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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1120356
審判番号 不服2002-13423  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-18 
確定日 2005-07-21 
事件の表示 平成 9年特許願第138371号「バスバーのレーザ溶接構造」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月18日出願公開、特開平10-334957号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年5月28日の出願であって、その請求項1〜6に係る発明は、平成14年5月21日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「電気接続箱に収容して積層されたバスバーの異なる層のパターン部からそれぞれ立ち上げたタブ状部同士を重ね合わせて、重ね合わされたタブ状部同士をレーザ溶接するバスバーのレーザ溶接構造であって、
一方のタブ状部を長くし、他方のタブ状部を短くして、長いタブ状部の内面と短いタブ状部の上端面との間の接合界面に、斜め上方からレーザビームを照射して、接合界面をレーザ溶接したことを特徴とするバスバーのレーザ溶接構造。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-150014号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「2つのブスバーにそれぞれつき合わせ部を設け、2つのつき合わせ部の接触部分に高エネルギー密度を有するビームを照射して溶着することを特徴とするブスバーの相互接続構造。」(特許請求の範囲の請求項1)
(2)「本発明は、電気接続箱におけるブスバーの相互接続構造に関する。」(第1頁右下欄第13行〜同欄第14行)
(3)「つき合わせ部の形状は、第6図aのように、一方のブスバーaの孔bに他方のブスバーa’の凸部cを圧入嵌着する構造と異なり、厳密な寸法精度が要求されず、成形コストを低く抑えることができる。」(第2頁左下欄第11行〜同欄第15行)
(4)「第1図において、1は第1層目のブスバー、2は2層目のブスバー、3は絶縁基板を示す。ブスバー1は、絶縁基板3に突設した溶着ボス4により固定されている。ブスバー1,2の端部にはそれぞれL形の折曲片5,6が形成されている。下層側の折曲片6は絶縁基板3の孔7を貫通して上方に突出し、上層側の折曲片5に接触している。」(第2頁左下欄第17行〜同頁右下欄第4行)
(5)「両折曲片5,6の接触部分Cにはレーザ光Dを照射し、溶着する。レーザ光の照射は、通常数秒程度の短時間で足りる。これにより、第2図a,bに示すように、両折曲片5,6の接触面C同士が溶着Wされる。」(第2頁右下欄第7行〜同欄第11行)
(6)「本発明によれば、ブスバーの層間接続を行うに際し、構造の簡単なつき合わせ部を設けて接触させればよく、ビーム照射により溶着されるから、信頼性の高い接続を行うことができ、コストの低減に寄与する。」
(7)また、第1図及び第2図には、両折曲片5,6の上端面の高さを同じにした点、及び折曲片5の上端面と折曲片6の上端面との間の接触面Cに真上からレーザ光を照射して溶接した点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、
「電気接続箱における積層されたブスバー1,2の端部にそれぞれ形成された折曲片5,6同士を接触させて、接触させた折曲片5,6同士をレーザ溶接するブスバーの相互接続構造であって、
一方の折曲片5の上端面と他方の折曲片6の上端面との高さを同じにして、折曲片5の上端面と折曲片6の上端面との間の接触面Cに、真上からレーザ光Dを照射して、接触面Cをレーザ溶接したブスバーの相互接続構造。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「電気接続箱における積層されたブスバー1,2」が本願発明の「電気接続箱に収容して積層されたバスバー」に相当し、以下同様に、「ブスバー1,2の端部にそれぞれ形成された折曲片5,6」が「バスバーの異なる層のパターン部からそれぞれ立ち上げたタブ状部」に、「接触させた折曲片5,6同士」が「重ね合わされたタブ状部同士」に、「一方の折曲片5」が「一方のタブ状部」に、「他方の折曲片6」が「他方のタブ状部」に、「レーザ光D」が「レーザビーム」に、「接触面C」が「接合界面」に、「ブスバーの相互接続構造」が「バスバーのレーザ溶接構造」に、それぞれ相当している。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「電気接続箱に収容して積層されたバスバーの異なる層のパターン部からそれぞれ立ち上げたタブ状部同士を重ね合わせて、重ね合わされたタブ状部同士をレーザ溶接するバスバーのレーザ溶接構造であって、
一方のタブ状部と他方のタブ状部との接合界面に、レーザビームを照射して、接合界面をレーザ溶接したバスバーのレーザ溶接構造。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
タブ状部同士の接合界面をレーザ溶接するに当たり、本願発明は、一方のタブ状部を長くし、他方のタブ状部を短くして、長いタブ状部の内面と短いタブ状部の上端面との間の接合界面に、斜め上方からレーザビームを照射しているのに対して、引用発明は、一方のタブ状部の上端面と他方のタブ状部の上端面との高さを同じにして、一方のタブ状部の上端面と他方のタブ状部の上端面との間の接合界面に、真上からレーザビームを照射している点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
上記「2.(3)」及び「2.(6)」で摘示したとおり、引用発明においては、厳密な寸法精度は要求されておらず、両タブ状部の接合界面の接続が行えれば足りるところからみて、引用発明において、一方のタブ状部の上端面と他方のタブ状部の上端面との高さが厳密に同じになるように両タブ状部の高さを揃えなければならない必然性はないと解されるから、両タブ状部の高さが異なるように両タブ状部の長さを変えることは、当業者が適宜なし得ることであるといえる。そうすると、一方のタブ状部を長くし、他方のタブ状部を短くした点は、当業者にとって単なる設計的事項にすぎないということができる。そして、引用発明において、一方のタブ状部を長くし、他方のタブ状部を短くした場合、レーザビームは、長いタブ状部の内面と短いタブ状部の上端面との間の接合界面に向けて斜め上方から照射することになるのは当然の結果である。
したがって、相違点に係る構成は、当業者が容易に想到できたものであるということができる。
そして、本願発明の効果も、引用例に記載された発明から当業者が予測できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-17 
結審通知日 2005-05-24 
審決日 2005-06-06 
出願番号 特願平9-138371
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柳 五三
川本 真裕
発明の名称 バスバーのレーザ溶接構造  
代理人 小谷 悦司  
代理人 麻野 義夫  
代理人 植木 久一  
代理人 麻野 義夫  
代理人 植木 久一  
代理人 麻野 義夫  
代理人 植木 久一  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 悦司  

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