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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65C
管理番号 1120476
審判番号 無効2004-80104  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-04-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-07-16 
確定日 2005-05-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第2834595号発明「検体採取用試験管準備方法及び装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2834595号に係る発明についての出願は、平成3年5月15日(優先権主張平成2年10月24日)に特許出願されたものであって、平成10年10月2日にその発明について特許の設定登録がなされた。
これに対し、平成16年7月16日に請求人株式会社アステックコーポレーション他1名より無効審判の請求がなされ、平成16年10月8日に被請求人より答弁書が提出され、その後、平成17年3月2日に口頭審理が行われたものである。

II.本件発明
本件請求項1乃至5に係る発明(以下それぞれ「本件特許発明1」乃至「本件特許発明5」という)は、明細書の請求項1乃至5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】患者に関する情報に基づいて、検査項目別に少なくとも2種類の試験管を収容した試験管収容部から、試験管移送手段で患者の検査に必要な試験管を自動的に選択してラベル貼付位置に移送すると共に、
前記患者に関する情報に基づいて患者情報をラベル印字手段で自動的に印字し、
ラベル貼付位置に移送された試験管に前記患者情報が印字されたラベルをラベル貼付手段で自動的に貼り付け、
ラベル貼付後の試験管を試験管移送手段で患者別に収納可能な収納部へ自動的に移送することを特徴とする検体採取用試験管準備方法。
【請求項2】検査項目別に少なくとも2種類の試験管を収容する第1収容部と、
ラベルに患者に関する情報に基づいて患者情報を印字して試験管に貼り付けるラベル印字・貼付装置と、
ラベル貼付後の試験管を収容する第2収容部と、
前記第1収容部からラベル印字・貼付装置へ、また、ラベル印字・貼付装置から前記第2収容部へ試験管を移送する移送手段と、
患者に関する情報に基づいて、前記移送手段に患者の検査に必要な試験管を自動的に選択させてラベル印字・貼付装置のラベル貼付位置に移送させると共に、
前記ラベル印字・貼付装置に、前記患者に関する情報に基づいて患者情報をラベルに印字させ、かつ、ラベル貼付位置に移送された試験管に対応する患者情報が印字されたラベルを貼り付けさせ、
さらに、前記移送手段に、ラベル貼付後の試験管をラベル印字・貼付装置から前記第2収容部へ移送させ、前記第2収容部でラベル貼付後の試験管を患者別に収容させるよう少なくとも移送手段及びラベル印字・貼付装置を制御する制御手段とを有することを特徴とする検査用試験管準備装置。
【請求項3】前記移送手段が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な試験管把持具を有することを特徴とする請求項2に記載の検査用試験管準備装置。
【請求項4】前記移送手段が、一つ又はそれ以上の無端コンベアを有することを特徴とする請求項2に記載の検査用試験管準備装置。
【請求項5】 前記第1収容部が検査項目別に試験管を収容可能な少なくとも二つの収容部を有することを特徴とする請求項4に記載の検査用試験管準備装置。」

III.請求人及び被請求人の主張の概略
1.請求人の主張
請求人の主張は、甲第1乃至22号証を提出して、本件特許発明1乃至5は、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張するものであるが、その主張の内容を整理すると以下の2点の通りである。

(1)本件特許発明1乃至5は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許1乃至5は特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。

(2)本件特許発明1乃至5は、甲第1号証、甲第16号証及び甲第18号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許1乃至5は特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。

そして、その他の各甲号証は参考資料として提出されたものである。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特開平2-60648号公報(平成2年3月1日公開)
甲第2号証:特開昭59-119266号公報(昭和59年7月10日公開 )
甲第3号証:本件特許発明の出願人が審査の過程において、平成10年3月 23日付けで特許庁へ提出した意見書
甲第4号証:本件特許発明についての無効審判である無効2000-353 08号事件の平成12年9月25日付けで特許庁へ提出された 審判事件の答弁書
甲第5号証:無効審決公報(無効2000-35308号)
甲第6号証:高園産業株式会社の昭和62年の会社案内パンフレット
甲第7号証:高園産業株式会社のホームページ
甲第8号証:特開昭59-115228号公報
甲第9号証:異議決定公報(平成11年異議第72241号)
甲第10号証:特開昭51-792号公報
甲第11号証:特開昭49-37696号公報
甲第12号証:実願昭53-97200号(実開昭55-16108号公報 )のマイクロフィルム
甲第13号証:特開昭63-96554号公報
甲第14号証:実願昭57-186566号(実開昭59-89804号公 報)のマイクロフィルム
甲第15号証:特開昭56-22960号公報
甲第16号証:特開昭58-125436号公報
甲第17号証:特開昭63-8557号公報
甲第18号証:特開昭63-15164号公報
甲第19号証:実公平2-15554号公報
甲第20号証:特許第2834595号公報
甲第21号証:平成11年(ワ)第11108号特許権侵害差止等請求事件 における第7準備書面
甲第22号証:平成14年改正産業財産権法の解説(2002年8月21日 初版発行 特許庁総務部総務課制度改正審議室編 社団法人 発明協会発行)

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人の主張は、以下の通りである。
本件特許発明1乃至5は、甲第1号証及び甲第2号証、又は甲第1号証、甲第16号証及び甲第18号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当するものではなく、本件審判の請求は成り立たない。

IV.当審の判断
1.請求人の主張(1)について
[各甲号証の記載事項]
(1)甲第1号証(特開平2-60648号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

記載事項a:本発明は、病院等医療設備におけるアンプル、輸液ボトル、生理食塩水・ブドウ糖・蒸留水等の注射剤の保管・搬出を自動化する装置に関するもので、特に患者一人に対しての一処方毎の注射剤の自動払出しを可能とした装置である。(第2頁左上欄第4行〜第8行)

記載事項b:(20)〜(25)は輸液ボトルピッカー装置(11)に関する部品符号で、・・・(25)は同伸縮アームの先端に取付けた輸液ボトル把持のハンドである。(第3頁右上欄末行〜同左下欄第5行)

記載事項c:次に輸液ボトル格納庫(2)まで送られると停止し、コンピュータ指令により輸液ボトルピッカー装置(11)が作動する。・・・ハンド(25)によって 輸液ボトル格納庫(2)から輸液ボトル(b)を把んで走行台(20)の走行と、昇降台(23)の下降、伸縮アーム(24)の伸縮、ハンド(25)の開放によって輸液ボトル(b)をトレー搬送路(5)上のトレー(14)内に収納する。(第4頁左上欄第5行〜第16行)

記載事項d:アンプル格納庫(4)のアンプルピッカー装置(13)が働いて、必要なアンプル(a)を必要個数取り出して自動袋詰機(6)に投入され、袋詰されたアンプル・バイアル(d)の形でトレー(14)に収納される。その後トレー搬送路(5)によってトレー保管庫(1)の入出庫口(9)からトレー保管庫(1)に一時保管され、必要時点、入出庫口(9)から搬出され搬送されるものである。・・・これらの装置の動作指令はコンピュータ管理の下でなされる。(第4頁右上欄末行〜右下欄末行)

記載事項e:注射剤の払出作業を無人化し、迅速に行えるようにできるという効果がある。(第5頁左上欄第7行〜第9行)

(2)甲第2号証(特開昭59-119266号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

記載事項f:本発明は、生化学分析などに用いる自動分析システムのラベル記録装置にかかり、更に具体的には、血液などの検体の同定ないしは検体相互の関係を表示するためのラベルに必要な情報を記録するラベル記録装置に関する。(第1頁右下欄第11行〜第15行)

記載事項g:・・・検体が収容されている試験管、ビーカ、カップなどの容器に、必要な情報が記録されているラベルを貼着することによって検体の同定などを行うことが一般に普及しており、このための作業を行う装置がラベル記録装置である。(第2頁左上欄第9行〜第14行)

記載事項h:検体に関する情報としては、例えば患者名、検体番号、採血時間、採血者名、検体状況などがある。(第5頁左上欄第13行〜第15行)

記載事項i:まず、開始とともに、フォトセンサ62及び位置検出装置76が動作状態におかれ、・・・次に・・・サンプルカップ64が送り出される・・・。サンプルカップ64がラベル16の貼着位置に達すると・・・。(第5頁左上欄末行〜右上欄第9行)

記載事項j:・・・サンプルカップ64に収容されている検体に対応する記録情報が転送され・・・ラベル16に対して記録が行われる。・・・ (第5頁左下欄第13行〜第19行)

記載事項k:・・・サンプルカップ64が送られる。・・・記録済のラベル16がサンプルカップ64に貼着される・・・。(第5頁右下欄第8行〜第19行)

(対比判断)
本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを比較する。
甲第1号証に記載された発明は、記載事項aによれば、「病院等医療設備におけるアンプル、輸液ボトル、生理食塩水、ブドウ糖、蒸留水等の注射剤の保管・搬出を自動化する装置に関するもので、特に患者一人に対しての一処方毎の注射剤の自動払出しを可能とした装置」であり、記載事項b〜eによれば「輸液ボトルピッカー装置」や「アンプルピッカー装置」を用いて「注射剤の払出作業を無人化し、迅速に行えるように」したものである。
そして、これらの事項を考慮して本件特許発明の用語を用いて表現すると、両者は
「患者に関する情報に基づいて、項目別に少なくとも2種類の容器を収容した容器収容部から、容器移送手段で患者に必要な容器を自動的に選択して、容器移送手段で患者別に収納可能な収納部へ自動的に移送する容器準備方法。」で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1は、「患者の検査に必要な試験管を自動的に選択してラベル貼付位置に移送すると共に、前記患者に関する情報に基づいて患者情報をラベル印字手段で自動的に印字し、ラベル貼付位置に移送された試験管に前記患者情報が印字されたラベルをラベル貼付手段で自動的に貼り付け、ラベル貼付後の試験管を患者別に収納可能な収納部へ自動的に移送する」のに対し、甲第1号証に記載の発明は、必要な容器を自動的に選択した後、ラベル貼付作業を行っていない点。

相違点2:本件特許発明1は、「検体採取用試験管準備」に関するものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、「注射剤の自動払出し」に関するものである点。

上記相違点について検討する。
相違点1について。
請求人が審判請求書中で引用している甲第2号証の記載事項f〜kには、生化学分析などに用いる自動分析システムのラベル記録装置において、検体が収容されている試験管などの容器に、例えば患者名、検体番号、採血時間、採血者名、検体状況などの必要な情報が記録されているラベルを貼着することによって検体の同定などを行うことが記載されている。
確かに甲第2号証に記載された発明では、試験管に患者に関する情報を印字したラベルを貼着しているが、ラベルが貼着されるのは検査を行う検体が試験管などの容器に収容された後、すなわち検体の採取後であって、検体を採取する前ではないし、そのことが示唆されているような記載があるわけでもない。
そして、本件特許発明1は、検体採取用の試験管を事前に患者別に準備しておくことを目的とするものであるから、検体採取後にラベルを貼着してもその目的は達せられるものではない。

相違点2について。
甲第1号証に記載されている発明は、注射剤の自動払出しに関するものであって、本件特許発明1のように検体採取用試験管準備に関するものではない。
甲第2号証には、検体が収容されている容器として試験管、ビーカ、カップなどが記載されており、甲第1号証に記載されている発明における注射剤の容器の形状はアンプル型やボトル型等検体採取用の試験管に類似した形状ではあるが、その容器の機能やその後の取り扱われ方は異なるものであり、甲第1号証に記載の注射剤の自動払出しに関する発明と甲第2号証に記載の生化学分析などに用いる自動分析システムのラベル記録装置に関する発明を組み合わせることは当業者が容易になし得るものとはいえない。

そして、本件特許発明1は、検体採取用試験管を準備するに当たり、その手順、すなわち、検査項目別に収容した試験管収容部から、各患者の検査に必要な試験管を選択して、患者情報をラベル印字・貼付手段で印字・貼付し、患者別に収納する、という手順に重要な構成があるものである。
すなわち、このような手順で検体採取用試験管を準備することにより、各患者毎に必要な検査項目毎の試験管にその患者情報が印字されたラベルが貼付された状態で検体採取用の試験管が患者毎に準備されるという効果が得られるものである。
よって、各手順の段階毎の操作、すなわち患者毎に容器を取り出したり容器に患者情報の印字されたラベルを貼付するという段階毎の操作が個々に公知であるとしても、それら各操作をいかなる順番で行うかを開示あるいは示唆する客観的証拠が認められない以上、甲第1号証及び甲第2号証を組み合わせたとしても、この構成が容易に導き出せるものとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲第1乃至2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件特許発明2は、本件特許発明1の方法の発明としての構成を装置の発明として記載したものであるから、上記と同様の理由により本件特許発明2は甲第1乃至2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明3及び4は、本件特許発明2を引用し更にその移送手段を具体的なものに限定したものであり、本件特許発明5は、本件特許発明4を引用し更に第1収容部を具体的なものに限定したものであり、これら各発明についても上記と同様の理由により、甲第1乃至2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.請求人の主張(2)について
[各甲号証の記載事項]
(1)甲第1号証(特開平2-60648号公報)の記載事項は上記記載事項a〜eのとおりである。

(2)甲第16号証(特開昭58-125436号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
記載事項l:本体の内部に、検体容器のホッパ部とラベルの貼付部とが並列して区画形成されると共に、このホッパ部及び貼付部の下方に上記検体容器の搬送手段が設けられ、前記本体の側部に前記検体容器の収納部が設けられて成り、前記ホッパ部には前記検体容器を1個宛搬送手段に送る案内手段が設けられ、・・・前記検体容器にラベルを貼付して収納部に所定量宛収納することを特徴とする検体容器のラベル貼付装置。(特許請求の範囲第1項、第1図)

記載事項m:この発明は、検体容器にラベルを自動貼付する検体容器のラベル貼付装置に関する。一般に、各種病院及びコマーシャルラボラトリにおいて、血液検査、生化学検査等の検体容器には患者氏名、日付、検査項目などの検体情報を表示することが不可欠であり、この検体情報は検体容器に貼付したラベルに記載するようにしている。(第1頁右下欄第8行〜第14行)

記載事項n:第1図に示すように、1は検体容器2にラベル3を貼付するラベル貼付装置であつて、本体4の内部に検体容器2のホッパ部5,ラベル3の貼付部6及び検体容器2の搬送手段7が設けられ、側部に収納部8が設けられて構成されている。上記検体容器2は、第3図に示すように、試験管形の本体2aに封栓2bが着脱自在に取付けられて成り、プラスチック成形品などで形成され、この本体2aに前記ラベル3が貼付される。(第2頁左上欄第11行〜第19行、第1図、第3図)

記載事項o:前記貼付部6にはドツトプリンタ11が設けられており、このドツトプリンタ11は前記ラベル3に検体情報を印字するようになっている。(第2頁左下欄第12行〜第14行)

記載事項p:次に、このラベル貼付装置1を用いた検査処理システムを第5図に基づいて説明する。先ず、外来患者及び入院患者別に検査依頼表21a、21bが作成され、この依頼表21a、21bに基づいて検体情報がキー入力部22にて入力され、中央処理装置23及びラベル貼付装置1に送られる。続いて、ラベル貼付装置1においてドツトプリンタ11がラベル3に検体情報を印字し、このラベル3が貼付された検体容器2が前記依頼表21a、21bと共に検体採集部24に送られ、採血或いは採尿される。引き続いて、この検体容器2は、遠心分離機25分取分注機26を経て或いは直接各種分析機27に送られ、各種検査が行なわれる。(第3頁左下欄第2行〜第16行、第5図)

(3)甲第18号証(特開昭63-15164号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

記載事項q:多数のテストカップの整列担持用設置部を有する搬送トレイを搬送対象としかつ該搬送トレイを積込み位置で移入停止させる停止手段の設けられた搬送路:同一種類のテストカップの多数を並列収納しかつ種別標識が上面に表示されたテストパックトレイを、前記搬送路と概ね同一の平面上で複数種類平面的に配置してなるテストカップドロア:これら搬送路およびテストカップドロアの両者の上方に跨がって配置され、駆動機構により平面的にxy走査される走査移動体をもったxy走査機構:テストカップの搬送トレイヘの積込み順序を指定するための入力装置:を備えた生化学分析装置のテストパック選択供給装置であって、・・・。(特許請求の範囲)

記載事項r:本発明は、免疫化学分析等を含む生化学分析を自動化して行なうことができる自動分析装置に好適に用いられるテストカップ(分析項目毎の反応室を提供する反応容器)の選択供給装置に関するものである。(第1頁右下欄第13行〜第17行)

記載事項s:前記テストカップの種別標識は、例えばバーコードによる他、数字、文字、マーク等適宜の標識を使用することができ、また該種別標識と共にロット番号等必要なラベル等を併せ表示させるようにしてもよい。(第3頁左上欄第5行〜第9行)
記載事項t:第1図は本発明の一実施例の構成概要を斜視図で示したものであり、図において、41はテストパックトレイ群であり、各テストパックトレイ21には、それぞれ同一の検査項目のために用いられる同じ種のテストカップ11の多数が収納されている。本例における前記テストカップ11は、第2図に示されるものであり、上方開放型のカップ型容器(・・・)の内部に、所定の項目に合せた所定の試薬が分注されて凍結乾燥し、この後ラミネーテッドホイルで熱シールされ上面シール12により封止されて予め準備される。本例では上面シール12上に検査項目名が表記されている。(第4頁左上欄第16行〜同頁右上欄第10行、第1、2図)

記載事項u:43は搬送路44上を移動される搬送トレイであり、この搬送トレイ43は、第4図に示す如く上方に開放した整列された多数のテストカップ載置嵌挿用穴43aを有しており、この搬送トレイ43は所定の順序で多数のテストカップを坦持(載置嵌合)した状態で不図示の分析装置に送り込まれ・・・(第4頁右下欄第12行〜第18行、第4図)

(対比判断)
甲第1,16及び18号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨の請求人の主張(2)は、どの文献を主たる引用文献として主張するのか必ずしも明らかではないが、本件特許に対する特許異議申し立て事件(平成11年異議第72241号)の決定を引用しつつ主張を展開しているので、同特許異議申立事件の決定と同様に甲第16号証を主たる引用例として検討を行う。

本件特許発明1と甲第16号証に記載された発明を比較する。
甲第16号証に記載された発明における「検体容器2」、「ホッパ部5」、「搬送手段7」、「貼付位置」、「ドツトプリンタ11」、「ラベル3の貼付部6」、「収納部8」が、本件特許発明1における「試験管」、「試験管収容部」、「試験管移送手段」、「ラベル貼付位置」、「ラベル印字手段」、「ラベル貼付手段」、「収納部」に相当し、また、甲第16号証に記載された発明において、ラベルに印字される検体情報は、患者氏名、日付、検査項目等であることから、本件特許発明1における患者に関する情報に基づく患者情報に相当する。
そして、両者は本件特許発明の用語を用いて表現すると、
「試験管を収容した試験管収容部から、試験管移送手段でラベル貼付位置に移送すると共に、患者に関する情報に基づいて患者情報をラベル印字手段で自動的に印字し、ラベル貼付位置に移送された試験管に前記患者情報が印字されたラベルをラベル貼付手段で自動的に貼り付け、ラベル貼付後の試験管を試験管移送手段で収納部へ移送するようにした検体採取用試験管準備方法」
で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1は、「患者に関する情報に基づいて、検査項目別に少なくとも2種類の試験管を収容した試験管収容部から、試験管移送手段で患者の検査に必要な試験管を自動的に選択してラベル貼付位置に移送」しているのに対し、甲第16号証記載の発明は、検体容器が検査項目別に区別されているか否か明示されておらず、また患者の検査に必要な試験管を自動的に選択するという操作を行っていない点。

相違点2:本件特許発明1は、「ラベル貼付後の試験管を試験管移送手段で患者別に収納可能な収納部へ自動的に移送する」ものであるのに対し、甲第16号証記載の発明は、患者別に収納されるものではない点。

上記相違点について検討する。
相違点1について。
甲第16号証記載の発明は、検体容器が検査項目別に区別されているか否か明示されていないところ、その図面を参照すると、第1図の検体容器を入れるホッパー部5は内部が区別されておらず、例えば第3図に示されているような形状の検体容器がホッパー内に収納されているものであって、検体容器が検査項目別に区別されているものとは認められない。
また、甲第16号証記載の発明では、ホッパー部5に収納されている検体容器は患者毎に必要なものが選択されるものではなく、収納されている検体容器は順次ラベル貼付部に搬送されるものであって、患者毎に区別がなされ得るのは患者情報が印字されたラベル貼付後である。
甲第18号証記載の発明は、生化学分析装置のテストカップ(分析項目毎の反応室を提供する反応容器)の選択供給装置に関するものであり、複数のものから必要なものを取り出すという作業は行われてはいるが、このテストカップは生化学分析に用いられるものではあっても検体の採取に用いられるものではないし、取り出された後ラベルが貼付されるものでもない。したがって、甲第18号証記載の発明においては、検査項目毎にテストカップが収容され、そこから必要なものを取り出してはいるが、その事項から直ちに、ラベルを貼付することを目的として患者の検査に必要な試験管を選択して移送することが容易に想到できるものとはいえない。
また、甲第1号証記載の発明も、複数のものから必要なものを取り出すという作業は行われてはいるが、対象は注射剤に関するものであって検体採取用試験管ではないし、取り出された後ラベルが貼付されるものでもない。したがって、甲第1号証記載の発明においては、項目毎に収容されている格納庫から患者毎に必要なものを取り出してはいるが、その事項から直ちに、ラベルを貼付することを目的として患者の検査に必要な試験管を選択して移送することが容易に想到できるものとはいえない。

相違点2について
甲第1号証記載の発明は、患者毎の注射剤の自動払出しを可能とした装置であり、確かに各患者毎に必要な注射剤を自動的に払い出すことを開示しているが、この発明においては払い出された注射剤は直接トレーに収納されるものであって、払い出された個々の注射剤の容器に患者に関する情報を表示するラベルを貼付した後に患者毎に収納するものではない。
また、甲第18号証記載の発明は、検査項目毎にテストカップが収容され、そこから患者毎に必要なものを取り出してはいるが、この作業は検体採取後の操作である上、テストカップ自体に患者に関する情報を表示するラベルを貼付することを目的として取り出しているものではない。
よって、甲第1号証及び甲第18号証の記載から直ちに、ラベル貼付後の試験管を試験管移送手段で患者別に収納可能な収納部へ自動的に移送することが容易に想到できるものとはいえない。

本件特許発明1は、検体採取用試験管を準備するに当たり、その手順、すなわち、検査項目別に収容した試験管収容部から、各患者の検査に必要な試験管を選択して、患者情報をラベル印字・貼付手段で印字・貼付し、患者別に収納する、という手順に重要な構成があるものであり、各手順の段階毎の操作が個々に公知であるとしても、それら各操作をいかなる順番で行うかを開示あるいは示唆する客観的証拠が認められない以上、本件特許発明1は、甲第1号証、甲第16号証及び甲第18号証を組み合わせたとしても、この構成が容易に導き出せるものとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲第1、16及び18号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件特許発明2は、本件特許発明1の方法の発明としての構成を装置の発明として記載したものであるから、上記と同様の理由により本件特許発明2は甲第1、16及び18号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明3及び4は、本件特許発明2を引用し更にその移送手段を具体的なものに限定したものであり、本件特許発明5は、本件特許発明4を引用し更に第1収容部を具体的なものに限定したものであり、これら各発明についても上記と同様の理由により、甲第1、16及び18号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
他に本件特許1乃至5を無効とすべき理由は発見できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許1乃至5を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2005-03-29 
結審通知日 2005-03-31 
審決日 2005-04-18 
出願番号 特願平3-110542
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B65C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 中村 則夫
溝渕 良一
登録日 1998-10-02 
登録番号 特許第2834595号(P2834595)
発明の名称 検体採取用試験管準備方法及び装置  
代理人 田中 成志  
代理人 田中 成志  
代理人 浜野 孝雄  
復代理人 木元 道泰  
復代理人 木元 道泰  
代理人 長尾 二郎  
代理人 窪木 登志子  
代理人 平井 輝一  
代理人 山田 徹  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 平井 輝一  
代理人 森田 哲二  
代理人 山田 徹  
代理人 森田 哲二  
代理人 長尾 二郎  
代理人 窪木 登志子  

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