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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1120017
審判番号 不服2001-9697  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-11 
確定日 2005-07-13 
事件の表示 平成 7年特許願第268101号「導電性材料およびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月 3日出願公開、特開平 8-227613〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年10月17日(パリ条約による優先権主張1994年10月20日、米国)の出願であって、平成13年3月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年6月11日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願請求項1〜21に係る発明は、平成13年7月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりの「組成物」である(以下、「本願発明1」という。)。
「【請求項1】導電性コーティングを有する複数の粒子と、熱可塑性重合体材料とを含み、前記粒子と前記重合体材料の合計に対し、前記粒子が30〜90重量%であることを特徴とする、組成物。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用した本願の優先日前に頒布された刊行物の記載事項は、次のとおりである。
引用例:特開平5-28829号公報
(摘示1)「【請求項1】 金属粒子が有機系樹脂に分散された導電塗料において、上記金属粒子は金属粒子本体に・・・低融点金属がメッキされている・・・導電塗料。」(特許請求の範囲の請求項1)
(摘示2)「有機系樹脂12としては従来の導電塗料に用いられているものと同様のものでよく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂でもよく、例えば・・・シリコン系などを用いることができ・・・。従来と同様に樹脂12を溶媒に溶かし、金属粒子11を分散させペースト状とする。金属粒子11の混入量は可能な限り多い方がよいが、多過ぎると、粘度がなくなり、印刷しにくくなる、この点から金属粒子11を80〜99.8重量%程度樹脂12に混入する。」(【0012】)
(摘示3)図1Aには、金属粒子本体13に低融点金属14がメッキされた金属粒子11が複数、有機系樹脂12中に分散していることが図示されている。

3.当審の判断
引用例の摘示1には、「金属粒子が有機系樹脂に分散された導電塗料において、上記金属粒子は金属粒子本体に・・・低融点金属がメッキされている・・・導電塗料。」が記載されており、この導電塗料は、摘示3によると、複数の金属粒子が分散しているものである。また、摘示2によると、金属粒子を80〜99.8重量%程度樹脂に混入するのであるから、導電塗料には、金属粒子と有機系樹脂の合計に対し、金属粒子が80〜99.8重量%程度含有されるといえる。
これら引用例に記載される事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、「低融点金属がメッキされている複数の金属粒子と、有機系樹脂とを含み、前記金属粒子と前記有機系樹脂の合計に対し、前記金属粒子が80〜99.8重量%である導電塗料」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「低融点金属がメッキされている」は、「導電性コーティングを有する」と言い換えることができ、また、引用発明の「金属粒子」、「有機系樹脂」、「導電塗料」は、それぞれ本願発明1の、「粒子」、「重合体材料」、「組成物」に相当するから、両者は、「導電性コーティングを有する複数の粒子と、重合体材料とを含み、前記粒子と前記重合体材料の合計に対し、前記粒子が80〜90重量%である組成物」で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願発明1では、重合体材料が「熱可塑性重合体材料」であるのに対し、引用発明では、重合体材料が熱可塑性であることが明らかでない点。
次に、上記相違点について検討する。
引用例の摘示2には、「有機系樹脂12としては従来の導電塗料に用いられているものと同様のものでよく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂でもよく、例えば・・・シリコン系などを用いることができ」と記載されており、この記載によると、引用発明においては重合体材料(有機系樹脂)として、熱可塑性重合体材料又は熱硬化性重合体材料を二者択一で用いるものである。そして、摘示2に例示されているシリコン系樹脂には、熱可塑性のものも熱硬化性のものもあることは審判請求書において出願人も認めるように周知であるところ、このシリコン系樹脂は、引用発明の重合体材料として用い得る熱可塑性重合体材料又は熱硬化性重合体材料のいずれにも適用できる例として示されているのであるから、この引用例に接した当業者は、周知のシリコン系樹脂を熱可塑性の重合体材料として用いていることを容易に想定することができるというべきである。
また仮に、引用例のシリコン系樹脂が熱硬化性重合体材料の例として示されているとした場合でも、前示のように、引用例には重合体材料の二者択一の選択肢として熱可塑性重合体材料をも用い得ることが明らかに記載されているのであるから、引用発明の重合体材料として熱可塑性重合体材料を用いることは、当業者にとって困難なことではない。
よって、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項は、周知の事項に基づいて当業者が適宜なし得ることであるから、本願発明1は、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-14 
結審通知日 2005-02-15 
審決日 2005-02-28 
出願番号 特願平7-268101
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉水 純子和田 財太  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 原 賢一
酒井 美知子
発明の名称 導電性材料およびその使用方法  
代理人 坂口 博  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 渡部 弘道  

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