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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C |
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管理番号 | 1120911 |
審判番号 | 不服2002-18678 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-02-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-26 |
確定日 | 2005-08-11 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第201932号「蒸気冷却ガスタービン」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月17日出願公開、特開平10- 47083〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件出願は、平成8年7月31日の出願であって、平成14年8月22日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ(同年8月27日発送)、これに対し、平成14年9月26日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに平成14年10月24日付けの手続補正により明細書の補正がなされたものである。 [2]平成14年10月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成14年10月24日付けの手続補正を却下する。 〔理 由〕 1.補正の内容、及び補正の目的 a.請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却し、この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けると共に、圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されていることを特徴とする蒸気冷却ガスタービン。」 から、 「【請求項1】第1段から第4段に至る翼列を有し、ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却した後この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記翼列中第2、第3段静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けると共に、圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されていることを特徴とする蒸気冷却ガスタービン。」に補正する。(なお、下線は補正箇所を明示するために当審で付した。以下同様。) b.明細書の段落【0012】を、「【課題を解決するための手段】 本発明は前記課題を解決すべくなされたもので、ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却し、この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けると共に、圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されている蒸気冷却ガスタービンを提供し、燃焼ガス通路の内側について見れば、同燃焼ガス通路の内側へ静翼内部に設けた通路を通して圧縮機抽気空気をシール空気として供給し、燃焼ガス通路の内側へシール空気を確保して同燃焼ガス通路内側をシールすることを可能としたものである。」から「【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決すべくなされたもので、第1段から第4段に至る翼列を有し、ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却した後この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記翼列中第2、第3段静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けると共に、圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されている蒸気冷却ガスタービンを提供し、第1段〜第4段の翼列中、第2、第3段静翼において、燃焼ガス通路の内側について見れば、同燃焼ガス通路の内側へ静翼内部に設けた通路を通して圧縮機抽気空気をシール空気として供給し、燃焼ガス通路の内側へシール空気を確保して同燃焼ガス通路内側をシールすることを可能としたものである。」に補正する。 c.明細書の段落【0013】を、「また、前記燃焼ガス通路の外側では、前記静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けたことにより、この冷却空気孔を通して前記燃焼ガス通路の外側へ冷却空気を供給し、燃焼ガス通路の外側にこれを確保して、同冷却空気により前記燃焼ガス通路の外側をシール可能としたものである。」から「また、前記第1段〜第4段の翼列中、第2、第3段静翼において、前記燃焼ガス通路の外側では、前記静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けたことにより、この冷却空気孔を通して前記燃焼ガス通路の外側へ冷却空気を供給し、燃焼ガス通路の外側にこれを確保して、同冷却空気により前記燃焼ガス通路の外側をシール可能としたものである。」に補正する。 d.明細書の段落【0014】を、「そして前記静翼内部を通して設けられた通路は、ラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されているので、圧縮機抽気空気は、シール空気を供給する通路により静翼内部をラビリンス部に至る直前まで流れて所定の冷却を行い、次いでこの位置で折れ曲がって内側シュラウド下部の上流側面に向かって供給されてシール空気となり、燃焼ガス通路の内側へシール空気を確保したものである。」から「そして前記第2、第3段静翼において、静翼内部を通して設けられた通路は、ラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されているので、圧縮機抽気空気は、シール空気を供給する通路により静翼内部をラビリンス部に至る直前まで流れて所定の冷却を行い、次いでこの位置で折れ曲がって内側シュラウド下部の上流側面に向かって供給されてシール空気となり、第2、第3段静翼における燃焼ガス通路の内側へシール空気を確保したものである。」に補正する。 e.明細書の段落【0023】を、「【発明の効果】以上、本発明によれば、静翼内部を通して設けた通路により1段動翼以降の燃焼ガス通路の内周側への冷却空気の供給路が確保され、内周の翼間シールが可能になり、ガスタービン性能向上に大きく貢献するものである。」から「【発明の効果】以上、本発明によれば、第1段から第4段に至る翼列中第2、第3段静翼内部を通して設けた通路により1段動翼以降の燃焼ガス通路の内周側への冷却空気の供給路が確保され、内周の翼間シールが可能になり、ガスタービン性能向上に大きく貢献するものである。」に補正する。 f.明細書の段落【0024】を、「また、静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに設けた冷却空気孔により燃焼ガス通路の外周側へも冷却空気の供給が確保されるので、外周側の翼間シールも可能となり前記内周翼間シールと相俟ってガスタービン性能の向上に寄与するものである。」から「また、前記第2、第3段静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに設けた冷却空気孔により燃焼ガス通路の外周側へも冷却空気の供給が確保されるので、外周側の翼間シールも可能となり前記内周翼間シールと相俟ってガスタービン性能の向上に寄与するものである。」に補正する。 g.明細書の段落【0025】を、「更にまた、前記静翼内部を通して設けられた通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されているので、シール空気はラビリンス部に至る直前まで所定の冷却を行い、次いで内側シュラウド下部の上流側面に向かって供給されてシール空気となり、燃焼ガス通路の内側へシール空気を確保してガスタービン性能の向上に寄与するものである。」から「更にまた、前記第2、第3段静翼内部を通して設けられた通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されているので、シール空気はラビリンス部に至る直前まで所定の冷却を行い、次いで内側シュラウド下部の上流側面に向かって供給されてシール空気となり、第2、第3段静翼における燃焼ガス通路の内側へシール空気を確保してガスタービン性能の向上に寄与するものである。」に補正する。 上記補正aは、ガスタービンの形式を、「第1段から第4段に至る翼列を有し」と限定するとともに、冷却空気孔とシール空気通路を設ける静翼に関して、「第2、第3段静翼」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 上記補正b〜gは、上記補正aに伴って、それらの補正と整合するように発明の詳細な説明を補正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 2.独立特許要件について 平成14年10月24日付けの手続補正書による手続補正は、以下の理由により平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反している。 (1)補正された請求項1に係る発明 平成14年10月24日付けの手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】第1段から第4段に至る翼列を有し、ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却した後この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記翼列中第2、第3段静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けると共に、圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されていることを特徴とする蒸気冷却ガスタービン。」 (2)本願出願前公知の刊行物、及びその記載事項 刊行物1:特開平6-257405号公報 刊行物2:特開昭57-176309号公報 ・刊行物1の記載事項 a.「【0014】図1に戻って説明すると、同図には、複合サイクルガスタービンの一部が示されている。複合サイクルガスタービンは、第2の段静翼10の軸方向に対向する側にそれぞれ存在している第1のタービン段16と、第2のタービン段18とを含んでいる。タービン段16及び18のそれぞれのタービン動翼20及び22は、ペデスタル24及び26にそれぞれ装着されており、ペデスタル24及び26はそれぞれのタービンホイールに装着されている。スペーサ28が両タービンホイールと共に回転し得るように、両タービンホイールの軸方向間隙内に配設されていると共に両ホイールに固定されている。スペーサ28は、第2段ノズルの一部を形成している固定ダイアフラム32の内面に対して漏止めを成している密封(シーリング)表面30を含んでいる。図示のように、ダイアフラム32と、スペーサ28とは、ダイアフラム32とスペーサ28との間にラビリンスシールを形成している。・・・タービン燃焼器(図示していない)からのガスは軸方向に、例えば、図1において左から右に第1段ノズル(図示していない)を通流して第1のタービン段動翼20を駆動した後、固定された第2段ノズル10を通流して第2のタービン動翼22を駆動することを理解されたい。」(なお、下線は引用箇所の理解の便のために当審で付した。以下同様。) b.「【0017】図1に示すように、蒸気通路44の内端は、内側側壁12内に配設されている冷却流路64と連通している。従って、蒸気は通路44から流路64に流入する。流路64は戻り蒸気通路42と連通しており、そして蒸気は半径方向外方に通路42を通流し、外部配管66を経て還流する。カラー68が、戻り通路42からの蒸気を捕集して配管66に流すように、室34を貫通している。【0018】図1に示すように、冷却蒸気は室34から通路46を半径方向内方に通流し、更に内側側壁12を通って、ダイアフラム32内に形成されている空洞72内の中継箱70に流入する。通路40も同様に、中継箱70と連通している。中継箱70は通路40及び46からの蒸気を捕集し、捕集された蒸気は内側側壁12を通って戻り蒸気通路42に流入する。・・・」 c.「【0019】圧縮機の中間段からの抽出空気は配管80を経て、静翼の後縁に隣接している通路48に送給され得る。通路48は、ダイアフラム32の両側のタービンホイール空洞で終わっている開いた冷却回路の一部である。詳述すると、通路48を通った空気は、内側側壁12の開口を通流してダイアフラム32内の空洞72に入る。軸方向開口82及び84が、冷却空気を通路48及び空洞72からホイール空洞86及び88内に供給して高温ガスの侵入を防止するように、ダイアフラム32の両側を貫通して設けられている。こうして、静翼を通る冷却空気は、タービンホイールの局所的な過熱を防止するように、高温ガスをホイール空洞86及び88から駆除するために用いられている。・・・」 a〜cの記載を第1〜4図の記載とともに看れば、 刊行物1には、「翼列を有し、ガスタービンの静翼を蒸気によって冷却した後この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記翼列中第2の段静翼10に圧縮機中間段からの抽出空気を燃焼ガス通路の内側へ高温ガス侵入防止用空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路は密封表面30に至る前で折れ曲がり、内側側壁12下部の上下流側面に向かって貫通されている蒸気冷却ガスタービン。」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という)が記載されているものと認められる。 ・刊行物2の記載事項 d.「第2図中には両方の冷却蒸気流、即ちロータ冷却蒸気流およびステータ冷却蒸気流が鎖線および破線で示され、しや断空気流が実線で示されている。しや断空気はコンプレッサ1内の相応の圧力の個所から分岐されて、しや断空気導管5(第1図)を介してタービン3へ供給される。回転羽根42およびロータのための冷却蒸気は分岐導管21を介して、案内羽根43およびステータのための冷却蒸気は冷却蒸気導管20を介してそれぞれタービン3に供給される。これらの冷却蒸気流20、21と同時に、周知の形式でしや断空気が矢印6に沿って冷却蒸気流20、21から分離された空気案内通路44へタービン入口側から供給され、次いで流路内へ導びかれる。」(第4頁右上欄第2〜16行) e.「空気案内通路44内で支配するわずかな過圧によって少量の漏出空気が空気出口50からタービンの加熱ガス通路内へ流入してしや断効果を生ずる。・・・図示しない案内羽根の冷却も同じ形式で行われる。」(第4頁左下欄第10〜15行) d、eの記載を第2〜4図とともに看ると、刊行物2には、「動翼及び静翼を蒸気によって冷却する」技術(以下、「刊行物2記載の技術1」という。)、及び「静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設ける」技術(以下、「刊行物2記載の技術2」という。)が記載されているものと認められる。 (3)補正発明の進歩性の判断 補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「第2の段静翼10」は、その構成、機能からみて、前者の「第2段静翼」に相当する。同様に「圧縮機中間段からの抽出空気」は「圧縮機抽気空気」に、「高温ガス侵入防止用空気」は「シール空気」に、「内側側壁12」は「内側シュラウド」に、「密封表面30」は「ラビリンス部」に相当する。 したがって、補正発明と刊行物1記載の発明とは、「翼列を有し、ガスタービンの静翼を蒸気によって冷却した後この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記翼列中第2段静翼に圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の側面に向かって貫通されている蒸気冷却ガスタービン。」の点で一致し、次の点で相違する。 ・相違点 a.相違点1 補正発明が、「第1段から第4段に至る翼列を有する蒸気冷却ガスタービン」であるのに対し、刊行物1記載の発明では、翼列の段数が不明である点。 b.相違点2 補正発明が、「動翼及び静翼を蒸気によって冷却」するのに対し、刊行物1記載の発明では、「静翼を蒸気によって冷却」する点。 c.相違点3 補正発明が、「第2、第3段静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設ける」のに対し、刊行物1記載の発明では、外側シュラウドにはシール空気を供給していない点。 d.相違点4 補正発明が、「第2、第3段静翼に圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け」ているのに対し、刊行物1記載の発明では、「第2段静翼に圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け」ている点。 e.相違点5 シール空気を供給する通路に関し、補正発明では、「ラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されている」のに対し、刊行物1記載の発明では、「ラビリンス部に至る前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上下流側面に向かって貫通されている」点。 ・相違点の検討、及び判断 a.相違点1に関して ガスタービンにおいて、第1段から第4段に至る翼列を有するように構成することは周知の技術(例えば、特開平7-54669号公報、特開平5-171958号公報参照。)である。 したがって、刊行物1記載の発明に、上記周知の技術を適用して、相違点1に関して補正発明のように構成することは、当業者が容易になし得たものである。 b.相違点2に関して 刊行物2には、動翼及び静翼を蒸気によって冷却する技術(刊行物2記載の技術1)が記載されており、刊行物1記載の発明においても、動翼の冷却のために刊行物2記載の技術1を適用して、相違点2に関して補正発明のように構成することは、当業者が必要に応じて容易に想到し得ることである。 c.相違点4に関して 刊行物1の記載事項cからも分かるように、静翼に供給される空気は冷却機能を有するものであるから、第3段においても温度が高くて、静翼やホイールの冷却が必要な場合には、第2段だけでなく第3段にも空気を供給して、その部分の冷却をはかることは、当業者が、設計において適宜行うことである。 したがって、刊行物1記載の発明において、相違点4に関して補正発明のように構成することは、当業者が必要に応じて容易に想到し得ることである。 d.相違点3に関して 外側シュラウドの半径方向外方にも燃焼ガスによる熱的影響が及ぶことは構造上当然であるとともに、刊行物2には、静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設ける技術(刊行物2記載の技術2)が記載されている。 したがって、刊行物1記載の発明において、相違点4に関して補正発明のように構成する際に、外側シュラウドの外側の冷却にも考慮して、相違点3に関して補正発明のように構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 e.相違点5に関して 内側シュラウドの半径方向内方にも燃焼ガスによる熱的影響が及ぶことは構造上当然であるとともに、シール空気は冷却機能を有するものであるから、内側シュラウドの半径方向内方での冷却部分を長くするために、ラビリンス部に至る直前で折れ曲がるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。また、ガスタービンにおいては一般に、上流ほど温度が高いので、高温部分を十分に冷却するように、シール空気を供給する通路を、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通することは、当業者が容易に想到し得ることである(なお、特開平5-52102号公報の第8図には、従来例として、このように配置した通路が記載されている)。 したがって、刊行物1記載の発明において、相違点5に関して補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 また、補正発明によってもたらされる、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の技術1、2、及び上記周知の技術から予測し得る程度のものである。 以上のとおりであるから、本件の補正発明は出願前に頒布された刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術1、2、及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件の補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (4)まとめ したがって、平成14年10月24日付けの手続補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する、同法第126条第4項の規定に違反している。 よって、この補正は、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 [3]本願発明について (1)平成14年10月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、その補正前の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、この発明を単に「本願発明」という。)。 「【請求項1】 ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却し、この蒸気を回収する形式のものにおいて、前記静翼の外側シュラウドの上流側及び下流側端部寄りに、前記燃焼ガス通路の外側へ圧縮機抽気空気をシール空気として供給する冷却空気孔を設けると共に、圧縮機抽気空気を燃焼ガス通路の内側へシール空気として供給する通路を静翼内部を通して設け、該通路はラビリンス部に至る直前で折れ曲がり、内側シュラウド下部の上流側面に向かって貫通されていることを特徴とする蒸気冷却ガスタービン。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物( 特開平6-257405号公報、特開昭57-176309号公報)、および、その記載事項は、前記[2]2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記[2]2.で検討した補正発明の「第1段から第4段に至る翼列を有し、ガスタービンの動翼及び静翼を蒸気によって冷却した後この蒸気を回収する形式のものにおいて」から「第1段から第4段に至る翼列を有し」及び「た後」の構成を省き、さらに補正発明の「翼列中第2、第3段静翼」から「翼列中第2、第3段」の構成を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに本願発明を特定する事項の一部を限定する構成を付加したものに相当する補正発明が、前記[2]2.(2)、(3)に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2記載の技術1、2、及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2記載の技術1、2、及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2記載の技術1、2、及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-15 |
結審通知日 | 2005-06-21 |
審決日 | 2005-06-28 |
出願番号 | 特願平8-201932 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 貴雄 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
長谷川 一郎 飯塚 直樹 |
発明の名称 | 蒸気冷却ガスタービン |
代理人 | 石川 新 |