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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1120681
審判番号 不服2004-17090  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-09-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-17 
確定日 2005-08-03 
事件の表示 特願2000-54712「排水溝付法面保護ブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月4日出願公開、特開2001-241044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月29日の出願であって、平成16年7月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、請求項1は、次のとおり補正された。
「法面の傾斜下方に配設される排水溝ブロックと、この法面に沿設状態に設置して法面を被覆する壁面ブロックとから成り、この壁面ブロックの下端部を前記排水溝ブロックの側端部に連結せしめる連結構造を排水溝ブロックの排水溝に沿った上部側端部の全縁部と、前記壁面ブロックの下端部の全縁部とに設けて、壁面ブロックの傾斜下方に排水溝ブロックが連結配設されるように構成すると共に、この連結構造は、排水溝ブロックに対して壁面ブロックの連結角度を調整変更可能な構造とし、この排水溝ブロックの側端部の全縁部若しくは前記壁面ブロックの下端部の全縁部に凸湾曲面状の連結用凸面部を設けると共に、この連結用凸面部に当接係止し得る凹湾曲面状の連結用凹面部を前記壁面ブロックの下端部の全縁部若しくは前記排水溝ブロックの側端部の全縁部に設け、この連結用凸面部と連結用凹面部とを凹凸係止することで排水溝ブロックの側端部に壁面ブロックの下端部を連結し得るように構成すると共に、この凹凸係止部の当接面を滑動させることでこの凹凸係止部を支点にして排水溝ブロックに対する壁面ブロックの連結角度を法面の傾斜角度に応じて調整変更可能に設けて前記連結構造を構成し、側端部の全縁部に前記連結用凸面部若しくは前記連結用凹面部を有する前記排水溝ブロックを一体成形すると共に、下端部の全縁部に前記連結用凹面部若しくは前記連結用凸面部を有する前記壁面ブロックを一体成形したことを特徴とする排水溝付法面保護ブロック。」
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭54-118821号(実開昭56-36731号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
「本考案は主として農業用水溝に使用される法面ブロックに関するものである。」(2頁1〜2行)
「第1図の実施例について詳説すると、1は平面方形のコンクリート製のブロックで、その一方の隣接する二辺1a、1bの辺側面の中央には、先端に向つてテーパー状となる断面台形状の係合突片2a、2bが辺1a、1bの幅全体にそれぞれ突設されている。……他方の隣接する二辺1c、1dの辺側面には、平面L字状をなす突縁4c、4dが突設され、その突縁4c、4dの中央に上記係合突片2a、2bが嵌合固着される係合凹部3c、3dが穿設されている。……前記において、係合突片2a、2b及び係合凹部3c、3dは夫々ブロック1の対応する二辺に形成してもよい。」(3頁6行〜4頁13行)
「本考案の法面ブロックの施工方法を第3図、第4図に基づいて説明すると、農業用水溝の溝部を構成するU字形骨材7に支持された倒L字状の壁板7’の隅角端に、方形ブロック1のいずれか一方の係合凹部3dを挿嵌する。……ついで次の方形ブロック1の係合凹部3dを施工済みの方形ブロック1の係合突片2aに嵌合する……というように、順次施工して堤防を構築していくのである。」(5頁11行〜6頁8行)
そして、明記されてはいないが、「溝部を構成するU字形骨材7に支持された倒L字状の壁板7’の隅角端に、方形ブロック1のいずれか一方の係合凹部3dを挿嵌する」いわゆる凹凸係止である連結構造は、凹凸係止部を支点にして、倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材に対して、方形ブロックの連結角度を法面の傾斜角度に応じて調整変更可能な構造としていることが明らかであるから、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「法面の傾斜下方に配設される農業用水溝の溝部を構成し、倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材と、この法面に沿設状態に設置して法面を被覆する方形ブロックとから成り、この方形ブロックの下端辺幅全体に一体成形した係合凹部を、前記倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材の壁板の溝部に沿った上部隅角端の全縁部に、凹凸係止して連結せしめように構成すると共に、この連結構造は、凹凸係止部を支点にして、倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材に対して、方形ブロックの連結角度を法面の傾斜角度に応じて調整変更可能な構造としている、溝部付法面ブロック。」

同じく、特開平10-60801号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】複数個を連設して境界段部、歩道面、法面等を構成する造成ブロックの連設構造であって、互いに隣設された一方の造成ブロックの接続端面を断面円弧状に突出する凸曲面とし、他方の造成ブロックの接続端面を前記凸曲面と略同一径で断面円弧状に没入する凹曲面としたことを特徴とする造成ブロックの連設構造。」
「【0008】……この造成ブロック10は、図2に示すように、他の造成ブロック10と、凸曲面20側の接続端面と凹曲面30側の接続端面とが対応するようにして連設されるものである。このように造成ブロック10を連設することにより、凸曲面20側の接続端面と凹曲面30側の接続端面とが高さ方向に係合し合い、高さ方向のズレやガタが生じ難くなる。又、造成ブロック10を連設するに際して高さ方向に屈曲させても、造成ブロック10の接続部分に隙間が生じることなく、美感に優れ、しかも、この部分に於いてもズレやガタが生じない。」

(3)対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「(農業用水溝の溝部を構成し)倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材」、「方形ブロック」、「方形ブロックの下端辺」、「溝部に沿った上部隅角端」、及び「溝部付法面ブロック」は、それぞれ、補正発明の「排水溝ブロック」、「壁面ブロック」、「壁面ブロックの下端部」、「排水溝に沿った上部側端部」、及び「排水溝付法面保護ブロック」に相当し、引用文献1記載の発明の「係合凹部」、「隅角端」と補正発明の「凹湾曲面状の連結用凹面部」、「凸湾曲面状の連結用凸面部」とは、それぞれ、「凹部」、「凸部」で共通しているから、両者は、
「法面の傾斜下方に配設される排水溝ブロックと、この法面に沿設状態に設置して法面を被覆する壁面ブロックとから成り、この壁面ブロックの下端部を前記排水溝ブロックの側端部に連結せしめる連結構造を排水溝ブロックの排水溝に沿った上部側端部の全縁部と、前記壁面ブロックの下端部の全縁部とに設けて、壁面ブロックの傾斜下方に排水溝ブロックが連結配設されるように構成すると共に、この連結構造は、排水溝ブロックに対して壁面ブロックの連結角度を調整変更可能な構造とし、この排水溝ブロックの側端部の全縁部に凸部を設けると共に、この凸部に係止し得る凹部を前記壁面ブロックの下端部の全縁部に設け、この凸部と凹部とを凹凸係止することで排水溝ブロックの側端部に壁面ブロックの下端部を連結し得るように構成すると共に、この凹凸係止部を支点にして排水溝ブロックに対する壁面ブロックの連結角度を法面の傾斜角度に応じて調整変更可能に設けて前記連結構造を構成し、下端部の全縁部に前記凹部を有する前記壁面ブロックを一体成形する、排水溝付法面保護ブロック。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:排水溝ブロックが、補正発明では、凸部である連結用凸面部を有する一体成形物であるのに対して、引用文献1記載の発明では、凸部である隅角端を有する倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材で一体成形物ではない点。
相違点2:凹凸係止が、補正発明では、凸湾曲面状の連結用凸面部と凹湾曲面状の連結用凹面部とによる当接係止で、凹凸係止部の当接面を滑動させることでこの凹凸係止部を支点にして連結角度を調整変更可能にする連結構造となっているのに対して、引用文献1記載の発明では、凹凸係止部を支点にして連結角度を調整変更可能にする連結構造ではあるが、そのようにはなっていない点。

(4)判断
相違点1について検討すると、引用文献1記載の発明では、凸部である隅角端を有する倒L字状の壁板とこれを支持するU字形骨材で排水溝ブロックを構成しているが、これを一体成形物とすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。
次に、相違点2について検討するため、引用文献2をみると、引用文献2には、「法面等を構成する造成ブロックの連設構造であって、互いに隣設された一方の造成ブロックの接続端面を断面円弧状に突出する凸曲面とし、他方の造成ブロックの接続端面を前記凸曲面と略同一径で断面円弧状に没入する凹曲面とした・・・造成ブロック」が記載されており、該法面を構成する造成ブロックの連設構造を、引用文献1記載の発明の法面ブロックの凹凸係止による連結構造に採用して相違点2における補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
そして、補正発明の作用効果は、引用文献1,2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、補正発明は、引用文献1,2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1,2に係る発明は、平成15年12月15日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】法面の傾斜下方に配設される排水溝ブロックと、この法面に沿設状態に設置して法面を被覆する壁面ブロックとから成り、この壁面ブロックの下端部を前記排水溝ブロックの側端部に連結せしめる連結構造を排水溝ブロックの排水溝に沿った上部側端部の全縁部と、前記壁面ブロックの下端部の全縁部とに設けて、壁面ブロックの傾斜下方に排水溝ブロックが連結配設されるように構成すると共に、この連結構造は、排水溝ブロックに対して壁面ブロックの連結角度を調整変更可能な構造とし、この排水溝ブロックの側端部若しくは前記壁面ブロックの下端部に凸湾曲面状の連結用凸面部を設けると共に、この連結用凸面部に当接係止し得る凹湾曲面状の連結用凹面部を前記壁面ブロックの下端部若しくは前記排水溝ブロックの側端部に設け、この連結用凸面部と連結用凹面部とを凹凸係止することで排水溝ブロックの側端部に壁面ブロックの下端部を連結し得るように構成すると共に、この凹凸係止部を支点にして排水溝ブロックに対する壁面ブロックの連結角度を調整変更可能に設けて前記連結構造を構成し、側端部に前記連結用凸面部若しくは前記連結用凹面部を有する前記排水溝ブロックを一体成形すると共に、下端部に前記連結用凹面部若しくは前記連結用凸面部を有する前記壁面ブロックを一体成形したことを特徴とする排水溝付法面保護ブロック。
【請求項2】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明を特定するために必要な事項である限定事項を削除したものであって、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献1,2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1,2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1,2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-08 
結審通知日 2005-06-09 
審決日 2005-06-21 
出願番号 特願2000-54712(P2000-54712)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02D)
P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志摩 美裕貴河本 明彦  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 南 澤 弘 明
高 橋 祐 介
発明の名称 排水溝付法面保護ブロック  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 吉井 剛  

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