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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1119985
審判番号 不服2004-25493  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-14 
確定日 2005-07-11 
事件の表示 平成10年特許願第 49103号「吹付け装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月14日出願公開、特開平11-247196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成10年3月2日の出願であって、平成16年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年10月25日付け手続補正書で補正された請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「コンクリートを圧送する圧送ポンプ(2)とその圧送ポンプ(2)に接続されたコンクリート管(5)と耐圧ホース(6)とマテリアルホース(9)とを有し、ノズル(10)から施工面(36)にコンクリートを吹付ける吹付け装置において、
前記耐圧ホース(6)とマテリアルホース(9)との連結個所にエア吹込手段(7)を有し、
そのエア吹込手段(7)は圧送されるコンクリート中に高圧空気を吹込むコンプレッサ(14)とメインエアーホース(15)を介して連結されており、
さらに圧送ポンプ(2)は急結剤を送る急結剤ホース(18)を介してノズル(10)に連結され、
そしてノズル(10)にはコンプレッサ(14)から急結剤添加用エアホース(17)が連結され、
前記エア吹込手段(7)には高圧空気が管内で旋回しつつノズル側へ進行するように多数の穴(24)が形成されていることを特徴とする吹付け装置。」(以下、「本願発明」という。)


3.引用刊行物の記載事項
〔1〕原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に国内において頒布された刊行物である登録実用新案第3017525号公報(平成7年10月31日発行、以下、「引用文献1」という)には、「コンクリート吹付機の空気供給管」に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「コンクリートポンプと、吹付ノズルと、後端でコンクリートポンプの吐出口に接続されたパイプと先端で吹付ノズルに接続されたマテリアルホースとからなるコンクリートポンプから吹付ノズルまでコンクリートを輸送するためのコンクリート輸送配管と、パイプの先端とマテリアルホースの後端とを接続すると共にコンクリート輸送配管中に吹付け用の圧縮空気を供給する空気供給管とを備えた湿式のコンクリート吹付機において、前記空気供給管は、内径がパイプと等しい直管部と内径がパイプの内径からマテリアルホースの内径まで絞られるテーパー部とを備えており、前記直管部に空気供給口が設けられていることを特徴とするコンクリート吹付機の空気供給管。」(【請求項1】)
(2)「コンクリートポンプ7は、2本の油圧シリンダで駆動される2本のコンクリートシリンダ(図示略)と、コンクリートを貯留するコンクリートホッパ73とを備えた公知の定容量形のピストン式ポンプであり、その吐出口72には、コンクリート輸送配管10のパイプ11の後端が接続されている。
コンクリート輸送配管10のパイプ11の先端には、空気供給管12が接続されており、この空気供給管12から吹付ノズル4まではマテリアルホース13が接続されている。空気供給管12は、コンクリートポンプ7の輸送力を補うとともに、吹付ノズル4から高速でコンクリートを噴射させるため、コンクリート輸送配管10へ圧縮空気を供給するための空気供給口14を備えており、空気供給口14は空気管(図示略)でコンプレッサ9と接続されている。」(段落【0012】)
(3)「マテリアルホース13の途中の、吹付ノズル4の上流側3〜5m程度の位置には、急結剤供給管16が設けられている。急結剤供給管16には吹付けられるコンクリートの硬化を促進するための急結剤を供給するための急結剤供給口15を備えており、急結剤供給口15は急結剤供給管(図示略)で急結剤供給装置8と接続されている。」(段落【0013】)
(4)「そして、この空気供給管12は、上流側を内径がパイプ11と等しい直管部12S、下流側を内径がパイプ11の内径からマテリアルホース13の内径まで絞られるテーパー部12Tで構成しており、その直管部12Sに空気供給口14が設けられている。
吹付作業時には、コンクリートはコンクリートポンプ7から吐出され、コンクリート輸送配管10のパイプ11、空気供給管12、マテリアルホース13を通って吹付ノズル4へ送られる。空気供給管12の空気供給口14からは、圧縮空気が供給され、コンクリートと混合された圧縮空気はコンクリートに輸送力を付加するとともに、吹付ノズル4から高速でコンクリートを噴射させる。急結剤供給管16の急結剤供給口15からは急結剤が供給され、吹付けられたコンクリートの硬化を促進させる。」(段落【0015】)

これら(1)〜(4)の技術事項を含む引用文献1全体の記載及び図面並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認める。〔〕かっこ内は対応する引用文献1における構成・用語である。
「コンクリートを圧送する圧送ポンプ〔コンクリートポンプ7〕とその圧送ポンプに接続されたコンクリート管〔パイプ11〕とマテリアルホース〔マテリアルホース13〕とを有し、ノズル〔吹付ノズル4〕から施工面にコンクリートを吹付ける吹付け装置において、
前記コンクリート管とマテリアルホースとの連結個所にエア吹込手段〔空気供給管12〕を有し、
そのエア吹込手段は圧送されるコンクリート中に高圧空気を吹込むコンプレッサ〔コンプレッサ9〕とメインエアーホース〔空気管(図示略)〕を介して連結されており、
さらに圧送ポンプ〔急結剤供給装置8〕は急結剤を送る急結剤ホース〔急結剤供給管(図示略)〕を介してノズルの上流側のマテリアルホースの途中に連結され、
前記エア吹込手段には高圧空気がノズル側へ進行するように穴〔空気供給口14〕が形成されている吹付け装置。」
(以下、「引用文献1発明」という)

〔2〕同じく、実願昭58-188412号(実開昭60-97847号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、「現場混練機能を有する湿式吹付け装置」に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(5)「本考案は吹付け装置とりわけ現場混練機能を有する湿式吹付け装置に関するものである。コンクリートの吹付け工法として湿式法と乾式法があり、」(2頁7〜10行)
(6)「吹付けノズル20は第7図のように湿状資料吐出路40の外周にリングノズル部41を有し、このリングノズル部41には荷台11に配したエアコンプレツサ7から導かれたホース42が接続されるようになつており、また、分岐金具43を介して荷台11上の供給装置6bからホース44が接続され、液体急結剤をエアと共に吹込むようになっている。」(8頁18行〜9頁5行) (7)「コンクリート類を法面やトンネルなどに施工するにあたつては、移動車両1を現場に乗り入れ、第8図や第9図のように湿式吹付け機4の搬送パイプ9と吹付けノズル20とを主ホース39で接続し、リングノズル41とコンプレツサ7、リングノズル41と供給装置6bとを夫々ホース42,44で接続し、フイーダ3、連続ミキサー2、供給ポンプ18、湿式吹付け機4およびコンプレツサ7を夫々駆動すると共に、フイーダ3へ材料運搬装置Aなどから吹付け材料Wを供給する。」(10頁17行〜11頁8行)
(8)「必要に応じてたとえば頭上吹付けや厚い層の吹付け等の場合には、供給装置6bを駆動する。これにより急結剤類が圧縮エアと共に吹付けノズル部20で添加されるため、瞬間的な凝固が得られる。」(13頁17行〜14頁1行)

これら(5)〜(8)の技術事項を含む引用文献2全体の記載及び図面並びに当業者の技術常識によれば、引用文献2には、次の技術が記載されているものと認める。〔〕かっこ内は対応する引用文献2における構成・用語である。
「圧送ポンプ〔供給装置6b〕は急結剤〔液体急結剤〕を送る急結剤ホース〔ホース44〕を介してノズル〔ノズル20〕に連結され、
ノズルにはコンプレッサ〔エアコンプレツサ7〕から急結剤添加用エアホース〔ホース42〕が連結されている吹付け装置。」

〔3〕同じく、特開昭61-186669号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「コンクリート類の吹付工法およびその装置」に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(9)「第1図および第2図は第1具体例を示したもので、1は吹付ノズル、2はスクイズ式のコンクリートポンプで、このポンプ2から圧送されたコンクリートは大径鋼管3から増速部4を介して小径のゴム製等のホース5を通り、さらに鋼管製の絞り部6を通り、鋼管または塩ビ製のノズル1から噴出される。
増速部4は、大径の鋼管3と小径ホース5とを繋ぐ先細テーパー部をもって構成され、圧送されたコンクリートは増速部4の存在によって以後断面積が小さくなるため増速される。また増速部4のテーパーの始端には、ヘッダ8に周方向に間隔を置いて複数個所の孔または環状空間をもって連通する1次吹込部としての1次吹込口9が形成されている。この1次吹込口9には、圧空源10からの1次圧縮空気A1が調整弁11およびヘッダ8を通して与えられ、吹き出した空気は増速部4のテーパーに沿うよう1次吹込口9が向いている。」(3頁右上欄17行〜左下欄15行)
(10)「さらに、吹込みに当って、先向きの螺旋流を生じさせるべく吹込口を形成してもよい。」(4頁左下欄末行〜右下欄1行)

これら(9)、(10)の技術事項を含む引用文献3全体の記載及び図面並びに当業者の技術常識によれば、引用文献3には、次の技術が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用文献3における構成・用語である。
「エア吹込手段〔増速部4〕には高圧空気〔1次圧縮空気A1〕が管内で旋回しつつノズル〔吹付ノズル1〕側へ進行するように多数の穴〔1次吹込口9〕が形成されている吹付け装置。」


4.対比・判断
本願発明と引用文献1発明を比較すると、両者は、
「コンクリートを圧送する圧送ポンプとその圧送ポンプに接続されたコンクリート管とマテリアルホースとを有し、ノズルから施工面にコンクリートを吹付ける吹付け装置において、
マテリアルホースとの連結個所にエア吹込手段を有し、
そのエア吹込手段は圧送されるコンクリート中に高圧空気を吹込むコンプレッサとメインエアーホースを介して連結されており、
さらに圧送ポンプは急結剤を送る急結剤ホースを介してノズル側に連結され、
前記エア吹込手段には高圧空気がノズル側へ進行するように穴が形成されている吹付け装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では「耐圧ホースを有し、耐圧ホースとマテリアルホースとの連結個所にエア吹込手段を有する」のに対して、引用文献1発明では「耐圧ホースを有せず、コンクリート管とマテリアルホースとの連結個所にエア吹込手段を有する」点。
<相違点2>
本願発明では「圧送ポンプは急結剤を送る急結剤ホースを介してノズルに連結されている」のに対して、「耐圧ホースを有し、耐圧ホースとマテリアルホースとの連結個所にエア吹込手段を有する」引用文献1発明では「圧送ポンプは急結剤を送る急結剤ホースを介してノズルの上流側のマテリアルホースの途中に連結されている」点。
<相違点3>
本願発明では「ノズルにはコンプレッサから急結剤添加用エアホースが連結されている」のに対して、引用文献1発明では、そのような事項を具備していない点。
<相違点4>
本願発明では「エア吹込手段には高圧空気が管内で旋回しつつノズル側へ進行するように多数の穴が形成されている」のに対して、引用文献1発明では、「エア吹込手段には高圧空気がノズル側へ進行するように穴が形成されている」のみで「高圧空気が管内で旋回しつつノズル側へ進行する多数の穴」を具備していない点。

そこで、上記相違点1について検討すると、
まず、引用文献1には上記3.〔1〕の(3),(4)のように、上流側のマテリアルホース13と下流側のマテリアルホース13との連結個所に急結剤供給管16を有すること、即ち供給管の上流側にマテリアルホースを設けることが示されているから、別の供給管ではあるが、下流側にマテリアルホース13が設けられている空気供給管12の上流側にもマテリアルホースを設けることは当業者が容易に想到可能であると言える。
ところで、出願人は本願明細書で、耐圧ホースについての具体的説明やマテリアルホースとの違いを特段述べていないので空気供給管12の上流側に設けたマテリアルホースを耐圧ホースと呼称し、上記を換言すれば、「耐圧ホースを有し、耐圧ホースとマテリアルホースとの連結個所にエア吹込手段を有する」こと即ち本願発明の上記相違点1に係る構成のようになる。
よって、本願発明の上記相違点1に係る構成は、引用文献1記載の技術から当業者が容易に想到し得る設計事項であると言える。

次に、上記相違点2,3について検討すると、
引用文献2の湿式吹付け装置も、本願発明と同様な技術分野に属するものであり、引用文献1発明に引用文献2の上記技術「圧送ポンプは急結剤を送る急結剤ホースを介してノズルに連結され、ノズルにはコンプレッサから急結剤添加用エアホースが連結されている吹付け装置。」を適用して、本願発明の上記相違点2,3に係る構成のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることと言える。

更に、上記相違点4について検討すると、
引用文献3のコンクリート類の吹付装置も、本願発明と同様な技術分野に属するものであり、引用文献1発明に引用文献3の上記技術「エア吹込手段には高圧空気が管内で旋回しつつノズル側へ進行するように多数の穴が形成されている吹付け装置。」を適用して、本願発明の上記相違点4に係る構成のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることと言える。

また、本願発明の有する効果も、引用文献1発明および引用文献1〜3に記載の技術から当業者であれば当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとは言えない。


5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1〜3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-17 
結審通知日 2005-05-18 
審決日 2005-05-31 
出願番号 特願平10-49103
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志摩 美裕貴  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
南澤 弘明
発明の名称 吹付け装置  
代理人 高橋 敏忠  
代理人 高橋 敏邦  

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