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審決分類 |
審判 全部申し立て 特29条の2 H01B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01B |
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管理番号 | 1119472 |
異議申立番号 | 異議2003-71390 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-05-20 |
確定日 | 2005-06-29 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3359985号「碍子」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3359985号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3359985号発明は、平成7年2月16日に特許出願され、平成14年10月11日にその特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、山本武及び小山憲一から特許異議申立てがなされ、取消理由通知がなされたが、その指定期間内に特許権者から何ら応答がなかったものである。 2.本件発明1〜3 本件請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明3」という)は、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】成分(A)を加熱硬化させてなるシリコーンゴムで外被を所定形状に形成した複合碍子において、前記成分(A)中に成分(B)を前記(A)成分100重量部に対して1〜100重量部で配合したことを特徴とする碍子。 成分(A):一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 成分(B):25℃における粘度が1〜1,000センチストークスであり、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたメチルアルキルポリシロキサン油 【請求項2】前記成分(A)中に成分(C):シリカ微粉末及び成分(D):水酸化アルミニウムを配合したことを特徴とする碍子。 【請求項3】前記成分(D)中のアルキル基がメチル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の碍子。」 3.特許異議申立てについて (1)取り消し理由の概要 当審が通知した平成16年9月7日付け取消理由の概要は、 (i)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された引用刊行物1(特開平4-209655号公報)及び2(特公平6-9129号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、請求項1〜3に係る発明の特許は取り消されるべきものである。 (ii)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平5-203415号(特開平7-57574号)の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件の請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであるというものである。 (2)当審の判断 (i)本件発明1について (i-1)引用刊行物1との対比・判断 刊行物1には、実施例1に係る高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物1として、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100部、粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー4.0部、ジフェニルシランジオール4.0部、ヒュームドシリカ及び水酸化アルミニウムを含有するシリコーンゴム組成物1が記載されている(第3頁右下欄〜第4頁左上欄)。そして、シリコーンゴム組成物1は、刊行物1の「本発明のシリコーンゴム組成物は、加熱加硫後のシリコーンゴムが・・・碍子や碍子装置類の電気絶縁体部分を構成するシリコーンゴム組成物として好適に使用される。」(第3頁右下欄)の記載によると、碍子の外被に用いられることは明らかであるから、刊行物1には、「シリコーンゴムで外被を所定形状に形成した複合碍子において、前記シリコーンゴムが、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100部、粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー4.0部、ジフェニルシランジオール4.0部、ヒュームドシリカ及び水酸化アルミニウムを含有するシリコーンゴム組成物を加熱硬化させたものである碍子」(刊行物1-1発明という)が記載されていると云える。 本件発明1と刊行物1-1発明を対比すると、刊行物1-1発明の「ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム」は、メチルビニルシロキサン単位にケイ素原子結合アルケニル基を有しているから、本件発明1の成分(A)に相当し、刊行物1-1発明の「粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー」は、本件発明1の成分(B)に相当し、また、刊行物1-1発明の成分(A)に対する成分(B)の量比も、本件発明1に一致しているから、本件発明1は、刊行物1-1発明と相違するところがない。 また、刊行物1には、「上記シリコーンゴム組成物1において、(ニ)成分としての粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー4.0部とジフェニルシランジオール4.0部の替わりに、粘度60cstの両末端シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー8.0部を使用し、他の条件は上記と同様にしてシリコーンゴム組成物2を作った。また、上記シリコーンゴム組成物1において、(ニ)成分の替りに、粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマーのみ9.0部を使用し、他の条件は上記と同様にしてシリコーンゴム組成物3(比較例)を作った。」(第4頁左上欄)と記載されているから、刊行物1には、比較例として、刊行物1-1発明の「粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー4.0部、ジフェニルシランジオール4.0部」という成分を、「粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー9.0部」とした、すなわち、「シリコーンゴムで外被を所定形状に形成した複合碍子において、前記シリコーンゴムが、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100部、粘度60cstの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー9.0部、ヒュームドシリカ及び水酸化アルミニウムを含有するシリコーンゴム組成物を加熱硬化させたものである碍子」(刊行物1-2発明という)が記載されていると云える。 本件発明1と刊行物1-2発明を対比すると、刊行物1-1発明の場合と同様に、本件発明1は、刊行物1-2発明と相違するところがない。 してみると、本件発明1は、刊行物1に記載された発明である。 (i-2)引用刊行物2との対比・判断 刊行物2には、加熱処理して得られた架橋組成物から構成されるシリコーン弾性体カバーを有する高電圧電気絶縁体が記載され、シリコーン弾性体として、0.4モルパーセントのビニル基と残りがジメチルビニルシロキシ末端封鎖剤を伴ったメチル基とを有しウイリアムズ可塑度が150である100重量部のポリジオルガノシロキサンゴムと7.5重量部の25℃における粘度が約0.04Pa・sでかつ充填剤の処理剤として4重量パーセントのシリコーン結合を有するヒドロキシル基を含んだヒドロキシル末端封鎖ポリジメチルシロキサン溶液、ヒュームシリカ、アルミニウムトリハイドレートを含有するシリコーン組成物が記載されている(第10頁右欄9〜23行)。そして、高電圧電気絶縁体が碍子であることは明らかであるから、刊行物2には、「シリコーンゴムで外被を所定形状に形成した複合碍子において、前記シリコーンゴムが、0.4モルパーセントのビニル基と残りがジメチルビニルシロキシ末端封鎖剤を伴ったメチル基とを有しウイリアムズ可塑度が150である100重量部のポリジオルガノシロキサンゴムと7.5重量部の25℃における粘度が約0.04Pa・sでかつ充填剤の処理剤として4重量パーセントのシリコーン結合を有するヒドロキシル基を含んだヒドロキシル末端封鎖ポリジメチルシロキサン溶液、ヒュームシリカ、アルミニウムトリハイドレートを含有するシリコーン組成物を加熱硬化させたものである碍子」(刊行物2発明という)が記載されていると云える。 本件発明1と刊行物2発明を対比すると、刊行物2発明の「0.4モルパーセントのビニル基と残りがジメチルビニルシロキシ末端封鎖剤を伴ったメチル基とを有しウイリアムズ可塑度が150であるポリジオルガノシロキサンゴム」は、本件発明1の成分(A)に相当し、刊行物2発明の「25℃における粘度が約0.04Pa・sでかつ充填剤の処理剤として4重量パーセントのシリコーン結合を有するヒドロキシル基を含んだヒドロキシル末端封鎖ポリジメチルシロキサン溶液」は、本件発明1の成分(B)に相当し、また、刊行物2発明の成分(A)に対する成分(B)の量比も、本件発明1に一致しているから、本件発明1は、刊行物2発明と相違するところがない。 してみると、本件発明1は、刊行物2に記載された発明である。 (i-3)先願との対比・判断 先願の明細書には、碍子の表面にシリコーンゴム層を形成することが記載されている(段落【0035】)が、このシリコーンゴムとして、実施例1には、ジメチルシロキサン単位99.8モル%とメチルビニルシロキサン単位0.2モル%からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100部、粘度が60センチストークスの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー9.0部、ヒュームドシリカ、粘度が50センチストークスの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン油及び水酸化アルミニウムを含有し加熱硬化されたシリコーンゴムが記載されている(段落【0026】、【0027】)から、先願の明細書には、「シリコーンゴムで外被を所定形状に形成した複合碍子において、前記シリコーンゴムが、ジメチルシロキサン単位99.8モル%とメチルビニルシロキサン単位0.2モル%からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100部、粘度が60センチストークスの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー9.0部、ヒュームドシリカ、粘度が50センチストークスの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン油及び水酸化アルミニウムを含有するシリコーンゴム組成物を加熱硬化させたものである碍子」(先願発明1という)が記載されていると云える。 本件発明1と先願発明1を対比すると、先願発明1の「ジメチルシロキサン単位99.8モル%とメチルビニルシロキサン単位0.2モル%からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム」は、メチルビニルシロキサン単位にケイ素原子結合アルケニル基を有しているから、本件発明1の成分(A)に相当し、先願発明1の「粘度が60センチストークスの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー」は、本件発明1の成分(B)に相当し、また、先願発明1の成分(A)に対する成分(B)の量比も、本件発明1に一致しているから、本件発明1は、先願発明1と相違するところがない。 また、先願の明細書には比較例1として、「実施例1において、粘度が50センチストークスの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン油のみを配合せず、他の条件を同様にして丸棒状の碍子を作製した(試料4)。」(段落【0027】)と記載されているから、先願には、先願発明1の「粘度が50センチストークスの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン油」という成分をないものとした、すなわち、「シリコーンゴムで外被を所定形状に形成した複合碍子において、前記シリコーンゴムが、ジメチルシロキサン単位99.8モル%とメチルビニルシロキサン単位0.2モル%からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100部、粘度が60センチストークスの両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー9.0部、ヒュームドシリカ及び水酸化アルミニウムを含有するシリコーンゴム組成物を加熱硬化させたものである碍子」(先願発明2という)が記載されていると云える。 本件発明1と先願発明2を対比すると、先願発明1の場合と同様に、本件発明1は、先願発明2と相違するところがない。 してみると、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と同一である。しかも、本件の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその先願に係る本件の出願人と同一でもない。 (i-4)小括 以上のように、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明であり、また、先願明細書に記載された発明と同一である。 (ii)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1にさらに「成分(C):シリカ微粉末及び成分(D):水酸化アルミニウム」を配合するものであるが、刊行物1-1発明、刊行物1-2発明、刊行物2発明、先願発明1及び先願発明2も、それぞれ本件発明1の成分(C)及び成分(D)を含有しているから、「(i)本件発明1について」に記載したのと同様の理由で、本件発明2は、刊行物1及び2に記載された発明であり、また、先願明細書に記載された発明と同一である。 (iii)本件発明3について 本件発明3は、請求項1または2に記載の碍子の「前記成分(D)中のアルキル基がメチル基である」というものであるが、成分(D)とは「水酸化アルミニウム」であり、水酸化アルミニウムがアルキル基を持たないことは明らかであること、また特許明細書の段落【0015】の「本発明の碍子においては、前記成分(B)中のアルキル基がメチル基であることが好ましい」の記載から、本件発明3の「成分(D)」とは「成分(B)」の誤記であることは明らかであるところ、刊行物1-1発明、刊行物1-2発明、刊行物2発明、先願発明1及び先願発明2も、成分(B)は「ジメチルシロキサン」単位を含み、成分(B)中のアルキル基がメチル基であるから、「(i)本件発明1について」に記載したのと同様に、本件発明3は、刊行物1及び2に記載された発明であり、また、先願明細書に記載された発明と同一である。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜3についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する発明にされたものであり、また、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1〜3についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-05-10 |
出願番号 | 特願平7-28113 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Z
(H01B)
P 1 651・ 16- Z (H01B) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 長者 義久 |
特許庁審判長 |
中村 朝幸 |
特許庁審判官 |
原 賢一 酒井 美知子 |
登録日 | 2002-10-11 |
登録番号 | 特許第3359985号(P3359985) |
権利者 | 日本碍子株式会社 |
発明の名称 | 碍子 |
代理人 | 杉村 純子 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 青木 純雄 |
代理人 | 冨田 典 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 高見 和明 |
代理人 | 梅本 政夫 |
代理人 | 中谷 光夫 |
代理人 | 徳永 博 |