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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03F
管理番号 1120358
審判番号 不服2002-14497  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-01 
確定日 2005-07-21 
事件の表示 平成 6年特許願第318885号「双方向アンプ回路」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月12日出願公開、特開平 8-181550〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成6年12月21日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年1月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
なお、平成14年5月13日付けの手続き補正は補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないという理由により原審において却下されている。

「2線式の送受話双方向線路に用いられる双方向アンプ回路であって、送話信号を増幅する送話用増幅回路と、受話信号を増幅する受話用増幅回路と、送話信号又は受話信号のそれぞれが、他方の上記増幅回路へ入力されるのを防止するための送話系及び受話系ブリッジ回路とを備えた双方向アンプ回路において、
上記送話用又は受話用増幅回路の少なくとも一方の前段にバッファ回路を備えたことを特徴とする双方向アンプ回路。」

2.引用例
(1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された実願昭63-117394号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平2-38853号参照、以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「1.ドアホンへ電力を供給し、かつ外部装置との通話路を形成するドアホン接続回路において、
ドアホン入力端子間をブリッジの一辺とする、抵抗素子によるホイットストーンブリッジと、前記ホイットストーンブリッジに定電流を供給する定電流回路とを有し、ドアホンへの電力供給が前記定電流回路からなされるとともに、外部装置からドアホンへの通話電流を前記定電流に重畳し、ドアホンに信号を伝達する信号送話経路およびドアホンから外部装置への通話電流を、前記ホイットストーンブリッジの中間点に接続された差動増幅器を介して、外部装置へ伝達する信号受話経路からなる4線式回路を備えていることを特徴とするドアホン接続回路。
2.請求項1記載のドアホン接続回路において、外部装置からドアホンへ信号を伝達する信号送信経路、ドアホンから信号を外部装置へ伝達する信号受話経路からなる4線式回路が2線・4線変換回路を経て、外部装置へ接続していることを特徴とするドアホン接続回路。」(1頁、実用新案登録請求の範囲第1項、第2項)
ロ.「次に送受の通話は2方向の4線式になる。外部からドアホンへの送話の場合には、送話増幅器12の出力が定電流回路10のp点、すなわちトランジスタQ2のベースに印加され、ドアホン側に伝達される。このとき受話増幅器13はブリッジの中点に接続されているので、その送話信号電圧は受話増幅器13から出力されないので、受話回路には、混信しない。・・・(中略)・・・
次にドアホンから外部装置への受話の場合には、ドアホン側の信号電圧が、ブリッジ抵抗値により定まる分割比で、中点間に表われ、受話増幅器13に入力する。そして、定電流回路14の電流I2’に信号電流が重畳し、ブリッジ15の一辺の抵抗RD’から外部装置へ信号が伝達される。このときも、送話増幅器12への混信はない。・・・(中略)・・・
本実施例では、ドアホン側、外部装置側はそれぞれ2線式回路で、接続回路は両方の側で2線・4線変換を行っている。」(7頁8行目〜8頁11行目)

上記記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「接続回路」は「2線式のドアホンと2線式の外部装置」間を接続する「2方向(即ち、送受話双方向)線路」に用いられ、「送話増幅器(即ち、送話信号を増幅する送話用増幅回路)」と「受話増幅器(即ち、受話信号を増幅する受話用増幅回路)」を含み、両側(即ち、送話系と受話系のそれぞれ)に2線・4線変換を行う「ブリッジ回路」を備えた「双方向アンプ回路」である。
したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「2線式の送受話双方向線路に用いられる双方向アンプ回路であって、送話信号を増幅する送話用増幅回路と、受話信号を増幅する受話用増幅回路と、送話信号又は受話信号のそれぞれが、他方の上記増幅回路へ入力されるのを防止するための送話系及び受話系ブリッジ回路とを備えた双方向アンプ回路。」

(2)また、同じく原審の拒絶理由に引用された特開昭60-10808号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「一般の回路系の場合、各段の出力インピーダンスや入力インピーダンスは一般的に言って設計的に或る一定の値近傍に固定されていると言った方が普通であるかもしれない。然し、逆に、例えば電話回線に結合する結合トランス部分におけるように、等価入出力インピーダンスが実用下で大きく変動する場合も少なくない。またアナログ的ファン・イン、ファン・アウトの如何によりインピーダンスが大きく変動する場合も少なくない。
このような場合、即ち、同一の伝送線路を介して双方向に信号を伝送させる必要があり、然もその伝送線路の各端に接続された外部回路段のインピーダンスが変動することが当然に見込まれるような回路において、そのようなインピーダンス変動の如何によらず、信号レベルの安定性を確保できる回路要素としてのインピーダンス・アイソレータ1が構成できればそれはもちろん望ましい。」(2頁右上欄10行目〜左下欄7行目)
ロ.「(・・・インピーダンス・アイソレータ1の構成に関し・・・)少なくともいづれか一方の増幅器は負の増幅率を持つ所謂フォロア型のものであっても良い。」(3頁右上欄11〜12行目)
ハ.「結合トランス5の二次側の一端は接地に落とされ、他端は受話系用の差動増幅器8の正相入力乃至非反転入力8+に接続されている。但し、この正相入力8+と結合トランスの対応する端末との間には、本発明によるインピーダンス・アイソレータ乃至双方向性インピーダンス変換器1が挿入され、更に望ましい配慮として、この差動増幅器8の負入力乃至反転入力8-と結合トランスの他端子乃至接地との間にも同様に本発明による第二のインピーダンス・アイソレータが挿入されている。」(3頁左下欄9〜19行目)
ニ.「増幅器16により十分な程度にまで増幅された送話信号は、高入力インピーダンス低出力インピーダンスの適当なバッファ18を介した後、本発明による第一のインピーダンス・アイソレータ1の一方の端子T2に供給され、他方の端子T1から結合トランスを介し電話回線へ送り出されていく。これに併せて、第二の同様なバッファ19を介して、増幅器16の出力信号は本発明による第二のインピーダンス・アイソレータ1の一方の端子T2にも供給される。」(4頁右上欄10〜15行目)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例2には「各段のインピーダンスが変動することが当然に見込まれるような回路において、そのようなインピーダンス変動の如何によらず、信号レベルの安定性を確保できる回路要素としてのインピーダンス・アイソレータを介挿する」技術手段、および、「受話系用差動増幅器の前段にインピーダンス・アイソレータ又は高入力インピーダンス低出力インピーダンスのバッファを介挿して受話系用の差動増幅器の入力側をインピーダンス的に絶縁する」技術手段が開示されている。

(3)また、例えば特開平4-160914号公報(以下、「周知例1」という。)や特開平2-73104号公報(以下、「周知例2」という。)に開示されているように、「抵抗回路の出力とオペアンプの入力間にインピーダンス変換回路を介挿してインピーダンス的な絶縁を計ること」自体は周知である。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
<一致点>
「2線式の送受話双方向線路に用いられる双方向アンプ回路であって、送話信号を増幅する送話用増幅回路と、受話信号を増幅する受話用増幅回路と、送話信号又は受話信号のそれぞれが、他方の上記増幅回路へ入力されるのを防止するための送話系及び受話系ブリッジ回路とを備えた双方向アンプ回路。」
<相違点>
本願発明は「送話用又は受話用増幅回路の少なくとも一方の前段にバッファ回路を備え」ているのに対し、引用発明はそのような構成でない点。

4.当審の判断
ついで、上記相違点について検討するに、上記引用例2には「各段のインピーダンスが変動することが当然に見込まれるような回路において、そのようなインピーダンス変動の如何によらず、信号レベルの安定性を確保できる回路要素としてのインピーダンス・アイソレータを介挿する」技術手段、および、「受話系用差動増幅器の前段にインピーダンス・アイソレータ又は高入力インピーダンス低出力インピーダンスのバッファを介挿して受話系用の差動増幅器の入力側をインピーダンス的に絶縁する」技術手段が開示されており、また、例えば上記周知例1または2に開示されているように、「抵抗回路の出力とオペアンプの入力間にインピーダンス変換回路を介挿してインピーダンス的な絶縁を計ること」自体は周知技術であるところ、これらの技術手段を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、インピーダンスの変動が予想される受話増幅器とブリッジとの間に高入力インピーダンス低出力インピーダンスのバッファを介挿することによりインピーダンス変動の影響を取り除くように構成し、本願発明のような「送話用又は受話用増幅回路の少なくとも一方の前段にバッファ回路を備え」る構成を得る程度のことは、当業者であれば、容易なことである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術手段ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-17 
結審通知日 2005-05-24 
審決日 2005-06-06 
出願番号 特願平6-318885
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 浜野 友茂
野元 久道
発明の名称 双方向アンプ回路  
代理人 中井 宏行  

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