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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20061739 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 C07D |
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管理番号 | 1120008 |
審判番号 | 不服2002-7953 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2005-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-05-07 |
確定日 | 2005-07-13 |
事件の表示 | 平成11年特許権存続期間延長登録願第700088号「抗ウィルス性置換1,3-オキサチオラン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本件特許及び本件発明 特許第2644357号(以下、「本件特許」という。)は、平成2年2月8日(パリ条約による優先権主張 1989年2月8日 米国)に出願され、平成9年5月2日に特許権の設定登録がなされたものであって、その特許発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載のとおりのものである。 【請求項1】次の式(1)で表される1,3- オキサチオラン、その幾何異性体および光学異性体、およびこれらの異性体の混合物: ここで、R1 は水素またはアシルであり、;Zは、S、S=OおよびSO2 からなる群から選択され;そして、R2は であり、ここでR3およびR4はそれぞれ独立して、水素および1〜6個の炭素原子を有するアルキル基からなる群より選択される。 【請求項2】シス異性体の形態である、請求項1に記載の式(1)で表される化合物。 【請求項3】ZがSである、請求項1または2に記載の式(1)で表される化合物。 【請求項4】R1、R3およびR4が水素である,請求項1に記載の化合物。 【請求項5】以下のラセミ体混合物または分離された光学異性体の形態の化合物からなる群から選択される化合物: シス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン、トランス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン、およびこれらシスおよびトランス異性体の混合物; シス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-3-オキソ-1,3-オキサチオラン; シス-2-ベンゾイルオキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン、トランス-2-ベンゾイルオキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン、およびこれらシスおよびトランス異性体の混合物:および シス-2-ベンゾイルオキシメチル-5-(N4’-アセチル-シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン、トランス-2-ベンゾイルオキシメチル-5-(N4’-アセチル-シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン、およびこれらシスおよびトランス異性体の混合物。 【請求項6】ラセミ体混合物または分離された光学異性体の形態のシス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオランあるいはその薬学的に許容可能な塩、エステル、またはエステルの塩。 【請求項7】シス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオラン。 【請求項8】ラセミ体混合物の形態である、請求項1から7のいずれかに記載の1,3-オキサチオラン化合物。 【請求項9】分離された光学異性体の形態である、請求項1から7のいずれかに記載の1,3-オキサチオラン化合物。 【請求項10】請求項1から9のいずれかに記載の式(1)で表される化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩、エステル、またはエステルの塩を含む、抗ウイルス用医薬組成物。 【請求項11】薬学的に許容可能な担体をさらに含有する、請求項10に記載の抗ウイルス用医薬組成物。 【請求項12】請求項1から9のいずれかに記載の式(1)で表される化合物を付加的な活性成分と組み合わせて含む、抗ウイルス用医薬組成物。 2.本件出願 本件特許権存続期間の延長登録出願(「本件出願」という。)は、平成11年9月10日に出願され、平成14年1月28日付けで拒絶査定がなされ、平成14年5月7日付けで審判請求がされたものである。 請求人は、処分を受けたことを証明する添付資料(医薬品製造承認書 承認番号21100AMZ00480000)により、本件出願が特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったその政令で定める処分として、以下の内容を特定している。 (1)延長登録の理由となる処分 薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認 (2)処分を特定する番号 承認番号21100AMZ00480000) (3)処分を受けた日 平成11年6月11日 (4)処分の対象になった物 ジドブジンおよびラミブジン 一般名称 ラミブジン 化学名 シス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1.3-オキサチオラン 一般名称 ジドブジン 化学名 3’-アジド-3’-デオキシチミジン (5)処分の対象となった物について特定された用途 HIV感染症 記 資料1:本件特許公報(特許第2644357号) 資料2:「医薬品製造承認書 承認番号21100AMZ00480000 資料3:治験計画届出書;「New Drug Application NAME of APPLICANT : GLAXO WELLCOME INC. Five Moore Drive, Research Triangle Park, NC 27709 NAME OF DRUG ; Combivir TM Tablets (lamibudine/zidovudine tablets) NDA20-857」 資料4:新医薬品情報公開資料(販売名:コンビビル錠、申請者名:日本グラクソ(株)、承認年月日:平成11年6月11日) 資料5:医薬審第1015号(平成10年11月12日) 資料6:履歴事項全部証明書(会社法人等番号 026329) 3.原審の拒絶の理由の概要 (理由1) 特許第2644357号の対象となった物とされているラミブジンは、エイズ、HIV感染症におけるジドブジンとの併用療をその効能・効果として、本件出願前に既に承認されており、物及び用途についての最初の処分ではないから、本件出願に係る処分を受けることが上記特許発明の実施に必要な処分とはいえず、特許法第67条の3第1項第1号に該当する。 (理由2) 資料3(治験計画届出書の写し)の内容を特定する記載のない資料2(医薬品製造承認書の写し)の記載からだけでは、資料3に関する治験が製造承認の審査に必要であったことを示しているといえず、本件特許を実施できかった期間を算出することができないから、特許発明の実施について特許法第67条の3第1項第3号に該当する。 4.当審の判断 特許法は政策的に存続期間を法定して(第67条第1項)、発明の保護と産業の発達の調和を図っているが、特許の実施について安全性の確保等の見地から法律の規定による許可等の処分が必要とされる場合において、当該処分の手続きからみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要すると認められるときは、特許法は、第67条第2項に特許権の存続期間の例外規定を設け、「安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることが2年以上できなかった」ことを要件として、5年を限度として、特許権の延長を認めている。 ここで、「特許発明の実施」とは、特許法第2条第3項各号の規定の定める行為をいうことは当然であり、上記の延長の登録制度の趣旨に加え、存続期間が延長された場合の特許権の効力を規定した同法第68条の2が「特許権の存続期間が延長された場合(中略)の特許権の効力は、その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と規定していることからみて、延長登録が認められるためには、政令で定める当該処分の範囲と延長登録出願の対象である特許発明の範囲が重複していることが必要であり(以下、「第一の要件」という。)、また、同じ物及び同じ用途に使用されるものに特許期間の延長効果を何回も付与することを法律は予定するところではないから、既に別の同様な処分を受けたことによって特許発明の実施をすることが出来るようになっていないことが必要である。(以下、「第二の要件」という。)したがって、同じ物を同じ用途に使用する以上、その使用形態等の変更のため重ねて政令で定める処分が必要とされる場合であっても、そのことを理由に特許期間の登録延長は認められない(平成7年(行ヶ)第155号判決)。 (理由1について) 本件出願について検討する。 請求人は、延長の理由を記載した資料において、「処分の対象となった物」を「ジドブジン及びラミブジン」と記載しているが、請求人が提出の平成11年3月24日付けの「医薬品製造承認申請書」等の記載からみて、製造承認されたものは、販売名をコンビビル錠と称する、ジドブジン及びラミブジン含有の錠剤であり、その効能・効果をHIV感染症とするものである。 ところで、本件特許において、ラミブジンは請求項1において、R1,R3及びR4が水素原子である化合物であり、また、請求項5〜7に記載されたシス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1’-イル)-1,3-オキサチオランである。さらに、ラミブジンを他の活性成分と組み合わせて抗ウイルス用医薬組成物とすることが請求項12に記載されており、この組み合わせに使用するのに好ましい治療薬として、3’-アジド-2’、3’-ジデオキシチミジン等の「ヌクレオチド類似体」が挙げられている。(公報第9頁18欄27〜34行)そして、本件明細書には、この3’-アジド-2’、3’-ジデオキシチミジンは一般にAZTと呼ばれると記載されており(公報第4欄29〜31行)、AZTはジドブジンの別名であるから、本件発明はジドブジンを組み合わせて使用することを記載しているといえる。(なお、請求人が2.(4)で記載しているとおり、ジドブジンの化学名としては、3’-アジド-3’-デオキシチミジンが普通である。) このため、政令で定める処分を受けたものは特許請求の範囲の記載と重複しているといえる。 次に、第二の要件について検討すると、ラミブジンは、「販売名」を「エピビル錠」とし、「有効成分の一般名」を「ラミブジン(通称:3TC)」とし、「用法・用量」を「通常、成人にはジドブジンに併用して、ラミブジンとして1回150mgを1日2回投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。」とし、「効能・効果」を「下記疾患におけるジドブジンとの併用療法 ・後天性免疫不全症候群(エイズ) ・治療前のCD4リンパ球数500/mm3以下の症候性及び無症候性HIV感染症」として、先に承認されている。(平成9年2月13日付け厚生省発表の「医薬品エピビル錠の承認及び薬価収載について」) そこで、本件出願のコンビビル錠と先に承認されたエピビル錠を対比すると、いずれもHIV感染症の治療に対するものである点で一致しており、ただ、前者はラミブジン及びジドブジンを含有する錠剤であるのに対して、後者はラミブジン単剤である点で一応相違する。 しかしながら、先の承認において、ラミブジンはジドブジンと併用すること、即ち、ラミブジンとジドブジンの併用を用法・用量として、かつ、ジドブジンとの併用療法を効能・効果として承認されているから、本件出願と先に承認のものとの違いは、単に、ラミブジン及びジドブジンの両方が含有されている錠剤であるか、または、それぞれの単剤を併用するかの違いにすぎないものであり、HIV感染症の治療に際して両化合物を投与する点において両者は実質的に同一である。 この点について、請求人は、処分の対象となった物は製造承認申請書の有効成分の欄により特定されるべきであり、それ以外の欄に記載された事項により処分の対象となった物を特定すべきではないと主張する。 しかしながら、上記したとおり、同じ物を同じ用途に使用する以上、その使用形態等の変更のため重ねて政令で定める処分が必要とされる場合であっても、そのことを理由に特許期間の登録延長は認められないのであり、即ち、特許期間の登録延長の可否は、「物」と「用途」によって括られる単位を基準として判断されるべき事項である。然るに、上記したとおり、本件出願も先の承認に係るものも、ラミブジンとジドブジンの両方をHIV感染症の治療に使用する点で実質的に変わりはないのであり、請求人の主張する有効成分の欄の記載の差異は単なる形式的な差異にすぎないから、このような差異をもって、本件出願の「物」又は「用途」が、先に承認のものとは別のものであるということはできない。 したがって、本件出願について、「その特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受ける必要があった」とすることはできない。 (理由2について) 請求人は、米国のFDAに提出された1996年(平成8年)7月30日付けの「AN EVALUATION OF THE BIOEQUITVALENCE OF A COMBINED FORMULATED TABLET COMPARED TO EPIVIR AND RETROVIR ADMINISTERED CONCURRENTLY AND THE EFFECT OF FOOD ON ABSORPTION」という表題のレポートであって、エピビルとレトロビルを組み合わせたものをエピビルとレトロビルを同時に投与する場合と比較した生物同等性の評価に関するレポート(資料3)を治験計画届出書の写しとして提出しているところ、我が国での製造承認申請は、外国の審査当局に対する承認申請に添付される資料をもって我が国での承認を行うとする旨の平成10年11月12日付け医薬審第1015号通達が出された後の、平成11年3月24日にされている。 そして、請求人が平成13年11月29日付け意見書に添付した参考資料2の「新医薬品情報公開資料」の「コンビビル-事前評価レポート(その1)-(平成11年3月3日)」によれば、コンビビル錠は米国において平成9年9月26日に製造承認されたことが認められる。そうすると、米国での製造承認の日から我が国での製造承認申請までには約1年6カ月を有したことになるが、請求人提出の資料からは、如何なる理由によりこのような長期間を必要としたのか明らかでない。 このため、上記米国での治験計画届出書の提出日から我が国での製造承認の日迄の間、必要な手続が引き続いてなされていたものとは直ちには認めることができないから、「特許発明の実施することができなかった期間」を、請求人が主張する、我が国での特許権の設定登録の日として起算することが適切であるということができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件処分は特許法第67条の3第1号及び第3号に該当し、本件出願によって特許権の存続期間の延長登録を受けることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-19 |
結審通知日 | 2004-02-20 |
審決日 | 2004-03-03 |
出願番号 | 特願平11-700088 |
審決分類 |
P
1
8・
71-
Z
(C07D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨永 保 |
特許庁審判長 |
眞壽田 順啓 |
特許庁審判官 |
竹林 則幸 深津 弘 |
発明の名称 | 抗ウィルス性置換1,3-オキサチオラン |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 横田 修孝 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 紺野 昭男 |