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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1120403
審判番号 不服2003-4532  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-20 
確定日 2005-07-25 
事件の表示 平成10年特許願第354133号「レーザ制御方法、露光システム、及び半導体装置製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月28日出願公開、特開平11-266050〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年12月18日に出願した特願平3-353125号の一部を平成10年12月14日に新たな特許出願としたものであって、その請求項に係る発明は、平成14年4月15日付及び平成14年9月17日付手続き補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載されたものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「【請求項1】放電電圧を調整することによって、パルス発振されるレーザ光のパルスエネルギーを制御するレーザ制御方法において、
一定の周波数である期間連続的にパルス発振を行うときに、前記パルス発振の初期は、該パルス発振初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動を抑えるような制御パターンを用いて前記放電電圧を制御し、
前記パルス発振初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動が落ち着いた後は、
前記パルス発振の初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動を抑える制御パターンを使うことなく、前記レーザ光のエネルギー測定結果に基づいて前記放電電圧をフィードバック制御することを特徴とするレーザ制御方法。」(以下、「本願発明」という。)
なお、「前記放電電圧の制御し」は、「前記放電電圧を制御し」の明らかな誤記と認められるから、上記の通り認定した。

2.刊行物の記載事項
原審における拒絶理由に引用した実願昭56-87010号(実開昭57-197660号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、下記の記載が認められる。
「レーザー体に電圧を印加する電源手段と、該電源手段からレーザー体の印加電圧を制御する制御手段とを備え、該制御手段によるレーザー体の印加電圧をレーザー体の出力が励振開始から略一定になるように、励振開始時に大きくしてなるレーザー出力制御装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
「一般にレーザー体には、第1図(a)に示すように一定の印加電圧が印加され、レーザー体の出力は第1図(b)に示す特性となる。この特性から明らかな如くレーザ出力は、励振開始時には小さく、次第に大きくなって安定する。」(明細書1頁13〜17行)、
「該制御手段は、レーザー体(2)に一定の印加電圧を付与したときの、レーザー出力特性(第1図(b))を考慮して、励振開始時のレーザー体の印加電圧が大きく、その後漸次小さくなるように予め制御出力を選定しておいてもよく、・・・このようにして、レーザー体(2)には第3図(a)に示す特性の印加電圧が付与され、レーザー出力は第3図(b)に示す如く励振開始時から略一定の安定出力となる。
このためレーザー出力をレーザー体の励振開始時から直ちに利用することができ、従来装置の如く励振開始当初の待期時間を省力することができる。」(同2頁7行〜3頁1行)
又、第3図からは、励振開始時に大きく、その後漸次小さくなるような印加電圧を所定時間加え、その後は一定の電圧を加えると、レーザー出力が励振開始時から略一定となることが見て取れる。

3.対比
本願発明と刊行物1記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。
引用発明の「励振開始時のレーザー体の印加電圧が大きく、その後漸次小さくなるように予め制御出力を選定しておく」との事項は、本願発明の「発振初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動を抑えるような制御パターンを用いて電圧を制御する」との事項に相当する。
よって、両者は、
「電圧を調整することによって、レーザ光のエネルギーを制御するレーザ制御方法において、発振初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動を抑えるような制御パターンを用いて前記電圧を制御するレーザ制御方法」である点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1:
本願発明は、「一定の周波数である期間連続的にパルス発振を行う」レーザであって、「放電」電圧を調整することによって、「パルス」発振されるレーザ光の「パルス」エネルギーを制御するものであるのに対して、引用発明では、パルス発振レーザかどうか明記のない点。
相違点2:
本願発明では、「前記パルス発振初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動が落ち着いた後は、前記パルス発振の初期に生じる前記レーザ光のエネルギー変動を抑える制御パターンを使うことなく、前記レーザ光のエネルギー測定結果に基づいて前記放電電圧をフィードバック制御する」のに対して、引用発明では、このような構成を有しない点。

4.判断
上記相違点1,2について検討する。
原審における拒絶理由に引用した特開平3-54816号公報(以下、「刊行物2」という。)に記載され、本願発明の従来技術にも記載されているように、一定の周波数である期間連続的にパルス発振を行うレーザであって、放電電圧を調整することによって、パルス発振されるレーザ光のパルスエネルギーを制御するもの(相違点1の構成)は、露光用エキシマレーザ等で周知である。
また、前記刊行物2に、「波長安定化のためにはレーザチャンバー100のパルス発振が必要であり、例えば露光処理、計測処理等のためにステッパー側で数Hz〜500Hz程度のパルス発振を必用としている時は、その発振によって波長安定化のフィードバックループが働き、ほぼ理想的な安定度が得られる。」(6頁右上欄9〜15行)と記載されているように、通常の使用状態において、レーザ光のエネルギー測定結果に基づいて放電電圧をフィードバック制御すること(相違点2の構成)は、パルス発振レーザにおいて従来周知である。
さらに、パルス発振レーザであるエキシマレーザにおいて、発振が中断され、ある一定時間をおいて次に発振される初期のパルスは波長が大きくずれることがよく知られ(本願明細書の【従来の技術】の【0005】及び【0006】の記載、並びに前記刊行物2の6頁右上欄15〜19行を参照。)、これによる不都合を解決することは従来周知の課題である。
そうしてみると、引用発明のレーザ発振初期に生じるエネルギー変動を抑える技術を従来周知のエキシマレーザ等のパルス発振レーザに適用することは当業者が容易に想到し得たものである。またその際、エネルギ変動が安定した通常の使用状態において、従来周知のフィードバック制御を行うことは、当業者が適宜採用すべき事項にすぎない。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明の「レーザー出力をレーザー体の励振開始時から直ちに利用することができ、従来装置の如く励振開始当初の待期時間を省力することができる。」という効果及び従来周知のパルス発振レーザが有する効果から予想しうる程度のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載されたような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-10 
結審通知日 2005-05-31 
審決日 2005-06-15 
出願番号 特願平10-354133
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古田 敦浩杉山 輝和  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 瀧本 十良三
町田 光信
発明の名称 レーザ制御方法、露光システム、及び半導体装置製造方法  

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