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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1119444
異議申立番号 異議2003-73388  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-24 
確定日 2005-07-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3471030号「パチンコ機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3471030号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続きの経緯
特許第3471030号の請求項1に係る発明についての出願は、平成3年7月22日に特許出願され、平成15年9月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人河井清悦より特許異議の申立てがなされたものである。

第2.特許異議の申立ての理由についての判断
1.特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、
甲第1号証:特開平5-3959号公報
甲第2号証:特開昭63-317175号公報
甲第3号証:特開昭63-128448号公報
甲第4号証:特開平1-261770号公報
を提出し、
本件請求項1に係る発明は、
(1-1)本件出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平3-181838号(特開平5-3959号;甲第1号証)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとし、
(1-2)本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開昭63-317175号公報)に記載された発明及び周知技術(甲第2乃至4号証)に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとし、
本件発明についての特許は、取り消されるべきものであると主張している。

2.本件発明
特許第3471030号の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】玉貸可能信号を出力する遊技球送り出し手段と玉貸要求信号を出力するカード処理手段とを有し、同遊技球送り出し手段にて同カード処理手段が出力する玉貸要求信号を受信し、適宜玉貸可能信号の信号状態を制御しつつ同玉貸要求信号に応じて所定数の遊技球を送り出すとともに、同カード処理手段にて同遊技球送り出し手段が出力する玉貸可能信号を受信し、適宜玉貸要求信号の信号状態を制御しつつカード状記録媒体を読み書きして精算を行なうパチンコ機において、
上記遊技球送り出し手段は、上記カード処理手段から受信する玉貸要求信号の信号状態に基づいて同カード処理手段の異常を検出する第1異常検出手段と、上記第1異常検出手段にて異常が検出された場合、同カード処理手段の異常状態を視認可能に表示する第1異常表示手段とを備えるとともに、
上記カード処理手段は、上記遊技球送り出し手段から受信する玉貸可能信号の信号状態に基づいて同遊技球送り出し手段の異常を検出する第2異常検出手段と、上記第2異常検出手段にて異常が検出された場合、同遊技球送り出し手段の異常状態を視認可能に表示する第2異常表示手段とを備えることを特徴とするパチンコ機。(以下、「本件発明」という。)

3.特許異議の申立の理由に提出された甲号各証に記載された発明
(3-1)甲第1号証(特願平3-181838号(特開平5-3959号)の願書に最初に添付した明細書又は図面)には以下の記載がある。
「【0009】
【実施例】図1には、本発明に係るカード式パチンコ遊技機の一実施例が示されている。この実施例では、パチンコ遊技機100と玉貸機200とが対をなすように構成されており、各玉貸機200にはカードリーダが内蔵され、玉貸機200の前面パネル210には上記カードリーダに対応してカード挿排口211と、挿入されたカードの残高を表示する挿入残高表示器220、玉貸機が作動状態にあることを表示する有効表示ランプ230が設けられている。」
「【0010】一方、パチンコ遊技機100の前面パネル101に設けられている供給皿120の上面には、操作パネル121が形成され、この操作パネル121上に上記カード挿排口211に挿入されたカードの残高を表示する残高表示器122と、貸し玉への変換の指令を与える変換ボタン123と、カードの排出(返却)を指令する返却ボタン124と、上記変換ボタン123が有効中であることを表示する玉貸し可能表示ランプ126が設けられている。」
「【0011】なお、112は賞品玉排出時に点灯される賞品球排出表示ランプ、また・・・」
「【0022】・・・図4には、パチンコ遊技機100の制御系の一実施例が示されている。この制御系は大きく分けると、主としてパチンコ遊技機100の遊技盤に関する制御を司る遊技盤制御装置400と、カードリーダ等の制御を司る玉貸し制御装置500と、上記球排出装置170の制御を司る排出制御装置600とにより構成されている。」
「【0024】排出制御装置600は、上記玉貸し制御装置500または遊技盤制御装置400からの排出指令信号に基づいて上記球排出装置170内の2条の案内樋710の途中に設けられた一対のストッパ745を作動させる排出ソレノイド741a,741bを励磁して、排出センサ730a,730bの検出信号に基づいて各案内樋710内の予備球を所定数だけ排出させるとともに、・・・」
「【0025】また、排出制御装置600は、・・・排出時には排出指令信号の内容に応じて例えば賞品球排出表示ランプ112または貸し玉排出表示ランプ113を点灯させたり、・・・」
「【0026】玉貸し制御装置500は、パチンコ遊技機100内のカードリーダからの読取りデータを受けて挿入残高表示器220に対する駆動信号や残高表示器122に対する表示駆動信号およびカードリーダが作動状態にあることを表示する有効表示ランプ230やパチンコ遊技機に設けられている玉貸し可能表示ランプ126に対する駆動信号を形成したり、・・・また、玉貸し制御装置500は、玉貸し変換スイッチ(123)とカード返却スイッチ(124)のオン信号を受け付けるとともに、排出制御装置600に対して玉貸し要求信号BRQを送ったり、・・・」
「【0032】図7には排出制御装置600の構成例を示す。この実施例の排出制御装置600は、・・・排出ソレノイド741a,741bを駆動して賞品球の排出や球抜を行なう排出制御手段650と、玉貸し制御装置500からの玉貸し要求信号BRQに基づいて玉貸し排出数を演算し排出制御手段610に知らせる貸し玉排出制御手段670と、・・・とにより構成されている。」
「【0034】また、排出制御手段650は、・・・排出時には排出指令信号の内容に応じて例えば賞品球排出表示ランプ112または貸し玉排出表示ランプ113を点灯させたり、遊技盤制御装置400に対して賞品球もしくは貸し玉の排出音要求信号を送出する。」
「【0036】貸し玉排出制御手段670は、・・・玉貸し制御装置500からの玉貸し要求信号BRQおよびカード挿入信号Lと賞球数要求手段620からの賞球排出中を示す信号Yとに基づいて玉貸排出制御を開始すべきか判定する玉貸開始判定手段672と、・・・玉貸し制御装置500に対して玉貸し排出が可能な状態にあることを知らせる玉貸し可能信号RDYや1回(100円分)の貸し玉の排出が終了したことを知らせる貸し玉排出終了信号EXS、賞球数要求手段620に対して貸し玉排出制御中であることを知らせる信号xを形成する排出制御信号形成部674等から構成されている。・・・」
「【0039】図9は玉貸し制御装置500の構成例を示す。この実施例の玉貸し制御装置500は、シングルチップマイコン等からなる制御部510と、この制御部510とカードリーダ制御装置250との間のデータ送受信のインターフェースを行なうトランシーバ502と、・・・玉貸可能表示ランプ126および玉貸有効表示ランプ230を駆動するドライブ回路DRV1,DRV2と、・・・等によって構成されている。」
「【0040】また、上記制御部510は、カードリーダ制御装置250からのデータを読み込んでカードの残高データを判定しカードがカードリーダ内に存在することを示すカード有無信号CONを出力したり挿入残高表示器220に対する表示データを形成するカード残高判定手段511と、玉貸し排出があったときにカード残高を減算して残高表示器220に対する表示データを形成したりカードリーダ制御装置250に対する書込データや指令を形成するカード残高減算手段512と、・・・から構成されている。」
「【0041】また、この実施例では、上記玉貸し要求信号BRQと玉貸し排出終了信号EXSとから、玉貸し要求送信後所定時間内に排出が開始されなかったり玉貸し排出開始後所定時間内に一連の玉貸し排出が終了しなかった場合に、排出エラーと判定して上記カード返却要求手段513に対してカード返却指令を与える排出開始時間監視手段518および排出時間監視手段519が設けられている。さらに、玉貸し可能判定手段515は、上記カード残高判定手段511から信号および排出制御装置600からの玉貸し可能信号RDYに基づいてドライブ回路507を駆動して、上記玉貸し変換ボタン124が有効である間だけ玉貸し可能表示ランプ126を点灯させ、玉貸し排出が実行されている間は玉貸し可能表示ランプ126を消灯させるようになっている。・・・」
「【0057】・・・玉貸可能信号RDYは排出制御装置600が貯留タンク151内の玉不足または遊技盤の打止め状態を検知した場合に、ロウレベルに変化される信号であり、システムの電源が投入され排出制御装置600の制御が開始されるときには、玉貸可能信号RDYがハイレベル状態にされる。・・・」
「【0058】・・・この玉貸し可能表示器126は、後述のファンクション送受信処理(図17,18)において、カードリーダ制御装置250からカード金額を受信したときに点灯されるランプである。・・・」
「【0070】・・・玉貸可能表示器126が消灯されているのは玉貸し処理中もしくはカードがカードリーダ内に存在しないということであるので、返却ボタンがオンされてもカードの返却をカードリーダに指令する必要がないからである。」
「【0089】次に、上述した排出制御装置600によって行なわれる賞品球および貸し玉の排出制御の手順を図23ないし図49を参照して詳細に説明する。・・・」
「【0090】続くステップS2では、タイマの更新や各種センサからの検出信号、入力信号の読込みを行なうバックグランド処理が行なってから、ステップS3に進み、後述のBRQ信号読込み処理(図31)中でセットされる玉貸し要求信号BRQの立下りフラグが「1」であるか否か判定し、フラグが「1」のときはステップS10の貸玉処理を行ない、・・・」
「【0139】・・・賞球排出表示器112(セーフランプ)・・・」
「【0153】図44は、前述した賞球排出制御装置のメインルーチン(図23)のステップS10で実行される貸出処理の手順を示すフローチャートで、このフローは図31の球貸し要求信号BRQの読込み処理によって信号の立下りエッジが検出されることにより開始され、所定数の貸し球の排出が行なわれる。・・・」
「【0171】一方、上記ステップ6575で玉貸し要求信号BRQがハイレベルに変化する前にステップ6572で設定したタイマ1がタイムアップしたと判定すると、ステップ6585へ移行し、球抜きソレノイドをオン、セーフランプを点灯、玉貸し可能信号RDYをロウレベルにネゲートして貸出排出処理を中止する。所定時間内に玉貸し制御装置500から応答信号が戻ってこないのは通信ラインの切断等重大な故障が発生したと考えられるからである。」
「【0172】次に、カードリーダにカードが挿入され、パチンコ遊技機100に設けられた変換ボタン123が押されて玉貸し要求がなされた場合において、上記玉貸し制御装置500と排出制御装置600との間で送受信される信号の具体的なタイミングを図50を用いて説明する。・・・」
「【0175】ただし、玉貸し制御装置500は、玉貸し要求信号BRQをロウレベルにアサート(タイミングt3)してから10秒経過しても排出終了信号EXSがロウレベルに変化しなかったり、排出終了信号EXSがロウレベルに変化(タイミングt4,t7,t10)してから10秒経過しても排出終了信号EXSがハイレベルに変化しなかった場合(T1<10秒,T2<10秒)には、カードリーダにカード排出指令を送って玉貸し制御を中断する(図15のステップS8134,S8142参照)。一方、排出制御装置600は、最後の排出終了信号EXSをハイレベルに変化(タイミングt11)させてから100m秒経過しても玉貸し要求信号BRQがハイレベルに変化しなかった場合(T3<100m秒)には、異常発生(正常なら75m秒で変化する)と判断して球抜きソレノイドをオン、セーフランプを点灯、玉貸し可能信号RDYをロウレベルにネゲートして貸し玉の排出処理を中止する(図49のステップS6572,S6575参照)。」

したがって、
甲第1号証には、
「玉貸し可能信号RDYを出力する排出制御装置600と玉貸し要求信号BRQを出力する玉貸し制御装置500とを有し、
排出制御装置600は玉貸し制御装置500からの玉貸し要求信号BRQに基づいて予備球を所定数だけ排出させるとともに、玉貸し制御装置500にて排出制御装置600が出力する玉貸し可能信号RDYを受信し、カードリーダの制御を司るカード式パチンコ遊技機において、
排出制御装置600は、上記玉貸し制御装置500から受信する玉貸し要求信号BRQの信号状態に基づいて異常が検出された場合、異常状態を視認可能に表示する賞球排出表示器112(セーフランプ)を備えるとともに、
上記玉貸し制御装置500は、カードリーダ制御装置250からカード金額を受信したときに点灯される玉貸し可能表示ランプ126を備えるカード式パチンコ遊技機」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(3-2)甲第2号証(特開昭63-317175号公報)には以下の記載がある。
公報第1頁の特許請求の範囲には「(1)磁気カード挿入口と、磁気カードの残使用回数又は残使用金額を表示する残数表示部と、該磁気カード挿入口に連設された磁気カードリーダー部と、所定数のパチンコ玉を貯溜するパチンコ玉貯溜手段と、パチンコ玉の玉切れを感知する玉切れセンサーと、パチンコ玉の玉詰まりを感知する玉詰まりセンサーと、貯溜されているパチンコ玉を該パチンコ玉貯溜手段から開放する開放手段と、を有するパチンコ玉貸装置に制御コンピュータを接続し、所定の磁気カードが該磁気カード挿入口に挿入され引き出されると該磁気カードの磁気情報が該磁気カードリーダー部によって読み取られ、この磁気情報とともに玉貸要求信号が該制御コンピュータに送られ、該制御コンピュータは送られてきた磁気カード情報及び玉貸要求信号が所定の玉貸条件を充足する場合には玉貸許可信号を該玉貸装置に送り返して貯溜されているパチンコ玉を開放して玉貸を行うようにした磁気カード式パチンコ玉貸システムにおいて、一のI/Oインターフェイスを介在して同一機能の制御コンピュータを複数台設け、システム運転中、複数台の制御コンピュータは互いに正常動作確認信号の交信を続け、玉貸装置と接続している制御コンピュータに異常が発生した場合に玉貸装置との接続を他の正常の制御コンピュータに自動的に切り換えるようにしたことを特徴とする磁気カード式パチンコ玉貸システム。」と、
公報第6頁右上欄第8行乃至左下欄第1行には「(実施例)
以下に本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
第1図において、2は磁気カ-ド式パチンコ玉貸装置で、その前面には磁気カード挿入口4が設けられている。該磁気カード挿入口4の後部には磁気カードリーダー部6が連設されており、該磁気カードリーダー部6には磁気カードの磁気情報の読み取りを行う磁気ヘッド8が設けられている(第2図)。該磁気カード挿入口4から挿入される磁気カードMの磁気情報が磁気ヘッド8によって読み取られ、該読み取られた磁気情報は後記する制御コンピュータC1又はC2に送られて記録され必要な制御が行われる。」と、
公報第6頁左下欄第7行乃至第11行には「C1及びC2は該磁気カード式パチンコ玉貸装置2にI/Oインターフェイス9を介して接続され該玉貸装置2の制御を行う制御部及び必要な記憶を行う記憶部を有する正副2台の制御コンピュータであり、・・・」と、
公報第8頁左上欄第6行乃至第14行には「第5図及び第6図において、16は玉貸要求表示部となる玉貸要求中ランプで、磁気カ-ド挿入口4に磁気カ-ドMが挿入引き出されたときに点灯し、玉貸要求動作が行われている間中は点灯しているが、玉貸動作が完了しまたはなんらかの理由(例えば、玉切れ又は玉詰まりが所定時間内に解消しない場合または磁気カ-ドが不正カ-ドであると判断された場合など)によって玉貸動作が行われなくなった場合には消灯する。」と、
公報第8頁右上欄第4行乃至左下欄第2行には「18はI/Oインターフェイス9を介して制御コンピュータC1及びC2に接続された警報装置である。該玉貸装置2は玉貸動作を行う毎に制御コンピュータC1及びC2に玉貸完了信号を送るように構成されている。・・・制御コンピュータC1又はC2が玉貸許可信号を出したにもかかわらず所定時間内(0〜10秒程度に設定)に玉貸完了信号が返ってこない場合には、玉貸装置2の故障か又は通信系統に異常が発生しているものである。また、制御コンピュータC1又はC2が玉貸許可信号を出していないにもかかわらず玉貸完了信号が返ってくる場合には、玉貸装置2の故障か又は通信系統に異常が発生しているか又は悪戯又は不正使用されているものである。これらの場合に、該警報装置18が警報を発し異常発生を報知するようになつている。この警報装置18としては、玉貸装置2に警報ランプを設け、それを点灯してもよいし、・・・」と、
公報第8頁右下欄第17行乃至第9頁左上欄第2行には「一方、玉切れ又は玉詰まりが存在しない場合又は当初は玉切れ又は玉詰まりが検知されたが上記所定時間内に玉切れ又は玉詰まりが解消した場合には、玉貸要求(玉貸の許否の問い合わせ)信号及び玉貸要求数の信号が制御コンピュータC1及びC2に送られる。」と、
公報第9頁右上欄第15行乃至左下欄第8行には「玉貸が完了すると玉貸完了の信号が制御コンピュータC1及びC2に送られ、一回の玉貸動作が終了する。所定時間内に玉貸完了信号が制御コンピュータC1及びC2に返ってこない場合には、玉貸装置2の故障か又は通信系統に異常が発生しているものであり、また、制御コンピュータC1及びC2が玉貸許可信号を出していないにもかかわらず玉貸完了信号が返ってくる場合には、玉貸装置2の故障か又は通信系統に異常が発生しているか又は悪戯又は不正使用されているものであるが、これらの場合に、該警報装置18が警報を発し異常発生を報知する。係員が異常の発生している玉貸装置に赴き、故障なり異常なりを処理することとなる。」と、それぞれ記載されている。

したがって、これらの記載と、図面、特に、接続説明図である第1図の記載事項とを併せると、
甲第2号証には、
「玉貸要求(玉貸の許否の問い合わせ)信号を出力する磁気カード式パチンコ玉貸装置2と玉貸許可信号を出力する制御コンピュータC1及びC2とを有し、
制御コンピュータはパチンコ玉貸装置から送られてきた玉貸要求信号が所定の玉貸条件を充足する場合には玉貸許可信号を該玉貸装置に送り返して該玉貸装置にて玉貸を行うとともに、磁気カードリーダー部を備えたパチンコ玉貸装置2と制御コンピュータC1及びC2とを接続した磁気カード式パチンコ玉貸システムにおいて、
パチンコ玉貸装置2は、玉貸要求動作が行われている間中は点灯して玉貸動作が行われなくなった場合には消灯する玉貸要求中ランプ16を備えるとともに、
制御コンピュータC1及びC2は、パチンコ玉貸装置2の故障又は通信系統の異常が発生している場合に、報知する警報装置18を備える磁気カード式パチンコ玉貸システム。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(3-3)甲第3号証(特開昭63-128448号公報)の
公報第1頁右下欄第3行乃至第5行には「本発明は互いに情報の授受を行う複数のコンピュータにおけるコンピュータ監視システムに関する。」と、
公報第2頁右下欄第17行乃至第20行には「25は入出力インタフェース(I/O)であり、第1のMPU11に異常が生じたときには第2のMPU26によりその異常を検知しI/O25を介して表示ランプ33を点灯させる。」と、
公報第3頁左上欄第3行乃至第9行には「このような構成において、本発明は、互いに情報授受を行うコンピュータが互いに送信先のコンピュータの状態を監視し、その異常を検知したときは送信先の異常を知らせる表示パネル上の表示ランプの点滅、点灯によりどのコンピュータが異常を起こしたかを操作者が知ることができるようにしたものである。」と、それぞれ記載されている。

したがって、甲第3号証には、
「互いに情報授受を行うコンピュータが互いに送信先のコンピュータの状態を監視し、その異常を検知したときは送信先の異常を知らせる表示パネル上の表示ランプの点滅、点灯によりどのコンピュータが異常を起こしたかを操作者が知ることができるようにしたコンピュータ監視システム。」の発明が記載されていると認められる。

(3-4)甲第4号証(特開平1-261770号公報)の
公報第3頁左上欄第4行乃至第7行には「本発明は、各種データを伝送するデータ伝送装置及び・・・に関し、特に、ノイズ対策に係るものである。」と、
公報第8頁左上欄第12行乃至第19行には「つまり、上記メインCPU(61)は異常検出手段(61d)がノイズを検出すると報知手段(61e)がサブCPU(62)に異常を報知する一方、上記サブCPU(62)は異常検出手段(62d)がノイズを検出すると報知手段(62e)がメインCPU(61)に異常を報知し、夫々判別手段(61f),(62f)が異常報知を判定するようにしている。」と、それぞれ記載されている。

したがって、甲第4号証には、
「メインCPU(61)の異常検出手段(61d)がノイズを検出するとサブCPU(62)に異常を報知する一方、上記サブCPU(62)の異常検出手段(62d)がノイズを検出するとメインCPU(61)に異常を報知する、データ伝送装置。」の発明が記載されていると認められる。

4.対比・判断
本件発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「玉貸し可能信号RDYを出力する排出制御装置600」、「玉貸し要求信号BRQを出力する玉貸し制御装置500」、「カード式パチンコ遊技機」は、本件発明の「玉貸可能信号を出力する遊技球送り出し手段」、「玉貸要求信号を出力するカード処理手段」、「パチンコ機」にそれぞれ相当するから、両者は少なくとも次の点で構成が相違すると認められる。

相違点(A)
本件発明では、カード処理手段は、遊技球送り出し手段から受信する玉貸可能信号の信号状態に基づいて同遊技球送り出し手段の異常を検出する第2異常検出手段と、上記第2異常検出手段にて異常が検出された場合、同遊技球送り出し手段の異常状態を視認可能に表示する第2異常表示手段とを備えるのに対し、引用発明1では、そのような構成を備えていない点

そこで、上記相違点について検討する。
相違点(A)について
甲第1号証に記載された玉貸し可能表示ランプ126は、カードがカードリーダ内に存在しない場合に消灯(【0070】に記載)され、カードリーダ制御装置250からカード金額を受信したときに点灯(【0058】に記載)され、変換ボタン123が有効中であることを点灯表示(【0010】【0041】に記載)し、玉貸し排出が実行されている間は消灯(【0041】【0070】に記載)させるものであって、異常状態を表示することについては記載されていない。そして、本件発明は相違点(A)に係る構成を有することにより、「異常が生じたときに、異常が発生した手段を即時に判断することができるため、修理などを敏速に行なうことができ、復旧の敏速化を向上せしめることが可能なパチンコ機を提供することができる。」(【0009】に記載)という甲第1号証に記載されていない顕著な効果を奏するものであるから、本件発明が甲第1号証に記載された発明と同一とすることはできない。

次に、本件発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「玉貸許可信号」は、本件発明の「玉貸要求信号」に相当するから、両者は少なくとも次の点で構成が相違すると認められる。

相違点(B)
本件発明では、玉貸可能信号を出力する遊技球送り出し手段と玉貸要求信号を出力するカード処理手段とを有し、同遊技球送り出し手段にて同カード処理手段が出力する玉貸要求信号を受信し、同カード処理手段にて同遊技球送り出し手段が出力する玉貸可能信号を受信するパチンコ機であるのに対し、引用発明2では、そのような構成を備えていない点
相違点(C)
本件発明では、遊技球送り出し手段は、カード処理手段から受信する玉貸要求信号の信号状態に基づいて同カード処理手段の異常を検出する第1異常検出手段と、上記第1異常検出手段にて異常が検出された場合、同カード処理手段の異常状態を視認可能に表示する第1異常表示手段とを備えるとともに、上記カード処理手段は、上記遊技球送り出し手段から受信する玉貸可能信号の信号状態に基づいて同遊技球送り出し手段の異常を検出する第2異常検出手段と、上記第2異常検出手段にて異常が検出された場合、同遊技球送り出し手段の異常状態を視認可能に表示する第2異常表示手段とを備えるのに対し、引用発明2では、そのような構成を備えていない点

そこで、上記相違点について検討する。
相違点(B)について
引用発明2には、「パチンコ玉貸装置から送られてきた玉貸要求信号が所定の玉貸条件を充足する場合には、制御コンピュータは玉貸許可信号を該玉貸装置に送り返して該玉貸装置にて玉貸を行うパチンコ玉貸装置」が記載されているが、玉貸可能信号を出力する遊技球送り出し手段と玉貸要求信号を出力するカード処理手段とを有するパチンコ機の構成については記載されていない。また、甲第3号証及び甲第4号証においてもパチンコ機の構成については記載されていない。
したがって、相違点(B)に係る構成が甲第2号証乃至甲第4号証に記載された事項から当業者が容易になし得たものとすることはできない。
相違点(C)について
甲第2号証に記載された玉貸要求中ランプ16は、玉貸要求動作が行われている間中は点灯して玉貸動作が行われなくなった場合には消灯するものであって、異常状態を表示することについては記載されていない。また、異常状態を表示することがない玉貸要求中ランプ16に、相手側の異常を検知して対応する甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術事項を適用することは当業者が容易になし得ることとは認められない。

そして、本件発明は相違点(B)及び(C)に係る構成を有することにより、「異常が生じたときに、異常が発生した手段を即時に判断することができるため、修理などを敏速に行なうことができ、復旧の敏速化を向上せしめることが可能なパチンコ機を提供することができる。」(【0009】に記載)という甲第2号証乃至甲第4号証に記載されていない顕著な効果を奏するものであるから、本件発明が甲第2号証乃至甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になし得たものとすることはできない。

第3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-06-16 
出願番号 特願平3-205368
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
P 1 651・ 16- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 川島 陵司
渡部 葉子
登録日 2003-09-12 
登録番号 特許第3471030号(P3471030)
権利者 株式会社三洋物産
発明の名称 パチンコ機  

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