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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A47G
管理番号 1120325
審判番号 不服2003-4161  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-03-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-14 
確定日 2005-07-21 
事件の表示 特願2000-257275号「複写式葬儀用メッセージカードを使用する葬儀システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年3月5日出願公開、特開2002-65450号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年8月28日の出願であって、平成15年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年3月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年4月14日付けで特許請求の範囲を補正する補正がなされたものである。

II.平成15年4月14日付けの補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月14日付けの補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
本件補正は、平成15年1月14日付けの手続補正書で補正された請求項1である
「葬儀用祭壇へ供えるカードと、柩の中に入れるカードと、遺族に渡すカードと、記入者が保管するカードのうちの少なくとも二以上のカードが複写可能であり且つ一枚ずつ分離可能にセットされ、それらカードには故人へのメッセージを記入するメッセージ記入欄、メッセージ記入者の名前を記入する記入者名記入欄が設けられた複写式葬儀用メッセージカードが使用され、葬儀会場に設置された祭壇の外側側方と外側上方の双方又はいずれか一方で且つ葬儀会場の参列者から見える箇所に光学機器、映像機器、スクリーンのいずれか一又は二以上が設置され、これら光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかに映し出される画面が、前記複写式葬儀用メッセージカードへ記入された直筆のメッセージであることを特徴とする複写式葬儀用メッセージカードを使用する葬儀システム。」
を、
「葬儀会場に設置された祭壇の外側で且つ葬儀会場の参列者から見える箇所に、光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかが設置され、これら光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかに映し出される画面が、複写式葬儀用メッセージカードへ記入された直筆のメッセージであり、複写式葬儀用メッセージカードは葬儀用祭壇へ供えるカードと、柩の中に入れるカードと、遺族に渡すカードと、記入者が保管するカードのうちの少なくとも二以上のカードが複写可能であり且つ一枚ずつ分離可能にセットされ、それらカードには故人へのメッセージを記入するメッセージ記入欄、メッセージ記入者の名前を記入する記入者名記入欄が設けられたものであることを特徴とする複写式葬儀用メッセージカードを使用する葬儀システム。」
と補正するものである。
また、本件補正は、請求項を削除するものではない。

してみれば、特許請求の範囲の請求項1に係る本件補正は、「祭壇の外側側方と外側上方の双方又はいずれか一方で」を「祭壇の外側で」と補正し(以下、「補正事項1」という。」)、「光学機器、映像機器、スクリーンのいずれか一又は二以上が」を「光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかが」と補正し(以下、「補正事項2」という。)、「葬儀用祭壇へ備えるカードと、・・・記入者名記入欄が設けられた複写式葬儀用メッセージカードが使用され、」を「複写式葬儀用メッセージカードは葬儀用祭壇へ備えるカードと、・・・記入者名記入欄が設けられたものである」と補正する(以下、「補正事項3」という。)ものである。

2.補正目的
補正事項1について、祭壇の外側でスクリーンが設置できるのは、通常祭壇の外側側方か上方であるので、補正事項1は、実質的に同一の事項について、異なる表現を用いるようにしたに過ぎず、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮には該当しない。また、補正前の記載に誤りがあったとも言えないことから、同第3号の誤記の訂正にも該当しない。さらに、請求項1について、拒絶の理由で明りょうでないことは示されていないので、同第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)にも該当しない。

補正事項2について、「いずれか一又は二以上」と「いずれか」とは、通常同義であるから、補正事項2は、実質的に同一の事項について、異なる表現を用いるようにしたに過ぎず、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮には該当しない。また、補正事項1について述べたのと同様の理由により、同3号又は同4号にも該当しない。

補正事項3について、補正後の請求項1の記載においても、複写式葬儀用メッセージカードの使用を前提にしていることは明らかであるから、補正事項3は、発明特定事項の記載の順序を変更したに過ぎず、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮には該当しない。また、補正事項1について述べたのと同様の理由により、同3号又は同4号にも該当しない。

そして、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除にも該当しない。

3.むすび
よって、補正事項1、補正事項2及び補正事項3を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
平成15年4月14日付けの補正は上記II.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月14日付けの手続補正書で補正された請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記II.1.参照)。

1.引用刊行物記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-243871号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図1と共に、次の事項が記載されている。
a.「葬儀の祭壇に設置されたスクリーンと、故人の遺影を上記スクリーンに映写するスライド映写装置と、故人の生前の活動を撮影したビデオ画像を上記スクリーン上に映写するビデオ映写装置と、これら2種の映写装置による映写を葬儀の進行に合わせて切り替える切替手段とを備えた葬儀用映像装置を使用し、葬儀の開始のときには、上記切替手段を操作して上記スライド映写装置から上記スクリーンに故人の遺影を映写するステップ、弔辞のときには、上記切替手段を操作して上記ビデオ映写装置またはスライド映写装置を適宜切り替えて選択し、上記スクリーンに故人の生前の活動を撮影したビデオ画像またはスライド画像を択一的に映写するステップ、葬儀の終了のときには、上記切替手段を操作して上記スライド映写装置から上記スクリーンに故人の遺影を映写するステップ、を含むことを特徴とする葬儀方法。」(特許請求の範囲の【請求項1】)
b.「このように、遺影と司会者の声のみによる葬儀では、参列者が故人を深く理解し、偲ぶには不充分であり、その結果、葬儀の参列者の記憶に故人を鮮明に印象付け蘇らせることができない。」(段落【0003】)
c.「本発明を図面に示した実施の形態に基づき更に詳細に説明する。図1は葬儀場における映写装置の設置状態を示す概略説明図である。祭壇A内のほぼ中央部の奥側には、額縁11を組み、この額縁11に装備されたスクリーン1が設けてある。額縁11の回りは、図示を省略した布で装飾してある。スクリーン1の大きさは、本実施例においては縦3m、横4mである。スクリーン1の前方(祭壇A内の前側)には、約4mの距離をおいて、ビデオ映像及びスライド映像を映写する映写装置2が設置されている。」(段落【0013】)
d.「つまり、スライド映写装置とビデオ映写装置という映像機器を駆使することによって、葬儀を故人が永遠の生命に生きられるスタートの儀式として位置付けることが可能になるばかりか、参列者に対しては、故人の死を通して自らの人生を顧み、見直す場とすることができ、葬儀の真の意義を高めることができる葬儀装置が提供できる。」(段落【0023】)
上記記載事項及び図示内容を総合すると、上記刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「葬儀場の祭壇内にスクリーンが設置され、このスクリーンに故人の遺影と故人の生前の活動を撮影したビデオ画像を映写する葬儀装置。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3000983号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図1〜図3と共に、次の事項が記載されている。
a.「本考案は、死者に対し、死者の知人達が送り言葉を書き、葬儀の祭壇に飾ったり、死者の入った棺の中に入れたり、または遺族が思い出のために保管したりすることができる葬儀用送り言葉記載用紙に関するものである。」(段落【0001】)
b.「四角形またはその他の形状に形成した厚紙の一部に死者の氏名を記載可能な枠の形状を記載し、且つ該枠内の上部に故という文字を記載し、さらに用紙の隅などに送り言葉という文字を記載するとともに、該厚紙を適宜色彩を用いて花模様などの模様または色彩のみによって装飾し、多数の者が送り言葉を書き、祭壇に飾ったり棺の中に入れたりすることができ、また遺族が保管したりすることができる送り言葉記載用紙である。」(段落【0004】)
c.「用紙の中央部などに記載された枠の中に死者の氏名を書き、その他の部分に多数の知人達が送り言葉と自分の氏名を書くようにする。」(段落【0005】)
上記記載事項及び図示内容を総合すると、上記刊行物2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「送り言葉と自分の氏名を書くようにした、葬儀の祭壇に飾ったり、死者の入った棺の中に入れたり、または遺族が思い出のために保管したりすることができる葬儀用送り言葉記載用紙。」

2.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、後者における「葬儀場の祭壇」はその作用・機能からみて前者における「葬儀会場に設置された祭壇」に相当し、同様に「葬儀装置」は「葬儀システム」に相当する。また、後者のスクリーンが葬儀会場の参列者から見える箇所に設置されていることは、後者におけるスクリーンの機能から明らかである。
さらに、後者における「スクリーンに故人の遺影と故人の生前の活動を撮影したビデオ画像を映写する」と前者における「光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかに映し出される画面が、前記複写式葬儀用メッセージカードへ記入された直筆のメッセージである」とは、「光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかに映し出される画面が、故人に関連するものである」という概念で共通する。
してみれば、両者は、
「葬儀会場の参列者から見える箇所に光学機器、映像機器、スクリーンのいずれか一又は二以上が設置され、これら光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかに映し出される画面が、故人に関連するものである葬儀システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:光学機器、映像機器、スクリーンのいずれか一又は二以上が設置される位置が、本願発明においては、葬儀会場に設置された祭壇の外側側方と外側上方の双方又はいずれか一方であるのに対して、引用発明1においては、葬儀会場に設置された祭壇内である点。
相違点2:光学機器、映像機器、スクリーンのいずれかに映し出される故人に関連する画面が、本願発明においては、複写式葬儀用メッセージカードへ記入された直筆のメッセージであるのに対して、引用発明1においては、故人の遺影と故人の生前の活動を撮影したビデオ画像である点。
相違点3:本願発明は、葬儀用祭壇へ供えるカードと、柩の中に入れるカードと、遺族に渡すカードと、記入者が保管するカードのうちの少なくとも二以上のカードが複写可能であり且つ一枚ずつ分離可能にセットされ、それらカードには故人へのメッセージを記入するメッセージ記入欄、メッセージ記入者の名前を記入する記入者名記入欄が設けられた複写式葬儀用メッセージカードを使用する葬儀システムであるのに対して、引用発明1は、そのような構成を有しない点。

3.当審の判断
(1)相違点1について
引用発明1において、スクリーンは参列者から見えやすい位置であればよいのであって、その位置を祭壇内とするか祭壇の外側とするかは、当業者が葬儀会場の雰囲気等に応じて適宜選択する事項に過ぎない。

(2)相違点2について
引用発明2における「送り言葉」及び「葬儀用送り言葉記載用紙」は、それぞれ本願発明の「直筆のメッセージ」及び「葬儀用メッセージカード」に相当するものである。一方、引用発明1において、スクリーンに写し出されるものは、引用発明1の目的からみて、故人を理解し、偲ぶためのものであれば、適宜変更できることは明らかである。
引用発明2は葬儀の祭壇に飾ることも意図されており、送り言葉が、故人を理解し、偲ぶためのものであることは明らかであるから、引用発明1における故人に関連する画面として、引用発明2を使用して、スクリーンに葬儀用メッセージカードへ記入された直筆のメッセージを映し出すようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
葬儀用メッセージカードを「複写式」とする点については、以下の「(3)相違点3について」を参照。

(3)相違点3について
引用発明2の葬儀用送り言葉記載用紙は、葬儀の祭壇に飾ったり、死者の入った棺の中に入れたり、または遺族が思い出のために保管したりすることを意図したものであるが、それらの用途を同時に満たすように同じものを複数作成することは当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。そして、同じものを複数作成するための手段として、複写可能であり且つ一枚ずつ分離可能にセットされた複写式カードは例を挙げるまでもなく周知な事項である。
さらに、メッセージや氏名等を記入する用紙において、記入する事項の記入欄を設けておくことも例を挙げるまでもなく周知な事項である。
よって、引用発明1における故人に関連する画面として、引用発明2を使用するようにする際、引用発明2の葬儀用送り言葉記載用紙を複写可能であり且つ一枚ずつ分離可能にセットされた複写式のものにすること及び同葬儀用送り言葉記載用紙に故人へのメッセージを記入するメッセージ記入欄、メッセージ記入者の名前を記入する記入者名記入欄を設けることは当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明が奏する効果も、引用発明1、引用発明2及び周知な事項から当業者が予測できる程度のものに過ぎない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。


なお、平成15年4月14日付けの補正は、「II.平成15年4月14日付けの補正についての補正却下の決定」で述べたように、特許請求の範囲を減縮するものではなく、発明特定事項を実質的に変更するものではない。したがって、仮に平成15年4月14日付けの補正が却下されなかったとしても、進歩性の判断には影響を与えず、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの結論はかわらない。
 
審理終結日 2005-05-18 
結審通知日 2005-05-24 
審決日 2005-06-08 
出願番号 特願2000-257275(P2000-257275)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (A47G)
P 1 8・ 121- Z (A47G)
P 1 8・ 572- Z (A47G)
P 1 8・ 571- Z (A47G)
P 1 8・ 573- Z (A47G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 氏原 康宏山崎 勝司  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 山本 信平
北川 清伸
発明の名称 複写式葬儀用メッセージカードを使用する葬儀システム  
代理人 小林 正治  

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