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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1120617
審判番号 不服2002-20655  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-24 
確定日 2005-08-01 
事件の表示 平成 7年特許願第233515号「ラベル連続体」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月31日出願公開、特開平 8-137392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年8月17日(優先権主張平成6年9月14日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年11月25日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】長尺状のラベル基材、
前記ラベル基材の裏面に形成された粘着剤層、
前記ラベル基材の表面に形成された感熱発色層、
前記感熱発色層の表面に保護剤が塗布・乾燥されて形成された保護層、
前記保護層の表面側に後記剥離剤層となじみの良い印刷インキで形成された印刷層、
および
前記ラベル基材が巻き重ねられたとき前記粘着剤層と対向するように、前記印刷層を覆いながら前記保護層の表面側に形成された剥離剤層を含み、前記剥離剤層は、紫外線硬化型シリコーン樹脂を0.4〜3.0g/m2塗布して形成された、ラベル連続体。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物記載の内容
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物には、以下の内容が記載されている。
2-1 引用刊行物1:特開平6-72024号公報
(1)第2頁左欄段落【0001】〜【0003】「本発明は、剥離保護紙の処分に関連する費用と問題点を解決し、食品業界用にも問題なく使用することができる感熱記録ラベルシ-ト...【従来の技術】このような感熱記録ラベルシ-トは...色彩画像用染料を組込んだ感熱発色剤層とシリコン剥離層が備わっている。...しかしながら、前記シリコン剥離層と感熱発色剤層の間にバリア層を設ける必要がある。これは、感熱発色剤層の発色性能を劣化するからであり、前記ラベルシ-トの生産原価の増大を来す」
(2)第2頁右欄段落【0005】「本発明は、表裏二面をもつ基体と、該基体の一面を覆うように塗布形成された感圧性接着剤層と、前記基体の他面を覆うように塗布形成された感熱発色剤層と、前記感圧性接着剤層に対して付着性が弱い材料で前記感熱発色剤層上に直接塗布形成された剥離剤層とからなる感熱記録ラベルシ-トであり...前記感圧性接着剤に対して非接着特性を有する5〜25部のクロム・ペンタヒドロキシ(テトラデカノエート)ジ-又は紫外線硬化型シリコーンと75〜95部の水又はアルコールからなる剥離剤を前記感熱発色剤層上に直接塗布して剥離剤層を形成する工程と、少なくとも剥離剤層を前記感熱発色剤層の機能を著しく阻害しない条件で乾燥する工程と、前記各工程の処理を終わった基体を前記剥離剤層を塗布形成した面が外面になり前記感圧性接着剤層と接するように巻取る工程とからなる感熱記録ラベルシ-ト」
(3)第2頁右欄段落【0008】「剥離剤層は...紫外線硬化型シリコーン(例えば商品名「G.E.9300」として重量比で1〜3%の光開始剤(例えばUV9365C-D1)を含む市販品)などを用いる。」
(4)第3頁左欄段落【0013】〜【0014】「【作用】前記のような剥離剤を前記範囲内で使用することによって、感圧性接着剤への付着性が低く、バリア層が必要なく接着することができるものであり、前記剥離剤は...感熱発色紙に着色(ある種の剥離剤は緑色や他の色に着色させるものがある)せず感熱発色剤層に悪影響を与えないものである。前記のような感圧性接着剤は、基体の感熱発色剤層とは相対する面に塗布するものである。...最後の巻き上げ工程でロール状態とした...その後、感熱プリンタ(例えばホーバートスケール)を使用してバーコードのような肉眼で読めるような印刷を行う。最終的には...などに貼付ける。」
(5)第3頁左欄〜右欄段落【0017】「図1は、本発明の感熱記録シートの一実施例をロール状にして示す略斜視図...実施例1 10は、感熱記録ラベルシ-トであって、次のように構成された個々の感熱記録ラベル11が連接されて構成されている。すなわち、15は基体であって、前記のように二面16、17を有する上質紙である。12は、感熱発色剤層であって、前記のような発熱発色剤を基体15の一面16に全面を覆うように塗布し形成されている。しかして、感熱発色剤を予め基体15の一面16に塗布し形成してあるいわゆる感熱紙を使用する。13は、剥離剤層であって、前記のような剥離剤を前記感熱発色剤層12の上に全面を覆うように直接塗布して形成されている。14は、感圧性接着剤層であって、前記のような感圧性接着剤を基体15の他面17に全面を覆うように塗布して形成されている。」
(6)第3頁右欄段落【0020】「本発明は、特定の剥離剤を使用したので、感熱発色剤層上にバリア層を設けることなしに剥離剤層を直接形成した感熱記録ラベルシ-トを得ることができ、しかも、単純かつ有利に製造できるなど顕著な効果が認められる。」
なお、「基体を...巻取る」(前記摘示の記載(2))、「感熱記録シートの一実施例をロール状にして示す...10は、感熱記録ラベルシートであって、次のように構成された個々の感熱記録ラベル11が連接されて構成されている。すなわち、15は基体であって」(前記摘示の記載(5))の記載及び、図1より、基体が長尺状であることが、又、
「基体を前記剥離剤層を塗布形成した面が外面になり前記感圧性接着剤層と接するように巻取る」(前記摘示の記載(2))の記載より、基体が巻取られたとき感圧性接着剤層と対向するように剥離層が形成されていることが明らかである。
したがって、上記摘示の記載を含む明細書の全記載によれば、引用刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「長尺状の基体15、
前記基体の一面を覆うように塗布形成された感圧性接着剤層14、
前記基体の他面を覆うように塗布形成された感熱発色剤層12,
および
基体が巻取られたとき感圧性接着剤層と対向するように、前記感熱発色剤層上に直接形成された剥離剤層13を含み、前記剥離剤層は、紫外線硬化型シリコーンを塗布して形成された、感熱記録ラベルシ-ト10。」(以下、「引用刊行物1記載の発明」という。)

2-2 引用刊行物2:特開昭57-69091号公報
(1)第1頁右欄最下行〜第2頁右上欄第9行「現在考えられ提案されている剥離型感熱記録紙は、支持体上に感熱発色層を設け、さらにこの感熱発色層上に必要パターンが印刷されており、また支持体の裏面には感圧接着層(粘着層)が設けられ、この接着層を剥離紙で被覆した形態を有している。そして、前記の印刷部以外のところを発色させ剥離紙を取除いて被貼着物につけるようにしたものである。かかる剥離型感熱記録紙における感熱発色層は...ロイコ染料と酸性物質(例えば有機酸、フエノール性物質など)とを結着剤中に分散せしめたものであり、これが他の感熱発色材料よりも色調が鮮明であり、しかもカブリも少ないという望ましい効果をもつていることは当業界で周知である。それにもかかわらず、これによつて製造されたラベルはプラスチツクシートに貼着されることが多いために、そのプラスチツクシートに内添されている可塑剤...のために発色画像が消失してしまうという事態が生じ、実用上の価値は未だ認められていない。...これに加えて、発色画像部以外の個所には必要パターンが水性又は油性印刷インクで印刷されているのが普通である」
(2)第2頁右上欄第16行〜左下欄第8行「本発明の他の目的は...長期にわたつて鮮明な発色画像が維持できる剥離型感熱記録紙を提供することにある。即ち本発明の剥離型感熱記録紙は、支持体表面に無色又は淡色のロイコ染料及び加熱によつてこのロイコ染料を発色せしめる酸性物質を主成分とした感熱発色層と、水溶性樹脂を主成分とした保護層とが順次積層され、さらにこの保護層上に紫外線硬化型印刷インクで必要パターンが印刷され紫外線照射により硬化された着色印刷部が形成されており、一方支持体裏面には感圧接着層が設けられ、この接着層を剥離紙が被覆していることを特徴とするものである。」
(3)第3頁右下欄第16行〜第4頁左上欄第6行「感熱発色層2上には水溶性樹脂からなる保護層3が設けられているが、この保護層中にも上記の微粉末(填料)を適当量添加することが可能である。ここで使用される水溶性樹脂としては、感熱発色層2において例示した結着剤がそのまま適用できる。また、この保護層3上には当初から必要により設けられるパターン4例えばラベルの縁どりに相当するところ、当初から定まつているマークなどが、紫外線硬化型印刷インクによつて印刷されている。紫外線硬化型印刷インクは公知のものが使用でき」
(4)第4頁右上欄第11行〜左下欄第8行「水溶性樹脂溶液がこの感熱発色層2上に塗布し室温〜150℃で乾燥して固形分付着量が0.5〜3.0g/m2の保護層3を形成する。保護層3の厚さはそこで使用される水溶性樹脂の種類の相違にもよるが、上記範囲内あることが必要である。保護層3の厚さが薄すぎると発色画像が、前述のように、被貼着物に含まれている可塑剤の作用により画像濃度が低くなる傾向にあり、逆に保護層3の厚さが厚すぎると熱ペンの加熱温度を高くしなければならず、また記録速度が遅くなるといつた傾向がみられる。保護層3を有機溶剤溶解型の樹脂で形成すると、有機溶剤のため感熱発色層2が変化を受け好ましくない。この水溶性樹脂層(保護層)3上に、必要パターン4を紫外線硬化型印刷インクで印刷し、これに紫外光が照射されて印刷パターン(又は必要パターン4)を形成する。」
(5)第4頁右下欄第5〜7行「本発明記録紙は感熱発色層2上に保護層(保護被膜)3が設けられているため発色濃度の低下は著しく防止される。」

2-3 引用刊行物3:特開昭57-120488号公報
(1)第1頁左欄特許請求の範囲の請求項2「支持体の一面に磁気記録層を設け、この支持体の他の面に通常無色又は淡色のロイコ染料からなる熱発色性物質と、この物質を熱時発色させる酸性物質からなる発色助剤を含有する感熱発色層と、水溶性高分子化合物を含有する保護層を積層し、該保護層上に紫外線硬化型印刷インクで必要なパターンを印刷してなることを特徴とする感熱記録型磁気券紙。」
(2)第2頁左下欄第5行〜右下欄第7行「可塑剤を含有するプラスチック材料に長期間接触して保存されていると、前記染料系熱発色性物質を含む感熱発色層を有する...券類は前記発色層内に前記の如きプラスチック材料中の可塑剤が徐々に浸透してきて発色部の消色、再発色しないという悪影響があった。...更に前記感熱発色層上に水溶性高分子化合物...を含有する保護層を形成することが提案され、これによって十分な耐可塑剤性を得ることができた。通常はこの保護層特に水溶性高分子化合物による保護層上に印刷インキにより印刷が施されて券紙として利用される」
(3)第4頁右上欄第8〜12行「保護層を形成するときは、かかる感熱発色層上に水溶性高分子化合物を含む液を塗布・乾燥して保護層とする。ここに用いる水溶性高分子化合物としては前記感熱発色層の結着剤として用いたと同様のものを挙げることができる。」

2-4 引用刊行物4:実願昭57-141830号(実開昭59-46265号)のマイクロフィルム
(1)明細書第1頁実用新案登録請求の範囲「支持体の表面に無色又は淡色のロイコ染料と酸性物質とを発色成分として含有する感熱発色層、離型剤層を順次形成し、支持体の裏面に感圧接着剤層を設けてなる感熱記録用ラベルシート。」
(2)明細書第2頁第6〜11行「未使用時は、巻取状で保管すれば、感熱発色層上の離型剤層と、支持体の裏面に設けてある感圧接着剤層が接している為、表裏でのブロツキングを生ずることがなく、又使用時は感熱記録である為、離型剤層を通して、熱が伝わり、実用上、充分な熱印字が出来」
(3)明細書第3頁第15行〜第4頁最下行「次に離型剤層は、フツ素系、シリコン系のいずれでもよいが、安価なシリコン系で充分である。この離型剤層の中に...可塑剤がしみ込みにくくなるような添加剤...が添加される。これは感熱記録用ラベルシートがPOS(販売時点情報管理システム)用として使用される場合、可塑剤を含んだシートに接触したり、食品中のサラダオイル、天ぷら油、更にはハンドクリーム、頭髪油等に触れて感熱発色部分が退色するのを防止する為である。次に本考案の支持体としては、紙、合成紙、プラスチツクフイルム等が使用され得るが、特に紙の場合には、前述したPOSの用途の場合、可塑剤、各種油等が、感圧接着剤層、更には紙層を通して、感熱発色層にまで達し、発色画像の退色を引き起す為、紙支持体の表及び/又は裏面に、可塑剤、各種油を通しにくい素材(例えば、前述のポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなど)を塗工又は含浸させておくのが好ましい。」
(4)明細書第5頁第9〜最下行「市販のフアクシミリ用感熱紙(三菱感熱紙F-200H)の感熱発色層の面(表面)に信越化学工業(株)製のエマルジヨン型シリコーン離型剤...を、乾燥塗工量で2g/m2になる様に塗工し、乾燥後、...得られた感熱記録用ラベルシートは、巻取りの状態にしておけば、シートの表裏で接着することもなく」

2-5 引用刊行物5:実願昭56-27786号(実開昭57-139971号)のマイクロフィルム
(1)明細書第1頁実用新案登録請求の範囲「ラベル基材の裏面に感圧接着剤層を形成するとともに、該ラベル基材の表面に感熱発色剤層を形成し、且つ、該感熱発色剤層表面に撥水性を有する保護塗層を形成したことを特徴とする撥水性を有する感熱発色性粘着ラベル。」
(2)明細書第2頁第18行〜第3頁第2行「(4)は、前記感熱発色剤層(3)表面に、さらにシリコーン樹脂等の撥水性を有する物質を塗布してなる保護塗層である。そして、その薄さはサーマルヘッド等からの加熱による感熱発色効果を妨げない程度にする必要性がある。」
(4)明細書第3頁第18行〜第4頁第5行「 感熱発色剤表面に撥水性を有する保護塗膜を形成したために、塩化ビニルの可塑剤等が直接感熱発色剤層に接触することもなく...感熱発色剤を劣化させることもないので、ラベルが貼着される被貼着体の性質を問うこともなく」

3.本願発明と、引用刊行物1記載の発明との対比
本願発明と、引用刊行物1記載の発明発明とを対比すると、
引用刊行物1記載の発明の「感熱記録ラベルシ-ト10」は、個々のラベル11が連接されて構成されたものである(前記摘示の記載(5)、図1)から、本願発明の「ラベル連続体」に相当し、以下、それぞれの機能にてらして、
「基体15」は「ラベル基材」に、
「感圧性接着剤層14」は、「粘着剤層」に、
「感熱発色剤層12」は、「感熱発色層」に、
「剥離剤層13」は、「剥離剤層」に、
「巻取られた」は、「巻き重ねられた」に
それぞれ相当する。
剥離剤層は、引用刊行物1記載の発明では、感熱発色層(引用刊行物1記載のものにおける「感熱発色剤層12」が相当する。)上に直接形成され、本願発明では、感熱発色層の表面に形成された保護層の表面側に形成されているが、両者とも感熱発色層の上側に形成されている点において共通する。
したがって、両者は、
「長尺状のラベル基材と、前記ラベル基材の裏面に形成された粘着剤層と、ラベル基材の表面に形成された感熱発色層と、前記ラベル基材が巻き重ねられたとき前記粘着剤層と対向するように、前記感熱発色層の上側に形成された剥離剤層を含み、前記剥離剤層は、紫外線硬化型シリコーン樹脂を塗布して形成された、ラベル連続体。」で一致し、
本願発明が以下の(A)及び(B)の構成を有するが、引用刊行物1に記載の発明では上記構成を有しないか、明記していない点で相違する。
(A)「感熱発色層の表面に保護剤が塗布・乾燥されて形成された保護層、前記保護層の表面側に剥離剤層となじみの良い印刷インキで形成された印刷層」を有する点、それに伴い、剥離剤層は前記印刷層を覆いながら前記保護層の表面側に形成される点。
(B)剥離剤層は、紫外線硬化型シリコーン樹脂を「0.4〜3.0g/m2塗布し」た点。

4.当審の判断
(4-A)相違点(A)について
相違点(A)を検討するため、引用刊行物2をみるに、上記引用刊行物記載の内容に摘示したように、引用刊行物2には、「感熱発色層は...ロイコ染料と酸性物質...とを結着剤中に分散せしめたものであり、これが他の感熱発色材料よりも色調が鮮明であり、しかもカブリも少ないという望ましい効果をもつていることは当業界で周知である。それにもかかわらず、これによつて製造されたラベルはプラスチツクシートに貼着されることが多いために、そのプラスチツクシートに内添されている可塑剤...のために発色画像が消失してしまうという事態が生じ、実用上の価値は未だ認められていない」(前記摘示の記載(1))の記載、「記録紙は感熱発色層2上に保護層(保護被膜)3が設けられているため発色濃度の低下は著しく防止される」(前記摘示の記載(5))の記載、「保護被膜を設けることなく、感熱発色層上に直接...印刷したところ、その印刷部分の感熱発色層は...混色となり、実用上使用し得ないものであった。」(前記摘示の記載(6))の記載が認められる。
上記記載から、ラベルは、プラスチツクシートに貼着されることが多いために、ラベルの感熱発色層に、色調が鮮明でカブリが少なく他の感熱発色材料より望ましいロイコ染料と酸性物質とを結着剤中に分散せしめた感熱発色材料(本願発明の「感熱発色層」と同一の材料)を用いると、プラスチツクシートに内添されている可塑剤のために発色画像が消失してしまい、感熱発色層の表面に保護層を設けなければ実用できないことが把握できる。
また、引用刊行物3をみるに、上記引用刊行物記載の内容に摘示したように、引用刊行物3には、「可塑剤を含有するプラスチック材料に長期間接触して保存されていると、前記染料系熱発色性物質を含む感熱発色層を有する...券類は前記発色層内に前記の如きプラスチック材料中の可塑剤が徐々に浸透してきて発色部の消色、再発色しないという悪影響があった。...更に前記感熱発色層上に水溶性高分子化合物...を含有する保護層を形成することが提案され、これによって十分な耐可塑剤性を得ることができた。」(前記摘示の記載(2))の記載、「感熱発色層上に水溶性高分子化合物を含む液を塗布・乾燥して保護層とする。」(前記摘示の記載(3))の記載が認められ、これらの記載から、プラスチック材料中の可塑剤の浸透による悪影響を防止するため、感熱発色層の表面に保護層を形成する必要が把握できる。
上記刊行物2、3にみられるように、プラスチック材料に接する感熱発色層の表面に可塑剤の影響を防止すべく保護層を形成することは周知・慣用の手段と認められる。
引用刊行物1には、「感熱記録ラベルシートは...シリコン剥離層と感熱発色剤層の間にバリア層を設ける必要がある。これは、感熱発色剤層の発色性能を劣化するからであり」(前記摘示の記載(1))の記載、「本発明は、特定の剥離剤を使用したので、感熱発色剤層上にバリア層を設けることなしに剥離剤層を直接形成した感熱記録ラベルシ-トを得ることができ」(前記摘示の記載(6))の記載があり、引用刊行物1には、保護層(引用刊行物1記載の「バリア層」)に代えて特定の剥離剤を用いた旨記載されている。引用刊行物1記載の発明においては、特定の剥離剤を用いて感熱発色層を保護したから、保護層がないのであって、剥離剤に特定のものを用いなければ当然保護層は形成されて然るべきである。そして、感熱発色層の保護を、引用刊行物1記載の発明の如く特定の剥離剤を用いて行うか、引用刊行物2、3に記載された従来からの周知・慣用手段の如く保護層を形成して行うかは、単なる設計事項にすぎない。
また、保護層を形成するのに、表面に保護剤を塗布・乾燥することは、引用刊行物2(「水溶性樹脂溶液がこの感熱発色層2上に塗布し...乾燥して...保護層3を形成する。」(前記摘示の記載(4))、引用刊行物3(「保護層を形成するときは、かかる感熱発色層上に水溶性高分子化合物を含む液を塗布・乾燥して保護層とする。」(前記摘示の記載(3))に記載されているように周知の手段である。
なお、付言すれば、引用刊行物4には、「離型剤層の中に...可塑剤がしみ込みにくくなるような添加剤...が添加される。これは感熱記録用ラベルシートがPOS(販売時点情報管理システム)用として使用される場合、可塑剤を含んだシートに接触したり...に触れて感熱発色部分が退色するのを防止する為である。」及び「可塑剤、各種油等が、感圧接着剤層、更には紙層を通して、感熱発色層にまで達し、発色画像の退色を引き起す為、紙支持体の表及び/又は裏面に、可塑剤、各種油を通しにくい素材...を塗工又は含浸させておくのが好ましい。」(前記摘示の記載(3))の記載があり、感熱発色層の表面に接する剥離剤層(引用刊行物4記載の「離型剤層」)に可塑剤がしみ込みにくくなるような添加剤を添加したり、基材(引用刊行物4記載の「支持体」)に可塑剤、各種油を通しにくい素材を塗工又は含浸させることにより、感熱発色層を保護しており、引用刊行物5にも、「感熱発色剤層表面に撥水性を有する保護塗層を形成した」(前記摘示の記載(1))等の記載があり、いずれにしても、感熱発色剤の劣化を防止するためラベルに形成される感熱発色層には何らかの保護手段が当然のこととして施されている。

次に、該保護層の表面側に印刷層を有する点は、引用刊行物2には、「発色画像部以外の個所には必要パターンが水性又は油性印刷インクで印刷されているのが普通である」(前記摘示の記載(1))の記載、「保護層上に紫外線硬化型印刷インクで必要パターンが印刷され紫外線照射により硬化された着色印刷部が形成されており」(前記摘示の記載(2))の記載、「保護層3上には当初から必要により設けられるパターン4例えばラベルの縁どりに相当するところ、当初から定まつているマークなどが、紫外線硬化型印刷インクによつて印刷されている。」(前記摘示の記載(3))の記載があり、上記記載によれば、引用刊行物2記載のラベルには、感熱発色層の表面に形成された保護層上に印刷インキで印刷層が形成されている。
また、引用刊行物3にも「保護層上に紫外線硬化型印刷インクで必要なパターンを印刷してなる」(前記摘示の記載(1))の記載、「保護層上に印刷インキにより印刷が施されて」(前記摘示の記載(2))の記載があり、引用刊行物3記載のものも、保護層上に印刷インキで印刷層が形成されている。
上記引用刊行物2、3にみられるように、保護層の表面側に印刷層を形成することも周知・慣用の手段と認められる。
そして、印刷層を形成するにあたり、印刷インキとして剥離剤層となじみの良いものを採用することは、本願発明において印刷層と剥離剤層は剥がれては拙いから、剥がれないように、なじみの良いインキを採用したものである。ラベルのような積層体においては、従来から剥がれては拙い隣接する層をなじみの良いもので構成することが技術常識であるから、この点は単なる設計事項にすぎない。
さらに、剥離剤層が印刷層を覆いながら保護層の表面側に形成される点は、感熱発色層の表面に保護層を形成し、保護層上に印刷層を形成したことに伴うものであって、その機能からみて、剥離剤層は巻き重ねられたとき、粘着剤層と対向しなければならないから、ラベル基材の表面最上層に設けられるべきものである。さすれば、ラベル基材の表面側に保護層や印刷層を形成した場合には、剥離剤層は、必然的に印刷層を覆いながら保護層の表面側に形成される。
以上のとおりであるから、相違点(A)に係る本願発明の構成は引用刊行物2又は3記載の周知事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。

(4-B)相違点(B)について
紫外線硬化型シリコーン樹脂をm2あたり、何g塗布するかは、所望の剥離性を得ることができ、かつ、サーマルヘッドによる熱が感熱発色層に均一かつ十分に伝わり十分な発色が得られるように、サーマルヘッドの加熱温度、保護層の厚さや材質、粘着剤層の貼着力を考慮して、当業者が適宜決定すべき事項にすぎない。
なお、引用刊行物2には、「固形分付着量が0.5〜3.0g/m2の保護層3を形成する。保護層3の厚さはそこで使用される水溶性樹脂の種類の相違にもよるが、上記範囲内あることが必要である。保護層3の厚さが薄すぎると発色画像が...被貼着物に含まれている可塑剤の作用により画像濃度が低くなる傾向にあり、逆に保護層3の厚さが厚すぎると熱ペンの加熱温度を高くしなければならず、また記録速度が遅くなるといつた傾向がみられる。」(前記摘示の記載(4))と、引用刊行物4には、「感熱発色層の面(表面)に...エマルジヨン型シリコーン離型剤...を、乾燥塗工量で2g/m2になる様に塗工」(前記摘示の記載(4))したものが「離型剤層を通して、熱が伝わり、実用上、充分な熱印字が出来」(前記摘示の記載(2))と、引用刊行物5には、「保護塗層である。そして、その薄さはサーマルヘッド等からの加熱による感熱発色効果を妨げない程度にする必要性がある。」(前記摘示の記載(2))と記載されており、感熱発色層の表面に形成される層は、サーマルヘッドによる熱が感熱発色層に均一かつ十分に伝わり、十分な発色が得られるような厚さにする必要があることが記載されており、
これらの記載を参酌するに、本願発明における紫外線硬化型シリコーン樹脂の塗布量m2あたり0.4〜3.0gは、感熱発色層の上に塗布する層の厚さとして格別な値とは認められず、しかも、上記サーマルヘッドの加熱温度、保護層の厚さや材質、粘着剤層の貼着力等の条件がなにも限定されていないのであるから、相違点(B)に係る本願発明の構成は単なる数値限定にすぎないものと認められる。

(4-C) まとめ
以上のとおりであって、本願発明と引用刊行物1記載の発明との相違点(A)及び(B)は、いずれも格別なものとはいえず、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2ないし5記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、相違点(A)及び(B)に係る構成を含む本願発明全体の作用効果も当業者が容易に推察可能なものであって、格別の作用効果を奏するものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1記載の発明及び引用刊行物2ないし5記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-24 
結審通知日 2005-05-31 
審決日 2005-06-14 
出願番号 特願平7-233515
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小宮 寛之高木 彰仁科 雅弘  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤本 義仁
藤井 靖子
発明の名称 ラベル連続体  
代理人 岡田 全啓  

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