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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1120765
審判番号 不服2001-7463  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-07 
確定日 2005-08-04 
事件の表示 平成10年特許願第209112号「計算機システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月 8日出願公開、特開2000- 40067〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年7月24日の出願であって、平成13年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月7日に審判請求がなされ、同年5月29日付けで手続補正がなされたものである。(なお、前記平成13年5月29日付けの手続補正は、同年7月4日付けで、方式に係る手続補正がなされたが、これは、出願の内容に関わるようなものではない。)

2.平成13年5月29日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成13年5月29日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「複数のプロセッサを有する計算機システムにおいて、環境条件の異常を検知したとき、オペレーティング・システムに縮退要求を通知する計算機システム管理装置と、計算機システム管理装置から通知される縮退要求に基づいて、複数のプロセッサのうち、電源を遮断することなく、該当するプロセッサの一部のみを休止状態にするオペレーティング・システムとを有することを特徴とする計算機システム。」

上記補正後の請求項1は、補正前の請求項1に対応したものであって、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「該当するプロセッサの一部のみを休止状態にする」を「電源を遮断することなく、該当するプロセッサの一部のみを休止状態にする」に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項)の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前である平成7年8月18日に頒布された刊行物である特開平7-219684号公報(以下「引用文献」という。)には、次の記載がある。

(ア)「【産業上の利用分野】本発明は並列計算機システムに関し、特に、障害部位と関連部位を特定する並行保守方式に関する。」
(第2頁右欄第20-22行)

(イ)「【0017】図2は、筐体内の構成ブロック図である。並列計算機システムは筐体A〜Nを具備し、各筐体1内には論理ユニット3、電源ユニット5、サーモスタット6、ファン7、電源制御部10、構成制御部11、障害制御部12を持つ。論理ユニット3は論理パッケージ4を4A〜4Iまで搭載している。論理パッケージ群2は4A〜4C、4D〜4F、4G〜4Iに分割される。電源ユニット5は5A〜5C、サーモスタット6は6A〜6C、ファン7は7A〜7Cを搭載している。電源制御部10はモデルスイッチ8、キャビネットスイッチ9、異常検出回路10A、電源制御回路10Bを持つ。構成制御部11は障害制御部インタフェース回路11A、電源制御部インタフェース回路11Bを持つ。障害制御部12はCPUインタフェース回路12A、障害検出回路12Bを持つ。ソフトウェア13は各論理パッケージ4A〜4I上で実際は動作しているが説明の都合上独立して存在させており、ソフトウェア13は障害制御部12とインタフェースを持つ。障害制御部12は構成制御部11と論理パッケージ4A〜4Iに接続する。構成制御部11は電源制御部10と接続する。電源制御部10は電源ユニット5A〜5C、サーモスタット6A〜6C、ファン7A〜7Cに接続する。また、論理パッケージ4A〜4Cは電源ユニット5A、サーモスタット6A、ファン7Aに、論理パッケージ4D〜4Fは電源ユニット5B、サーモスタット6B、ファン7Bに、論理パッケージ4G〜4Iは電源ユニット5C、サーモスタット6C、ファン7Cに関連付けて実装されている。」

(ウ)「【0023】第4にサーモスタットで温度異常を検出した時の動作を示す。例えば、サーモスタット6Aで温度異常が検出されると異常検出回路10Aで検出し、電源制御部10は構成制御部11を介して障害制御部12からソフトウェア13に通知する。ソフトウェア13に通知する情報は図3のNo.3-4の内容であり、本実施例では、筐体番号=1、サーモスタット番号=00とする。ソフトウェア13は、筐体番号1の構成情報読出し要求を障害制御部12に出す。障害制御部12は構成制御部11から図4のNo.4-3の内容を読出し、ソフトウェア13に通知する。ソフトウェア13は構成情報中のサーモスタット番号と温度異常を検出したサーモスタット番号とを比較する。本実施例では温度異常を検出したサーモスタット番号は00であるから、構成情報の論理パッケージ番号00〜02に対応し、論理パッケージ番号00〜02でやっていたジョブを他の論理パッケージに代替させる。その後、電源ユニット00に対してソフトウェア13は電源切断処理を行なう。具体的にはソフトウェア13は障害制御部12に電源切断命令を発行し、障害制御部12は構成制御部11を介して電源制御部10に通知し、電源制御回路10Bにて電源ユニット回路5A(電源ユニット番号00に対応)を電源切断する。」

上記(ウ)からすると、サーモスタットは、計算機システムの各筐体内に設けられているから、計算機システムの筐体、すなわち本体装置の温度異常を検出するものである。
上記(ウ)からすると、温度異常を検出したサーモスタット番号に対応する論理パッケージ、すなわち、複数の論理パッケージのうち、所定のサーモスタット番号に該当する、論理パッケージの一部のみを、電源を切断することにより休止状態としていると把握できる。

よって、上記(ア)乃至(ウ)からして、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

複数の論理パッケージを有する計算機システムにおいて、計算機システム本体装置の温度異常を検出したとき、ソフトウェアに温度異常を通知する障害制御部と、障害制御部から通知される温度異常に基いて、複数の論理パッケージのうち、電源を切断することにより、該当する論理パッケージの一部のみを休止状態とするソフトウェアとを有することを特徴とする計算機システム。

(3)対比
以下、本願補正発明と引用発明とを対比する。

上記(2)(ウ)のうち「ソフトウェア13は各論理パッケージ4A〜4I上で実際は動作しているが説明の都合上独立して存在させており、ソフトウェア13は障害制御部12とインタフェースを持つ。」からして、引用発明の「論理パッケージ」は、ソフトウェアを実行する機能を有している。よって、プログラムを実行する機能を有した手段、すなわち、プログラム実行手段である点で、引用発明の「論理パッケージ」と本願補正発明の「プロセッサ」は一致している。
本願補正発明における「環境条件の異常」とは、本願の請求項1を引用する請求項4の記載「該システムの本体装置の温度異常を検出したとき」及び明細書の段落【0034】の記載「図3において、図1と同一符号は同一または相当部分を示す。計算機システム1内の計算機システム管理装置2は、該計算機システム1の環境条件の異常、例えば、本体装置5の温度異常を本体装置5から通知される温度情報6-1〜6-nから検出した時、本体装置5のオペレーティング・システムに対して、最も発熱量の大きいプロセッサ5-mを休止状態にするように縮退要求7を発行する。」からすると、「計算機システム本体装置の温度異常」を含むものである。よって、引用発明の「計算機システム本体装置の温度異常」は、本願補正発明の「環境条件の異常」に対応している。なお、引用発明の「検出」は、本願補正発明の「検知」と同義である。
引用発明において、温度異常の通知は、論理パッケージの一部の休止状態、すなわち、縮退を要求するためになされているから、引用発明における「温度異常を通知する」ことは、本願補正発明の「縮退要求」に対応している。
引用発明において、「ソフトウェア」は、休止状態を制御する機能を有したプログラム、つまり休止状態制御プログラムである点で、本願補正発明の「オペレーティング・システム」と一致している。
また、引用発明の「障害制御部」は、本願補正発明の「計算機システム管理装置」に対応している。

よって、両者は、

複数のプログラム実行手段を有する計算機システムにおいて、環境条件の異常を検知したとき、休止状態制御プログラムに縮退要求を通知する計算機システム管理装置と、計算機システム管理装置から通知される縮退要求に基づいて、複数のプログラム実行手段のうち、該当するプログラム実行手段の一部のみを休止状態とする休止状態制御プログラムとを有することを特徴とする計算機システム。

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
プログラム実行手段が、本願補正発明では「プロセッサ」であるのに対し、引用発明では「論理パッケージ」である点。
[相違点2]
休止状態制御プログラムが、本願補正発明は「オペレーティング・システム」であるのに対し、引用発明ではどのような「ソフトウェア」であるのか具体的ではない点。
[相違点3]
プログラム実行手段を休止状態とする制御を、本願補正発明は、電源を遮断することなく行うのに対し、引用発明は、電源を切断することにより行う点。

(4)判断
以下、上記各相違点について検討する。

[相違点1について]
プログラムを「プロセッサ」により実行することは、コンピュータの技術分野における技術常識であるから、引用発明の「論理パッケージ」を「プロセッサ」に置換することは単なる設計変更にすぎない。
[相違点2について]
計算機内の種々の制御を「オペレーティング・システム」により行うことは、コンピュータの技術分野における周知技術であるから、引用発明の休止状態を制御する機能を有した「ソフトウェア」を「オペレーティング・システム」にすることに格別な困難性はない。
[相違点3について]
計算機システムにおいて、温度異常を検知したとき、電源を遮断することなく、プロセッサ、情報処理部、又は、中央処理装置といったプログラム実行手段を休止状態とすることは、例えば、特開平7-244535号公報(第3頁右欄第26-32行、第5頁左欄第10-30行)、特開平3-11409号公報(第3頁左下欄第16行-右下欄第4行)、特開平3-233731号公報(第2頁右上欄第10-右下欄第2行)に記載されているように周知技術にすぎないから、引用発明において、電源を切断することに替えて、電源を遮断することなく、プログラム実行手段を休止状態とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について、
(1)本願発明
平成13年5月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「複数のプロセッサを有する計算機システムにおいて、環境条件の異常を検知したとき、オペレーティング・システムに縮退要求を通知する計算機システム管理装置と、計算機システム管理装置から通知される縮退要求に基づいて、複数のプロセッサのうち、該当するプロセッサの一部のみを休止状態にするオペレーティング・システムとを有することを特徴とする計算機システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「該当するプロセッサの一部のみを休止状態にする」の限定事項である「電源を遮断することなく」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-31 
結審通知日 2005-06-07 
審決日 2005-06-20 
出願番号 特願平10-209112
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 浩石井 茂和  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 林 毅
堀江 義隆
発明の名称 計算機システム  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 高橋 省吾  
代理人 村上 加奈子  

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