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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1120763
審判番号 不服2001-13201  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-26 
確定日 2005-08-04 
事件の表示 平成 6年特許願第240383号「遊技機の枠体」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月23日出願公開、特開平 8-103547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成6年10月4日に出願したものであって、平成13年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年7月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月22日付けで手続補正がなされたものである。


【2】平成13年8月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成13年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
〔1〕本件補正後の発明
本件補正の内容は、【請求項1】を次のとおりに補正することを含むものである。
「【請求項1】軸側縦部材とこれに対向する開閉側縦部材とを連結する上辺部材および下辺部材を有する略長方形の外枠と、直接または間接に遊技盤を保持する遊技盤保持枠と、前記外枠および遊技盤保持枠の一方に設けられた軸部材と他方に設けられた軸受部材とによって構成され前記遊技盤保持枠を前記外枠に対して開閉揺動可能に連結するヒンジ機構とを備える遊技機の枠体において、
前記ヒンジ機構を、その軸芯と前記軸側縦部材との間に所定の距離を保って配置し、
前記軸部材の径方向に沿う板状で前記遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に前記軸芯よりも前記軸側縦部材側に位置して前面が前記軸芯と前記軸側縦部材の前縁とを結ぶ直線に重なる反転部を前記遊技盤保持枠に設け、
前記遊技盤保持部材の開閉に当たって前記反転部が進入ないし通過する通過空間を、前記軸芯を中心として該軸芯と前記軸側縦部材の前縁との距離を半径とする円弧を限界とする横断面が扇形の空間として前記軸芯と前記軸側縦材との間に確保し、
前記ヒンジ機構として、
前記下辺部材に向かって突出して前記上辺部材に設置された上軸部材及び該上軸部材に整合して前記遊技盤保持枠に設けられた上軸受部からなる上ヒンジと、
前記下辺部材に設けられた下軸受部及び前記遊技盤保持枠から下方に突出する下降位置と該突出を解消する上昇位置との間で往復動可能かつ前記下降位置にあるときには前記下軸受部と係合可能で前記遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に遊技機の背面側に露出する状態で前記遊技板保持枠の背面側に設置された下軸部材からなる下ヒンジとを設けた
ことを特徴とする遊技機の枠体。」(以下、「補正発明」という。)
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

〔2〕引用刊行物とそれの記載事項
1.原審における平成13年3月19日付けの拒絶理由通知で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平2-125270号(実開平4-83289号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、パチンコ機における前枠の取付構造に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「(1)金属製の上下の横枠と左右の縦枠を衝き合う4隅部においてそれぞれ連結金具を介して接合し外枠を形成すると共に、該外枠の一側部における上下の連結金具には向い合せに枢着部を備えて上部枢着部には下向きの枢着ピンを、下部枢着部には軸受孔を形成し、他方額縁形前枠の一側部の上端には前記枢着ピンを嵌合する軸受孔を設けると共に、下部には操作杆によって上下に摺動操作され常には軸下端部を下方に突出させて前記下部枢着部の軸受孔に係入し軸承される枢着軸杆を備えて上記枢着ピンと該枢着軸杆を支点に回動自由に蝶着されるようにしたパチンコ機における前枠の取付構造。・・・(3)実用新案登録請求の範囲第1項記載において、枢着軸杆にはバネを縮設し常時下方に付勢するようにしたパチンコ機における前枠の取付構造。」(実用新案登録請求の範囲)
(2)「[従来の技術及びその問題点]知られる様に、パチンコ機における前枠は遊技板を組付けると共にその背後に機構部品類を装備しており、例えば、遊技板に支障を生じたり、或は機構部品に故障を生じた場合は修理のため一側縁を支点に解放し、故障部所を容易に点検修理が出来るようにしてある。従来そのため前枠は一側縁の上下両端とこれを支持する外枠の上下両端を一組の蝶番によって連結しているが、この前枠は外枠に組付ける場合、或は前枠に備える部品の交換の際等に作業を容易にするため上記蝶番を分割し着脱できるようにしてあるのが普通である。従来の上記蝶番は、前枠の上部に設けられる蝶着片に下向きの軸を、これと対をなす外枠の上部の蝶着片には軸受孔を設け、また前枠の下部の蝶着片には軸受孔を、そしてこれに組合う外枠の下部の蝶着片には上向きの軸を設けて軸と軸受孔の嵌め合せを上下2点で行うことによって連結組合せができるようにしてあるが、この構造にかゝる蝶番は組み合せるとき、そして外すとき重量体となっている前枠を持ち上げないと上記軸の嵌合を外したり、また嵌め合せたりすることができないので極めて困難な作業となっている。」(明細書2頁15行〜3頁19行)
(3)「[作用]本考案は上述の構成から外枠に対して前枠を組付けるときには上部の枢着ピンに軸受孔を下から臨ませて嵌合させると共に、前枠の下部を押付けて外枠の枢着部に設ける軸受孔に枢着軸杆を臨ませ、その後この軸杆を押し上げて嵌合させれば組立が行え、上記枢着ピン及び枢着軸杆を支点に回動自由に枢着支持することができる一方、前枠の取外しに際しては枢着軸杆を引き上げて嵌合を外し、次に前枠の下部を手前に引き出せば上記枢着状態を簡単に解除することができる。」(明細書5頁9〜20行)
(4)「[実施例]・・・外枠1は帯板状金属板をチャンネル状断面形に形成した左右の縦枠2,3と、同じくチャンネル形断面形の上横枠4と、それに底板部5aと前面板部5bを直角状にして前面板部の上縁から上板部5cを直角に延設し断面略L字形をなすようにした下横枠5と、を主たる要素として矩形に構成し、これらの枠要素を4個の連結金具6,7,8,9によって繋ぎ矩形の枠体に組立てある。外枠の左上隅部と左下隅部に配置される連結金具6,7は左縦枠2と上下の横枠4,5とを連結すると同時に、後述する前枠を枢着支持する枢着手段を一体に有するもので、一方の連結金具6は金属板片をL字形に屈曲させて枠の接続片6a,6bとすると共に、上横枠に添わさる片6aには前方に突き出す枢着片11を設け、この片の下面に下に向けて枢着ピン12を設けている。この連結金具6は接続片6a,6bを上横枠4と左縦枠2の各端部から突き入れて添わせたのちスポット溶接によって固着し、両枠を直角に連結すると共に、前記枢着片11を上横枠4の前方に突き出す(第2図参照)。他方、連結金具7は断面門形に形成して左右の脚片7a,7bを下横枠5の底板部5aの上に載置し溶接すると共に、上面部7cに左縦枠2の下端を当接して同じく溶接して両枠を一体に連結するようにしてある。そして、この連結金具7は上記上面部7cの前縁から前記連結金具6の枢着片11に対応する枢着片13を延設し、これの前記枢着ピン12の垂線上に位置するところに軸受孔14を穿ち、その一方この枢着片の上面にはガイド板15を添わせる。」(明細書6頁4行〜7頁20行)
(5)「図中、17は上記外枠1に開閉自由に枢着支持される前枠で、18は軸受金具であり、19は枢着軸杆である。前枠17は中央部に窓を開設する額縁形をなし、この窓を背後から塞ぐように遊技板を収める浅い筺形をなす機構枠体20が背面に一体に備えてある。前記軸受金具18と枢着軸19はこの前枠17を前記枢着ピン12と軸受孔14に各枢着するためのものであり、両者は前枠17の左側縁の背面の上下に設けられる。ここに示した軸受金具18は前枠の窓に嵌めるガラス金枠21を枢着する軸受を兼用するものになっており、断面をコ字形に形成して前方に向け水平に衝き出す上下の片18a,18bにそれぞれ軸受孔22,23を開設し、上方の軸受孔22に前記枢着ピン12を嵌合させ、下の軸受孔23にガラス金枠21の枢着軸24を嵌合してこれらを各回動自由に枢着するようにしてある。一方、前記枢着軸杆19は前枠の下端部に上下間隔をおいて設ける軸受片25,26に縦に貫通するように設け、常には座金27と軸受片25との間に縮設するバネ28によって軸下端を軸受片26の下面に突き出すようにしてある。この枢着軸杆19は上端部に操作杆29を有し、この操作杆の引き上げによってバネ28を圧縮しながら上昇させ軸下端を引き上げられるようにしてある。ところで、前枠17は機構枠体20に遊技板を収めると共に、この機構枠体の背面には諸種の機構部品類が装備され、相当の重量体となるが、この前枠17は前記本考案外枠に対してはその前面側から臨ませて、先ず軸受金具18を枢着片11の下から当接し、この枢着片から垂下する枢着ピン12を軸受金具18の軸受孔22に嵌入させ、次に前枠の下部を外枠に寄せて枢着軸杆19を枢着片13に設ける前記軸受孔14に嵌入させることによって組付けが行なはれる。このとき、上記枢着軸杆19は操作杆29によって引き上げ、その下端部を上昇させた状態に保ちながら外枠の枢着片13側に寄せ、軸受孔14に一致したところで上記引き上げを解除して下端部を突入させ軸着することになる。」(明細書9頁7行〜11頁8行)
(6)そして、連結金具6から延設した枢着片11に設けられた枢着ピン12と、連結金具7から延設した枢着片13に前記枢着ピン12の垂線上の位置に穿って設けられ前枠17の左側縁の背面下部に設けた枢着軸杆19が係合する軸受孔14とが、左縦枠2の前方から所定の距離離隔した位置にあることは自明の事項である。
これら(1)〜(6)の記載事項等を含む刊行物1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「左縦枠2およびこれに対向する右縦枠3と上横枠4および下横枠5とを4個の連結金具6,7,8,9によって連結して矩形に形成した外枠1と、直接または間接に遊技板を保持する前枠17と、前記外枠1および前枠17の一方に設けられた枢着ピン12或いは枢着軸杆19と他方に設けられた軸受孔22を有する軸受金具18或いは軸受孔14を有する連結金具7とによって構成され前記前枠17を前記外枠1に対して開閉揺動可能に連結するヒンジ機構とを備えるパチンコ機の枠体において、前記ヒンジ機構を、その枢着ピン12を連結金具6から延設した枢着片11に左縦枠2の前方から所定の距離離隔した位置に配置するとともに、その枢着軸杆19を前枠17の左側縁の背面下部において連結金具7から延設した枢着片13に前記枢着ピン12の垂線上の位置であって左縦枠2の前方から所定の距離離隔した位置に設けた軸受孔14に嵌入可能な位置に配置し、前記ヒンジ機構として、前記下横枠5に向かって突出して前記上横枠4に設置された枢着ピン12及び該枢着ピン12に整合して前記前枠17に設けられた軸受孔22からなる上ヒンジと、前記下横枠5に設けられた軸受孔14及び前記前枠17から下方に突出する下降位置と該突出を解消する上昇位置との間で往復動可能かつ前記下降位置にあるときには前記軸受孔14と係合可能で前記前枠17を閉鎖位置とした際に前記前枠17の背面側に設置された枢着軸杆19からなる下ヒンジとを設けたパチンコ機の枠体。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.同じく、特開平1-285283号公報(以下、「刊行物2」という。)には、2頁右上欄2〜13行、2頁左下欄16〜18行の記載及び第1,3図の記載を含む刊行物2全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、弾球遊技機に関して、以下の発明が記載されている。
外枠2に中央に開口を有する額縁状に形成された前面枠3を開閉自在に設け、前面枠3の開口に沿ってガラス扉保持枠4を周設し、ガラス扉保持枠4に前面構成板23を有するガラス扉枠5と打球供給皿11を有する前面板6とが一側を軸支して開閉自在に設けてなり、ガラス扉枠5をガラス扉保持枠4に支持した回転支軸17を介して一側を軸支してなる弾球遊技機において、回転支軸17をガラス扉枠5の背面に近接配置するとともに、該回転支軸17を含むヒンジ機構を弾球遊技機の前面側即ち遊技客側に突出させないようにした弾球遊技機。

3.同じく、実願昭61-71044号(実開昭62-183884号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、実用新案登録請求の範囲、明細書3頁16行〜4頁15行の記載及び第1〜5図の記載を含む刊行物3全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、パチンコ機に関して、以下の発明が記載されている。
木枠Kに外枠1を取付固定し、金枠であるガラス扉枠2をその一側に巻着して備えた上下方向の一対のピンPを介して外枠1に軸支して開閉自在に設けてなるパチンコ機において、ピンPをガラス扉枠2の背面に近接配置するとともに、該ピンPを含むヒンジ機構をパチンコ機の前面側即ち遊技客側に突出させないようにしたパチンコ機。

4.同じく、実願平3-33699号(実開平6-54887号)のCD-ROM(以下、「刊行物4」という。)には、実用新案登録請求の範囲、段落0005,0006,0009,0010の記載及び図2,4の記載を含む刊行物4全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、ドアの取付け構造に関して、以下の発明が記載されている。
枢軸7の径方向に沿う板状でドア6を閉鎖位置とした際に枢軸7の軸芯よりも縦枠5側に位置して前面が縦枠5の前縁とほぼ一致するようになした反転部をドア6に設け、ドア6の開閉に当たって反転部が進入ないし通過する通過空間を、枢軸7の軸芯を中心として該軸芯と縦枠5の前縁との距離を半径とする円弧を限界とする横断面が扇形の空間として該軸芯と縦枠5との間に確保するようにしたドアの取付け構造。

〔3〕対比・判断
1.補正発明と刊行物1記載の発明との対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「左縦枠2」,「右縦枠3」,「上横枠4」,「下横枠5」が補正発明の「軸側縦部材」(「部材」を「材」という場合あり),「開閉側縦部材」,「上辺部材」,「下辺部材」にそれぞれ相当するので、刊行物1記載の発明の「左縦枠2およびこれに対向する右縦枠3と上横枠4および下横枠5とを4個の連結金具6,7,8,9によって連結して矩形に形成した外枠1」が補正発明の「軸側縦部材とこれに対向する開閉側縦部材とを連結する上辺部材および下辺部材を有する略長方形の外枠」に相当し、また、刊行物1記載の発明の「遊技板」,「前枠17」,「枢着ピン12」,「枢着軸杆19」,「軸受孔22」,「軸受孔14」,「軸受孔22を有する軸受金具18或いは軸受孔14を有する連結金具7」,「パチンコ機」が補正発明の「遊技盤」,「遊技盤保持枠」(「盤」を「板」という場合、「枠」を「部材」という場合あり),「上軸部材」,「下軸部材」,「上軸受部」,「下軸受部」,「軸受部材」,「遊技機」にそれぞれ相当し、さらに、刊行物1記載の発明の「その枢着ピン12を連結金具6から延設した枢着片11に左縦枠2の前方から所定の距離離隔した位置に配置するとともに、その枢着軸杆19を前枠17の左側縁の背面下部において連結金具7から延設した枢着片13に前記枢着ピン12の垂線上の位置であって左縦枠2の前方から所定の距離離隔した位置に設けた軸受孔14に嵌入可能な位置に配置し」が補正発明の「(軸部材の)軸芯と軸側縦部材との間に所定の距離を保って配置し」に相当するから、両者は、
「軸側縦部材とこれに対向する開閉側縦部材とを連結する上辺部材および下辺部材を有する略長方形の外枠と、直接または間接に遊技盤を保持する遊技盤保持枠と、前記外枠および遊技盤保持枠の一方に設けられた軸部材と他方に設けられた軸受部材とによって構成され前記遊技盤保持枠を前記外枠に対して開閉揺動可能に連結するヒンジ機構とを備える遊技機の枠体において、前記ヒンジ機構を、その軸芯と前記軸側縦部材との間に所定の距離を保って配置し、前記ヒンジ機構として、前記下辺部材に向かって突出して前記上辺部材に設置された上軸部材及び該上軸部材に整合して前記遊技盤保持枠に設けられた上軸受部からなる上ヒンジと、前記下辺部材に設けられた下軸受部及び前記遊技盤保持枠から下方に突出する下降位置と該突出を解消する上昇位置との間で往復動可能かつ前記下降位置にあるときには前記下軸受部と係合可能で前記遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に前記遊技板保持枠の背面側に設置された下軸部材からなる下ヒンジとを設けた遊技機の枠体。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
補正発明が、軸部材の径方向に沿う板状で遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に軸芯よりも軸側縦部材側に位置して前面が軸芯と軸側縦部材の前縁とを結ぶ直線に重なる反転部を遊技盤保持枠に設け、遊技盤保持部材の開閉に当たって反転部が進入ないし通過する通過空間を、軸芯を中心として軸芯と軸側縦部材の前縁との距離を半径とする円弧を限界とする横断面が扇形の空間として軸芯と軸側縦材との間に確保しているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのようなものではない点。
<相違点2>
補正発明が、遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に遊技機の背面側に露出する状態で遊技板保持枠の背面側に設置された下軸部材からなる下ヒンジであるのに対して、刊行物1記載の発明は、前枠17(遊技板保持枠)の背面側に設置された枢着軸杆19(下軸部材)からなる下ヒンジが前枠17を閉鎖位置とした際にパチンコ機(遊技機)の背面側に露出する状態で設置されているのか否かが不明である点。

2.相違点についての検討
<相違点1について>
相違点1について検討するために刊行物2〜4をみると、刊行物2には、前面枠3(補正発明の「遊技盤保持枠」に相当する。以下同様。)に対するガラス扉枠5の枢着構造に関するものではあるが、ガラス扉枠5の背面に回転支軸17を近接配置するとともに、該回転支軸17を含むヒンジ機構を弾球遊技機(「遊技機」)の前面側即ち遊技客側に突出させないようにした弾球遊技機についての発明が記載され、また、刊行物3には、刊行物2記載の発明と同様、木枠K(補正発明の「遊技盤保持枠」に相当する。以下同様。)に対する金枠であるガラス扉枠2の枢着構造に関するものではあるが、ガラス扉枠2の背面にピンPを近接配置するとともに、該ピンPを含むヒンジ機構をパチンコ機(「遊技機」)の前面側即ち遊技客側に突出させないようにしたパチンコ機についての発明が記載され、ここで、刊行物2,3記載の発明が、それぞれ上記のような技術事項を具えることにより、何れも、弾球遊技機やパチンコ機の外観を損ねないことやガラス扉枠とその周囲の枠との間の間隔を小さくすること等の作用効果を奏するものであることは自明であり、さらに、刊行物4には、枢軸7(補正発明の「軸部材」に対応する。以下同様。)の径方向に沿う板状でドア6(「遊技盤保持枠」)を閉鎖位置とした際に枢軸7の軸芯よりも縦枠5(「軸側縦部材」)側に位置して前面が縦枠5の前縁とほぼ一致するようになした反転部をドア6に設け、ドア6の開閉に当たって反転部が進入ないし通過する通過空間を、枢軸7の軸芯を中心として該軸芯と縦枠5の前縁との距離を半径とする円弧を限界とする横断面が扇形の空間として該軸芯と縦枠5との間に確保するようにしたドアの取付け構造についての発明が記載されている。
而して、ヒンジ軸を扉の背面に近接配置することは、上記したように刊行物2,3に記載されており、また、反転部を有する扉等に設けたヒンジ軸の軸芯を扉等の前面側にできる限り近接した位置に配置するようにした扉等装置は、例えば、実願昭63-24084号(実開平1-129472号)のマイクロフィルム、実願昭51-78604号(実開昭52-168529号)のマイクロフィルム、実願昭48-38440号(実開昭50-1221号)のマイクロフィルム(第4図参照。)に示すように従来から周知の技術であり、そして、刊行物2〜4記載の発明の技術及び周知技術を刊行物1記載の発明に適用することについては、何れの発明或いは技術も軸による枢着手段を採用した開閉装置技術に関するものである以上、何ら阻害要因を認めることができず、且つ、当該技術に基づき相違点1として摘記した補正発明の構成を想起する点に格別の困難性は認められないから、補正発明における相違点1に係る構成は、刊行物1〜4記載の発明及び周知技術から当業者が容易に想到できたものである。
ところで、請求人は審判請求書8頁2〜10行において、「引用文献2、3の技術は板金に関する技術である。一方、本願発明の遊技盤保持枠はプラスチックまたは木製(合板製)とされるのが普通である。・・・ガラス枠のためのヒンジ構造を大重量の遊技盤保持枠のヒンジ構造に転用あるいは応用することは、当業者にとって容易ではなく『常識外れ』である。」と主張しているが、補正発明において、遊技盤保持枠をプラスチックまたは木製(合板製)とする旨の限定は一切なされていないから、このような請求人の主張は採用できない。
<相違点2について>
請求人は審判請求書7頁1〜10行において、刊行物1記載の発明に「前記遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に遊技機の背面側に露出する状態で前記遊技板保持枠の背面側に設置された下軸部材からなる下ヒンジ」との構成がない理由として、「引用文献1の第8図では枢着軸杆19(下軸部材)が遊技機の背面側に露出しているかのように記載されているが、これは第7図のVIII-VIII線による断面図であるためにそのように見えるだけであり、実際には第12頁の16〜19行に『着脱作業は前枠を解放して枢着軸杆を露出させなければならず』と記載されているとおり、前枠を解放しない限りは露出しない設置状態となっている。」と主張しているが、刊行物1記載の発明においては、少なくとも枢着軸杆19を着脱操作するための操作杆29が前枠17を閉鎖位置とした際にパチンコ機の背面側に露出する状態になっていることは自明であり、しかも、補正発明も、その実施例を示す図4,6において、下ヒンジを構成する「可動軸機構156」が、「つまみ部162」及び「コイルばね174」等一部を除く「下軸部材(軸ピン)158)」の「主軸部160」が「カバー168」により覆われており、かつ、補正発明における「つまみ部162」による着脱操作は刊行物1記載の発明と同様のものと思量されるから、相違点2として摘記した構成において補正発明と刊行物1記載の発明との間に実質的な差異はないというべきであり、上記のような請求人の主張は採用できない。
また、たとえ、差異があるとしても、ヒンジ軸を扉の背面側に露出して設けることは、例えば、実願昭58-8528号(実開昭59-116080号)のマイクロフィルム、実願昭58-100320号(実開昭60-8366号)のマイクロフィルム、実願昭63-77772号(実開平2-1382号)のマイクロフィルム等に示すようにヒンジの技術分野では従来から周知の技術であり、周知技術に基づき相違点2として摘記した補正発明の構成を想起する点に格別の困難性は認められないから、補正発明における相違点2に係る構成は、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に想到できたものである。
ところで、請求人は審判請求書6頁7〜10行において、「ヒンジ機構の構成要素である下軸部材が、遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に遊技機の背面側に露出する状態で遊技板保持枠の背面側に設置されているので、遊技盤保持枠を閉鎖位置にしたままで下軸部材を上昇位置に変位させて下軸受部との係合を解除できる。」とも主張しているが、遊技盤保持枠を閉鎖位置にしたままで下軸部材と下軸受部との係合を解除できる旨の記載は当初明細書中に一切なされておらず、しかも、補正発明が遊技盤保持枠の前面にヒンジ機構の軸芯を配置したものであるとすれば、遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に遊技機の背面側に露出する状態で遊技板保持枠の背面側に下軸部材を設置するという技術的意義が不明となることをも併せ考えると、このような請求人の主張も採用できない。

3.作用効果・判断
補正発明によって奏する効果も、刊行物1〜4記載の発明及び周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別なものがあるとは認められないから、補正発明は、刊行物1〜4記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項の規定において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


【3】本願発明について
〔1〕本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成13年8月22日付け手続補正が上記のとおり却下され、また、平成13年4月11日付け手続補正も既に却下されているので、平成12年6月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】軸側縦部材とこれに対向する開閉側縦部材とを連結する上辺部材および下辺部材を有する略長方形の外枠と、直接または間接に遊技盤を保持する遊技盤保持枠と、前記外枠および遊技盤保持枠の一方に設けられた軸部材と他方に設けられた軸受部材とによって構成され前記遊技盤保持枠を前記外枠に対して開閉揺動可能に連結するヒンジ機構とを備える遊技機の枠体において、
前記ヒンジ機構を、その軸芯と前記軸側縦部材との間に所定の距離を保って配置し、
前記軸部材の径方向に沿う板状で前記遊技盤保持枠を閉鎖位置とした際に前記軸芯よりも前記軸側縦部材側に位置する反転部を前記遊技盤保持枠に設け、
前記軸芯と前記軸側縦部材との間に該反転部に応じた通過空間を確保したことにより、
前記遊技盤保持部材の開閉に当たって前記反転部の前記通過空間への進入ないし通過を可能としたことを特徴とする遊技機の枠体。
【請求項2】【請求項3】(何れも、記載を省略する。)」(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)

〔2〕引用刊行物等とそれらに記載された事項
これに対し、原審における平成13年3月19日付けの拒絶理由通知で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された各引用刊行物に記載された事項は、上記【2】〔2〕に記載したとおりである。

〔3〕対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明において、「ヒンジ機構」に関する「下辺部材に向かって突出して上辺部材に設置された上軸部材と上軸部材に整合して遊技盤保持枠に設けられた上軸受部とからなる上ヒンジと、下辺部材に設けられた下軸受部と遊技盤保持枠から下方に突出する下降位置と突出を解消する上昇位置との間で往復動可能かつ下降位置にあるときには下軸受部と係合可能に遊技板保持枠の背面側に設置された下軸部材とからなる下ヒンジとを設けた」との事項、「反転部」に関する「前面が軸芯と軸側縦部材の前縁とを結ぶ直線に重なる」との事項、及び、「反転部に応じた通過空間」に関する「軸芯を中心として軸芯と軸側縦部材の前縁との距離を半径とする円弧を限界とする横断面が扇形の空間として」との事項をそれぞれ除外するものである。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、かつ、上記「ヒンジ機構」、「反転部」及び「反転部に応じた通過空間」のそれぞれに関して減縮した補正発明が上記【2】〔3〕に記載したとおり、刊行物1〜4記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるを得ないから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1〜4記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということになり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-31 
結審通知日 2005-06-07 
審決日 2005-06-20 
出願番号 特願平6-240383
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 辻野 安人
前田 建男
発明の名称 遊技機の枠体  
代理人 足立 勉  

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