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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1120233
審判番号 不服2001-15142  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-27 
確定日 2005-07-20 
事件の表示 平成8年特許願第168673号「栄養補助食品の摂取メニュー作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年12月22日出願公開、特開平9-327269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本件出願は、平成8年6月10日の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年6月25日受付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本件発明」という。)
「【請求項1】コンピュータによる次の手順により、人又は動物からなる個体が摂取すべき栄養補助食品の種類及び摂取量を決定することを特徴とする栄養補助食品の摂取メニュー作成方法。
個体から採取した毛に含まれる各ミネラルの値を分析し、コンピュータに入力する手順(1)。
手順(1)により得られた各ミネラルの値を予め記憶した各ミネラルの値の基準値と比較する手順(2)。
基準値に対する各ミネラルの値の過不足量に基づき、個体が摂取すべき栄養素の種類及び量を算出し、表示する手順(3)。
成分に応じて予め類型化した栄養補助食品の食品テーブルを参照し、手順(3)により得られた栄養素の種類及び量に基づき、個体が摂取すべき栄養補助食品の種類及び量を算出し、表示する手順(4)。」

2.当審の拒絶理由

当審の平成16年2月10日付け拒絶理由通知書の概要は、本件発明は、本件出願日前に頒布された下記刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
刊行物1:特開平7-274849号公報
刊行物2:実願昭57-28824号(実開昭58-133471号)のマイクロフィルム
刊行物3:特開平7-274847号公報
刊行物4:実願昭57-36067号(実開昭58-142730号)のマイクロフィルム

3.引用刊行物記載事項

上記刊行物1には、(a)「人体が摂取する食物に関する情報を入力する入力手段と、人体からの出力物を分析する分析手段と、人体に関する生体情報を入力する第2の入力手段と、食事メニューに関する知識ベースを備えた記憶手段と、前記入力手段と前記第2の入力手段および前記分析手段の出力に基づき人体の健康度を推測する推測手段と、前記推測手段の出力情報により前記記憶手段から適切な食事情報を推論する推論手段と、推論手段の出力を報知する報知手段とを備えた調理支援装置。」(特許請求の範囲請求項4)が記載されており、(b)「また、調理支援装置の推測手段は、第1の入力手段から入力された人体が摂取する食物に関する情報と分析手段から分析された当該人体からの出力物の分析情報および第2の入力手段から入力された当該人体の生体情報とに基づき、当該人体の栄養バランス、健康度を推測し、その推測した情報を報知手段から報知するように作用する。また、調理支援装置の推測手段は、第1の入力手段から入力された人体が摂取する食物に関する情報と分析手段から分析された当該人体からの出力物の分析情報および第2の入力手段から入力された当該人体の生体情報とに基づき、当該人体に最適な食事情報を記憶手段から読みだし、読みだした情報を報知手段から報知するように作用する。」(公報第3頁4欄第28〜41行)こと、(c)「その栄養素としては次の2つに大別されている。・・・1つは、このエネルギー源となる食物の栄養素(熱量素)であり、炭水化物、脂肪、タンパク質がある。もう1つは、発育や組織の新生に必要なたんぱく質、全身の機能を高め体調を整えるのに必要なビタミンやミネラルの栄養素(保全素)である。」(公報第4頁6欄第20〜29行)こと、(d)「人間の健康度は、その人に必要な栄養素を摂取しているかで、ほぼ傾向が把握できる。つまり、日々食べている食物の蓄積結果と個別的栄養素必要量がわかれば、健康度が推測できるのである。本実施例で述べる健康度とは、このままで放置しておけば、将来発生しそうな病気の予想であり、又これだけの栄養素量が必要であるのに、これだけしか摂取しいていないという相対的な割合を云う。また、個別的栄養素必要量の代わりに、人体の代謝産物である尿成分を検出して、栄養素の代謝がどうなっているかを検出してもよい。」(公報第4頁6欄第36〜45行)こと、(e)「記憶手段14はROM(読みだし専用メモリー)であり、この中には食事に関する料理メニューとメニューに対応した栄養素情報等が予め記憶されている。つまり、日々摂取している食物からの栄養素と尿からの代謝割合を推測手段5で推測することにより、推論手段15はその人体が理想の栄養度に対して、どのレベルにあるかが認識できるので、どういう料理メニューを摂取すれば良いかを記憶手段14から読みだし報知手段6に報知する。以上のように本実施例によれば、食事情報に関する知識ベースを記憶させた記憶手段を備えているので、健康度、栄養バランスの点から食事に関して、最適な情報を提供することができる。」(公報第5頁8欄第17〜29行)こと、(f)「上記で説明した推測手段5、推論手段15は8ビットマイクロコンピュータで構成したが、これは本発明を拘束するものではない」(公報第7頁11欄第48〜50行)ことが記載されている。
上記刊行物2には、(g)「本考案は飲食物摂取によって、毛髪中に分布する必須ミネラルの16種と、有毒金属5種についての分析値(傾向)およびバランス状態を現し、分析依頼者の食事改善を指導するための毛髪分析グラフ用紙に関するものである。」(明細書第2頁18行〜第3頁2行)こと、(h)「・・・その目的は人体が必要とする諸種ミネラルの適量及び過不足と、数種類の有毒金属が人体に与える影響の度合とを、棒グラフと濃淡色とにより迅速明瞭に観察し得る毛髪分析グラフ用紙を提供することにある。」(明細書第3頁10〜14行)ことが記載されている。
上記刊行物4には、(i)「・・・葉緑素含有食品、ミネラル含有食品、ビタミンE・ビタミンC含有食品、酵素含有食品等の各栄養種類別に・・・、欄外に具体的食品名を印刷してなる経穴導通測定による食事指導早見表。」(実用新案登録請求の範囲第(1)項)が記載されており、(j)「以上のように本考案に係る食事指導早見表は、・・・必要栄養素が極めて簡単に発見することができ、かつ、その具体的食品名が右欄にわかりやすく表示されているので、素人でも簡単に食事治療が行える。」(明細書第6頁8〜14行)ことが記載されている。

4.対比・判断

本件発明は、個体から採取した毛に含まれる各ミネラルの値を分析し、コンピュータに入力し、得られた各ミネラルの値を予め記憶した各ミネラルの値の基準値と比較し、基準値に対する各ミネラルの値の過不足量に基づき、個体が摂取すべき栄養素の種類及び量を算出し、表示し、成分に応じて予め類型化した栄養補助食品の食品テーブルを参照し、算出された栄養素の種類及び量に基づき、個体が摂取すべき栄養補助食品の種類及び量を算出し、表示することによって、(1)個体の体質を検査により客観的に把握して、これに応じて栄養素及び食品の摂取メニューを作成するので、これを栄養補助食品の摂取メニューの作成に実施した場合には、栄養補助食品を適切に摂取することが可能となり、摂取漏れや摂取過多がない、(2)採取した個体の毛に含まれた各ミネラルの値を分析することにより体質を検査するので、ミネラルが充分に検出できない血液検査や尿検査等に比し確実な検査が実現される、(3)分析の対象となる毛は郵送することができ、一々検査場所に出向かなくても済むので、遠隔地にあっても検査を受けることが可能となり、適切な摂取メニューの提供を受けることができるものである。
これに対して、上記刊行物1の記載内容を検討すると、上記記載事項(b)のとおり、人体が摂取する食物に関する情報と、分析手段から分析された当該人体からの出力物の分析情報および当該人体の生体情報とに基づき、当該人体の栄養バランス、健康度を推測し、その推測した情報を報知し、また、推測手段により当該人体に最適な食事情報を記憶手段から読みだし、読みだした情報を報知するものであり、上記記載事項(c)のとおり、栄養素にはミネラルを含むものであり、上記記載事項(d)のとおり、健康度とは、これだけの栄養素量が必要であるのに、これだけしか摂取していないという相対的な割合を云うのであるから、健康度の推測とは、栄養素の値を予め記憶した各栄養素値の基準値と比較し、基準値に対する各栄養素の値の過不足量に基づき、個体が摂取すべき栄養素の種類及び量を算出することにほかならず、上記記載事項(f)のとおり、推測手段5、推論手段15は8ビットマイクロコンピュータであるから、上記刊行物1には、「人体が摂取する食物に関する情報、分析手段から分析された当該人体からの出力物の分析情報および当該人体の生体情報とに基づき、ミネラルの値を予め記憶した各ミネラルの値の基準値と比較し報知し、基準値に対する各ミネラルの値の過不足量に基づき、個体が摂取すべき栄養素の種類及び量を算出し報知する、マイクロコンピュータによる食品の摂取メニュー作成方法」が記載されているといえる。
本件発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「報知」は、前者の「表示」に相当するから、両者は、「コンピュータによる次の手順により、人又は動物からなる個体が摂取すべき食品の種類及び摂取量を決定する食品の摂取メニュー作成方法。個体からの出力物に含まれる各ミネラルの値を分析し、コンピュータに入力する手順(1)。手順(1)により得られた各ミネラルの値を予め記憶した各ミネラルの値の基準値と比較する手順(2)。基準値に対する各ミネラルの値の過不足量に基づき、個体が摂取すべき栄養素の種類及び量を算出し、表示する手順(3)。手順(3)により得られた栄養素の種類及び量に基づき、個体が摂取すべき食品の種類及び量を算出し、表示する手順(4)。」である点で一致しており、相違する点は、(1)出力物について、前者が毛と限定している点、(2)摂取すべき食品の種類及び量を算出する際に、前者が成分に応じて予め類型化した食品の食品テーブルを参照している点、(3)摂取すべき食品について、前者が栄養補助食品と限定している点、(4)後者が、人体が摂取する食物に関する情報も使用しているのに対して、前者がこの情報を使用していない点のみである。
そこで、これら相違点につき検討する。
相違点(1)
上記刊行物2には、毛髪中のミネラルを分析することにより、分析依頼者の食事改善を指導することが記載されており、上記刊行物1に記載された技術も上記刊行物2に記載された技術も何れも食事改善情報提供を目的とする技術であるから、上記刊行物2に記載された技術を上記刊行物1に記載された技術に適用して、個体からの出力物として毛を採用することは当業者が容易に想到しうるところであり、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。
相違点(2)
上記刊行物1には、料理メニューとメニューに対応した栄養素情報等が予め記憶されていることが記載されており、上記刊行物4には、各栄養種類別に具体的食品名を印刷して食事指導早見表をわかりやすくすることが記載されている。
ここで、上記刊行物4に記載された記載の技術も、本件発明と同じく、食事指導を目的とする技術であるから、上記刊行物1に記載された技術に上記刊行物4に記載された技術を適用し、摂取すべき食品の種類及び量を算出する際に、料理メニューとメニューに対応した栄養素情報に代えて、成分に応じて予め類型化した食品の食品テーブルを参照することは、当業者が適宜なし得るところであり、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。
相違点(3)
必要な栄養を補給するためにどのような食品を選定するかは当業者が必要に応じて随時なし得ることであり、栄養素の表示のある栄養補助食品が、必要な栄養を効率的に補給するものであることは周知のことであるから、上記刊行物1に記載された技術において、最適な食事情報として、足りない栄養素に応じて栄養素の表示のある栄養補助食品を選択することは、当業者が適宜なし得るところであり、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。
相違点(4)
人体が摂取する食物に関する情報も使用するか否かは、目的とする必要栄養素の種類や摂取量の推定精度に応じて、当業者が適宜選択しうる事項と認められるから、ミネラルのみを対象とする際に、人体が摂取する食物に関する情報を敢えて使用しないことも当業者が適宜なし得るところである。
そして、本件発明において奏される効果も、上記記載事項(e)、(j)等から予測できない程の格別なものとは認められない。
審判請求人は、審判請求書において「本件発明は人体の状態を分析するための対象として毛を採用したことにより郵送が可能となり、一々検査場所に出向かなくても済むので、遠隔地にあっても検査を受けて適切な摂取メニューの提供を受けることができ、栄養補助食品の流通において通信販売が大きな比重を占めている現状において購買者の体質に適した栄養補助食品を販売することが可能となるという、特有の効果を奏する。」旨主張しているが、上記刊行物2においても、毛髪分析グラフ用紙には、分析依頼者名、分析年月日、分析担当者名の記入欄があることから、郵送で依頼し、遠隔地にあっても検査を受られるものであることは明らかであり、斯かる効果は、上記刊行物2から当業者が予期しうるものである。
また、審判請求人は、平成16年4月19日受付の意見書において、「(A)刊行物1の「料理メニュー」とは全ての食材と全ての調理法の組み合わせから得られる料理メニューということになり、そのためには膨大なデータと検討手順が必要となり、システムに多大の負担が加わるという問題がある、(B)本願発明の場合は利用者に最終的に提示されるのは、成分に応じて予め類型化された栄養補助食品及びその摂取量であり、これらはそのための栄養補助食品の食品テーブルを参照して算出されるので扱われるデータ量が少なくて済み算出が容易であり、システムの負担が軽く、利用者にとっても分かりやすく、摂取が容易なものであり、このような効果において明らかに引用文献1と2の組み合わせにより予測される域を超えている」旨主張しているので検討する。
主張(A)について
刊行物1の「料理メニュー」とは全ての食材と全ての調理法の組み合わせから得られる料理メニューであるとは常識的に考えられず、使用者の好み、記憶手段、推論手段等の容量に応じて、当業者が適宜料理メニューと食材を優先付けするものと考えられるから、請求人の主張は採用できない。
なお、本件発明においても、本件明細書には、「成分に応じて予め類型化した栄養補助食品の食品テーブルを参照し、手順(3)により得られた栄養素の種類及び量に基づき、個体が摂取すべき栄養補助食品の種類及び量を算出し」と記載されているだけで、具体的にどのように「個体が摂取すべき栄養補助食品の種類及び量を算出」するかは記載されていないが、本件発明においても、ミネラルも、それを補給するための栄養補助食品も多数あることから、その組み合わせは膨大なものとなると考えられる。
主張(B)について
必要な栄養を補給するためにどのような食品を選定するかは当業者が必要に応じて随時なし得ることであり、栄養素の表示のある栄養補助食品が、必要な栄養を効率的に補給するものであることは周知のことであるから、上記刊行物1に記載された技術において、最適な食事情報として、足りない栄養素に応じて栄養素の表示のある栄養補助食品を選択することは、当業者が適宜なし得るところである。
そして、「データ量が少なくて済み算出が容易であり、システムの負担が軽く、利用者にとっても分かりやすく、摂取が容易」という効果も、栄養補助食品を選択することにより当業者が当然に期待する効果にすぎない。
したがって、本件発明は、上記刊行物1、2及び4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、当審で通知した上記拒絶理由通知に引用したその出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1、2及び4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-09 
結審通知日 2005-05-17 
審決日 2005-05-30 
出願番号 特願平8-168673
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 田中 久直
鵜飼 健
発明の名称 栄養補助食品の摂取メニュー作成方法  
代理人 神保 欣正  

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