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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1120766
審判番号 不服2002-9853  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-03 
確定日 2005-08-04 
事件の表示 平成 9年特許願第113727号「射影リソグラフィー光学系」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 90602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成9年5月1日(パリ条約による優先権主張1996年5月1日、米国)の出願であって、平成14年2月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月2日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年7月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年7月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「射影リソグラフィーにおいて用いる光学系であって、
リソグラフィーマスク(28)からの像が露出波長を用いて半導体ウェハー(30)上に射影され、
a)前記リソグラフィーマスク(28)と前記半導体ウェハー(30)の間に配置された少なくとも6個の反射表面(12〜26)を有し、
前記各反射表面は、非球面であり、
前記少なくとも6個の反射表面(12〜26)のうちの2個で一組の反射表面はそれぞれ、亜系を構成し、
前記各亜系は、凹反射表面及び凸反射表面を有し、
前記凹反射表面は、凸反射表面より大きいことを特徴とする光学系。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記少なくとも6個の反射表面(12〜26)は、第1亜系、第2亜系、及び第3亜系を構成し」を「前記少なくとも6個の反射表面(12〜26)のうちの2個で一組の反射表面はそれぞれ、亜系を構成し」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2)-1 引用例の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-103809号公報(以下、引用例1という。)の第1頁右欄第7行ないし同欄第10行には、
「本発明は、反射鏡光学系、特に半導体集積回路を製造する際に、フォトレジストを塗布したウエハにマスク(原板)のパターンを縮小投影露光するための反射縮小投影光学装置に関する。」
と記載され、
第2頁左上欄第5行ないし同欄第9行には、
「超LSI等の極微細パターンからなる半導体素子…の製造のためには…軟X線やX線を用いることが不可欠となる。」と記載され、
第2頁左下欄第2行ないし同頁右下欄第7行には、
「本発明による反射縮小光学装置は、第1図乃至第4図の概略構成図に示す如く、物体面上の物体Oのほぼ倍率1の虚像を形成する第1光学系S1と、該第1光学系による虚像から縮小実像を形成する第2光学系S2と、該第2光学系による実像からほぼ等倍の像を形成する第3光学系S3とを有する構成である。
第1光学系S1はほぼ同心円状に配置された第1反射面R1としての凹面反射面、第2反射面R2としての凸面反射面及び所定の光軸A1を有し、該第1光学系の物体面Oと像面I1とは同心中心C1をほぼ含み該第1光学系の光軸に垂直な面内又はこの面と光学的に等価な面内にほぼ位置している。第2光学系S2はC2を同心中心としてほぼ同心状に配置された第3反射面R3としての凸面反射面と第4反射面R4としての凹面反射面、そして第3反射面と第4反射面とによる実像I2の位置にほぼ配置された第5反射面R5としての凹面反射面及び所定の光軸A2を有している。そして、第3光学系S3は第6反射面R6としての凹面反射面と所定の光軸A3を有し、該第3光学系の物体面O3と像面Iは前記第6反射面R6の曲率中心C2をほぼ含み該第3光学系の光軸に垂直な面内又はこの面と光学的に等価な面内にほぼ位置する構成である。」
と記載されている。
引用例1の第1図



(2)-2 引用例1の記載の発明
引用例1には、フォトレジストを塗布したウエハにマスクのパターンを縮小投影露光するための反射縮小投影光学であって、軟X線やX線を用いて、マスクとウエハに対して、6個の反射面を有する光学系が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1に記載された発明とを比較する。
一致点
引用例1に記載された、「フォトレジストを塗布したウエハにマスクのパターンを縮小投影露光」、「マスク」、「ウエハ」及び「反射面」は、それぞれ、本願補正発明の、「射影リソグラフィー」、「リソグラフィーマスク」、「半導体ウェハー」及び「反射表面」に相当する。
また、引用例1に記載された「軟X線やX線」は、本願補正発明の、「露出波長」に実質的に相当する。
さらに、引用例1記載の第1光学系S1は、第1反射面R1としての凹面反射面、第2反射面R2としての凸面反射面からなる亜系を構成し、第2光学系S2は、第3反射面R3としての凸面反射面と第4反射面R4としての凹面反射面、第3反射面と第4反射面とによる実像I2の位置にほぼ配置された第5反射面R5からなる亜系を構成し、第3光学系S3は第6反射面R6としての凹面反射面からなる亜系を構成するから、両者は、
「射影リソグラフィーにおいて用いる光学系であって、
リソグラフィーマスクからの像が露出波長を用いて半導体ウェハー上に射影され、
前記リソグラフィーマスクと前記半導体ウェハーに対して配置された少なくとも6個の反射表面を有し、亜系を構成する光学系」
において一致する。

相違点
本願補正発明は、各反射表面は、非球面であるのに対し、引用例1に記載された発明は、その旨の記載がない点で相違(以下、「相違点1」という。)する。
本願補正発明は、各亜系が凹反射表面及び凸反射表面を有するのに対し、引用例1に記載された発明では、第1光学系S1を構成する亜系は凹反射表面及び凸反射表面を有するものの、第2光学系S2を構成する亜系は、第3反射面R3としての凸面反射面と第4反射面R4としての凹面反射面、第3反射面と第4反射面とによる実像I2の位置にほぼ配置された第5反射面R5としての凹面反射面を有する亜系である点で相違し、第3光学系S3は第6反射面R6としての凹面反射面からなる亜系である点で相違(以下、「相違点2」という。)する。
本願補正発明は、凹反射表面は、凸反射表面より大きいのに対し、引用例1に記載された発明では、その旨の記載がない点で相違(以下、「相違点3」という。)する。
本願補正発明は、リソグラフィーマスクと前記半導体ウェハーの間に配置された少なくとも6個の反射表面を有するのに対し、引用例1に記載された発明では、ウエハの位置が6個の反射表面の外にあるとはいえず、従って、リソグラフィーマスクと前記半導体ウェハーの間に配置された少なくとも6個の反射表面を有するとはいえない点で相違(以下、「相違点4」という。)する。

(4)判断
相違点1について検討する。
反射光学系において、収差の補正のため非球面を用いることは慣用手段(例えば特開平7-147230号公報、特開昭63-312639号公報等参照)であり、各反射表面を非球面とすることに何ら困難性はないから、相違点1に係る相違については当業者が容易に想到できたことである。
相違点2について検討する。
引用例1に記載された発明では、第2光学系S2を構成する亜系は、凹反射表面及び凸反射表面の他に、凹面反射面である第5反射面R5を有しているが、第5反射面R5は実像I2の位置にほぼ配置されており、光学的には、いわばフィールドレンズとして機能するものであり、その有無については単に設計上の選択事項にすぎない。
また、第3光学系S3を構成する亜系は、凹反射表面のみからなるが、凹反射表面及び凸反射表面の収差が逆であることを用い、光学系の収差を互いに消しあわせることは光学設計における慣用手段であることを考慮すると、第3光学系S3を構成する亜系を凹反射表面及び凸反射表面とすることは当業者が容易に想到できたことである。
従って、相違点2に係る相違については当業者が容易に想到できたことである。
相違点3について検討する。
凸反射表面から反射された光束は発散するので、この光束を受ける凹反射表面を凸反射表面より大きくすることは、光束を有効に利用する観点から自明の事項であり、また、光束を受ける凹反射表面を凸反射表面より大きくすることは、慣用手段(例えば特開平7-147230号公報参照)であることを考慮すると、相違点3に係る相違については当業者が容易に想到できたことである。
相違点4について検討する。
引用例1において、ウエハの位置は特に第1図の位置に制限する必要はなく、ウエハを6個の反射表面の外側に置くことすなわち、リソグラフィーマスクと前記半導体ウェハーの間に配置された少なくとも6個の反射表面を有する構成とすることは当業者が容易に想到できたことであるから、相違点4に係る相違については当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び慣用手段から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び慣用手段に基づいて当業者が容易に想到しえたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年7月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年1月17日付け補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「射影リソグラフィーにおいて用いる光学系であって、
リソグラフィーマスク(28)からの像が露出波長を用いて半導体ウェハー(30)上に射影され、
a)前記リソグラフィーマスク(28)と前記半導体ウェハー(30)
の間に配置された少なくとも6個の反射表面(12〜26)を有し、
前記各反射表面は、非球面であり、
前記少なくとも6個の反射表面(12〜26)は、第1亜系、第2亜系、及び第3亜系を構成し、
前記各亜系は、凹反射表面及び凸反射表面を有し、
前記凹反射表面は、凸反射表面より大きい
ことを特徴とする光学系。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、亜系の限定事項である「2個で一組の反射表面」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-09 
審決日 2005-03-24 
出願番号 特願平9-113727
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江塚 政弘森内 正明吉川 陽吾  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
瀬川 勝久
発明の名称 射影リソグラフィー光学系  
代理人 本宮 照久  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 三俣 弘文  
代理人 産形 和央  
代理人 藤野 育男  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 越智 隆夫  
代理人 臼井 伸一  
代理人 朝日 伸光  
代理人 高梨 憲通  
代理人 岡部 正夫  
代理人 加藤 伸晃  

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