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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1120629
審判番号 不服2003-11701  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-24 
確定日 2005-08-02 
事件の表示 平成10年特許願第309314号「知覚的圧縮および強固なビット速度制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月19日出願公開、特開平11-289535〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
(1)手続
本願は、平成10年10月30日(パリ条約による優先権主張:1997年10月31日、アメリカ合衆国)の出願である。
(2)査定
原査定の理由は、概略、下記のとおりである。
記(査定の理由)
本願各発明は、下記刊行物に記載された各発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平9-149420号公報
刊行物2:特開平7-131788号公報
刊行物3:特開平5-300380号公報
刊行物4:特開平4-326254号公報

2.本願発明
本願の請求項1から請求項6までに係る各発明は、本願明細書および図面(平成12年1月13日付けおよび平成14年7月26日付けの手続補正書により補正された明細書および図面)の記載からみて、その特許請求項の範囲の請求項1から請求項6までに記載した事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、本願発明ともいう)は次のとおりのものである。
記(請求項1)
フレームを表す伝送される信号のビット速度を制御する方法であって、
あるブロックに対するビット予算を設定するステップからなり、前記ブロックは前記フレームの少なくとも一部分を表すものであり、前記方法はさらに、
前記ブロックをm個の係数に変換するステップと、
前記m個の係数をある量子化ステップサイズにて量子化することで、m個の量子化された係数を生成するステップと、
前記m個の量子化された係数を圧縮することで、m個の量子化および圧縮された係数を生成するステップと、
前記m個の量子化および圧縮された係数の内のn個の係数を送信するステップとからなり、前記n個の係数が全体としてm-n個の用いられない係数より知覚上より重要であり、前記n個の量子化および圧縮された係数が全部で前記ビット予算より少ないビットを要求することを特徴とする方法。

3.当審の判断
(1)刊行物
原査定の拒絶理由に引用された刊行物2(特開平7-131788号公報)には、名称を「画像処理方法」とする発明について次のことが記載されている。
(ア)「図1に示すように、ラスターデータを入力画像データとして1フレーム格納して8×8画素でなるブロック毎に分割出力する・・画像バッファ4と、その画素ブロック毎にDCT(離散コサイン変換)・・を施す直交変換器5と、変換出力を予め設定され圧縮率を決定する量子化テーブルに従って変換出力を量子化した後、二次元の変換係数を直流成分から高周波成分へと一次元に並べるジグザグスキャンを行う・・量子化器6と、一次元量子化データをハフマンコード化する・・符号/復号器7と、符号化されたデータを格納する圧縮データバッファ8と、それらの作動を制御するコントローラ9とで構成してある。」(段落0009)
(イ)「コントローラ9は、符号/復号器7により一次元量子化データを全て符号化処理して圧縮データバッファ8に格納し、予め設定された一ブロックの限界伝送容量に基づいて、実際の伝送容量が設定された限界伝送容量に達すると、該当ブロックの伝送処理を終了するように構成してもよい。この場合、圧縮データバッファ8は、格納された一ブロックの符号化データが限界伝送容量に達するか或いは限界伝送容量以内で符号化データが終了すると、符号化データの最後に”EOB”(End of Block)というコードを付加して画像記録装置3に伝送することになる。」(段落0012)
(ウ)「画像を複数のブロックに分割し、分割されたブロック毎に直交変換して、その変換係数を符号化する際に、一ブロックの限界符号化容量を設定して、実際の符号化容量が設定された限界符号化容量に達すると、該当ブロックのその後の符号化処理を終了して、次のブロックの処理を行うように処理を進めるのである。このとき、符号化処理にあたっては、変換係数うち、直流成分や低周波数成分から次第に高周波成分へと処理を進めることになるので、実際の符号化容量が設定された限界符号化容量に達して欠落するデータは高周波成分に限られることになり、変換係数の全てを符号化した場合と比べて、再生画像の劣化はほとんど認識できない程度ですむ。」(段落0005)
(エ)「画像を複数のブロックに分割し、分割されたブロック毎に直交変換して、その変換係数を符号化して伝送する際にも、一ブロックの限界伝送容量を設定して、実際の伝送容量が設定された限界伝送容量に達すると、該当ブロックのその後の伝送処理を終了して、次のブロックの処理を行うように処理を進めることにより上述と同様、変換係数の全ての符号化データを伝送した場合と比べて、再生画像の劣化はほとんど認識できない程度ですむ。」(段落0006)
(2)対比
本願発明と刊行物2記載の発明とを対比すると次のことが認められる。
(a)刊行物2記載の発明は、各ブロックの実際の伝送容量を限界伝送容量以下に制限するものであるところ(記載イ)、伝送容量が所定単位のデータビット量を意味することは通常であるから、伝送画像のビット速度を制限するように制御するものである。本願発明にいう「フレームを表す伝送される信号のビット速度を制御する方法であって、」と異なるところはない。
(b)刊行物2記載の発明では、一ブロックの限界伝送容量を予め設定することから(記載イ)、本願発明にいう「あるブロックに対するビット予算を設定するステップからなり、」に相当する構成を備える。
(c)刊行物2記載の発明では、1フレーム分の入力画像データをブロック毎に分割し、分割したブロック毎にDCTを施した後量子化して二次元の変換係数を得、この二次元の変換係数を直流成分から高周波成分へと一次元に並べた一次元量子化データを全てハフマンコード化して圧縮データバッファ8に格納する(記載ア、イ)。
圧縮データバッファ8には、各変換係数につき量子化およびハフマンコード化された圧縮データが格納されることになるから、変換係数の個数をm個とすると、本願発明にいう「前記ブロックは前記フレームの少なくとも一部分を表すものであり、前記方法はさらに、前記ブロックをm個の係数に変換するステップと、前記m個の係数をある量子化ステップサイズにて量子化することで、m個の量子化された係数を生成するステップと、前記m個の量子化された係数を圧縮することで、m個の量子化および圧縮された係数を生成するステップと、」に相当する構成を備える。
(d)刊行物2記載の発明では、圧縮データバッファ8に格納された圧縮データ(m個)の内、実際の伝送容量が限界伝送容量に達するまで画像記録装置3に伝送し、達した後は伝送処理を終了する(記載イ)。伝送される圧縮データの個数をn個とすると、本願発明にいう「前記m個の量子化および圧縮された係数の内のn個の係数を送信するステップとからなり、」に相当する構成を備えている。
(e)刊行物2記載の発明では、二次元の変換係数(m個)を直流成分や低周波数成分から次第に高周波成分へと一次元に並べるジグザグスキャンを行いながら符号化処理が進められ、伝送処理もこの一次元の並び(直流成分や低周波数成分から高周波成分への並び)に従って進められる。伝送される圧縮データ(n個)は直流成分や低周波数成分のデータであり、伝送されない圧縮データ(欠落するデータ)は高周波成分に限られる(記載ア、ウ、エ)。
ところで、この点につき刊行物2は、変換係数の全てを符号化した場合と比べて、再生画像の劣化はほとんど認識できない程度ですむようにできるともしており、直流成分や低周波数成分の方が高周波成分と比べて知覚上より重要であるとの認識に立っていることが認められる(記載ウ、エ)。
また、本願明細書の「本発明のこの実施例においては、離散コサイン変換して得られる低周波係数の方が高周波係数と比べて知覚上より重要であるとみなされる一つの良く知られたモデルが用いられる。」(段落0029)との記載によれば、本願発明にいう「知覚上より重要であり」には、低周波係数の方が高周波係数と比べて知覚上より重要であるとする場合(上記実施例)も含まれることが認められる。
そうすると、刊行物2記載の発明は、本願発明にいう「前記n個の係数が全体としてm-n個の用いられない係数より知覚上より重要であり、」に相当する構成を備えている。
(f)本願発明における「全部でビット予算より少ないビット」とは、本願明細書の「全体としてビット予算を超えないビット数を用いる」(段落0034)、「例えば、ビット予算が45ビットである場合、表7内の最初の12個の量子化および圧縮された係数は、41個のビットを使用するが、これらは、・・・ビット予算を超えない・・残りの4個の・・係数は破棄される。」(段落0035)との記載によれば、ビット予算を超えない最大のビット数であることが認められる。
刊行物2の伝送処理における伝送される圧縮データの個数(n個)は、「限界伝送容量に達すると・・伝送処理を終了する」ときまでの係数の個数であるところ、符号化処理に関する「限界符号化容量に達すると、その後に送られる一次元量子化データを無視し、該当ブロックの符号化処理を終了して、」(段落0010)および図2との記載を参照すると、実際の伝送容量が限界伝送容量を超える最初の係数までの個数であることが認められる。すなわち、本願発明の用語を借りれば、ビット予算を超える最小のビット数であることが認められる。
そうすると、本願発明と刊行物2記載の発明とは、伝送される係数の個数(n個)について、「全部でビット予算に最も近いビットを要求する」点において共通することが認められる。もっとも、「ビット予算に最も近いビット」として、本願発明が「ビット予算より少ないビット」(ビット予算を超えない最大のビット)であるのに対して、刊行物2では「ビット予算を超える最小のビット」であることは、前記のとおりである。
なお、刊行物2において、「限界伝送容量以内で符号化データが終了する」場合には本願発明と一致することは、明らかである。
(3)一致点・相違点
本願発明と刊行物2記載の発明との一致点・相違点は次のとおりである。
記(一致点)
フレームを表す伝送される信号のビット速度を制御する方法であって、
あるブロックに対するビット予算を設定するステップからなり、前記ブロックは前記フレームの少なくとも一部分を表すものであり、前記方法はさらに、
前記ブロックをm個の係数に変換するステップと、
前記m個の係数をある量子化ステップサイズにて量子化することで、m個の量子化された係数を生成するステップと、
前記m個の量子化された係数を圧縮することで、m個の量子化および圧縮された係数を生成するステップと、
前記m個の量子化および圧縮された係数の内のn個の係数を送信するステップとからなり、前記n個の係数が全体としてm-n個の用いられない係数より知覚上より重要であり、前記n個の量子化および圧縮された係数が全部で前記ビット予算に最も近いビットを要求する方法。
記(相違点)
ビット予算に最も近いビットとして、本願発明では「ビット予算より少ないビット」としているのに対して、刊行物2では「ビット予算を超える最小のビット」としている点
(4)相違点の検討等
変数値が設定値を超えるか否かを判定する処理において、設定値の前後にある程度の範囲幅を設けて判定をすることは一般的である。また、本願明細書をみても、単に「ビット予算を超えない」との記載があるだけで(段落0034、段落0035)、「ビット予算より少ない」の技術的意義につき格別考慮すべき記載もない。
上記相違点に係る構成は、上記一般的事項に照らして当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明の効果も刊行物2の記載から予測される範囲内のものである。
(5)まとめ
以上、本願発明は、刊行物2に記載された発明および周知技術(一般的事項)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上、請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2から請求項6までに係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-09 
審決日 2005-03-23 
出願番号 特願平10-309314
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古川 哲也  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 橋爪 正樹
原 光明
発明の名称 知覚的圧縮および強固なビット速度制御システム  
代理人 臼井 伸一  
代理人 産形 和央  
代理人 藤野 育男  
代理人 朝日 伸光  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 高梨 憲通  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 岡部 正夫  
代理人 本宮 照久  
代理人 越智 隆夫  

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