合し、前記重金属類と前記キレ-ト化剤との反応により、生成し、且つ、高分子のネットワークにより封じ込められたキレート化合物によって、前記飛灰中の重金属類を、水に対し不溶化したことを特徴とする、飛灰の処理方法。」(請求項1)
(b)「前者のキレート化剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸基、チオール基、ザンセート基およびチオウレイド基等を有する化合物が使用され」(第3頁右上欄第16〜18行)
(c)「しかしながら、キレート化剤と共に高分子化合物を添加し、・・・上述の微粒のキレート化合物の粒子は高分子のネットワークにより封じ込められ、従って、その溶出が確実に防止される。高分子化合物としては、添加後に飛灰中の成分との相互作用により不溶化または難溶化し、キレート化合物を捕集する作用を有する水溶性高分子化合物またはラテックス状態で水に分散された 高分子化合物であって、例えば・・・ポリアミン系およびセルロース系等の水溶性高分子化合物、または、・・・ポリアミン系、スチレンブダジエン系等のポリマーラテックスが使用される。」(第3頁左下欄第13行〜右下欄第9行)
(d)「即ち、キレート化剤として、・・・ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(1当量)1種類のみを使用した場合と・・・」(第4頁左上欄第16〜19行)
(11)刊行物11:特開昭64-90083号公報:申立人Dの提出した甲第7号証
(a)「(1)ポリアミン類とエピハロヒドリンとが重縮合した重縮合ポリアミンの活性水素原子と置換した少なくとも1個のジチオカルボキシ基及び/又はその塩類を置換基として有する金属捕集剤の水溶液を、重金属或いはその化合物を含有する土壌又は固体状廃棄物に添加し、土壌又は固体状廃棄物中の重金属或いはその化合物を不溶化することを特徴とする土壌又は固体状廃棄物中の重金属類の固定化法。」(請求項1)
(b)「(2)固体状廃棄物がEP灰或いは重金属スラッジである特許請求の範囲第1項記載の重金属類の固定化法。」(請求項2)
(c)「実施例1〜10 第1表に示すモル比でポリアミン類、エピハロヒドリン及び二硫化炭素を反応せしめて得られた金属捕集剤・・・」(第3頁右下欄第2〜5行)
(d)第4頁第1表、実施例8には、ポリエチレンイミン(MW=70000)1.0モル、エピクロルヒドリン0.01モル及び二硫化炭素0.9モルを反応せしめて得られた金属捕集剤が記載されている。
(e)「以上説明したように本発明方法によれば土壌やEP灰や重金属スラッジ等の固体状廃棄物中の有害重金属類を確実に固定化して溶出を防止でき、地中、海中等へ廃棄された固体状廃棄物からの土壌中、海中への重金属類の溶出や、土壌中に存在する重金属類の生物体内への移行を確実に防止できる。また本発明方法ではポリアミン類にエピハロヒドリンが重縮合した骨格構造を有する金属捕集剤を用いたため、本発明方法で処理を行なった場合には重縮合していないポリアミン骨格を有する金属捕集剤を用いた場合に比べて酸性液にさらされても固定化された重金属類が溶出する虞れがなく、近年問題となっている酸性雨によって固定化された重金属類が溶出してくる等の問題がない等の種々の効果を有する。」(第4頁右下欄第2〜16行)
(12)刊行物12:特開平1-99679号公報:申立人Dの提出した甲第8号証
(a)「(1)ポリアミン類1分子当たり、該ポリアミン類の活性水素原子と置換した置換基として-RX(ただしXはCOOH、Rは(CH2)n〔ただしnは1〜4の整数〕、CH2CH(CH3)、又はCH2CH(CH2COOH))あるいはこれらの塩か、ヒドロキシアルキル基の少なくとも一方を少なくとも1個有し、且つ少なくとも1個のジチオカルボキシ基あるいはその塩を置換基として有する金属捕集剤の水溶液を、重金属或いはその化合物を含有する土壌又は固体状廃棄物に添加し、土壌又は固体状廃棄物中の重金属或いはその化合物を不溶化することを特徴とする土壌又は固体状廃棄物中の重金属類の固定化法。」(請求項1)
(b)「(2)固体状廃棄物がEP灰或いは重金属スラッジである特許請求の範囲第1項記載の重金属類の同定化法。」(請求項2)
(c)第5頁第1表、実施例4には、ポリエチレンイミン(MW=70000)1.0モル、モノクロロ酢酸ナトリウム3モル及び二硫化炭素0.9モルを反応せしめて得られた金属捕集剤が記載されている。
(d)「以上説明したように本発明方法によれば土壌やEP灰や重金属スラッジ等の固体状廃棄物中の有害重金属類を確実に固定化して溶出を防止でき、地中、海中等へ廃棄された固体状廃棄物からの土壌中、海中への重金属類の溶出や、土壌中に存在する重金属類の生物体内への移行を確実に防止できる。また金属補集剤としてジチオカルボキシ基の他に・・・を有するを用いたことによって、特に含水スラッジ中の重金属又はそれらの塩に対しても優れた固定性を発揮する等の効果を有する。」(第6頁左上欄第10行〜右上欄第3行)
(13)刊行物13:特開平4-267982号公報:申立人Dの提出した甲第9号証
(a)「固体状物質に、金属捕集剤と水溶性高分子とを添加し、固体状物質中に存在する金属を固定化することを特徴とする固体状物質中の金属固定化方法。」(請求項1)
(b)「固体状物質が、飛灰、鉱滓、土壌、汚泥のいずれかである請求項1記載の固体状物質中の金属固定化方法。」(請求項2)
(c)「これらの金属のうち特に水銀、カドミウム、鉛、亜鉛、銅、クロム等の人体に有害な重金属に対しては厳しい規制が設けられている。」(第2頁第1欄第21〜23行)
(d)「本発明において用いる金属捕集剤としては、通常の廃水処理に用いられている金属捕集剤を用いることができる。例えば、ジチオカルバミン酸基(-CSSH基)またはその塩を有する化合物、チオール基(-SH基)を有する化合物、アミノ基及びカルボン酸基を有する化合物等が挙げられる。また一硫化ナトリウム、二硫化ナトリウム、三硫化ナトリウム、四硫化ナトリウム、五硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム等も金属捕集剤として用いることができる。上記ジチオカルバミン酸基またはその塩を有する化合物としてはポリアミン、ポリエチレンイミンと二硫化炭素との反応物が挙げられる。これらポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン;フェニレンジアミン、o-,m-,p-キシレンジアミン、3,5-ジアミノクロロベンゼン、ジアミノフェニルエーテル、トリジン、m-トルイレンジアミン等の芳香族アミン;イミノビスプロピルアミン、モノメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、メラミン、1-アミノエチルピペラジン、ピペラジン、 3,3´-ジクロロベンジジン等が挙げられる。更にこれらのポリアミンとエピハロヒドリンとが重縮合した重縮合ポリアミンも使用できる。」(第2頁第2欄第26行〜第3頁第3欄第5行)
(e)「上記金属捕集剤とともに用いる水溶性高分子としては、平均分子量1000〜1000000程度を有する水溶性の高分子が好ましい。このような水溶性高分子としては、例えばポリアクリルアミド、或いはポリアクリルアミドの部分ケン化物、マンニッヒ変性物、ホフマン分解物、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリジメチルジアリルアンモニウムブロマイド、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダリン、アルキレンジクロライド-アルキレンポリアミン重縮合物、アニリン-ホルマリン重縮合物、アスパラギン酸-ヘキサメチレンジアミン重縮合物、アクリルアミド-ジアルキルアミノエチルアクリレート共重合体或いはその四級化物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、にかわ、ゼラチン、ペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、コラーゲン蛋白、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類、キトサン、プルラン、セルローズサルフェート、硫酸セルローズアセテート、澱粉、リン酸澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、アセチル澱粉、カチオン澱粉、デキストリン、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウムクロリド、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウムクロリドとスチレンとの共重合体、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリルアミド?アクリル酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-クロトン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-メタクリル酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-マレイン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-フマル酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-シトラコン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-ビニルスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-アリルスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-スチレンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-2-アクリルアミドエタンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体等が挙げられる。」(第3頁第3欄第26行〜第4欄第16行)
(f)「上記金属捕集剤と水溶性高分子の使用割合は、金属捕集剤に対し、水溶性高分子を0.01〜10倍量用いるのが好ましい。また金属捕集剤の添加量は固体状物質中に含まれる金属量によっても異なるが、固体状物質に対し、0.01〜20重量%である。金属捕集剤と水溶性高分子とは混合して用いてもよいが、別々に用いても良い。」(第3頁第4欄第33〜39行)
(g)「また本発明方法は、特に水銀、カドミウム、亜鉛、銅、クロム、砒素、金、銀、白金、バナジウム、タリウム等やその化合物の固定化に優れ、これらを含む固体状物質の処理に好適である。」(第3頁第4欄第46〜50行)
(h)「以上説明したように本発明方法は、金属捕集剤と水溶性高分子とを併用して飛灰、鉱滓、土壌、汚泥等の固体状物質中に存在する金属を固定化する方法を採用したことにより、固体状物質中の金属を確実に固定化することができる。また本発明方法により金属を固定化した固体状物質は、酸性雨等の低pHの水と接触した場合でも固定化された金属が遊離して溶出する虞がなく、きわめて安全性の高い金属固定化方法である。」(第5頁第7欄下から第4行〜第8欄下から第4行)
(14)刊行物14:特公昭36-3850号公報:申立人Dの提出した甲第10号証
(a)「一般式・・・略・・・(Rは2価の脂肪族鎖、芳香族鎖又は少くとも1個の窒素原子によって分離されている2価の脂肪族炭化水素基を表わし、R′,R”は個々別々の場合は水素原子を表わし、又連結する場合は・・・群と結合して複素環を形成する基を表わす。M1,M2は塩形成群を表わし、共にアンモニウム基又はアミン基又はアンモニウム-アミン基、又はアンモニウム-ナトリウム基、アミン-ナトリウム基である。M3はアンモニウム基、アミン基、又はナトリウムを示し、nは0または整数を示す。)で示される有効成分と、該有効成分の化学反応当量より過剰の塩基性物質とを含有し、更に必要に応じて二硫化炭素と塩基性物質との反応生成物を含有する事を特徴とする安定なる殺菌殺虫作用又は植物に病疫抵抗性を附与する作用を有する農園芸用薬剤」(特許請求の範囲)
(b)「本発明で有効成分として使用する化合物は、アミン類に二硫化炭素を反応せしめて、ジチオカーバミン酸とする合成工程が利用される場合、その原料ポリアミン中に二硫化炭素と反応してジチオカーバミン酸基を形成しうるアミノ基・・・を2個又はそれ以上含有するポリアミンより誘導される多価ジチオカーバミン酸のアンモニウム塩、アミン塩、アンモニウム-アミン塩、アンモニウム-ナトリウム塩、アミン-ナトリウム塩である。Rは次の如き基を表わす。(1)2価の脂肪族又は芳香族鎖・・・。例えば、アミンを出発原料とする場合を例に用いれば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2,3-ジアミノブタン等・・・であり、これらは容易に二硫化炭素と反応してビスジチオカーバミン酸を形成する。・・・、キシリレジアミン類より合成されたジチオカーバメイトも有効であった。・・・、フェニレンジアミンより製取されるフェニレンビスジチオカーバメイト類も効果が高い。・・・ (2)少くとも1個の窒素原子によって分離されている2価の脂肪族又は芳香族鎖 ・・・ポリアミンを出発原料として用いる合成反応の場合では原料ポリアミンがジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(アミノエチル)プロピレンジアミンの如きポリアルキレンポリアミンの場合である。・・・。R’,R”は次の如き基を表わす。R’.R”・・・、連結する場合は・・・群と結合して複素環を形成する。具体的にはピベラジンを原料アミンとする如き場合やトリメチレントリアミン核を形成する如き場合である。」(第1頁右欄下から第7行〜第2頁右欄第1行)
(c)「次に前記有効成分とその存在する系との関係につき説明する。本発明者は本発明薬剤の安定性に関し、系に過剰の塩基性物質を含有せしめる事が非常に重要である事を発見した。具体的代表例としてエチレンビスジチオカーバミン酸ジアンモニウムをあげる事とする。本化合物は結晶水を含まない状態で結晶として単離されるが、これは空気中で不安定である。本化合物を可及的に精製して直ちに純水に溶解せしめ、そのpHを測定すると複雑な現象が見られる。・・・。しかし、実際の工業的条件下で且、製剤としての安定性についてはその水溶液中に過剰の塩基性物質、例えばアンモニア、アミン又は(及び)適当なpH保持調節剤を含有せしめれば殆んど安定性の問題は解決される事が発見された。次にその組成体のpHを保持せしめる方法であるが、最も簡単には使用するアンモニア、アミン等を当量より過剰に用いる事である。他の方法は使用するアンモニア、アミンはほぼ当量とし、他の適当なpH調節剤を用いる事である。・・・。pH調節剤としてはジチオカーバメイトと協力して緩衝的な作用(buffer-action)をする化合物でもよく、又一般塩基性化合物でも使用しうるが、特に不揮発性アミン例えばアルカノールアミン類も安定せるpH保持力を持つ。」(第2頁第4〜31行)
(d)「実施例4 実施例2に於て製取せるpH8〜9附近の製品を加温すればpH7に近ずく、このものにトリエタノールアミンを少量ずつ加えpH7.6,PH8.5,PH9.0,pH9.5の製品とし、変質試験を行う。この場合もpH7の試料は急速に分解を示すがアルカリ側の試料は安定化されており、pHの上昇と共に安定となる。以上の実施例に於て中和に用いるアンモニアやアミンの過剰を用いるpHの調整は操作が簡単なる点を特徴とするも、PH調節剤を別に用いる方法は操作は多少複雑であるが、揮発性の低いpH調節剤や強浸透性を与えたり、其の他の特殊作用を持つ調節剤を選び得、得られた組成体は更に安定化することになり殺菌殺虫性が向上する場合が多い。・・・、単にエチレンビスヂチオカーバミン酸-2-アンモニウム塩のみでなく、後記の如き、本発明組成体は何れも、その安定性に関しては前述と同様の挙動をとる。 エチレンビスヂチオカーバミン酸アンモニウムーナトリウム プロピレンビスヂチオカーバミン酸アンモニウム ヂエチレントリアミンビスヂチオカーバミン酸アンモニウム トリエチレンテトラミンビスヂチオカーバミン酸アンモニウム パラフェニレンビスヂチオカーバミン酸アンモニウム ピペラジンビスヂチオカーバミン酸アンモニウム等」(第3頁右欄第25行〜最終行)
(15)刊行物15:特公昭56-39358号公報:申立人Dの提出した甲第12号証
(a)「脂肪族ポリジチオカルバミン酸又はその塩類からなることを特徴とする金属捕獲剤」(特許請求の範囲)
(b)「本発明の金属捕獲剤は種々の金属を捕獲する能力を利用する用途に使用出来、例えば公害金属またはその化合物を含む工業排出物などをセメント等で固結する際に、それらの金属及びその化合物の溶出を防止するためにセメントに混入し或いは排出物に混入して溶出防止剤として、・・・、或は、金属或はその化合物を含有する泥等と混合して金属或はその化合物を不溶化する不溶化剤として、或は上壌或は灌漑用水に混入せしめてその中に含まれる金属およびその化合物を不溶化して固定し生物体内特に植物体内への金属或はその化合物の移行を防止する生物体内への移行防止剤として使用できる。」(第3頁第5欄第41行〜第6欄第15行)
(c)「本発明の金属捕獲剤はCd,Cr,Zn,As,Mn,Cu,Fe,V,Bi,Ni,Pb,Pd,Ag,Hg等の金属或いはその化合物と反応し不溶性の化合物を形成して固定し、特に耕作土壌と混合した場合にはHg,Cuなどは勿論、Cdに対しても効果を有し、特に弱酸性〜アルカリ性領域に於いて植物体内へのそれらの金属の移行が防止され、水稲、果実蔬菜への公害金属の移行が顕著に抑制される。」(第4頁第7欄第24行〜第8欄第4行)
(d)「金属捕獲剤の合成例1 ・・・フラスコに室温で水酸化ナトリウム80部と蒸留水500部を加えて水酸化ナトリウム水溶液とし、これにエチレンジアミン60部を添加混合して均一化した。この水溶液を30〜40℃に保持しながら二硫化炭素152部を撹拌状態下に滴下反応させた。・・・未反応二硫化炭素を除去する目的で、撹拌状態下で窒素を吹込み、二硫化炭素を留去することにより燈赤色透明状の水溶液を得た。本水溶液中にはナトリウム・エチレンビスジチオカルバメートが31%含有されていた。得られた水溶液はそのまま金属捕獲剤No.1の水溶液として使用できた。」(第4頁第8欄第8〜21行)
(16)刊行物16:特公昭60-57920号公報:申立人Dの提出した甲第13号証
(a)「・・・略・・・で示される分子中に1個のジチオ酸またはその塩類を基として有する芳香族系ジアミンもしくはシクロアルカン系ジアミンで重金属類を処理することを特徴とする重金属捕集方法。」(特許請求の範囲)
(b)「本発明は、廃水中に含有される有害重金属の捕集方法に関するものである。」(第1頁左下欄第20〜21行)
(c)「本発明で使用する重金属捕集材料としては、ジチオカルボキシ-m-フェニレンジアミン、ジチオカルボキシm-キシレンジアミン、ジチオカルボキシ-1・3-ビスアミノ-シクロヘキサン、ジチオカルボキシ-1・3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、およびこれらの塩類(・・・)があげられる。これらは単独もしくは二種以上混合して使用しても良い。これら重金属捕集剤は例えばm-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン等の芳香族ジアミンもしくは1・3-ビスアミノーシクロヘキサン、1・3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のシクロアルカンジアミン30〜80重量%の水溶液となし、これにモル比で反応に要する二硫化炭素を0.5〜1.2倍のNaOH、KOH等の溶解し、液温を30〜50℃に保ちながら、前記アミン1モルに対し1〜3モルの二硫化炭素を0.5〜5時間で液中に滴下し、滴下後60〜80℃で1〜3時間反応した後、未反応の二硫化炭素を減圧下に留去して製造することができる。」(第2頁第3欄第38行〜第4欄第13行)
(17)刊行物17:特開昭50-36366号公報:申立人Dの提出した甲第14号証
(a)「Cu,Zn,Cd,Pb,Hgの1種以上の金属イオンを含有する廃水を中性ないし弱酸性下にポリエチレンイミンのジチオ酸塩で処理することを特徴とする金属イオンの除去方法」(特許請求の範囲)
(b)「本発明はCu,Zn,Cd,Pb,Hgの一種以上の金属イオンを含有する廃水を中性ないし弱酸性下にポリエチレンイミンのジチオ酸塩で処理することを特徴とする金属イオンの除去方法に関する。」(第1頁左下欄第10〜13行)
(c)「本発明に用いられるP.E.Iのジチオ酸塩は下記の方法により製造される。すなわち市販されているP.E.I(分子量は・・・)の水溶液(・・・)に、P.E.I中のN原子に対して約1/10当量以上、好ましくは・・・の二硫化炭素を・・・の温度で、撹拌しながら滴下すると沈殿が析出する。これにアルカリ性の水溶液、例えば水酸化ナトリウム、・・・などのアルカリ水溶液、・・・あるいは例えばメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ピリジン、・・・などのアミン類の水溶液を適宜量添加して、沈殿を再溶解することにより、P.E.Iのジチオ酸塩の水溶液が得られる。」(第2頁左上欄第2〜16行)
(d)「P.E.Iの水溶液(分子量約10万、濃度33Wt%)13.1gに水15mlを添加し、撹拌しながら常温で二硫化炭素5.0gを滴下した。滴下の途中から沈澱が生成した。二硫化炭素を滴下終了後、1N-水酸化ナトリウム水溶液40mlを徐々に加えると大部分の沈殿が溶解した。・・・。(この液の一部を濃縮乾固して得た固体の元素分析値からP.E.I中のNの38%が二硫化炭素と反応していることがわかった)。」(第2頁右下欄第4〜15行)
(18)刊行物18:特開平3-231921号公報:申立人Dの提出した甲第16号証
(a)「(1)分子量500以下のポリアミン1分子当たりに対し、少なくとも1個のジチオカルボキシ基またはその塩を上記ポリアミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリアミン誘導体と、平均分子量5000以上のポリエチレンイミン1分子当たり、少なくとも1個のジチオカルボキシ基又はその塩を上記ポリエチレンイミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリエチレンイミン誘導体とからなることを特徴とする金属捕集剤。」(請求項1)
(b)「(2)請求項1記載の金属捕集剤を重金属を含む飛灰に添加して混練し、飛灰中の重金属を固定化することを特徴とする金属捕集方法。」(請求項(c)「本発明金属補集剤を構成するポリアミン誘導体の骨格をなすポリアミンとしては・・・。上記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、・・・、ジエチレントリアミン、・・・、等のポリアルキレンポリアミン;フェニレジアミン、o-,m-,p-キシリレンジアミン、・・・、ピベラジン、・・・等が挙げられる。これらは単独で用いるのみならず、2種以上混合して用いることもできる。」(第3頁右上欄第9行〜左下欄第14行)
(19)甲第1号証:申立人Dの実験成績証明書II:申立人Dの提出した甲第11号証
(a)特公昭36-3850号公報の実施例4を追試して得られた化合物は、特許第3455363号の特許請求の範囲に記載の、重金属固定剤に関する要件を満たすものであったことが記載されている。

3-3-2.対比・判断
(1-1)刊行物1を主引例とする対比・判断
刊行物1には、キレート化剤に高分子化合物を添加する技術思想と、2種類のキレート化剤を使用する技術思想が記載されているが、ここではキレート化剤に高分子化合物を添加する方を論じ、2種類のキレート化剤を使用する方は下記(1-2)で論ずる。
刊行物1の上記(1)(a)〜(d)、(f)〜(h)に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には「ジチオカルバミン酸基を有するキレート化剤によりアルカリ含有飛灰中の重金属類を水に不溶化処理するにあたり、そのキレート化剤にポリアミン系の高分子化合物を添加するアルカリ含有飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「キレート化剤」は本件訂正発明の「重金属固定剤」に相当しているが、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物1発明では、「ポリアミン系の高分子化合物」を添加している点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物1発明では、「アルカリ含有飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理する方法」である点
これら相違点のうち、相違点(イ)について検討する。
先ず、本件訂正発明では、訂正により「高分子化合物」が除かれた。
加えて、刊行物1に記載された高分子化合物は、「キレート化剤と共に高分子化合物を添加・・・すると、上述の微粒のキレート化合物の粒子は高分子のネットワークにより封じ込められ、従って、その溶出が確実に防止される」(上記(1)(f))ために添加されるものであり、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物1では「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」については記載も示唆もされていない。
刊行物5には、アミンと二硫化炭素と水酸化ナトリウムからジチオカルバミン酸ナトリウムが生成することや、ジチオカルバミン酸ナトリウムから重金属錯塩が形成されることや、ジチオカルバミン酸ナトリウムの分解によって二硫化炭素が発生することは記載されているが、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
刊行物7には、二硫化炭素は第二アミンによってジチオカルバミン酸塩をつくることは記載されているが、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
刊行物2〜4、6、8〜18については、下記(2)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は、刊行物1に記載された発明とすることはできないし、また刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(1-2)刊行物1を主引例とする対比・判断
刊行物1の上記(1)(a)(b)(d)(e)に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には「ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを有するキレート化剤によりアルカリ含有飛灰中の重金属類を水に不溶化処理するにあたり、そのキレート化剤0.5当量に対してホスホメチルアミノ基を有するキレート樹脂を0.5当量添加する、アルカリ含有飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物1’発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物1’発明とを対比すると、刊行物1’発明の「キレート化剤」は本件訂正発明の「重金属固定剤」に相当しているから、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)を含有させているのに対し、刊行物1’発明では、キレート化剤0.5当量に対して0.5当量のホスホメチルアミノ基を有するキレート樹脂を添加している点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物1’発明では、「アルカリ含有飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理する方法」である点
これら相違点のうち、相違点(イ)について検討する。
先ず、本件訂正発明では、訂正により「ホスホメチルアミノ基を有する化合物」が除かれた。
加えて、刊行物1に記載されたキレート樹脂は、「高分子のキレート化剤を使用すると、上述の微粒のキレート化合物の粒子は高分子のネットワークにより封じ込められ、従って、その溶出が確実に防止される」(上記(1)(f))ために添加されるものであり、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物1では「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」については記載も示唆もされていない。
刊行物5、7については上記(1-1)で述べたとおり、また刊行物2〜4、6、8〜18については、下記(2)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は、刊行物1に記載された発明とすることはできないし、刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)刊行物2を主引例とする対比・判断
刊行物2に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物2には「ジチオカルバミン酸基またはその塩を有する金属捕集剤を添加し飛灰等の固体状物質中に存在する重金属を固定化するにあたり、金属捕集剤に0.01〜10倍のアルキレンジクロライド-アルキレンポリアミン重縮合物である水溶性高分子を添加する飛灰等の固体状物質中の重金属固定化法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物2発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物2発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物2発明では、「0.01〜10倍のアルキレンジクロライド-アルキレンポリアミン重縮合物である水溶性高分子」を添加する点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物2発明では、「飛灰等の固体状物質中の重金属固定化法」である点
これら相違点のうち、相違点(イ)について検討する。
先ず、本件訂正発明では、訂正により「高分子化合物」が除かれた。
加えて、刊行物2に記載された水溶性高分子は「固体状物質中の金属を確実に固定化することができる」(上記(1)(h))ために添加されるものであり、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物2では「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」については記載も示唆もされていない。
刊行物1、5、7については上記(1-1)(1-2)で述べたとおり、また刊行物3、4、6、8〜18については、下記(3)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は、刊行物2に記載された発明であるとすることはできないし、また刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(3)刊行物3を主引例とする対比・判断
刊行物3に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物3には「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で飛灰中の重金属を固定化する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物3発明」という)が記載されていると云える。
そこで本件訂正発明と刊行物3発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)を含有させているのに対し、刊行物3発明では、何も添加していない点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物3発明では、「飛灰中の重金属を固定化する方法」である点
これら相違点のうち、相違点(イ)について検討する。
刊行物3には、重金属固定剤で固定化した場合「硫化水素ガス」(上記(3)(d))が発生することは記載されているが、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物3では「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」については記載も示唆もされていない。
ところで、刊行物4に、ガス中の二硫化炭素である有機硫黄化合物を第2級アミンで反応吸収することが記載されている。しかしながら、刊行物3に重金属固定剤を使用した場合に有機硫黄化合物が発生するという技術課題が記載も示唆もされていない以上、刊行物3発明に刊行物4に記載されている第2級アミンを結びつけることはできない。
刊行物1、2、5、7については上記(1-1)〜(2)で述べたとおり、また刊行物6、8〜18については、下記(4)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は、刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(4)刊行物6を主引例とする対比・判断
刊行物6に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物6には「トリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、又はN1,N2-ビス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、若しくはそれらの塩とで重金属含有飛灰を処理する重金属含有飛灰の無害化処理方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物6発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物6発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤」に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物6発明では、「トリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、又はN1,N2-ビス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、若しくはそれらの塩」で処理する点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物6発明では、「重金属含有飛灰の無害化処理方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
刊行物6に記載された「トリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン」、「N1,N2-ビス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン」は両方とも同一分子内にジチオカルボキシル基とアミンを有する分子であるが、上記相違点(イ)から明らかなように、本件訂正発明の「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」からは「ジチオカルボキシル基を有するアミン」が除かれており、かつ、刊行物6には、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物6では「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」について一般的に記載されているわけではないから、上記相違点(イ)の構成は刊行物6から当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
刊行物1〜5、7については上記(1-1)〜(3)で述べたとおり、また刊行物8〜18については、下記(5)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(5)刊行物8を主引例とする対比・判断
刊行物8に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物8には「アルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液にエチレンジアミンテトラ酢酸のナトリウム塩を添加するアルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液の安定化方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物8発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物8発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物8発明では、「アルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液にエチレンジアミンテトラ酢酸のナトリウム塩」を添加する点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物8発明では、「アルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液の安定化方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討すると、
刊行物8には、アルキレンビスジチオカルバミン酸塩水溶液の用途として、何も記載されておらず、つまり、重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理することは記載も示唆もされておらず、ましてや「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていないから、刊行物8の記載から上記相違点(イ)の構成は当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
刊行物1〜7については上記(1-1)〜(4)で述べたとおり、また刊行物9〜18については、下記(6)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(6)刊行物9を主引例とする対比・判断
刊行物9に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物9には「モノ置換ジチオカーバミン酸アンモニウム水溶液にアルキル置換アミンを共存せしめるモノ置換ジチオカーバミン酸水溶液の安定化法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物9発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と刊行物9発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物9発明では、「モノ置換ジチオカーバミン酸アンモニウム水溶液にアルキル置換アミン」を共存せしめる点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物9発明では、「モノ置換ジチオカーバミン酸水溶液の安定化法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
刊行物9には、モノ置換ジチオカーバミン酸水溶液の用途として、農業用としては、殺虫剤等、工業用としてはスライムコントロール用等(上記(9)(b))が挙げられているだけであり、重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理することは記載も示唆もされておらず、ましてや「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていないから、刊行物9の記載から上記相違点(イ)の構成は当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
刊行物1〜8については上記(1-1)〜(5)で述べたとおり、また刊行物10〜18については、下記(7)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(7)刊行物10を主引例とする対比・判断
刊行物10に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物10には「ジチオカルバミン酸基を有するキレート化剤により飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理するにあたり、そのキレート化剤にポリアミン系の水溶性高分子化合物またはポリアミン系のポリマーラテックスを添加する飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物10発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と刊行物10発明とを対比すると、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物1発明では、「ポリアミン系の水溶性高分子化合物またはポリアミン系のポリマーラテックス」を添加している点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物10発明では、「飛灰中の重金属類を水に対し不溶化処理する方法」である点
これら相違点のうち、相違点(イ)について検討する。
先ず、本件訂正発明では訂正により「高分子化合物」が除かれた。
加えて 、刊行物1に記載された高分子化合物は、「キレート化剤と共に高分子化合物を添加・・・すると、上述の微粒のキレート化合物の粒子は高分子のネットワークにより封じ込められ、従って、その溶出が確実に防止される」(上記(10)(c))ために添加されるものであり、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物10では「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」については記載も示唆もされていない。
刊行物1〜9については上記(1-1)〜(6)で述べたとおり、また刊行物11〜18については、下記(8)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(8)刊行物11を主引例とする対比・判断
刊行物11に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物11には「ポリエチレンイミン1.0モル、エピクロルヒドリン0.01モル及び二硫化炭素0.9モルを反応せしめて得られた、少なくとも1個のジチオカルボキシル基及び/又はその塩類を置換基として有する金属捕集剤でEP灰等の固体状廃棄物中の有害重金属類を固定化し溶出を防止するEP灰中の重金属類の固定化方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物11発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物11発明とを対比すると、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物11発明では、その点が何も記載されていない点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物11発明では、「EP灰中の重金属類の固定化方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
申立人Dは、刊行物11発明において、少なくとも9モルは未反応のポリアミンとして残存していると主張している(申立人D提出平成15年12月25日付け特許異議申立書第22頁第6〜7行)。
しかしながら、本件訂正発明では、一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミンから高分子化合物が除かれているので、仮に刊行物11発明で未反応ポリアミンが残存していたとしても、重金属固定剤に含有させるアミンとして同一ではない。
また、刊行物11には、「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」は記載も示唆もされていない。
刊行物1〜10については上記(1-1)〜(6)で述べたとおり、また刊行物12〜18については、下記(8)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(9)刊行物12を主引例とする対比・判断
刊行物12に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物12には「ポリエチレンイミン1モル、モノクロロ酢酸ナトリウム3モル及び二硫化炭素0.9モルを反応せしめて得られた、少なくとも1個のジチオカルボキシル基及び/又はその塩を置換基として有する金属捕集剤でEP灰等の固体状廃棄物中の有害重金属類を固定化するEP灰中の重金属類の固定化方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物12発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物12発明とを対比すると、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物12発明では、その点が何も記載されていない点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物12発明では、「EP灰中の重金属類の固定化方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
申立人Dは、刊行物12発明において、少なくとも10モルは未反応のポリアミンとして残存していると主張している(申立人D提出平成15年12月25日付け特許異議申立書第22頁第22〜23行)。
しかしながら、本件訂正発明では、「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」から高分子化合物が除かれているので、仮に刊行物12発明で未反応ポリアミンが残存していたとしても、重金属固定剤(金属捕集剤)に含有させるアミンとして同一ではない。
また、刊行物12には、「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」は記載も示唆もされていない。
刊行物1〜11については上記(1-1)〜(8)で述べたとおり、また刊行物13〜18については、下記(10)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(10)刊行物13を主引例とする対比・判断
刊行物13に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物13には「ジチオカルバミン酸基またはその塩を有する金属捕集剤を添加し飛灰等の固体状物質中に存在する重金属を固定化するにあたり、金属捕集剤に0.01〜10倍のポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾリン、アニリン-ホルマリン重縮合物、アスパラギン酸-ヘキサメチレンジアミン重縮合物、アクリルアミド-ジアルキルアミノエチルアクリレート共重合体である水溶性高分子を添加する飛灰等の固体状物質中の重金属を固定化する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物13発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物13発明とを対比すると、刊行物13発明の「金属捕集剤」は本件訂正発明の「重金属固定剤」に相当するから、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物13発明では、「0.01〜10倍のポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾリン、アニリン-ホルマリン重縮合物、アスパラギン酸-ヘキサメチレンジアミン重縮合物、アクリルアミド-ジアルキルアミノエチルアクリレート共重合体である水溶性高分子」を添加する点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物13発明では、「飛灰等の固体状物質中の重金属を固定化する方法」である点
これら相違点のうち、相違点(イ)について検討する。
先ず、本件訂正発明では訂正により「高分子化合物」が除かれた。
加えて、刊行物13に記載された水溶性高分子は「固体状物質中の金属を確実に固定化することができる」(上記(13)(h))ために添加されるものであり、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物13では「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」については記載も示唆もされていない。
刊行物1〜12については上記(1-1)〜(9)で述べたとおり、また刊行物14〜18については、下記(11)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(11)刊行物14を主引例とする対比・判断
刊行物14に記載された内容を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物14には「エチレンビスジチオカーバミン酸ジアンモニウム水溶液で殺菌殺虫作用又は植物に病疫抵抗性を附与する作用を与えるにあたり、不揮発性アミンであるpH保持調節剤を含有せしめた殺菌殺虫作用又は植物に病疫抵抗性を附与する作用を有する農園芸用薬剤の安定化方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物14発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物14発明とを対比すると、
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物14発明では、「エチレンビスジチオカーバミン酸ジアンモニウム水溶液で殺菌殺虫作用又は植物に病疫抵抗性を附与する作用を与えるにあたり、不揮発性アミンであるpH保持調節剤を含有」させる点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物14発明では、「農園芸用薬剤の安定化方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討すると、
刊行物14には、エチレンビスジチオカーバミン酸ジアンモニウム水溶液で殺菌殺虫作用又は植物に病疫抵抗性を附与する作用を与えることしか記載されておらず、つまり、重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理することは記載も示唆もされておらず、また、安定化の目的も「本化合物は結晶水を含まない状態で結晶として単離されるが、これは空気中で不安定である。本化合物を可及的に精製して直ちに純水に溶解せしめ、そのpHを測定すると複雑な現象が見られる。」(上記(14)(c))ことを安定化するものであり「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていないから、刊行物14の記載から上記相違点(イ)の構成は当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
刊行物1〜13については上記(1-1)〜(10)で述べたとおり、また刊行物13〜18については、下記(12)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(12)刊行物15を主引例とする対比・判断
刊行物15に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物15には「ナトリウム・エチレンビスジチオカルバーメートである金属捕獲剤で金属及びその化合物の溶出を防止するにあたり、ナトリウム・エチレンビスジチオカルバーメートを水酸化ナトリウム80部と蒸留水500部を加えて水酸化ナトリウム水溶液とし、これにエチレンジアミン60部を添加混合して均一化し、この水溶液を30〜40℃に保持しながら二硫化炭素152部を撹拌状態下に滴下反応させ得る、金属及びその化合物の溶出を防止する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物15発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物15発明とを対比すると、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物15発明では、「ナトリウム・エチレンビスジチオカルバーメートである金属捕獲剤で金属及びその化合物の溶出を防止するにあたり、ナトリウム・エチレンビスジチオカルバーメートを水酸化ナトリウム80部と蒸留水500部を加えて水酸化ナトリウム水溶液とし、これにエチレンジアミン60部を添加混合して均一化し、この水溶液を30〜40℃に保持しながら二硫化炭素152部を撹拌状態下に滴下反応させ得る」点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物15発明では、「金属及びその化合物の溶出を防止する方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討すると、
刊行物15には、金属捕獲剤の用途として「本発明の金属捕獲剤は種々の金属を捕獲する能力を利用する用途に使用出来、例えば公害金属またはその化合物を含む工業排出物などをセメント等で固結する際に、それらの金属及びその化合物の溶出を防止するためにセメントに混入し或いは排出物に混入して溶出防止剤として、・・・、或は、金属或はその化合物を含有する泥等と混合して金属或はその化合物を不溶化する不溶化剤として、或は上壌或は灌漑用水に混入せしめてその中に含まれる金属およびその化合物を不溶化して固定し生物体内特に植物体内への金属或はその化合物の移行を防止する生物体内への移行防止剤として使用できる。」(上記(15)(b))ことしか記載されていない。 つまり、重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理することは記載も示唆もされておらず、また「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていない。
申立人Dは、刊行物15発明において、4.3モル%のアミン(未反応エチレンジアミン)が含有されていると主張している(申立人D提出平成15年12月25日付け特許異議申立書第26頁第3行)。
しかしながら、刊行物15発明では、水酸化ナトリウム80部(2モル)とエチレンジアミン60部(1モル)と、二硫化炭素152部(2モル)を反応させているのであるから、通例、ナトリウム・エチレンビスジチオカルバーメートが1モル生成していると考えられ、未反応エチレンジアミンの存在は考えにくい。また未反応エチレンジアミンが存在するとの実験データも提出されていない。 してみると、申立人Dの主張は採用することができない。
また、刊行物15には、「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
刊行物1〜14については上記(1-1)〜(11)で述べたとおり、また刊行物16〜18については、下記(13)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(13)刊行物16を主引例とする対比・判断
刊行物16に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物16には「ジチオカルボキシ-m-フェニレンジアミン、ジチオカルボキシm-キシレンジアミン、ジチオカルボキシ-1・3-ビスアミノ-シクロヘキサン、ジチオカルボキシ-1・3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、およびこれらの塩類等の重金属捕集材料で廃水中に含有される有害重金属の捕集するにあたり、該重金属捕集材料をm-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン等の芳香族ジアミンもしくは1・3-ビスアミノーシクロヘキサン、1・3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のシクロアルカンジアミン30〜80重量%の水溶液となし、これにモル比で反応に要する二硫化炭素を0.5〜1.2倍のNaOH、KOH等の溶解し、液温を30〜50℃に保ちながら、前記アミン1モルに対し1〜3モルの二硫化炭素を0.5〜5時間で液中に滴下し、滴下後60〜80℃で1〜3時間反応した後、未反応の二硫化炭素を減圧下に留去して製造した、廃水中に含有される有害重金属の捕集方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物16発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物16発明とを対比すると、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物16発明では、「ジチオカルボキシ-m-フェニレンジアミン、ジチオカルボキシm-キシレンジアミン、ジチオカルボキシ-1・3-ビスアミノ-シクロヘキサン、ジチオカルボキシ-1・3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、およびこれらの塩類等の重金属捕集材料で廃水中に含有される有害重金属の捕集するにあたり、該重金属捕集材料をm-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン等の芳香族ジアミンもしくは1・3-ビスアミノーシクロヘキサン、1・3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のシクロアルカンジアミン30〜80重量%の水溶液となし、これにモル比で反応に要する二硫化炭素を0.5〜1.2倍のNaOH、KOH等の溶解し、液温を30〜50℃に保ちながら、前記アミン1モルに対し1〜3モルの二硫化炭素を0.5〜5時間で液中に滴下し、滴下後60〜80℃で1〜3時間反応した後、未反応の二硫化炭素を減圧下に留去して製造した」点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物16発明では、「廃水中に含有される有害重金属の捕集方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
刊行物16には、重金属捕集剤の用途として「廃水中に含有される有害重金属の捕集」(上記(16)(b))ことしか記載されておらず、つまり、重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理することは記載も示唆もされておらず、また「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていない。
申立人Dは、刊行物16発明において、4.3モル%以上の未反応ジアミンが含有されていると主張している(申立人D提出平成15年12月25日付け特許異議申立書第27頁第13〜14行)。
しかしながら、刊行物16発明では、ジアミン1モルに対し1〜3モルの二硫化炭素を反応させており、通例、未反応のジアミンの存在は考えにくい。また、未反応ジアミンの存在についての実験データも提出されていない。してみると、申立人Dの主張は採用することができない。
また、刊行物16には、「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
刊行物1〜15については上記(1-1)〜(12)で述べたとおり、また刊行物17〜18については、下記(14)〜(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(14)刊行物17を主引例とする対比・判断
刊行物17に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物17には「ポリエチレンイミンのジチオ酸塩で廃水中のCu,Zn,Cd,Pb,Hgの1種以上の金属イオンを処理するにあたり、該ポリエチレンイミンのジチオ酸塩を、ポリエチレンイミンの水溶液に二硫化炭素を撹拌しながら滴下すると沈殿が析出し、これにアミン類の水溶液を適宜量添加して、沈殿を再溶解することにより製造する、廃水中のCu,Zn,Cd,Pb,Hgの1種以上の金属イオンを処理する方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物17発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と刊行物17発明とを対比すると、刊行物1発明の「ポリエチレンイミンのジチオ酸塩」は本件訂正発明1の「重金属固定剤」に相当しているが、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物17発明では、「ポリエチレンイミンのジチオ酸塩で廃水中のCu,Zn,Cd,Pb,Hgの1種以上の金属イオンを処理するにあたり、該ポリエチレンイミンのジチオ酸塩を、ポリエチレンイミンの水溶液に二硫化炭素を撹拌しながら滴下すると沈殿が析出し、これにアミン類の水溶液を適宜量添加して、沈殿を再溶解することにより製造する」点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物17発明では、「廃水中のCu,Zn,Cd,Pb,Hgの1種以上の金属イオンを処理する方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
刊行物17には、ポリエチレンイミンのジチオ酸塩の用途として「廃水中のCu,Zn,Cd,Pb,Hgの1種以上の金属イオンを処理」(上記(17)(a))ことしか記載されておらず、つまり、重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理することは記載も示唆もされておらず、また「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていない。
申立人Dは、刊行物17発明において、4.7モル%をくだらない量のアミンが含有されていると主張している(申立人D提出平成15年12月25日付け特許異議申立書第28頁第33〜35行)。
しかしながら、4.7モル%をくだらない量のアミンが含有されているとしても、そのアミンはポリエチレンイミンであり、高分子化合物であるから、本件訂正発明の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミンからは除かれている。
刊行物1〜16については上記(1-1)〜(13)で述べたとおり、また刊行物18については、下記(15)に述べるとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(15)刊行物18を主引例とする対比・判断
刊行物18に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物18には「分子量500以下のポリアミン1分子当たりに対し、少なくとも1個のジチオカルボキシ基またはその塩を上記ポリアミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリアミン誘導体と、平均分子量5000以上のポリエチレンイミン1分子当たり、少なくとも1個のジチオカルボキシ基又はその塩を上記ポリエチレンイミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリエチレンイミン誘導体とからなる金属捕集剤で飛灰中の重金属を固定化する金属捕集方法」という発明(以下、必要に応じて「刊行物18発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と刊行物18発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤」に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、刊行物18発明では、「分子量500以下のポリアミン1分子当たりに対し、少なくとも1個のジチオカルボキシ基またはその塩を上記ポリアミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリアミン誘導体、又は平均分子量5000以上のポリエチレンイミン1分子当たり、少なくとも1個のジチオカルボキシ基又はその塩を上記ポリエチレンイミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリエチレンイミン誘導体」で処理する点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、刊行物18発明では、「飛灰中の重金属を固定化する金属捕集方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
刊行物18に記載された「分子量500以下のポリアミン1分子当たりに対し、少なくとも1個のジチオカルボキシ基またはその塩を上記ポリアミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリアミン誘導体、又は平均分子量5000以上のポリエチレンイミン1分子当たり、少なくとも1個のジチオカルボキシ基又はその塩を上記ポリエチレンイミンの活性水素と置換したN-置換基として有するポリエチレンイミン誘導体」は両方とも同一分子内にジチオカルボキシル基とアミンを有する化合物であるが、上記相違点(イ)から明らかなように、本件訂正発明1の「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」からは「ジチオカルボキシル基を有するアミン」が除かれており、かつ、刊行物18には、「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされておらず、ましてや刊行物18では「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」について一般的に記載されているわけではないから、上記相違点(イ)の構成は刊行物18から当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
刊行物1〜17については上記(1-1)〜(14)で述べたとおり、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件訂正発明は、刊行物18に記載された発明であるとすることはできないし、また刊行物1〜18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
3-4.特許法第29条の2違反(上記3-2.(2))について
3-4-1.先願明細書の記載内容
(1)先願明細書1:特願平7-167962号(特開平8-269434号)の願書に最初に添付された明細書:申立人Cの甲第4号証、申立人Dの甲第1、2号証
(a)「硫黄原子を含み塩形成性もしくは錯体形成性である官能基を分子内に1個有する分子量100〜500の化合物(1)、硫黄原子を含み塩形成性もしくは錯体形成性である官能基を分子内に2個以上有する分子量200〜5,000の化合物(2)および必要により数平均分子量5,000〜10,000,000の水溶性高分子化合物(3)からなる重金属固定化剤。」(請求項1)
(b)「(1)がジアルキルジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩および/またはアミン塩であり、(2)がジチオカルバミン酸基を分子内に2個以上有する化合物のアルカリ金属塩および/またはアミン塩である請求項2記載の重金属固定化剤。」(請求項3)
(c)「(4)が重金属を含有する焼却飛灰である請求項5記載の処理方法。」(請求項6)
(d)「(ケ)のジアルキルアミン塩の具体例としては、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアミン塩、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアミン塩、ジn?ブチルジチオカルバミン酸ジブチルアミン塩などが挙げられる。」(第3頁第3欄第44〜48行)
(e)「最も好ましいものは、ピペラジンと二硫化炭素との反応物のジエチルアミン塩、ピペラジンと二硫化炭素との反応物のジn-ブチルアミン塩である。」(第4頁第5欄第45〜48行)
(f)「本発明において、(1)、(2)、(3)の配合比は、通常(1)が10〜90重量%、(2)が10〜70重量%、(3)が0〜30重量%であり、好ましくは(1)が30〜70重量%、(2)が30〜60重量%、(3)が0〜20重量%である。」(第4頁第6欄第2〜6行)
(g)「比較製造例2 冷却・攪拌が可能で、窒素置換が可能な反応容器に水70部、水酸化カリウム60部、ジメチルアミンの50重量%水溶液140部を仕込み、200rpmで攪拌した。反応容器中の固形物が溶解したことを確認した後、窒素雰囲気下、35℃にて二硫化炭素80部を滴下し、滴下終了後、同温度にて3時間熟成を行って、ジメチルアミン誘導体の60%水溶液を得た。」(第5頁第7欄第24〜31行)
(h)「製造例4 冷却・攪拌が可能で、窒素置換が可能な反応容器に水440部、ピペラジン130部、ジエチルアミン190部を仕込み、200rpmで攪拌した。反応容器中の固形物が溶解したことを確認した後、窒素雰囲気下、35℃にて二硫化炭素240部を滴下し、滴下終了後、同温度にて3時間熟成を行って、重金属固定化剤4の56%水溶液を得た。」(第5頁第8欄第7〜14行)
(i)「本発明の重金属固定化剤は、焼却飛灰、鉱滓、土壌、汚泥などの固体粉末またはスラリー状物質に添加する際に高濃度の水溶液として用いることができ作業性において優れているとともに、固体粉末またはスラリー状物質中に存在する重金属を速やかに固定化して重金属の溶出を防止する機能においても優れている。」(第6頁第9欄第2行〜第10欄第3行)
(2)先願明細書2:特願平5-344758号(特開平7-171541号)の願書に最初に添付された明細書:申立人Cの甲第5号証
(a)「ごみ焼却炉飛灰,焼却灰および金属溶融炉ダストなど廃棄物の水侵による,あるいは水洗排水からの重金属塩溶出を防止し水域環境を保全するための,前記ごみ焼却炉飛灰,焼却灰や金属溶融炉ダストなどの固形廃棄物あるいは水洗排水に混合して,重金属あるいは重金属塩を固定化し重金属の溶出を阻止するため,8-ヒドロキシキノリン,キノリン-8-カルボン酸,キノリン-2-カルボン酸などのキノリン化合物,o-アミノベンゾイック酸,m-アミノベンゾイック酸,p-アミノベンゾイック酸などのアミノベンゼン化合物,ジメチルグリオキシムあるいはシクロヘキサンジオンジオキシムなどのジオキシム化合物を有効成分とし,1種または2種以上を,前記廃棄物中から水に溶出し得る重金属あるいは前記水洗排水中の重金属の合計モル数に対し,2倍以上のモル数を前記廃棄物に添加して混合させることを特徴とする廃棄物中に含まれる重金属の固定化処理剤。」(請求項1)
(b)「請求項1記載の前記固定化処理剤を,従来の処理剤であるジメチルジチオカルバミン酸塩類またはポリジチオカルバミン酸塩など金属と錯塩を形成する固定化処理剤に常温常圧で混合して添加し,前記重金属の溶出防止効果を一層高めることを特徴とする請求項2記載の廃棄物中に含まれる重金属の固定化処理方法。」(請求項3)
(c)「本発明の実施例5として,固定化処理剤を従来技術によるジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム,あるいはメチレンビスジチオカルバミン酸ナトリウムにそれぞれ10重量%または50重量%配合して,ごみ焼却飛灰に対し重量で2%添加して溶出試験を行ない,鉛の溶出防止効果を試験した。」(第6頁第9欄第1〜6行)
(d)「飛灰,ダスト,焼却灰ならびに排煙の水洗排水中に含まれる重金属の処理に対し本発明の固定化処理剤は以下に示す効果を有する。1.従来の重金属の固定化処理剤に比べて,少ない添加量で重金属の溶出を防止できる。2.固定化処理剤の化学構造に硫黄を含まないので,使用に伴う硫化水素ガスの発生がまったくなく,安全な作業を確保できる。3.従来の処理剤に比べて酸性からアルカリ性(pH4.5〜14)までの広い領域で有効に作用する。また,本発明の固定化処理剤は,各種廃棄物あるいは水洗排水に直接添加して概ね均一に混合すればよい。」(第7頁第11欄下から第6行〜第12欄下から第6行)
(3)先願明細書3:特願平7-313845号(特開平8-224560号)の願書に最初に添付された明細書:申立人Dの甲第3、4号証
(a)「飛灰に水とピペラジンカルボジチオ酸又はその塩を添加し、混練することを特徴とする飛灰中の重金属の固定化方法。」(請求項1)
(b)「合成例1 ピペラジン-N,N’-ビスカルボジチオ酸ナトリウム(化合物No.1)の合成 ガラス製容器中に窒素雰囲気下、ピペラジン172重量部、NaOH167重量部、水1512重量部を入れ、この混合溶液中に撹拌しながら45℃で二硫化炭素292部を4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて約2時間熟成を行った。反応液に窒素を吹き込み未反応の二硫化炭素を留去したところ、黄色透明の液体を得た。この乾固物の重水(D2O)中でのH1-NMRスペクトル(内部標準:Sodium 3-Trimethylsilylpropionate -2,2,-3,3-d4 (TSP))は4.41ppm(S)であり、C13-NMRスペクトル(内部標準:TSP)は40.23ppm、199.11ppmであった。さらに燃焼後にイオンクロマトグラフィー(IC)によりSO42-量を測定したところジチオカルバミン酸基由来と考えられる硫黄の含有率は10.8%(計算値10.6%)であった。以上の結果からこのものはピペラジン-N,N’-ビスカルボジチオ酸ナトリウムと推定された。ヨード滴定により測定した結果、得られた水溶液中のピペラジン-N,N’-ビスカルボジチオ酸ナトリウムの濃度は25wt%であった。」(第3頁第3欄第34行〜第4欄第6行)
(4)甲第2号証:申立人Dの実験成績証明書I:申立人Dの甲第5号証
(a)特開閉8-224560号公報の実施例を追試して得られた化合物は、特許第3455363号の特許請求の範囲に記載の重金属固定剤に関する要件を満たすものであることが記載されている。

2-4-2.対比・判断
(1)先願明細書1に記載された発明との対比・判断
先願明細書1に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書1には「ジアルキルジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩および/またはアミン塩と、ジチオカルバミン酸基を分子内に2個以上有する化合物のアルカリ金属塩および/またはアミン塩とからなる重金属固定化剤で重金属を含有する焼却飛灰中の重金属を固定化する重金属の処理方法」という発明「以下、必要に応じて「先願明細書1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と先願明細書1発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤」に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、先願明細書1発明では、「ジアルキルジチオカルバミン酸のアミン塩、またはジチオカルバミン酸基を分子内に2個以上有する化合物のアミン塩」とで処理する点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、先願明細書1発明では、「焼却飛灰中の重金属を固定化する重金属の処理方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
先願明細書1に記載された「ジアルキルジチオカルバミン酸のアミン塩、またはジチオカルバミン酸基を分子内に2個以上有する化合物のアミン塩」は両方とも同一分子内にジチオカルボキシル基とアミンを有する化合物であるが、上記相違点(イ)から明らかなように、本件訂正発明の「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」からは「ジチオカルボキシル基を有するアミン」が除かれているから、本件訂正発明は先願明細書1発明と同一であるとすることはできない。
(2)先願明細書2に記載された発明との対比・判断
先願明細書2に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書2には「ジメチルジチオカルバミン酸塩類などの金属と錯塩を形成する固定化処理剤に、8-ヒドロキシキノリンなどのキノリン化合物、o-アミノベンゾイック酸、m-アミノベンゾイック酸、p-アミノベンゾイック酸などのアミノベンゼン化合物等の固定化処理剤を10重量%または50重量%配合混合し、ごみ焼却炉飛灰が含有する重金属を重金属塩として溶出させないための固定化処理方法」という発明(以下、必要に応じて「先願明細書2発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と先願明細書2発明とを対比すると、両者は次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、「ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤」に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、先願明細書2発明では、「8-ヒドロキシキノリンなどのキノリン化合物、o-アミノベンゾイック酸、m-アミノベンゾイック酸、p-アミノベンゾイック酸などのアミノベンゼン化合物等の固定化処理剤」を含有させている点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、先願明細書2発明では、「ごみ焼却炉飛灰が含有する重金属を重金属塩として溶出させないための固定化処理方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
先願明細書2に記載された、三級アミンである「8-ヒドロキシキノリン」と、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物である「o-アミノベンゾイック酸、m-アミノベンゾイック酸、p-アミノベンゾイック酸などのアミノベンゼン化合物」は、両方ともが、上記相違点(イ)から明らかなように、本件訂正発明の「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」から除かれているから、本件訂正発明は先願明細書2発明と同一であるとすることはできない。
(3)先願明細書3に記載された発明との対比・判断
先願明細書3に記載された内容を本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書3には「ピペラジンカルボジチオ酸又はその塩により焼却プラントから排出される飛灰中の重金属を固定化し不溶出化するにあたり、該ピペラジンジチオ酸又はその塩をピペラジン172重量部、NaOH167重量部、水1512重量部を入れ、この混合溶液中に撹拌しながら45℃で二硫化炭素292部を4時間かけて滴下し、製造する、飛灰中の重金属の固定化方法」という発明(以下、必要に応じて「先願明細書3発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と先願明細書3発明とを対比すると、先願明細書3発明の「ピペラジンジチオ酸又はその塩」は本件訂正発明の「重金属固定剤」に相当しているが、両者は次の相違点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明では、重金属固定剤に「その主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)」を含有させているのに対し、先願明細書3発明では、「ピペラジンジチオ酸又はその塩をピペラジン172重量部、NaOH167重量部、水1512重量部を入れ、この混合溶液中に撹拌しながら45℃で二硫化炭素292部を4時間かけて滴下し、製造する」点
相違点(ロ):本件訂正発明では、「重金属固定剤の安定化方法」であるのに対し、先願明細書3発明では、「飛灰中の重金属の固定化方法」である点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
先願明細書3には「一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン」については記載も示唆もされておらず、ましてや「二硫化炭素などの発生を防止する」(本件特許掲載公報第3頁第5欄第29行)ことは記載も示唆もされていない。
申立人Dは、先願明細書3発明において、ピペラジンが0.17モル%含有されていると主張している(申立人D提出平成15年12月25日付け特許異議申立書添付甲第5号証)。
しかしながら、本件訂正発明では、「0.5〜100モル%」の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミンであるから、仮に先願明細書3発明でピペラジンが0.17モル%含有されているとしても、本件訂正発明の数値範囲外である。
したがって、本件訂正発明は先願明細書3発明と同一であるとすることはできない。

3-5.特許法第36条違反(上記2-2.(3))について
記載不備は、具体的には(1)実施例として、トリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミンのNa塩に25モル%のジエチレントリアミンを添加した例しか挙げられておらず、あらゆる種類のアミンを幅広い範囲で添加した場合に効果を奏するかどうか確認できない、(2)請求項1の「重金属含有処理灰を処理するにあたり」と「重金属固定化剤の安定化方法」とが一致せず、技術的範囲が不明確である、(3)請求項1の「飛灰を処理するにあたり、・・・アミンを含有させる」と明細書の発明の詳細な説明の記載が一致しない、(4)請求項1の「アミン」には何の限定もないから、「ジチオカルボキシル基を分子内に有するアミン」が除外されていない、というものである。
そこで、検討すると、上記(1)については、本件訂正発明では一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミンに減縮されており、かつ平成16年9月6日付け意見書添付乙第1号証(実験成績証明書I)に具体例も示されているところから、本件明細書の記載が記載不備と云うほどのことではない。
上記(2)については、本件明細書には「本発明はこのジチオカルボキシル基を有する化合物を重金属固定剤として使用してもこれらの有毒ガスを発生することのない重金属固定剤の安定化方法である。」(本件特許掲載公報第2頁第3欄第35〜37行)と記載されており、技術的範囲が明確でないと云うことはできない。
上記(3)については、本件明細書段落【0026】(本件特許掲載公報第3頁第6欄第37〜43行)の記載は、請求項1の「・・・を含有させる」ということを具体的に説明したものであるから、請求項と明細書の記載との間には矛盾はない。
上記(4)については、訂正により本件訂正発明は一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミンに減縮されており、ジチオカルボキシル基を有するアミンは除かれたので、記載不備ということは解消された。

4.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由および証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
重金属固定剤の安定化方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その重金属固定剤にその主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)を含有させることを特徴とする重金属固定剤の安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物などの焼却プラントから排ガスとともに排出される灰分、例えば、電気集塵機で捕集されるEP灰や、バグフィルターで捕集された灰分など(本明細書では「飛灰」と略称する)を無害化処理する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみや産業廃棄物などから排出される飛灰には人体に有害な重金属類が多量に含まれており、特に鉛、カドミウム、水銀などは飛灰の処理地において雨水などによる溶出が問題とされている。そのための対策として、例えば、焼却灰に石灰、硫酸第一鉄、水を添加・混合する方法(特開昭54-60773号)、重金属含有集塵ダストまたは焼却灰に、NaSまたはNaSHを主成分とする処理剤を添加、攪拌または造粒する方法(特開昭58-67389号)、水銀などを含有するごみ焼却灰中に液体キレートを散布する方法(特開昭63-205192号)などが知られている。また、本出願人も飛灰に重金属固定剤と水とを添加して混練、固化する方法を提案している(特開平6-79254)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、重金属固定剤の中には、その使用時、有毒な二硫化炭素ガス、硫化カルボニルガス等を発生する場合がある。本発明は、重金属固定剤で飛灰処理をしても有毒なガスを発生しない重金属固定剤の安定化方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明はジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その重金属固定剤にその主成分の0.5〜100モル%の一級アミンまたは二級のアミノ基をもったアミン(但し、高分子化合物、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物、ホスホメチルアミノ基を有する化合物、ジチオカルボキシル基を有するアミン、アミンのジチオカルバミン酸塩及びジメチルアミンは除く。)を含有させることを特徴とする重金属固定剤の安定化方法である。
【0005】
ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤を用いて重金属含有飛灰を処理し、無害化しようとする場合、その処理中に有害な二硫化炭素ガスや硫化カルボニルガスが発生する場合がある。本発明はこのジチオカルボキシル基を有する化合物を重金属固定剤として使用してもこれらの有毒ガスを発生することのない重金属固定剤の安定化方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のジチオカルボキシル基を有する化合物とは
【0007】
【化1】

【0008】
で表される官能基を分子内に一つ以上もった化合物であり、この官能基をもった化合物としてはジチオカルバミン酸がある。
【0009】
このジチオカルバミン酸はアミンと二硫化炭素を反応させることによって容易に得ることができる。この反応は溶媒中で行っても良い。ジチオカルバミン酸は通常不安定であり、アンモニウム塩、カリウムやナトリウムウなどのアルカリ塩、カルシウムやバリウムなどのアルカリ土類塩にして安定化させている。
【0010】
本発明によって安定化されうる重金属固定剤として使用されるジチオカルボキシル基を有する化合物としては以下のものを挙げることができる。
【0011】
【化2】

【0012】
(ここで、R1、R2は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表す。但し少なくとも一つは置換基を有してもよいアルキル基を表す。またR1とR2は結合して環を形成してもよい。MはNa、K、Ba、Caなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、nは価数である。さらに、Mn+はアンモニウム基(NH4+)やアルキルアミン基(R3NH+)であってもよい。Rは水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表す)
【0013】
【化3】

【0014】
(ここで、X,Zは水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表し、Yは置換基を有してもよいアルキレン基である。l,mは0以上の整数を表し、mはm=l+2を満たす。M,nは前記と同じである。)
【0015】
これらの内、特に代表的な化合物は、トリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミン、N1,N2-ビス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミンまたはその塩などのジチオカルボキシル基またはその塩をN-置換基として有するアミン化合物であり、アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の低分子一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の低分子二級アミン、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン等の多価アミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等の環状アミンなどを挙げることができる。
【0016】
また、以下のイミン系、ピロリジン系など高分子系化合物も使用できる。
【0017】
【化4】

【0018】
(R1,M,n,は前記と同じであり、k,p,qは0以上の整数を表し、k,pは同時には0でない。またqはq=k+pを満たす。)
【0019】
【化5】

【0020】
(R1,M,n,は前記と同じであり、rは1以上の整数を表す。)
【0021】
【化6】

【0022】
(M,nは前記と同じであり、tは1以上の整数を表す。)
【0023】
これらの重金属固定剤はその1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
二硫化炭素などの発生を防止するために添加するアミンとしては、二級のアミノ基をもった脂肪族アミンを用いることができる。置換基として芳香族の置換基をもっていても良い。例えばジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ジアリルアミン、N-メチルエチルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、N-エチルブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ヘキサメチレンイミン、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、2-ブチルアミノエタノール、イミノジエタノール、イミノビスイソプロパノール等が挙げられる。また、二級アミノ基を分子内に少なくとも一つもった多価アミンも用いることができる。例えば、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N-ブチルエチレンジアミン、N,N′-ジメチルエチレンジアミン、N,N′-ジエチルエチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N′-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N,N′-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3′-イミノビス(N,N′-ジメチルプロピルアミン)等が挙げられる。
【0025】
添加量は、主成分であるジチオカルボキシル基を有する化合物に対して0.5〜100モル%、好ましくは0.5〜50モル%である。
【0026】
添加方法は、あらかじめ重金属固定剤に添加してもよいし、飛灰を処理する際に重金属固定剤とともに添加してもよい。また添加するアミンがジチオカルボキシル基を有する化合物の原料である場合はその製造過程に添加または未反応物として含有させてもよい。最適な添加方法は主成分を水溶液などの剤とする際に添加する方法である。
【0027】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0028】
比較例
容器にジエチレントリアミン 103gと水 189g、25wt%NaOH水溶液 480gを入れ、温浴中で40℃以上にならないように攪拌しながら二硫化炭素228gを滴下して反応を行い、トリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミンのNa塩の赤色透明水溶液を得た。この原液を10wt%の水溶液に希釈したものを40gと飛灰A及びB(ともにストーカー炉乾式EP灰)100gとをホバートミキサーにて混練した。混練物は50〜60℃に発熱したので、直ちに混練物の直上の二硫化炭素ガスの濃度をガス検知管(北川式141SB0.8-50ppm)で測定したところ、飛灰Aでは16ppm、飛灰Bでは20ppmでいずれも安全基準の10ppmを上回っていた。
【0029】
実施例
比較例で得たトリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミンのNa塩の赤色透明水溶液に25モル%のジエチレントリアミンを添加、混合した調製液を12.5wt%に希釈した水溶液 40gを用いた以外は比較例と同様の操作を行った。二硫化炭素ガス濃度を測定したところ、Aは検出限界以下(ND)、Bは2ppmでいずれも安全基準の10ppm以下であった。
【0030】
使用した飛灰A、Bの組成を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【発明の効果】
ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤を用いて重金属含有飛灰を処理し、無害化しようとする場合、その処理中に発生する有害な二硫化炭素ガスなどの発生を防止できる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-19 
出願番号 特願平8-119724
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B09B)
P 1 651・ 113- YA (B09B)
P 1 651・ 537- YA (B09B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 野田 直人
鈴木 毅
登録日 2003-07-25 
登録番号 特許第3455363号(P3455363)
権利者 日本曹達株式会社
発明の名称 重金属固定剤の安定化方法  
代理人 横田 修孝  
代理人 松橋 泰典  
代理人 松橋 泰典  
代理人 中村 行孝  
代理人 吉武 賢次  
代理人 紺野 昭男  
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