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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1119433
異議申立番号 異議2003-70810  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-09-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-28 
確定日 2005-04-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3330047号「回路遮断器及びこれを備えた分電盤」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3330047号の請求項1、2、5、6、8ないし12に係る特許を取り消す。 同請求項3、4、7に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3330047号に係る発明についての出願は、平成9年2月28日に出願され、平成14年7月19日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人日東工業株式会社、同じく、東芝ライテック株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年2月3日に訂正請求がなされたものである。

【2】訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(a)特許請求の範囲の請求項1の
「さらに電圧極用端子部が接続される電圧極バーを示す表示を器体表面に備えている」を
「上記3本の極バーのうち電圧極用端子部が接続される電圧極バーのみを示す表示を器体表面に備えている」と訂正する。
(b)訂正事項(a)の訂正に伴い、明細書段落【0006】の
「さらに電圧極用端子部が接続される電圧極バーを示す表示を器体表面に備えていることに特徴を有している。」を
「上記3本の極バーのうち電圧極用端子部が接続される電圧極バーのみを示す表示を器体表面に備えていることに特徴を有している。」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、「表示」の態様に関し、表示対象を「電圧極バーのみ」であると限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項(b)は、前記特許請求の範囲の減縮に伴い、明細書の記載の整合性を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正は願書に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲を越えるものとは認められないから、新規事項の追加に該当せず、また特許請求の範囲を実質的に拡張または変更するものではない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】特許異議の申立てについて
ア.本件発明
本件にかかる特許異議の申立がなされた請求項は請求項1ないし12であるところ、その発明は以下の記載事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 単相三線における2本の電圧極バーのうちの1本と中性極バーとに接続される回路遮断器であって、前後三段に配される上記3本の極バーに夫々対応する3つの接続用部を側端面に前後方向において備えるとともに、これら接続用部のうちの一つに配されて中性極バーに差し込み接続される中性極用端子部と、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される電圧極用端子部とを備え、上記3本の極バーのうち電圧極用端子部が接続される電圧極バーのみを示す表示を器体表面に備えていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】 接続用部への端子部の配置が選択自在となっていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】 他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される第1の電圧極用端子部と、残る一つの接続用部に配されて他の電圧極バーに差し込み接続される第2の電圧極用端子部と、上記両端子部の内部回路への接続を切り換える切換手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項4】 切換手段は器体表面に配されたスイッチハンドルで切り換えられるものであることを特徴とする請求項3記載の回路遮断器。
【請求項5】 表示は電圧極バー名を示すものであることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項6】 表示は2本の電圧極バーに対応して設定された色分けであることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項7】 一方の電圧極バーに対応する端子部の配設位置が最前段の接続用部となっているとともに器体表面に該接続用部を視認可能とする窓が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項8】 端子部はその先端の受刃において極バーに接続されるものであり、各端子部は極バーが挿通される切り溝を側壁に備えたカバーで覆われていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の回路遮断器。
【請求項9】 単相三線における2本の電圧極バーと中性極バーとを前後方向に並べて筐体内に配設しているとともに、これら極バーに接続される請求項1〜8のいずれかに記載の回路遮断器を極バーの両側に配設していることを特徴とする分電盤。
【請求項10】 単相三線における2本の電圧極バーと中性極バーとを前後方向に並べて筐体内に配設しているとともに、これら極バーに接続される請求項8記載の回路遮断器を極バーの両側に配設して、極バー両側の回路遮断器のカバーの先端同士を極バーの前方側において当接させていることを特徴とする分電盤。
【請求項11】 筐体は回路遮断器を覆う蓋体を備えていることを特徴とする請求項9または10記載の分電盤。
【請求項12】 筐体は回路遮断器を覆う蓋体を備え、該蓋体には回路遮断器の上記表示及びカバーを覗かせる窓が設けられていることを特徴とする請求項10記載の分電盤。
」(以下、順に「本件発明1」〜「本件発明12」という。)

イ.特許異議の申立ての理由の概要
異議申立人日東工業株式会社は、証拠として甲第1号証(実公平3-12001号公報)、甲第2号証(実公昭62-37366号公報)、甲第3号証(米国特許第3346777号明細書)、甲第4号証(実願昭55-30465号(実開昭56-133215号)のマイクロフィルム)、甲第5号証(SQUARE D COMPANY Class 1650カタログ、1982年4月)、甲第6号証(SQUARE D COMPANY Class 734カタログ、1982年4月)、甲第7号証(SQUARE D COMPANY Class 2710カタログ、1982年4月)、甲第8号証(SQUARE D COMPANY Class 1600カタログ、1982年7月)、甲第9号証(SQUARE D COMPANY Class 650カタログ、1982年4月)、甲第10号証(SQUARE D COMPANY カタログ、1973年)及び甲第11号証(特開平7-282709号公報)を提出し、特許明細書の請求項1、2,5乃至12に係る発明の特許は、甲第1号証乃至甲第11号証に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されべきものである旨主張している。
また、異議申立人東芝ライテック株式会社は、証拠として甲第1号証(実願昭55-27081号(実開昭56-129113号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(実公平3-12001号公報;日東工業株式会社が提出した甲第1号証と同じ)、甲第3号証(SQUARE D COMPANY Class 734カタログ、1982年4月;日東工業株式会社が提出した甲第6号証と同じ)、甲第4号証(「電設資材」、東芝ライテック株式会社発行、1996年4月)、甲第5号証(SQUARE D COMPANY Class 1600カタログ、1982年7月;日東工業株式会社が提出した甲第8号証と同じ)及び甲第6号証(SQUARE D COMPANY Class 1650カタログ、1982年4月;日東工業株式会社が提出した甲第5号証と同じ)を提出し、特許明細書の請求項1乃至12に係る発明の特許は、甲第1号証乃至甲第6号証に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されべきものである旨主張している。

ウ.当審取消理由の概要
これに対して平成16年12月3日付けで当審が通知した取消理由は以下の通りである。
・提示した刊行物
刊行物1:実公平3-12001号公報
刊行物2:実公昭62-37366号公報
刊行物3:実願昭55-30465号(実開昭56-133215号)のマイクロフィルム
刊行物4:SQUARE D COMPANY Class734カタログ、1982年4月発行
刊行物5:SQUARE D COMPANY Class2710カタログ、1982年4月発行
刊行物6:特開平7-282709号公報
(異議申立人日東工業株式会社が提出した甲第1号証、第2号証、第4号証、第6号証、第7号証、及び第11号証が対応)
・対象とした請求項の番号
1,2,5,6,8〜12
・取消の理由
上記請求項に係る発明は、上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められる(特許法第29条第2項違反)。

エ.引用刊行物に記載の発明
(a)当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(異議申立人日東工業株式会社が提出した甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。
・「第2図は本考案による分電盤用しゃ断器取付装置の一実施例を示し、同図において4は放電を起こさないよう一定の絶縁距離をおいて互いに平行に配設された主母線バーで、このうち1は中性相に対応した中性母線バー、2,3は夫々第1相、第2相に対応した負荷母線バーである。」(第1頁第2欄第15〜20行)
・「また第2図では第1相の主母線バー2側にしゃ断器6の接続端子の接続刃16を接続した状態が図示されている。しゃ断器6のしゃ断機構については特に従来に比し変わったところもなく本考案に直接関係がないので省略する。17は可動接片、18は固定接点、19は固定接点座であって、この固定接点座19の一端には固定接点18を備え、かつその他端側は適宜位置でほゞ直角に折曲してから主母線バー2,1,3を夫々受ける接続刃16の対応位置より余裕ある部分をもつ尾部20として伸長されている。接続刃16は第3図に示す如くねじ孔21を有し尾部20に予め切ってあるタイプ22に合せてねじ23で締付け固着されるものであり、取付け取外し(着脱)容易で自由に変換や移動が可能である。また41は負荷端子である。」(第2頁第3欄第19〜34行)
・「以上の構成から、分電盤にしゃ断器6を取付ける場合には、しゃ断器6側の尾部20に第4図の如く設定した接続刃16を、分電盤側の支持部材9に植立した主母線バー2に差込み、取付部材12を用いてしゃ断器6の切欠部14に係合して第2図の如く取付ければよい。もし図のように第1相の主母線バー2でなく、第2相の主母線バー3より電源を取りたい場合には、接続刃16を主母線バー2に対応した第4図位置より取外して第2相の主母線バー3に対応する位置の溝25にしゃ断器6の接続刃16を挿入して取付けるべく接続刃16を移し替えればよい。 以上はしゃ断器取付台8の第4図の如く1極式しゃ断器を取付けた場合であるが、しゃ断器6が2極の場合で電源を100Vにする場合は接続刃16が第1相と中性相の主母線バー2,1に同時に接続されるよう接続刃16を第5図に示す如く、位置AとBに取付ければよく、また200Vにする場合は位置AとDに接続刃16を取付けて主母線バー2,3に同時に差込めば第1相と第2相間の電圧として200Vが得られる。」(第2頁第3欄第42行〜第4欄第18行)
・第2図には分電盤用しゃ断器取付装置の要部断面図が示され、しゃ断器6の背面側に3本の主母線バー2,1,3が平行に間隔をおき配置され、主母線バー2は接続刃16で挟み込まれている様が記載されている。
・第5図には2極しゃ断器の裏面の一例が示され、主母線バーが挿入されるための溝24が左から順に第1相、中性相、第2相の順に3本平行に並んでいるところに、接続刃16を取り付けるための溝25が第1相を示すA、中性相を示すB、第2相を示すC及びDの4箇所設けられている様が記載されている。
以上の記載から、刊行物1には
「2本の負荷母線バー2,3のうちの1本と中性相に対応した中性母線バー1とに接続される2極しゃ断器であって、しゃ断器背面に平行に配設された上記3本の母線バーに夫々対応する3つの溝24を背面側に平行に備えるとともに、これら溝24のうち位置Bとされる溝25に取り付けられて中性母線バーに差し込み接続される接続刃16と、他の2つの溝24のうちの一つであるAまたはDに配されて2本の負荷母線バーのうちの1本に差し込み接続される接続刃16とを備える2極しゃ断器。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(b)同じく当審が通知した取消理由にて引用した刊行物5(異議申立人日東工業株式会社が提出した甲第7号証)には、以下の事項が記載されている。
・「Horizontal I-LINE distribution bus accepts I-LINE branch circuit breakers with current ratings to 225 amperes and 600 volts.」(第2頁)
(訳文:水平型I-LINE配電バスが、電流レート225アンペア及び600ボルト下で、I-LINE分岐回路遮断器に適合します。)
・第2頁右上部には、「I-LINE branch circuit breaker.」と銘打って回路遮断器の斜視図が掲載されており、その機体側面には、図の上下方向に並ぶ形で、かつ端子金具様の金属片を覗かせつつ開口した挟み込み部が3箇所設けられている側面構造が示されている。
(c)同じく当審が通知した取消理由にて引用した刊行物4(異議申立人日東工業株式会社が提出した甲第6号証)には、以下の事項が記載されている。
・第2頁右部には、「i-LINE BREAKER」とのタイトルで回路遮断器の斜視図が掲載されており、そのうち左下に位置し、「2-POLE」というタイトルが付された斜視図の機体表面には、「A」と「C」の表示がなされている様が示されている。

オ.対比・判断
<本件発明1について>
本件発明1と引用発明とを対比すると、その機能からみて、引用発明の「2本の負荷母線バー2,3」は本件発明1の「2本の電圧極バー」に相当し、以下、同様に、「中性相に対応した中性母線バー1」は「中性極バー」に、「2極しゃ断器」は「回路遮断器」に、「3本の母線バーに夫々対応する3つの溝24」は「3本の極バーに夫々対応する3つの接続用部」に、「位置Bとされる溝25に取り付けられて中性母線バーに差し込み接続される接続刃16」は「中性極バーに差し込み接続される中性極用端子部」に、「他の2つの溝24のうちの一つであるAまたはDに配されて2本の負荷母線バーのうちの1本に差し込み接続される接続刃16」は「他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される電圧極用端子部」に相当する。また、引用発明の「2本の負荷母線バー」及び「中性母線バー」は、明らかに本件発明1で言う「単相三線」を形成すると言えるから、本件発明1と引用発明とは、
(一致点)「単相三線における2本の電圧極バーのうちの1本と中性極バーとに接続される回路遮断器であって、上記3本の極バーに夫々対応する3つの接続用部を備えるとともに、これら接続用部のうちの一つに配されて中性極バーに差し込み接続される中性極用端子部と、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される電圧極用端子部とを備えた回路遮断器。」の点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。
(相違点1)回路遮断器における3本の極バー、及びこれらに対応する3つの接続用部の配置に関し、本件発明1では「3本の極バー」が「前後三段に配され」、かつ、「3つの接続用部」を「側端面に前後方向に」備えるものとしているのに対して、引用発明では「3本の母線バー」が「しゃ断器背面に平行に配設され」ており、かつ、「3つの溝24」を「背面側に平行に」備えるものとしている点。
(相違点2)表示に関し、本件発明1では「3本の極バーのうち電圧極用端子部が接続される電圧極バーのみを示す表示を器体表面に備えている」としているのに対して、引用発明では表示に関する構成がない点。

そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点1について)
本件発明1の「接続用部」の構造及び遮断器上で設けられる位置関係について、本件特許明細書では【従来の技術】欄にて、「単相三線用の分電盤は、一般に主幹ブレーカーと、該主幹ブレーカーに接続された2本の電圧極バー及び1本の中性極バーとからなる3本の極バーと、この極バーに接続される分岐ブレーカーとしての回路遮断器を筐体内に納めたもので、通常、3本の極バーを筐体の幅方向中央に配設し、これら極バーの両側に夫々複数個の回路遮断器を配設するものとなっている。そして上記3本の極バーのうち、中性極バーを中央に、その両側に夫々電圧極バーを配置しており、各回路遮断器は中性極バーと近い方に位置する電圧極バーとに接続するようにしている。」と記載されているところから見て、従来周知の構造及び遮断器上で設けられる位置と言え、事実、上記エ.(b)の刊行物5の摘記事項に全く同様の構造が掲載されている。
そのため、引用発明の極バーとの接続部分の設計に際し、周知技術の構造を採用し、本件発明1の相違点1に係る構造の如くなすことは、設計上の変更に相当するものであり当業者が容易になし得たものと言える。

(相違点2について)
本件発明1の相違点2に係る表示に似通ったものとして、前記エ.(c)の刊行物4の摘記事項には、2極遮断器の機体表面に接続極バー2種を示す「A」及び「C」を表示したものが記載されており、接続される電圧極バー2本の双方を表示するようにした技術は周知のものと言える。
当該周知技術と本件発明1の相違点2に係る事項とを比較してみると、表示対象物が2種であるか1種のみであるかという点でわずかに異なると言えるものの、遮断器を2極とした場合、共通に使用される極バーの1つが中性極バーとなることは使用者にとり明らかな技術上の事情を加味すると、両者は表示上全く差のない情報を表示していると認められる。加えて、かかる接続されることが明らかというべきもう一つの中性極バー表示を省略することに、格別な利点はなんら認められない。
よって、当該相違点2に係る表示態様は、当業者にとり周知の態様であるということができ、この点についても当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易になし得た程度のものということができる。

以上のことから本件発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものと認められる。

<本件発明2について>
本件発明2は本件発明1の「端子部」に関し、「接続用部への」「配置が選択自在」としたものであるが、引用発明の「接続刃16」にしても同様にその配置位置を選択自在とできる構造であることは明らかと言えるので、本件発明1と同様に特許性を有さない。

<本件発明5について>
本件発明5は本件発明1の「表示」に関し、「電圧極バー名」を表示するとしたものであるが、上記刊行物4の表示名「A」、「C」は、異議申立人日東工業株式会社が証拠として提出した甲第5号証の第3頁右下の「TYPICAL WIRING DIAGRAM」から見て明らかに電圧極バー名相当を意味することが明らかと言えるので、本件発明5は、本件発明1と同様に特許性を有さない。
<本件発明6について>
本件発明6は本件発明1の「表示」に関し、「電圧極バーに対応して設定された色分け」を表示するとしたものであるが、電圧極バー名に代えて関連づけされた色を用いることは、日常生活上多数見かける表示上の工夫であると言えるので、本件発明6は、本件発明1と同様に特許性を有さない。

<本件発明8〜12について>
本件発明8は端子部の細部構造を、本件発明9、10は遮断器の並べ方を、本件発明11、12は並べられた遮断器を収納する筐体の細部構造を各々特定するものであるが、いずれも順に刊行物1、4、5に記載された構造であったり、刊行物6に記載された配置(【図2】、【図4】を参照)であったり、筐体自体が有するありふれた構造であると認められるので、いずれの発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと言える。

<本件発明3,4について>
本件発明3と引用発明とを対比すると、引用発明は、上記の相違点に加え、「第1の電圧極用端子部」、「第2の電圧極用端子部」、及び「切換手段」を備えていない点で相違する。
これに対し、異議申立人東芝ライテック株式会社は、係る「切換手段」に関し、「複数の接続経路を有する部材において、その内部回路の切替えにより、適宜接続経路を選択することは、当業者であれば必要に応じて採用し得る常套手段であるからである。」(同人申立書第12頁、(請求項3))との理由から、設計事項であると主張している。
しかしながら、遮断器の本来機能を鑑みると、こと遮断器については特定電極バーとの接続の通電/断電を果たせば事足りるものと言うことができ、その通常の態様として単一の接続経路を前提とした機器であると認められる。とすれば、異議申立人東芝ライテック株式会社の理由の前提条件は満たされず、係る主張は妥当とは言えない。
また、他の提出された証拠の中にも、本件発明3の「切換手段」に相当するものは記載されていない。
以上により、本件発明3は、特許を取り消すべき理由がない。

なお、本件発明4は、本件発明3を引用した発明であるから、同様に特許を取り消すべき理由がない。

<本件発明7について>
本件発明7と引用発明とを対比すると、引用発明は、上記の相違点に加え、「一方の電圧極バーに対応する端子部の配設位置が最前段の接続用部となっているとともに器体表面に該接続用部を視認可能とする窓が設けられている」を備えていない点で相違する。
これに対し、異議申立人東芝ライテック株式会社は、係る端子部の配設位置及び窓に関し、「甲第1号証の回路遮断器は、電圧極バーに対応する端子部の配設位置が最前段の接続用部となっており、このような構成の場合に、視認可能とする窓を設けることは、当業者であれば必要に応じて採用し得る常套手段であるからである。」(同人申立書第13頁、(請求項7))との理由から、設計事項であると主張している。加えて異議申立人日東工業株式会社も、「窓を設けて電圧表示を視認可能とすることは甲第4号証により公知であるから、請求項7の発明にも特許性はない。」(同人申立書第9頁、(請求項7))と主張している。
なるほど東芝ライテック株式会社が提出した甲第1号証には端子部の配設位置が最前段となる例が記載されているものの、窓の設置が常套手段であることが納得できる証拠の提出はなされていない。また、日東工業株式会社が提出した甲第4号証は、当人が主張しているとおり窓から視認できる内容が電圧表示であって接続用部相当の部材の有無ではないことが明らかであって、本件発明7の窓とは、機能的に異なるものであることが明らかと言える。更に、遮断器の分野で接続用部を視認可能とする目的で窓を設けた例は、他の証拠をはじめとして発見できない。
よって、異議申立人の主張は採用すべき理由が無く、また、他の証拠のいずれにもこれに該当する構成は見いだすことができないものであるから、本件発明7の特許を取り消すべき理由はない。

【4】むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2,5,6,8ないし12は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められ、本件発明1、2,5,6,8ないし12についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
一方、本件発明3,4及び7についての特許は、異議申立の理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明3,4及び7についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回路遮断器及びこれを備えた分電盤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 単相三線における2本の電圧極バーのうちの1本と中性極バーとに接続される回路遮断器であって、前後三段に配される上記3本の極バーに夫々対応する3つの接続用部を側端面に前後方向において備えるとともに、これら接続用部のうちの一つに配されて中性極バーに差し込み接続される中性極用端子部と、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される電圧極用端子部とを備え、上記3本の極バーのうち電圧極用端子部が接続される電圧極バーのみを示す表示を器体表面に備えていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】 接続用部への端子部の配置が選択自在となっていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】 他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される第1の電圧極用端子部と、残る一つの接続用部に配されて他の電圧極バーに差し込み接続される第2の電圧極用端子部と、上記両端子部の内部回路への接続を切り換える切換手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項4】 切換手段は器体表面に配されたスイッチハンドルで切り換えられるものであることを特徴とする請求項3記載の回路遮断器。
【請求項5】 表示は電圧極バー名を示すものであることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項6】 表示は2本の電圧極バーに対応して設定された色分けであることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項7】 一方の電圧極バーに対応する端子部の配設位置が最前段の接続用部となっているとともに器体表面に該接続用部を視認可能とする窓が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項8】 端子部はその先端の受刃において極バーに接続されるものであり、各端子部は極バーが挿通される切り溝を側壁に備えたカバーで覆われていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の回路遮断器。
【請求項9】 単相三線における2本の電圧極バーと中性極バーとを前後方向に並べて筐体内に配設しているとともに、これら極バーに接続される請求項1〜8のいずれかに記載の回路遮断器を極バーの両側に配設していることを特徴とする分電盤。
【請求項10】 単相三線における2本の電圧極バーと中性極バーとを前後方向に並べて筐体内に配設しているとともに、これら極バーに接続される請求項8記載の回路遮断器を極バーの両側に配設して、極バー両側の回路遮断器のカバーの先端同士を極バーの前方側において当接させていることを特徴とする分電盤。
【請求項11】 筐体は回路遮断器を覆う蓋体を備えていることを特徴とする請求項9または10記載の分電盤。
【請求項12】 筐体は回路遮断器を覆う蓋体を備え、該蓋体には回路遮断器の上記表示及びカバーを覗かせる窓が設けられていることを特徴とする請求項10記載の分電盤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は回路遮断器とこの回路遮断器を備えた分電盤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】単相三線用の分電盤は、一般に主幹ブレーカーと、該主幹ブレーカーに接続された2本の電圧極バー及び1本の中性極バーとからなる3本の極バーと、この極バーに接続される分岐ブレーカーとしての回路遮断器を筐体内に納めたもので、通常、3本の極バーを筐体の幅方向中央に配設し、これら極バーの両側に夫々複数個の回路遮断器を配設するものとなっている。そして上記3本の極バーのうち、中性極バーを中央に、その両側に夫々電圧極バーを配置しており、各回路遮断器は中性極バーと近い方に位置する電圧極バーとに接続するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ここにおいて、単相三線において2本ある電圧極バーに夫々接続される負荷は等しくなるようにしておくことから、極バーの一側に配されて一方の電圧極バーに接続される回路遮断器と、極バーの他側に配されて他方の電圧極バーに接続される回路遮断器とは同数としておくのであるが、実際の負荷バランスは回路遮断器に接続される負荷の容量によっても変化してしまう。
【0004】従って、実際には一方の電圧極バーに接続する回路遮断器数と他方の電圧極バーに接続する回路遮断器数とを異ならせなくては負荷バランスを保つことができないこともあるのに対して、従来の回路遮断器は中性極バーと近い方にある電圧極バーとに接続することができるだけであったことから、負荷バランスを保つという要求に答えることができない場合があった。
【0005】本発明はこのような点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは2本の電圧極バーのいずれに接続するかという点が極バーに対する配設位置に拘束されることがない回路遮断器を提供するにあり、また他の目的とするところは上記回路遮断器を用いることで単相三線における負荷バランスを容易に保つことができる分電盤を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】しかして本発明に係る回路遮断器は、単相三線における2本の電圧極バーのうちの1本と中性極バーとに接続される回路遮断器であり、前後三段に配される上記3本の極バーに夫々対応する3つの接続用部を側端面に前後方向において備えるとともに、これら接続用部のうちの一つに配されて中性極バーに差し込み接続される中性極用端子部と、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される電圧極用端子部とを備え、上記3本の極バーのうち電圧極用端子部が接続される電圧極バーのみを示す表示を器体表面に備えていることに特徴を有している。2本の電圧極バーのうちの一方に接続するものを、極バーの両側のどちらにも配置できるようにしたものであり、また電圧極用端子部が接続される電圧極バーを示す表示を器体表面に備えたものとすることで、一方の電圧極バーに接続したものか、他方の電圧極バーに接続したものかが明快となるようにしたものである。
【0007】この時、接続用部への端子部の配置を選択自在としていると、単一種の回路遮断器をどちらの電圧極バーにも接続することができるものとなる。さらに、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される第1の電圧極用端子部と、残る一つの接続用部に配されて他の電圧極バーに差し込み接続される第2の電圧極用端子部と、上記両端子部の内部回路への接続を切り換える切換手段とを備えたものとしてもよく、この場合においても、単一種の回路遮断器をどちらの電圧極バーにも接続することができる。この時、切換手段として器体表面に配されたスイッチハンドルで切り換えられるものを用いると、スイッチハンドルの位置によって、どちらの電圧極バーに接続されているかを表示することができる。
【0008】上記表示は電圧極バー名を示すもののほか、2本の電圧極バーに対応して設定した色分けであってもよい。また、一方の電圧極バーに対応する端子部の配設位置が最前段の接続用部となっているものでは、器体表面に該接続用部を視認可能とする窓を設けて、この窓を通じて見える接続用部の状態が表示となるようにしてもよい。
【0009】端子部にはその先端の受刃が極バーに接続されるものを用いることができるとともに、極バーが挿通される切り溝を側壁に備えたカバーで端子部を覆っていると、各極バーとして単なる帯板状のものを用いることができる。また本発明に係る分電盤は、単相三線における2本の電圧極バーと中性極バーとを前後方向に並べて筐体内に配設しているとともに、これら極バーに接続される上記回路遮断器を極バーの両側に配設していることに特徴を有している。片方の電圧極バーに接続する回路遮断器を極バーの片側にしか設置できないという制限が無いために、単相三線における負荷バランスを容易にとることができる。
【0010】また、上記受刃を備えた端子部及びカバーを有している回路遮断器を用いるものにおいては、極バーの両側に配した回路遮断器のカバーの先端同士を極バーの前方側において当接させていると、極バー等の充電部の露出を回路遮断器のカバーで防ぐことができる。そして筐体が回路遮断器を覆う蓋体を備えたものにおいては、通常、蓋体に各回路遮断器についての注記を付しておくが、各回路遮断器の器体表面に電圧極用端子部が接続される電圧極バーを示す表示があるために、蓋体を外した時にも表示によって接続されている電圧極バーを知ることができる。
【0011】また、回路遮断器に表示及びカバーを設けているものでは、筐体に設けた回路遮断器を覆う蓋体に回路遮断器の上記表示及びカバーを覗かせる窓を設けておくとよい。回路遮断器側に設けた表示を蓋体を開かずとも確認することができる上に、カバーによって充電部の露出が防がれているために窓の存在が問題となることもない。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例について説明すると、図1に本発明に係る回路遮断器1の実施の態様の一例を示しており、図2〜図4は該回路遮断器1を備えた分電盤7の一例を示している。本例における回路遮断器1は、遮断器本体10と、この本体10の一方の側端側に装着されるカバー2とからなるもので、各カバー2内は2つの隔壁20,20によって前後3つの部屋に区画されており、図1中に示した3つの回路遮断器1のうち、カバー2の表面に「L1」と記されたものではカバー2内に接続端子板30,31が、カバー2の表面に「L2」と記されたものではカバー2内に接続端子板30,32が、さらにカバー2の表面に「200」と記されたものではカバー2内に接続端子板32,33が配されている。
【0013】上記3つの回路遮断器1は、遮断器本体10が同じであるとともに、カバー2も表面に記された記号が異なるだけの同じ形状のものであって、遮断器本体10は図6に示すように、前面にハンドル15を、カバー2が装着される側端側に2つの端子11,12を備えている。また、カバー2は上述のように一側端側が隔壁20によって前後3つの部屋に区画されているとともに、各部屋に面する側壁に切り溝25を備えている。
【0014】そして、表面に「L1」の表記40があるカバー2内に配された2つの接続端子板30,31は、図6及び図7に示すように、いずれも一端に受刃35,35を備えたもので、カバー2の前記3つの部屋のうちの前側の部屋に受刃35の部分を納めた接続端子板31は、他端の接続固定部36を遮断器本体10の端子12に接続しており、中程の部屋に受刃35の部分を納めた接続端子板30は、他端の接続固定部36を遮断器本体10の端子11に接続している。
【0015】カバー2の表面に「L2」の表記40があるものにおける接続端子板30は、図8及び図9に示すように、上記のものにおける接続端子板30と同様に受刃35を中程の部屋に納めて接続固定部36を端子11に接続しており、また接続端子板32は前記3つの部屋のうちの後方の部屋に受刃35の部分を納めるとともに接続固定部36を端子12に接続している。
【0016】さらにカバー2の表面に「200」の表記40があるものでは、図10及び図11に示すように、接続端子板32の受刃35を後方の部屋に納めるとともに接続固定部36を端子12に接続しており、接続端子板33の一端の受刃35を前側の部屋に納めて接続固定部36を端子11に接続している。なお、接続固定部36の端子11,12への接続固定は、カバー2の表面側に設けた工具挿通孔28,28を通じて端子11,12におけるねじを閉めることによって行う。
【0017】このように構成された3つの回路遮断器1は、図1に示すように、前から電圧極バーL1、中性極バーL0、そして電圧極バーL2の順で前後に間隔をおいて設置された単相三線の電源ラインに接続されるのであるが、これらの極バーL1,L0,L2の側方から各カバー2の切り溝25に極バーL1,L0,L2の片側半分を嵌め込めば、接続端子板30の受刃35は中性極バーL0に、接続端子板31の受刃35は電圧極バーL1に、接続端子板32の受刃35は電圧極バーL2に接続され、さらに接続端子板33の受刃35は電圧極バーL1に接続される。
【0018】すなわち、カバー2の表面に「L1」の表記40があるものでは、その端子11,12に接続端子板30,31を介して中性極バーL0と電圧極バーL1が接続され、カバー2の表面に「L2」の表記40があるものでは、その端子11,12に接続端子板30,32を介して中性極バーL0と電圧極バーL2が接続され、カバー2の表面に「200」の表記40があるものでは、その端子11,12に接続端子板33,32を介して電圧極バーL1,L2が接続される。
【0019】ここにおいて、各回路遮断器1は、図5にも示すように、極バーL1,L0,L2の左右いずれからでも接続することができるものであり、また遮断器本体10は共通であるものの、端子12にいずれの接続端子板31,32を接続して用いるかによって、電圧極バーL1と中性極バーL0とに接続するものと、電圧極バーL2と中性極バーL0とに接続するものとの2種の回路遮断器1を構成することができるものである。
【0020】なお、上記の各接続から明らかなように、カバー2の表面の「L1」「L2」「200」の表記40は夫々電圧極バーL1への接続用、電圧極バーL2への接続用、電圧極バーL1,L2に接続する200V用であることを示しているわけであるが、接続端子板30,31,32,33を覆うカバー2は前述のように表面の「L1」,「L2」,「200」の表記40が異なるだけであるために、これら表記40をシールで形成したりすることで、全く同じものを用いることができる。
【0021】図2〜図4は上記回路遮断器1を分岐ブレーカーとして用いている分電盤7を示しており、前面が開口するとともに前面に扉71が開閉自在に取り付けられた筐体70内の上部には主幹ブレーカー5が設置されて、該主幹ブレーカー5に各上端が接続された2本の電圧極バーL1,L2と中性極バーL0は、前後方向に間隔を置いて設置されているとともに、前述のように前から順に電圧極バーL1、中性極バーL0、電圧極バーL2となるようにされている。そして、筐体70内の左右方向のほぼ中央に配された上記極バーL1,L0,L2に対して、各回路遮断器1は、左右方向から接続固定されている。図4中の67は回路遮断器1の固定のための取付ベースである。
【0022】この分電盤7においては、極バーL1,L0,L2の片側に設置する回路遮断器1が一方の電圧極バーL1に接続するものであり且つ他側に設置する回路遮断器1が他方の電圧極バーL2に接続するものであるという規制を受けないことから、各回路遮断器1に接続される負荷の容量に応じて、カバー2に「L1」「L2」と表記した回路遮断器1を選択すればよく、この結果、電圧極バーL1に接続する回路遮断器1の数が電圧極バーL2に接続する回路遮断器1の数より多くなっても何ら問題なく回路遮断器1を納めることができる。
【0023】これに伴って、極バーL1,L0,L2の片側に配置した回路遮断器1が電圧極バーL1に接続したものとは限らなくなるために、カバー2表面の「L1」「L2」の表記40はその回路遮断器1が電圧極バーL1,L2のいずれに接続したものかを表示するものとなる。また、分電盤7における中蓋75に設けられて回路遮断器1のハンドル15を臨ませる窓76は、カバー2に設けられた上記表記40も臨ませるものとなっている。なお、図示例の中蓋75の窓76は、極バーL1,L0,L2の配置空間の前面も開放する大きさを有するものとなっている。各回路遮断器1のカバー2は、回路遮断器1を極バーL1,L0,L2の左右から接続した時、左方側の回路遮断器1のカバー2の側端面と、右方側の回路遮断器1のカバー2の側端面とが当接する上に、上下に並ぶ回路遮断器1のカバー2間の隙間を微小とするものとなっているために、つまりカバー2は接続端子板30,31,32,33の露出を防ぐだけでなく、極バーL1,L0,L2が露出してしまうことも防ぐものとなっているために、上記の大きさの窓76が問題となることがなく、却ってカバー2表面に設けられた前記表記を見やすくするものとなっているわけである。図3中の77は主幹ブレーカー5に接続された極バーL1,L0,L2の上端部を隠蔽する隠蔽板、回路遮断器1に付した1から24の番号は分岐回路番号である。
【0024】カバー2の表面に設けた上記表記40は、どちらの電圧極バーL1,L2に接続したものであるかを明示するためのものであるから、図12に示すように、色分け表示であってもよい。図中の表記40を付していない回路遮断器40は200V用である。一方の電圧極バーL1を前面に配していることから、図13に示すように、カバー2の側端前面に開口または透明部からなる窓41を設けて、カバー2内の前側の部屋に接続端子板31が納められているかどうかを窓41を通じて見ることができるようにしてもよい。
【0025】遮断器本体10とカバー2とが別体であり、また接続端子板30,31,32,33が遮断器本体1の端子11,12に着脱自在に接続されるものを示したが、遮断器本体10にカバー2が一体であってもよく、また、一端に受刃35を有する接続端子板30,31,32,33のうちの2本が回路遮断器1に固定されて端子11,12となっているものであってもよい。この場合、各回路遮断器1は、電圧極バーL1への接続用と電圧極バーL2への接続用(、さらには200V用)が個別のものとなる。
【0026】図14〜図17に他例を示す。この回路遮断器1ではカバー2を遮断器本体10に一体に形成するとともに、受刃35を夫々先端に備えた3種の接続端子板30,31,32を内蔵している。また、これら接続端子板30,31,32のうち、中性極バーL0との接続用である接続端子板30は回路遮断器1内の遮断回路に直接接続されているのに対して、電圧極バーL1との接続用である接続端子板31と、電圧極バーL2との接続用である接続端子板32とは、ハンドル15が位置している回路遮断器1表面に設けられたスイッチハンドル60の操作で切り換えられる切換スイッチ6を通じて遮断回路に接続されている。
【0027】このために、回路遮断器1を極バーL1,L0,L2に接続する時、全極バーL1,L0,L2に接続されるものの、遮断回路には切換スイッチ6によって選択された電圧極バーL1,L2が接続されるものであり、このために分電盤7に設置した後に、電圧極バーL1への接続か電圧極バーL2への接続かを変更することができる。
【0028】また、スイッチハンドル60の操作で切換スイッチ6を切り換えることによって接続端子板31を遮断回路に接続した時には、スイッチハンドル60に設けた図示例では「L1」の表記40が表面に現れ、接続端子板31を遮断回路に接続した時にはスイッチハンドル60に設けた「L2」の表記40が表面に現れることから、どちらの電圧極バーL1,L2に接続されているかも明示される。
【0029】図18〜図21に別の例を示す。ここでは前後に並んでいる3本の極バーL1,L0,L2に左右に突出する接続片37を夫々固着している。なお、図示例において、2本の極バーL0,L2は左右にずれているものの前後方向位置は同じとなっているが、これら極バーL1,L0,L2に予め固定されてから左右に突出するとともに左右両端の位置が夫々同じとなっている各接続片37は前後に並ぶものとなっているために、各回路遮断器1にとっては、3本の極バーL1,L0,L2が前後に並ぶものとなっている。
【0030】また回路遮断器1は「L1」の表記40が表面に付された図20に示すものと、「L2」の表記40が表面に付された図21に示すものとが用いられている。両種の回路遮断器1のうち、「L1」用は側端に設けられた前後方向における3つの端子室のうちの前側と中程との端子室に受刃状の端子11,12を配し、「L2」用は3つの端子室のうちの中程と後ろ側の端子室に受刃状の端子11,12を配したものとなっている。
【0031】このものにおいても、「L1」用と「L2」用の各回路遮断器1は極バーL1,L0,L2の左右どちらにも設置することができる。図22は上記のものにおける表記40を色分けで行ったものを示しており、図23は表記40に代えて前側の端子室に端子11,12が配されているかどうかを見るための窓41を設けたものを示している。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明に係る回路遮断器は、単相三線における2本の電圧極バーのうちの1本と中性極バーとに接続される回路遮断器であり、前後三段に配される上記3本の極バーに夫々対応する3つの接続用部を側端面に前後方向において備えるとともに、これら接続用部のうちの一つに配されて中性極バーに差し込み接続される中性極用端子部と、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される電圧極用端子部とを備えていることから、2本の電圧極バーのうちの一方に接続するものを、極バーの両側のどちらにも配置できるものであり、このために2本の電圧極バーのいずれに接続するかという点が極バーに対する配設位置に拘束されることがなく、分電盤への取り付けに際しての制限が少ないものである。しかも、電圧極用端子部が接続される電圧極バーを示す表示を器体表面に備えているために、一方の電圧極バーに接続したものか、他方の電圧極バーに接続したものかが明快となり、分電盤への組み込み状態の確認や、負荷バランスの設定が容易となる。
【0033】また、接続用部への端子部の配置を選択自在としていると、単一種の回路遮断器をどちらの電圧極バーにも接続することができるものとなるために、分電盤への組み込みに必要な回路遮断器を単一種でまかなうことができる。
【0034】さらに、他の2つの接続用部のうちの一つに配されて2本の電圧極バーのうちの1本に差し込み接続される第1の電圧極用端子部と、残る一つの接続用部に配されて他の電圧極バーに差し込み接続される第2の電圧極用端子部と、上記両端子部の内部回路への接続を切り換える切換手段とを備えたものにおいても、単一種の回路遮断器をどちらの電圧極バーにも接続することができる。さらに物理的接続を保った状態のままで電気的接続を切り換えることができる。
【0035】このものにおいて、上記切換手段として器体表面に配されたスイッチハンドルで切り換えられるものを用いると、スイッチハンドルの位置によって、どちらの電圧極バーに接続されているかを表示することができるために、分電盤への組み込み状態の確認が容易となる。
【0036】上記表示は電圧極バー名を示すもののほか、2本の電圧極バーに対応して設定した色分けであってもよい。負荷バランスの設定のための回路遮断器数の確認には後者の方が有利である。一方の電圧極バーに対応する端子部の配設位置が最前段の接続用部となっているものでは、器体表面に該接続用部を視認可能とする窓を設けて、この窓を通じて見える接続用部の状態が表示となるようにしてもよい。窓をあけておくだけでよいために、接続されている電圧極バーに応じた異なる表示を設けなくてもすむ。
【0037】端子部にはその先端の受刃が極バーに接続されるものを用いることができるとともに、極バーが挿通される切り溝を側壁に備えたカバーで端子部を覆っていると、各極バーとして単なる帯板状のものを用いることができる上に、充電部を露出を防ぐことができる。また本発明に係る分電盤は、単相三線における2本の電圧極バーと中性極バーとを前後方向に並べて筐体内に配設しているとともに、これら極バーに接続される上記回路遮断器を極バーの両側に配設していることから、片方の電圧極バーに接続する回路遮断器を極バーの片側にしか設置できないという制限が無いために、回路遮断器に接続される負荷の容量が夫々異なる場合においても、単相三線における負荷バランスを容易にとることができる。
【0038】また、上記受刃を備えた端子部及びカバーを有している回路遮断器を用いるものにおいて、極バーの両側に配した回路遮断器のカバーの先端同士を極バーの前方側において当接させていると、極バー等の充電部の露出を回路遮断器のカバーで防ぐことができるために、充電部を隠蔽するための保護板を別途設けなくてもすむ。
【0039】そして筐体が回路遮断器を覆う蓋体を備えたものにおいては、通常、蓋体に各回路遮断器についての注記を付しておくが、各回路遮断器の器体表面に電圧極用端子部が接続される電圧極バーを示す表示を設けてあるために、蓋体を外した時にも表示によって接続されている電圧極バーを知ることができ、メンテナンス等に際して便利である。
【0040】また、回路遮断器に表示及びカバーを設けているものでは、筐体に設けた回路遮断器を覆う蓋体に回路遮断器の上記表示及びカバーを覗かせる窓を設けておくと、回路遮断器側に設けた表示を蓋体を開かずとも確認することができるものであり、しかもカバーによって充電部の露出が防がれていることから、窓の存在が問題となることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回路遮断器の実施の態様の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る分電盤の実施の態様の一例における扉を開いた状態の正面図である。
【図3】同上の分電盤の扉及び中蓋を外した状態の正面図である。
【図4】同上の分電盤の水平断面図である。
【図5】同上の回路遮断器の極バーとの接続状態を示す斜視図である。
【図6】同上の回路遮断器の分解斜視図である。
【図7】同上の回路遮断器の底面図である。
【図8】同上の回路遮断器の分解斜視図である。
【図9】同上の回路遮断器の底面図である。
【図10】同上の回路遮断器の分解斜視図である。
【図11】同上の回路遮断器の底面図である。
【図12】同上の他例を示す斜視図である。
【図13】同上のさらに他例を示す斜視図である。
【図14】同上の回路遮断器の別の例を示す斜視図である。
【図15】同上の斜視図である。
【図16】同上の底面図である。
【図17】同上の底面図である。
【図18】同上の回路遮断器のさらに別の例の斜視図である。
【図19】同上の回路遮断器を備えた分電盤の水平断面図である。
【図20】同上の回路遮断器の断面図である。
【図21】同上の回路遮断器の断面図である。
【図22】同上の他例の斜視図である。
【図23】同上のさらに他例の斜視図である。
【符号の説明】
L0 中性極バー
L1 電圧極バー
L2 電圧極バー
1 回路遮断器
2 カバー
30 中性極用接続端子板
31 電圧極用接続端子板
32 電圧極用接続端子板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-25 
出願番号 特願平9-46438
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (H01H)
最終処分 一部取消  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 平上 悦司
西村 泰英
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3330047号(P3330047)
権利者 松下電工株式会社
発明の名称 回路遮断器及びこれを備えた分電盤  
代理人 松成 靖典  
代理人 松成 靖典  
代理人 和泉 順一  
代理人 綿貫 達雄  
代理人 宮本 正人  
代理人 山本 文夫  
代理人 名嶋 明郎  
代理人 宮本 正人  

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